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タウンウオッチ&人間観察

2013年4月15日 (月)

時短男

春だというのに肌寒い日、その男はビジネス客が行き交うターミナル駅のバス停に並んでいた。
年の頃二十代前半。茶系に染めた髪、少し眩しそうに細めた目元が印象的なイケメン。紺のブレザーに第二ボタンまで開けた白シャツ。履き込んだジーンズ。

昼間のバスはなかなか来ない。

男はジーンズの前ポケットからコンパクトな電気シェーバーを取り出して髭を剃り始めた。
シュルシュルというシェーバーの回転音に、チリチリと髭が剃れる音が混じって響くる。

電話がかかってきた。
男は左手にシェーバーを持ち替え、右手で尻のポケットからガラケーを取り出して開いた。
「もしもしー、どうもー。」
シュルシュル、チリチリ。
相手にはどんな風に声と音が聞こえているのか気になるが、短い通話と髭剃りは同時に終わった。

男はブレザーのポケットから、スニッカーズを取り出して、封を切って食べ始めた。
バスが来た。
男はチョコバーの残り半分を一気に口に入れ、膨らんだ頬のまま、バスに乗り込んだ。
その頬は髭の剃り残しもなくスッキリしたものだった。

2013年3月 5日 (火)

愛の告白

スタバで向かい合わせで勉強中の高校生の男女。まだ、中学生のあどけなさが残る二人。

正確には勉強中なのは女の子だけで、男の子はiPod touchでゲームに興じている。
女の子は勉強ができるタイプなのか、数学の問題集をスラスラ解きながら、男の子に話しかける。女友達との関係に悩んでいるようだ

「あーあ、何でアヤカは女に生まれちゃったんだろう。女同士って面倒くさいことばっかり」。

男の子はiPodの画面から目を離さずに言った。
「俺はアヤカが女で良かったよ。男から男に好きって言ったらゲイになっちゃう」。
「・・・え?あんた、好きって、何言ってるの?ゲイとか、バカじゃない?」

女の子はシャープペンを激しくカチカチとノックした。芯が無意味に伸びてノートにぶつかって折れた。
... 男の子のiPodの画面には、Game overの文字が表示されていた。画面から目を離して女の子を見た。

「あ、分かりにくかった?」
「わかったわよ!・・・ありがとう・・・」

ゲームには負けたが、告白は成功したようだ。

「イケメンの我慢」

「イケメンの我慢」

電車の中。空いた車内のシートには、パリッとプレスが効いたワイシャツが印象的な三十代半ばのビジネスマンが座っている。彫りの深いイケメンだ。

だが、その整った顔立ち
の表情がおかしい。何やら、鼻孔をひくひくさせている。さらに、左手で鼻をつまむ。くしゃみを我慢しているのだろうか。

さらに鼻孔を大きくし、口までもぐもぐさせだした。再び鼻をつまむふりをして、微妙の鼻腔内に一瞬、人差し指を突っ込んだ。つまり、彼はくしゃみをこらえているのではなく、いわゆる「鼻の穴を掘る」という行為を必死で我慢しているのだ。

イケメンが人前で鼻をほじるという行為はしたくないだろう。ましてや、筆者の視線は感じ取っているだろうし、あまつさえ彼の両隣の席は若い女性が座っている。
...
我慢が限界に達したか、ポケットから左手でハンカチを取り出して鼻と口元を隠し、右手でこっそりと鼻を掘った。微かに彼の目尻が下がり、安息の表情に変わった。

「ハーッション!!」。安らぎも束の間。急にこみ上げてきた大きなくしゃみの音が車内に広がり、その瞬間、彼をただのオヤジに変えた。

「よくある話」

カフェのテラス席。チャコールグレーのウールコートに身を包んだ若い男が、タバコとコーヒーで午後のひと時を楽しんでいる。
通りの向こうの側から、髪の長い若い女性が笑顔を浮かべ、小さく手を振って小走りに近づいてきた。
男の表情がパッと明るくなり、立ち上がった。
ところが、彼女は男の横を通り過ぎ、背後の席の女性のもとへ。「ゴメンね~待った?」

ここまではよくある話。

男がクルリと振り返った。
... 「○○さんだよね?!」
駆けてきた女性がハッとした顔で応えた。
「え?・・・あー!□□君!?こんな所で何してるのー!」

無味乾燥な都会でも、小さな奇跡は起きる。

2013年1月 8日 (火)

挨拶回りの流儀

実質的な仕事始めの今日。街には挨拶廻りの営業担当者があちこちで見かけられる。
ビルから出て来た男性二人。一人は白髪頭のベテラン営業マン。一人は新人ぽい。

「まぁ、一軒あたりはあんな感じでささっと挨拶すればいいんだ」と、ベテラン氏。
「意外とスムーズで簡単なんスすね」と、新人君。
「まぁ、相手も忙しいんだから、そこんところ察しなきゃ」
「そおッスね!・・・ただ、自分わかんないんスけど、なんでコート着ないんスか?」
「まぁ、相手の前で脱いだり着たりモタモタしてたらみっともないし、迷惑だろう」
「そおッスね!ただ、自分はコートは建物の前で脱いだり着たりするようにって研修で習いました」
「まぁ、そういう流儀もあるな。だけど俺は新年の挨拶廻りではコート着ないんだ」
「なんでッスか?」
「まぁ、気合いだよ。一年の気合いを相手に見せるんだ」
「そおッスか!でも、他の会社の人たち、みんなコート着てますよ?」
「まぁ、気合いが足りないんだな。だからこそ、俺たちの気合いが光るってもんだ。差別化だよ」
「なるほどッスね!納得です!」

彼らの気合いが実を結んで、会社が繁栄するように祈る。
風邪ひくなよ。

おっとっと

「スイマセン」
「ごめんなさい」
駅のホーム。出会い頭に相手をかわす方向が私私と重なった。
相手は紫色のモンクレールのダウンジャケットに白のタートルネックのセーター。明るめの茶色のロングヘアー。三十代前半という感じの女性。
お互いにもう一歩を踏み出したが、また重なった。さらに一歩。ま

ただ。バスケットボールの試合でマンツーマンのガードをしているよう。
さすがに三度重なるとお互い少し可笑しくなって、くすりと笑った。そして、相手の目を見て動きを確認し、ゆっくりすれ違った。
僅か4秒のドラマだった。土曜日の朝。人もまばらな時間だからこその余裕かもしれない。だが、袖触れ合うも多少の縁。平日も殺伐とせずにいたいと思った。

席取り

銀座・有楽町界隈のスタバはまだ、仕事始めをしていない、バーゲン狙いの買い物客で大混雑。そんな中、近隣の会社ビジネスマン4人組がスーツ姿で来店。役職者・担当者二人、新人という風情。

隣り合った二人掛けのテーブルで二組の客が帰り支度をはじめた。

奇跡的なタイミング。新人がダッシュ。席を奪取。
彼は確保した席を守るため、まずジャケットを脱いで1つの席に掛け、次にスマホをもう一つの席に置き、3つめの席にポケットからハンカチを出して置いた。
最後の1つに自分が座って待とうとしたところ、レジの列に並ぶ先輩がこちらに来いと手招きをした。どうやら、コーヒーはおごってもらえないようだ。

彼は尻のポケットから財布を取り出し、列に向かおうとしたが席を確保するために置く物がもうない。そして、彼は「閃いた!」というような顔をしてネクタイを緩め、結び目を保ったまま首から強引に抜いてテーブルに置いた。
...
4人が飲み物を手に持って席に戻ってきた。新人君がジャケットを羽織り、ポケットにハンカチとスマホをしまった。最後に、結んだままのネクタイを頭から被った。ネクタイがおでこで引っかかった。その姿は、テレビでよくある「宴会で酔っ払って頭にネクタイを結んだサラリーマン」のように見えた。

年末年始の彼の奮闘ぶりが伺えた。ガンバレ新人。春になれば後輩が入ってくるだろう。

キス

ボサボサで脂ぎった髪。あまりにもまばらな剃り残しが多いひげ。アイロンを当てたことのなさそうなワイシャツの襟先は丸まっており、羽織ったベージュのステンカラーコートは道路で引きずったように黒く煤けている。
朝の通勤電車のシートに座った、小柄で痩せ型の三十半ばの男。彼が指紋でべたついたメガネのレンズ越しに熱心に見つめているのは、スマホの画面。そこに次々と映し出されるアニメのヒロインたちだ。サムネールのアイコンから次々と美女を呼び出し、人差し指でその口元にタッチする。
電車の中。人から見れば、少し異様な光景も、彼は恥じらうことも悪びれることもなく、疑似キスを行っている。
彼にとって、そのスマホの恋愛ゲームは喜びなのか、単なる作業なのかわからないくらい淡々とした動き。しかし、その様は、まるでハーレムの王が居並ぶ後宮の妻たちに爽やかに朝のキスを贈るように、自然で洗練されている。
王にとって、妻たちに等しく愛を注ぐことは、喜び以上に重要な作業なのかもしれない。
女性専用車両の男性でごった返した車内で、サルタンは世俗を意に介さず、キスを続けて電車に揺られていた。

缶の底

土曜日の夕暮れ時。快速電車の最後尾車両。車掌室のドアのもたれて、作業着姿にカバンを肩に掛けた三十半ばの男性が一人。
家路へのお供は、サントリー角ハイボール缶。男は飲んでいる缶の飲み口から、缶の中味をじっと見つめている。
残り少なくなったハイボールが惜しいわけではないはずだ。彼の手にはコンビニの小さなレジ袋に入ったお代わりがもう一缶ある。
缶の底には、何が見えるのか。
残りのハイボールを一気にグイと飲み干し、まるで慌てているかのように、男は新しい缶を取り出してプシュッとフタを開けた。一口飲むと、また、缶の底を覗き込んでいる。
車掌が車内アナウンスで、快速電車の停車駅を告げた。列車の終着駅は、遥か海辺の街だ。
男はアナウンスの声にふと、耳を傾けたように顔を上げ、そのまま遠く窓の外を眺めた。窓の外では日暮れの街の家々に灯りが灯り始めていたが、男はそれよりも、もっと遠くを見ているようだった。
窓の外を眺めたまま、ハイボールをグビリと飲み、男はまた、缶の底を見つめた。

プラダを持った小悪魔

電車内。隣の座席には、プラダのバッグを膝に載せ、マスカラを天まで届けと厚塗りしている小悪魔系メイクのギャル。彼女のまつげは既にバサバサと羽音をたてそうに厚塗りされている。一体、どこまでいけば気が済むのか興味深いが、斜め前の吊革に掴まっている中年男性は少なくとも気に入らないらしく、車内メイクを苦々しく顔で見ている。
ふと、マスカラを塗る手を止め、前に立っている三十半ばと見られる女性に席を譲った。「お腹に赤ちゃんがいます」のキーホルダーを目ざとく見つけたようだ。まだお腹も目立っていないのに、大した慧眼だと言えよう。
「あ、ありがとうございます!」女性は嬉しそうに席に座った。
もう一人、にこりとしたのは、苦虫を噛み潰した顔でプラダを持った小悪魔を見ていた中年男性だ。
人を見かけや、ちょっとした行為だけで判断してはいけない。少し、心温まる光景が車内の片隅にあった。

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