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2012年10月

2012年10月12日 (金)

花金の幸せ

 花の金曜日。花金。昭和も遠くになりにける今日、使われなくなってきた言葉であるが、ともかく週末だ。多くの人が一週間の業務を終えた開放感に酔い、酒に酔う。景気が悪いとか、飲食店の業績が悪いとかいわれるが、ともあれ、街には飲み会の人々が満ちあふれる。

 それは一週間前のことだった。

 花金の夜もまだ早い20時。郊外まで遠く続く快速電車の最後尾車両に、その五十代後半の白髪交じりの男性は、車掌室の壁にもたれて立っていた。
 手には駅のコンビニ・ニューデイズのレジ袋。愉快な酔っ払いがたむろする新橋を電車が出発すると、男は缶チューハイのロング缶を袋から取り出し、プシュっとふたを開け、ゴクリと喉を鳴らして一口飲んだ。続いて袋をゴソゴソして取り出したのは、つまみではなくヤマザキのランチパック(サンドイッチ)。袋を開け、ガツガツと頬張る。続けてもう一袋、ランチバックを取り出し一気に平らげ、缶チューハイで流し込んだ。

 ひと心地ついた男は、レジ袋から文庫サイズの本を取り出した。パズル本だった。男の目の色が変わった。すごい勢いで本に答えを書き込んでいく。かなりの手練れとみた。あっという間に1問を終え、少し満足げな表情を浮かべながら酎ハイをゴクリと飲んで次の問題に取りかかる。1問終えると、また酎ハイをゴクリと飲む。少し、飲むペースが上がったが、レジ袋にはまだ、酎ハイのお代わりも入っている。

 傍から見れば、それはあまりに貧しい花金のディナーであり、一人飲み会である。しかし、男は車中に立っていることを忘れているかのようにパズルに熱中し、その合間に酎ハイを飲んでいる。恐らく、男なりに花金を楽しんでいるのである。

 ひとの幸せは一律ではない。ルパン三世のテーマソングも「男には~自分の世界がある~♪」と歌っている。自分の世界を持っている人間は幸せなのだ。少なくとも新橋の居酒屋で会社の愚痴をこぼして、くだを巻いているよりも。

 今夜あなたは、どんな花金を過ごす予定ですか?

ホームのヒーロー

花の金曜日。終電30分前の駅のホーム。家路を確保した酔っ払い達は、安堵感も手伝って一層陽気な本性を露わにする。

30代前半のワイシャツ姿のサラリーマン。足元がゆらゆらして怪しい状態ながら、拳を握りしめ、肘を90度に曲げて脇を締め、腕を軽く振っている。ぱっと見、「五木ひろし」に見えなくもないが、彼のイメージの中では、自分はボクサーになっいるのだ。シュッと息を吐いて拳を振るった。いいフックが入ったようだ。彼は目を閉じたまま、ニヤリと笑った。

カジュアル姿の20代後半の男性。右手が腰の辺りで小刻みに震えている。指で何かを摘まんだような感じだ。左手も胸の横で何かを握りしめるようにしながら指を動かしている。姿勢も少しのけぞり気味なので、危ない痙攣でも始めたのかと思ったら、彼のヘッドホンから漏れてきた音楽でわかった。彼はイメージの中ではギタリストになってエアギターを弾いているのだ。音漏れの曲が終わった。彼は目をつぶって観客の声援に応えるように、右手を掲げた。

ボクサーにギタリストだけではない。花金の深夜のホームには様々なスターが活躍している。観察してごらんあれ。

グリーン車のONE ON ONE

朝の快速電車。大事な商談などがある朝はグリーン車に乗ることにしている。ラッシュにもみクシャにされて、モチベーションを下げたくないからだ。
だが、今朝は早朝にもかかわらず、満席。座ることができなかった。
同じ駅から乗った同年代の男とデッキに立つ。こうなると、席取りは戦いになる。何しろ750円也のグリーン車料金を払っているのだ。立ったままでは馬鹿馬鹿しい。

男とのONE ON ONE。ヤツはどの席を狙っているのか。確実に席を取るなら、一階、二階、デッキ裏の各席のそばに立って降車準備を始めた客を目視して座ることだ。だが、それでは最初に選択する分、確率は三分の一になってしまう。

ヤツもデッキで待って降車の気配を伺っている。先に気配を察知して、一階席か二階席の階段に一歩踏み込むか、デッキ裏席の開扉ボタンをプッシュするかの先手を取らねばならない。それに先んじた者が着座の権利を得る暗黙のルールがあるからだ。

一駅目。降車の気配はなかった。誰も降りない。勝負は次だ。
駅が近づいてきた。ヤツのつま先がほんの少し二階席を向いた。気配を察知したのか。しかし、二階席には身体半分、私の方が近い。イケル!一気に二階席の階段に足をかけた。勝った・・・と、思った時、「プシュ」と音がした。デッキ裏席の開扉ボタンが押されたのだ。ヤツが降車客と入れ違いに席を獲得したのが見えた。
ヤツは座る刹那、私を見てニヤリと軽く笑った。二階席につま先を向けたのはフェイントだったのだ。

朝のグリーン車。そこでは乗客たちが毎朝、神経戦を繰り広げているのである。

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