2012.02.13

ドトール・スタバ・マクド三つ巴のカフェ戦争再燃!

 2月11日付日経MJによれば、「カフェ市場」がさらに激戦化するらしい。そのトリガーを引くのはドトールだ。いかなる戦略なのか、考察を交えて記事内容を見てみよう。

 タイトルは「ドトール、大形化で攻勢 新店舗半数、面積2倍 女性向け店舗も拡充」とある。「1店当たり収益増へ」という目的によるものだ。飲食業を構成する要素はQSCAに分解される。Quality=味の品質、Service=接客サービス、Cleanliness=清潔感、Atmosphere=雰囲気である。今回、ドトールは「A」を向上させる。「ゆったり過ごせるソファ席を増やすほか、観葉植物やガラス張りの壁などを設け、広く感じられるような工夫を施す」と記事にある。と、すると、ドトールの高級版、スタバの対抗馬たる「エクセルシオールカフェ」とポジショニングが被ってくるが、その点はエクセルシオールを順次ドトールに転換していくということだ。

 ドトールといえば、狭小店にオジサン達が肩を寄せ合ってギュウギュウ詰めになり、タバコを吹かしているというイメージを持つ人が多いが、現在では完全禁煙の店も多くそうした店の来店客は7割が女性であるという。完全なる戦略転換が行われているのである。

Value_line


 ドトールの狙いは、「バリューライン」で考えるとわかりやすい。
 フルサービスのカフェを「高価格で高品質」な「プレミアム戦略」とすると、エクセルシオールが戦っていたスタバは、「高級コーヒーなのに、中価格」の「高価値戦略」という価値で顧客支持を集めていた。
 一方、「低価格だけどそれなりの価値」である「エコノミー戦略」は以前のマクドナルドに代表される。それに対し、ドトールは「低価格なのに、そこそこの品質」である「グッドバリュー戦略」。
 エクセルシオールもドトールもバリューラインを超えていたが、スタバやマクドなどを一気に引き離すため、「低価格だけど価値が高い」という「スーパーバリュー戦略」に出たのだと考えられる。
 
 ポイントは客数×客単価×回転数=売上という基本の基に立ち返って新戦略を実行することだろう。
「ゆったり店舗」にしても、商品単価を上げすに、アドオンセリング(コーヒー+スイーツ、またはフード)によって客単価を上げることだ。商品単価を上げてしまっては、ドトールの看板でエクセルシオールの中身になるだけで、それでは「高価値戦略」のままで価格優位性が出ない。
 もう一つは、回転率を下すぎないこと。「ゆったり」だと、回転率は落ちる。しかし、元々のドトールは客の滞在時間が短く高回転型だ。既存客層の離反を防ぎ、その高回転な雰囲気は残しておくことが大事だ。間違ってもコンセントなんかテーブルに付けてはダメだ。なのだから。

 但し、スタバとの価格ポジションで棲み分けするだけでは勝てない。新たな競合は「マクドナルド新型店」だ。都内を中心にオシャレでゆったりとした店舗に順次改装中である、「QSCA」の「A」を強化しているのだ。但し、コーヒーの値段を見てみると、「プレミアムコーヒー化」して価格は100円そのままで味を格段に引き揚げ、オリコンの「買いたいコーヒー第一位」の座に輝いたものの、現在は120円を経て140円に値上げされている。それだと、いくら店舗をキレイにしても「業界標準」である「中価値戦略」になってしまう。
 マクドナルドも価格は問題とみているのであろう。そこで、ひとまず2月限定で価格を100円に値引きするキャンペーンを開始している。その反応いかんでは、価格下げを断行し、やはりグッドバリュー~スーパーバリューの戦略ポジションを取りに来るのだろう。

 カフェ戦争はドトール・スタバ・マクド三つ巴の構図が浮き彫りになってきた。各社がどのように動き、戦略を強化していくのか見物である。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.02.10

縁起担ぎとデータが支える販促~落ちないペットボトルキャップ~

From_aqua


 JR東日本管内の駅ナカで約1万台の自販機を運営しているJR東日本ウォータービジネス。その主力商品であるミネラルウォーター「FROM AQUA(フロムアクア)」は、1984年から駅ナカで発売されていた「大清水(おおしみず)」を2007年にブランドリニューアルして誕生したロングセラーだ。その商品がユニークな製品リニューアルと販売促進を展開する。

 ペット容器に入ったミネラルウォーターを買うニーズとは何だろうか。もちろん、水道水よりカラダに良さそうという理由は大きいだろう。だが、駅ナカで買われる少量容器(500ml以下)の場合、持ち歩いていつでも喉が潤せるという利便性も欠かせない。ところが、時として悲劇は起こる。ボトルキャップを落としてしまうことだ。そうなったら、その場で飲み切らねばならなくなる。JR東日本ウォータービジネスの実施したネット調査では、その悲劇に見舞われた消費者は約70%にのぼるという。(n=1202)。
Howto_aqua


 使い方はカンタン。写真のように通常のボトルキャップを開けるようにひねれば、カチッと止まって落ちないようになる。飲料業界初の画期的な構造である。

 「ニーズギャップ(←キャップではない)に応えた良い商品を作れば売れる」というほど、世の中は甘くない。ましてや業界的には画期的でも、「落ちないキャップ」は消費者にとっては潜在ニーズに応える「機能的価値」の小さなカイゼンである。その意義をしっかりとアピールして手に取ってもらい、使いやすさという効果を実感させなければならない。そこで、販売促進の施策が考えられた。この時期最も落ちて欲しくない、受験生にサンプリングを行うのだ。縁起担ぎである。
 現代マーケティングの大家、フィリップ・コトラーの「マーケティング原理」の最新版でも事例紹介された、ネスレ「キットカット」の受験生プロモーションも、「きっと、勝つと」という自然発生的な縁起担ぎをさらに精緻化したものだ。「FROM AQUA(フロムアクア)」を、有名私大の受験日に受験生に対して“落ちないキャップで今日もカチッ” を合言葉にした合格祈願サンプリングを実施するという。「落ちない」ということを印象づけるための「情緒的アプローチ」の展開である。

 「落ちない」という効用を実感させるサンプリングはその後も大規模に継続される。八王子駅、国分寺駅、大船駅、船橋駅、川口駅等の東京近郊約150 駅付近の街頭で朝に約15万本が配布される予定だ。東京近郊、そして例として挙げられた駅名を見て疑問符が浮かんだ人も多いだろう。サンプリングなら大きなターミナル駅で行った方が有効で効率的なのではないかと。そこが実はこのキャンペーンのミソなのだ。
 JR東日本ウォータービジネスの自販機は、約4,500台にSuica決済端末が搭載され、自販機POSデータが収集されている。従来、補充の際に何が何本売れたかがわかるのみであった自販機が、いつ、何が売れたのかという情報を取得できるようになっている。そのデータを、【居住エリア×購買エリア×時間帯売上】 によるクロス分析で検証した結果、「ミネラルウォーターは、朝の出勤の乗車前に最も多く買われる」ということなのだ。購買は乗車前の”発駅”、飲用はホームでの待ち時間など”移動中”という消費者の姿が浮かび上がってくる。そこで、最もニーズが高いときにサンプリングして手に取らせ、通勤途の移動中にキャップが落ちない利便性を体感させようという作戦だ。

 消費者のニーズギャップに応える機能改善を、「縁起担ぎ」という情緒的アプローチで訴求しつつ、データに裏付けられた科学的な販売促進を展開する。この、右脳と左脳の両面作戦がどのような結果をもたらすのか。それもまた、自販機POSデータがやがて教えてくれるだろう。


| | Comments (1) | TrackBack (0)

2012.02.02

生茶はドコへ行く?~生茶 緑の野菜のブレンド茶plus発売~

 ついに「野菜」だ。キリンビバレッジのニュースリリースによれば、<10種類の緑の野菜をブレンド><100mlあたり1500mgの食物繊維を摂取することができる>という。どんな味がするんだ?と思っていると、<ほんのりとした野菜の風味で、すっきりとした味わい>だという。味もナゾだが、その戦略意図もナゾだ。少し考察してみよう。

 キリンの生茶は2000年に伊藤園の「おーいお茶」キラーとして市場に参入した。両者は熾烈な戦いを繰り広げ、生茶がシェアをかなり奪取したものの、辛くもおーいお茶が首位を守り通した。
 両社の均衡が破れたのは2004年のこと。サントリーが「伊右衛門」で緑茶飲料カテゴリーに殴り込みをかけてきたのだ。以来、カテゴリーで3位に甘んじることとなり、昨今では日本コカ・コーラの「綾鷹」の猛追を受けるという厳しい状況にさらされている。
 そんな中、生茶に大きな転機が訪れたのが発売10周年を迎えた2010年のこと。生茶のリニューアル自体は珍しくないが、抹茶を用いたり、茶葉を変えたりするものの、ポリシーとして緑茶以外の派生商品には手を出していなかったことだ。それをついに破って、ブレンド茶カテゴリーに「生茶ブランド」で参入をしたのである。ブレンド茶カテゴリーの不動の王者はカテゴリーシェア60%を握る日本コカ・コーラの「爽健美茶」だ。それに対する無謀なチャレンジかとも思われたが、今回の「生茶 緑の野菜のブレンド茶plus」の発売を考えると違った戦略意図も見えてくる。

 一つは「棚取り」だ。派生商品を出すことによって、コンビニなど販売チャネルの棚が確保できる。ブレンド茶カテゴリーはファンも多い。トップの爽健美茶の棚を奪取することなどはできないが、チャネル、コンビニの店長の気持ちになって考えればそれなりの売上を期待して少なくとも1フェイスは棚を確保したくなるだろう。シェアの低い生茶にとって棚のフェイスを増やすことは容易ではない。それを可能にするのが派生商品なのだ。

 もう1つの効果もある。サントリーが年に2回発売する「変わり種ペプシ」。2007年夏、キュウリ味の「ペプシ・キューカンバー」で衝撃のデビューをし、その後も「ペプシブルーハワイ」「ペプシしそ」「ペプシあずき」など様々なバリエーションを投入してきている。その意図はドコにあるのか?日本においてペプシブランドを展開するサントリー食品の担当課長の貴重なインタビュー記事が日経ネットBizPlusに掲載されていた。(現在は掲出なし)。タイトルは 「サントリー、ペプシPRへ話題作り シソ・アズキ…相次ぎ『奇策』」。記事中で担当課長はインタビューに応え、<「2本目を買ってもらうことは期待していない」「限定品は味わいの驚きでブランドの新しさや楽しさを発信する手段。商品自体がペプシのPRになっている」>と言い切っている。「生茶 緑の野菜のブレンド茶plus」はこのパターンの意味合いが強うだろう。
 ペプシも生茶もカテゴリーのチャレンジャーだ。トップのリーダーブランドのシェアを逆転できるか否かも重要だが、それが難しいなら徹底した差別化戦略によってブランドの独自性をアピールすることが必須なのだ。「スカッと爽やかコカ・コーラ」という昔のコピーがいまだに多くの消費者のアタマに残っている。それは貴重なブランド資産だ。故に、爽やかでない「変わり種」を出してくることはできない。生茶も同じだ。おーいお茶は頑なに王道を歩んでいる。それに対して伊右衛門はより一層研ぎ澄ました本格派というイメージを強化して成功している。緑茶でない派生商品や、ましてや野菜ブレンドは出さない。

 生茶がペプシのように「2本目を買ってもらうことは期待していない」とまで割り切っているかは不明であるが、ある意味、吹っ切れた結果が今回の商品なのではないだろうか。
発売は3月6日(火)だ。是非、一度試してその意図を舌でも確かめてみて欲しい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.01.06

続編的「サービスの価値」の話:マッサージ篇

 昨日の記事「サービスの価格と価値を再考する」では、端的に言えば一つの結論は「業界の中心的相場=中価値戦略に安穏としていることはできない」ということだ。そこは既に、W・チャン・キムの「ブルーオーシャン戦略」がいうところの、血みどろの戦いの場である「レッドオーシャン」になることが運命的になっている。サービス品質はそのままに、価格を下げて提供する「グッドバリュー戦略」に転換することが一般的だろう。しかし、固定比率の引き下げができなければ収益的に破綻を来すことになる。

 では、どうするか。
Photo


 その一つの形が写真の「頭専門マッサージ」だ。
 マッサージ店は乱立し、近く過当競争に入るだろう。一部では「30分2000円」という店も増えている。大抵がビルの空中階(2階以上)に立地し、中国人などがサービスを提供している。地代家賃と人件費を抑制して損益分岐点を引き下げているのだ。しかし、それにも限界はある。
 写真の店は京都で見つけた。四条烏丸と四条寺町の2店展開だという。「頭専門」というからには、精神的ストレスや眼精疲労などで凝り固まった頭をほぐしてくれる。サービスが終わるとパンパンに張ってた頭皮が緩んでいることに気付く。サービスを受ける姿勢もリラックスチェアで楽々である。で、気になるお値段だが、キレイに「10分ごと1000円」のメニューとなっている。「中価値戦略」を保っているのだ。

 マイケル・ポーターは企業の戦略を「戦いの武器」と「戦いのフィールド」によって3つに類型した。コストを武器に広い市場全般で戦う戦略は「コストリーダーシップ戦略」という。対して、競合に対する差別化要素を武器に戦いのが「差別化戦略」である。一方、戦いのフィールドを狭く特定市場に限定して戦うのが「集中戦略」である。
 さらに細分化すると、特定市場で集中戦略をとりながらコストを武器に戦うなら「コスト集中戦略」。差別化を図るなら「差別化集中戦略」となる。「頭専門マッサージ」は、「差別化集中戦略」の好例といえるだろう。

 一方、フィリップ・コトラー的に解釈をすれば、「頭専門マッサージ」は「セグメント戦略」だ。市場に散らばるターゲットとなり得そうな対象を、いくつかの切り口で「意味のあるカタマリ」にする。一番簡単なのが、「性別」で分類し、「男の人と一緒の場所でマッサージはイヤあぁ~」という女性をターゲットとしているのが「女性専用マッサージ店」だ。一方、マッサージというと、どこか前近代的だったり、アジア人がサービス提供をするというイメージを忌避する層に対して「洗練されたリラクゼーション」という価値を提供しているのが「英国式リフレクソロジー」である。その見方をすれば、前述の通り、精神的ストレスや眼精疲労などでひどい場合は頭痛まで引き起こしている人をターゲットにして、その緊張を解くことを「価値」としている。
 ちなみに、店の名前は「悟空のきもち」という。西遊記で三蔵法師によって頭に輪っか(緊箍児・きんこじ)をはめられた孫悟空。その戒めから解かれた時の気持ちになれるという意味のようだ。

 より広い市場を相手にし、ターゲットを広く取れば顧客も増えるということは、もはや幻想にすぎない。自社でターゲットを設定することと、実際に顧客化できることの間には大きな開きがあるのである。確実に顧客化できる市場に集中する。セグメントを狙うことが生き残りの秘訣なのである。

 

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2012.01.05

サービスの価格と価値を再考する

 本日からBlogを再開します。
 昨年後半から業務多忙で更新頻度が落ちていましたが、今年は週3回の更新をめどに、息の長いBlogとなるよう頑張ります。

 ちょっとイメージが伝わりにくいかもしれないが、「特殊技能を持った無名のスタッフが提供する、原材料比率が低いサービス業」という業種の大きな括りを定義してみる。具体的にいえば、理美容、ネイルアート、マッサージ、スポーツトレーナー等々だ。何らかのサービス提供の場(ハコ)は必要で一定の固定費は発生するが、サービスに要する原材料の費用は総じてゼロか低い。
 では、それらの価格の相場はいくらかといえば、概ね「10分1000円」だ。最もわかりやすい例でいえば、低価格理髪チェーンとして有名な「QBハウス」。カットのみ。洗髪、ヒゲ剃り、セットなしで10分1000円。だが、同チェーンが理容業界で価格破壊を起こしているかといえば、実はそうではない。フルサービスの旧来の理髪店もサービス提供時間が40分程度で価格は4000円程度のはずだ。つまり、10分1000円。美容室もカットで60分6000円。パーマで90分9000円。10分1000円換算になるだろう。
 理美容だけではない。ネイルアートもツメの形を整え、甘皮処理をし、表面を磨くという最も基本のコースだと40分4000円。マッサージは大手チェーン「てもみん」の価格がスタンダードとなってか、30分なら3000円、60分なら6000円と各コースの10分単価は1000円が程度だ。マンツーマンのスポーツトレーナーは60分6000円が多い。

 標準的な内容に対して業界相場でサービス提供をすることを、「中価値戦略」という。もっと高い価格を設定したい場合には、何らかの価値を上げ、「プレミアム戦略」を取る必要がある。美容業界なら、いわゆる「カリスマ美容師」的な人が担当するなら、10分1000円の相場を上回るプレミアム価格となる。
一方、業界の相場価格である「中価値」を下回る価格で、サービスの質も下げて提供することを「エコノミー戦略」という。しかし、比較的割安な価格で業界相場が「中価値」に集中している場合、その戦略は顧客が魅力を感じないため成立しがたい。

 では、エコノミー戦略→中価値戦略→プレミアム戦略と、価格と価値が正比例した関係、「バリューライン」から飛び出るにはどうしたらいいのか。最もやりやすいのが、価値はそのままで、価格を下げて「グッドバリュー戦略」に転換することだ。価格を下げる余地は固定費を圧縮することである。イメージとしては個人経営の理美容店。自宅の1階をサロンとしている場合など、元々が自社物件であるため、価格の固定比の組み込みを下げればサービス提供価格を引き下げられる。実際にQBハウスの近隣にある個人経営理容室は「カット・シャンプー・セットで1500円」などというサービスを提供している店も多い。かかる時間は15分を超えているが、固定比率の引き下げによって店としての損益分岐点を下げているため成立している。

 その他の業界の今後を占ってみると、ネイル業界であれば、現在のところマニキュアのように家庭ではできない「ジェルネイル」や、さらにそれに絵柄を加える場合なども相場を上回る価格設定ができている。しかし、そろそろ過当競争が始まっているため、プレミアムなサービスをそのまま価格を下げて提供する「高価値戦略」への転換が求められるだろう。となると、元々原材料比率が低い業界のため、固定比率をどう下げるかが課題となってくる。
 マッサージ業界はプレミアム要素を提供しているプレイヤーがあまり見当たらないので、近く過当競争に突入すると考えられ、「グッドバリュー」に集約されそうだ。マンツーマンのスポーツトレーナーは市場自体まだ大きくないため、黙っていてもプレミアム価格が受け入れられている場合も少なくないが、今後は「独自のメソッドを提供する」など何らかの価値向上が求められる。それによって「高価値戦略」で差別化・生き残りを探ることとなるだろう。

 転じて、企業に勤めるビジネスパーソンの場合はどうか。
 今年、経済環境は一層厳しさを増すことを暗示する事象が正月からいくつも伝えられている。中価値戦略で禄を食むことは続けられない。黙っていれば、企業は固定比率引き下げにかかってくるだろう。だからといって、黙って給与下げに甘んじるわけには行かない。
 だとすれば、同じ給与を保つために付加価値を高めて「高価値戦略」を展開するか、もっとスーパーな存在になって、給与上げも狙う「プレミアム戦略」を展開するしかない。

 どんな業種も、個人も、「相場」に安住することが許される時代ではなくなっているのである。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2011.12.24

【連載リンク】金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第9回:旭化成「ヘーベルハウス」

 今回は住宅です。旭化成の「ヘーベルハウス」。
 実は、金森の実家もヘーベルファミリーだったりします。

 鉄骨と軽量気泡コンクリートパネル「ヘーベル」を建材に使用し、耐震性、耐火性に優れ、60年先まで快適に住み続けられる「ロングライフ住宅」を提供する「ヘーベルハウス」。1972年の創業以来、ライフスタイルの新風をいち早くとらえ、「二世帯住宅」という言葉を生み出すなど、画期的な間取りの提案を続けてきました。マーケティング本部 営業推進部課長の中村干城氏に聞きました。


<金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第9回:旭化成「ヘーベルハウス」>

 ○記事はこちらから!→ http://adv.asahi.com/modules/long_seller/index.php/asahikasei_0.html

| | Comments (0) | TrackBack (1)

2011.12.16

サンシャイン水族館・リニューアル大成功のヒミツ

 報道によれば、複合ビルのサンシャインシティ(東京・豊島)が運営する「サンシャイン水族館」が、リニューアルオープンした8月からの4ヶ月で100万人の入場者数を達成したという。その人気のヒミツはなんだろうか。

 サンシャイン水族館は1978年に「サンシャイン国際水族館」として開業したが、設備の老朽化対応と魅力度向上のため、2010年9月から1年間の休業期間を設け30億円の費用をかけて全面改装したという。

 リニューアル後の人気のヒミツは同館の館長の言葉に隠されている。「生き物に注目してもらう展示の工夫が誘因となっている」(日経MJより)とある。

 水族館の中核的価値とはなんだろうか。普通に考えれば、「魚や海洋生物が見られること」だ。それを実現する実体価値が「館内設備」であり、中核の実現には直接関わらないが全体として魅力を高める要素としての付随機能が、「館内のアメニティー施設」などであろう。

 動物園のリニューアル成功例として有名な旭山動物園(北海道旭川市)。動物の姿形を見せることに主眼を置いた従来の展示方法に対して、同園では1997年度から、動物本来の生態や能力を引き出して見せる「行動展示」に取り組んでいる。水中を空飛ぶように泳ぐペンギンを見渡せる水中トンネルや、ホッキョクグマと“獲物”の視点で対面できる透明カプセルなど、動物の自然な姿を間近で観察できる施設を次々と導入し、改良を重ねてきた。

 動物を見るなら、来場者は狭苦しい檻の中に閉じこめられ、生気を失った動物、ストレスフルに意味もなくひたすらウロウロする姿。そんなものは見たくない。また、魚類なら生きて泳ぐ姿も家庭・事業所用アクアリウムの普及で見慣れてきた。水族館にとっては強力な代替品の脅威である。
 サンシャイン水族館のリニューアル成功は、旭山動物園同様、中核価値を「動物を見せる」→「生態を見せる」に変えたことだ。それも、より生き生きと。

 成熟商品は付随機能の開発ばかりに走りがちだが、それでは「大ヒット」は生まれない。ターゲットのニーズに直結した中核価値を根本から見直すことが欠かせないのである。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2011.12.02

映画館の運営をどうすべきか?

 映画館のスクリーン数が減っているという。(11月29日付日本経済新聞)スクリーン数はシネコンの台頭により増加を続けていたが、18年ぶりに減少に転じたという。原因は、スクリーン数5未満の一般の映画館の閉館が進む一方、シネコンの出店好立地がなくなってきたためだという。

 では、映画館というビジネスのどこに問題があるのだろうか。4P的に考えてみよう。
・ Product:メガヒット作はないものの邦画人気も高まり大きな問題とは考えられない
・Place:記事にあるように旧来の映画館の淘汰は顧客利便性の観点から考えて致し方ない。しかし、シネコンは映画の流通チャネルとして理想的だ。好立地が減ってるいという問題は否めないかもしれないが、集客という意味においてシネコンは映画館ビジネスの問題を劇的に改善させた。
・ Promotion:テレビやOOH(屋外広告)連動など、プロモーション手法は高度化し集客に貢献していると思われる。
 となると、残りひとつのP、Priceの問題が考えられる。しかし、一般1,800円。割引によっては1,000円。この価格妥当性を論じるよりも、映画館としての「売り上げ」や「利益」を考えた方が問題は見えてくるように思う。

 問題の根本はスクリーン数を増やし続けるだけでなく、「稼働率」を向上させることにあるはずだ。新作の封切り直後や土曜日曜など以外の映画館のシートは、恐ろしいほど空席が目立つ。航空会社にたとえるなら、こんな状態で飛行機を飛ばしたら赤字間違いなしである。稼働率向上によって、映画館というハコの売り上げ・利益を改善することが先決だろう。

 「売上=客数×客単価×リピート率」なので、客単価が割引はあっても上限1,800円に固定化されているため、客数を増やすしかない。しかし、上映時間が決まっている以上、一日の客数にも上限がある。とすれば、上映一回あたりの空席率をいかに低減するかがキモとなるはずだ。
 発想としては、飛行機と同じ。早割同様に前売りで割引が実施されているが、そこをもっと精緻にやっていく余地はあるだろう。LCC(低価格航空会社)は早いほど席は安く、直前ほど高くなるという細かな料金設定をしている。大雑把な料金や割引制度を見直しすぐにでも検討した方がいい。

さらに考えを進めると、そもそも、企業が顧客から収益を上げられるポイントは限られている。そこを確実に押さえるのだ。何らかのきっかけ(ライフステージ)で取引が発生したら、
1.アップセリング(買増・買換)
  映画なら、すぐに前売り券を買わせる程度だけしかやっていないのが現状だ。それも予告編との連動が弱い。前述の「早割」と併わせて早期に買わせる。確実に次のチケットを買わせる工夫が必要。現状の“置いてあるだけ”は論外である。
2.クロスセリング(関連商品の販売)
  映画関連グッズ販売は、アニメや特撮ヒーローものぐらいしか力を入れてやっていないのではないか。メーカーはお金を払ってまでプロダクトプレイスメント(劇中商品PR)をやりたがっているのだから、「劇中で使っていた商品の即売」など、もっと積極的な関連商品の販売(お取り寄せでもいい)で収益を上げるべきではないか。ディズニーリゾートの収益は物販で上がっているという事実から学べるだろう。
3.アフターマーケティング(囲い込み)
  現在行われているのはポイントの付与ぐらい。ポイントと併せて複数回分の鑑賞券を事前購入させるSuica的前払いカードの導入も検討してもいいだろう。

 筆者は映画が好きだ。あるシネコン隣接の分譲マンションが「ずっと映画館に住みたいと思っていた」というキャッチコピーで、なんとジャン・レノ(←現在ドラえもん)を起用した広告を展開したとき、激しく同意したものだった。しかし、日経の記事には(昨今の映画の興行成績好況は)「シネコン増加にともなうスクリーン数の増加に支えられてきた麺も無視できない。スクリーン数の減少が続けば興行収入も大きな伸びが期待できなくなりそうだ」とある。中・長期的にはまた、映画産業の衰退につながってしまう。それでは困る。規模の増大が見込めないのであれば、単館あたりの売上・利益の向上を図るしかないのだ。根本からの検討を望んで止まない。

| | Comments (12) | TrackBack (0)

2011.11.29

チャレンジャーはリーダーにどう戦いを仕掛けるべきか?

 後発だったり、圧倒的に彼我の力に差があったりするとき、戦いはどのように展開されるべきなのだろうか。2つの事例から考えていこう。

 11月25日付日経MJに紹介された、資生堂「スーパーマイルドシャンプー」のアプローチが面白い。狙っているポジションは「親子で使う家族のシャンプー」だ。しかし、「家族のシャンプー」というポジションには強力な先行ブランドがある。花王「メリットシャンプー」である。
 メリットシャンプーが登場したのは1970年のこと。コマーシャルは女優の田中裕子が若い女性に向けてアピールしていた。しかし、それから四半世紀以上が経った今日、若い女性向けシャンプーは最新の成分を配合し、華やかな広告で訴求する新しい商品が目白押しだ。故に、その後は歴代有名タレント夫婦をCMキャラクターに起用し、「家族全員が健やかな髪と地肌で過ごせる」ということを訴えて、「家族のシャンプー」というポジションを確固たるものにしている。
 メリットシャンプーにチャレンジャーとして戦いを挑んだのがスーパーマイルドシャンプーだ。同紙には「父と子の入浴を応援 資生堂“スーパーマイルド”で “風呂場遊び”カード配布」とタイトルにある。<育児期の父親と子どもの楽しい入浴を応援する「パパフロ」キャンペーン>を始めたとある。そのキャンペーンもなかなか大がかりだ。入浴中の遊びを提案する12種のカードを店頭で配布し、ワークショップも開催。普段から父子入浴を実践している芸能人を「パパフロ大使」として任命するという。
 ポジションを確固たるものにしているリーダー商品がある場合、真正面から戦いを挑んでは消耗戦になり得策ではない。そこで、スーパーマイルドはターゲットを絞ったのだ。狙いは「育メン(育児に積極的に関与する夫)」だ。チャレンジャーは真っ向勝負をかけるのではなく、特定セグメントから切り取っていくのが定石。まさにその原則通りの戦いがこれから展開されようとしているのだ。

 一方、「ダウンジャケットといえば・・・」という問いを発すれば、多くの人が「ユニクロ」と答えるだろう。ユニクロのウルトラライトダウンは、今年も数百万枚レベルの販売目標数を発表している。押しも押されもせぬリーダーのポジションを確固たるものにしているのである。
 そこに「アミアン・カンパニー」という企業が切り込んだ。11月28日付日経MJで紹介された商品は「フローラルフレグランスのダウンコート」。その名の通り、ほんのりとした芳香を楽しめる女性用コートである。ヒミツは羽毛にある。独自技術でフッ素樹脂に香水を練り込んでおり内側に香気をためる。昨今、潜在や柔軟剤で衣類の香りにこだわる人も多い。価格は8,295円から。ユニクロのダウンよりも価格は高めながら、「芳香」という独自の付随機能価値でアピールするニッチャーの戦略だ。リーダーであるユニクロからの同質化が心配されるが、香りには好みがあるため、「万人向け」が基本のユニクロは恐らくスルーだ。そこにニッチャーたる独自の生存領域を見出しているのである。

 「チャレンジャーはリーダーの10倍頭を使え」が戦いの基本姿勢。そして、全面戦争を避け、勝てるところで勝つ。独自の生存領域を確保するのである。もはや日本市場は成熟し、人口縮小という衰退期に向かっている。黙って新規顧客を獲得できる環境にはない。他からむしり取らねばならないのだ。そんな時、対リーダー戦略はどんな企業・ブランドにも課題となってくる。今回の事例のその後をウオッチし、自社の参考にすることをオススメしたい。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2011.11.25

若者を狙う「青山商事」の課題は何だ?

 あなたがもし、担当商品の「売り上げを倍増させよ」と命じられたら、どうするだろうか?商品に新たな特徴を加える。価格を改定する。販路を拡大する。広告を増やす・・・。それらは全て4P(Product・Price・Place・Promotion)の一要素だ。それらを1つ、2つ思いつきでいじっても効果は出ない。

 11月23日付日経MJのコラム「早耳遠耳」に青山商事社長のコメントが掲載された。
 タイトルは「少子化でも若年層は魅力」。コメント内容によれば<「(若い世代向けの商品は)稼げる所だし、稼いでいかないといけない」>と、顧客生涯価値の高さという魅力を獲得すべく市場のパイは縮小するも重点ターゲットとする構えだ。

 マクロ的に見れば、あまり時間はない。来年、2012年問題がやってくる。団塊の世代の大量定年による社内ナレッジの確保が問題になった2007年問題。多くの企業の解決策は根本的なものではなく、「5年間の定年延長。嘱託職員としての5年間再雇用」など、問題の先送りだった。そのいわば「社内職人からの借り物の時間」を返すべき時が来年やってくるのだ。完全リタイヤ。もうスーツは着ないだろう。ついでに日経新聞も読まなくなる。否が応でも若年層にフォーカスせざるを得ない。それが、社長コメントの底流にあるのである。

 記事によれば、若年層ターゲットへの手は打っている。<今秋冬に「次世代スーツ」と称して、若年層を主要ターゲットとして伸縮性に富んだスーツの販売を強化する>という。
 ・Product:流行りの細身のスーツを、伸縮性に富んだ素材やカットで動きやすさも確保した「次世代スーツ」を開発。
 ・Price:49,800円だが、クーポン使用で実質定価は24,800円。十分手が届く。
 ・Place:青山の店舗は郊外ロードサイド型から都市部中心に移行してきている。車に乗らない若者対応の意味合いも大きいだろう。
 ・Promotion:CMのキャラクターは溝端 淳平や佐々木 希などフレッシュな面々をそろえた。メディアも従来のテレビに限らず、ウェブ限定のドラマを放映するなどの取り組みも始めている。

・・・さて、これで販売は万全だろうか。4Pを考えるにはまず、「相互の整合性」が欠かせない。どれか単独の一要素が優れているのではなく、「マーケティングミックス」というように、相互作用でターゲットに魅力が伝わるかが問題だ。
 訴求のポイントは、「高品質・高機能」「手軽な価格」だといえる。 

 「高品質・高機能」「手軽な価格」がポジショニングだとすれば、どこかで見たポジショニング軸だ。そう、「ユニクロ」。「デザインはともかく、品質ではもはや勝てない」と大手アパレルの幹部が漏らすその品質と管理手法。販売予測を徹底し、極限までアイテムを絞り込み大量発注し、低価格を実現するというリスクの取り方。それらがユニクロの力の源泉だ。極端なハナシ、洋服をトータルな「ファッション」として提供するのではなく、個々の「パーツ」として提供している。では、青山は「ビジネスとしての道具」を提供する、スーツのユニクロになるのだろうか。

 そうなると少々悩ましいのが、別業態として展開している、2プライス(19,800円、29,800円)店の「ザ・スーツ・カンパニー」だ。2プライス店は手ごろな価格でちょっと凝ったデザイン、豊富なサイズ展開が消費者の支持を得て競合各社も続々と参入してくるほど活況を呈し、都市部の路面店、ショッピングセンターなどのそこかしこで見かけるようになった。特に青山の「ザ・スーツ・カンパニー」の縫製は中国だが、ディテールのこだわりなどなかなかのものなのだ。ここのスーツは「ビジネスの道具」ではなく、「ちょっとしたオシャレの演出」がポジションとなるだろう。このブランドと統合するのか、あくまで別路線で行くのか。

 スーツをスーツ然として着るシーンが、ビジネスウェアのカジュアル化にともなって減ってきている。「いいモノを安く」的なポジションでは生き残っていけないのは必定。だとすれば、両者の関係にも一度メスを入れねばならないはずだ。そのためにも、「顧客のニーズをよく見る」という原理原則から再度検討すべきなのだろう。

 
                                                              

| | Comments (1) | TrackBack (0)

より以前の記事一覧