ニューノーマル時代のスタンダード?「パジャマスーツ」
コロナの感染者数は落ち着きを見せてきているが、延長された非常事態宣言下であり、ワクチンの準備の進んでいない中、まだまだ安心できない。そんな中、多くの企業で実施されているのがリモートワークである。企業における導入率の推移は<(2020年)3月:24.0% 4月:62.7% 12月:51.4% (2021年)1月前半:57.1% 1月後半:63.5%>と確実に高まってきている。
(2021年02月05日発表・東京都新型コロナウイルス感染症対策本部・報道資料)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2021/02/05/27.html
リモートワークは、うまくやれば無駄な時間が削減できて、仕事の効率も上がる。だが、一つ悩ましいのが、ZOOMなどを使ったオンラインミーティングではないだろうか。何が悩ましいって、そのミーティングの時の「服装」だ。
筆者はマーケティングコンサルタントとマーケティング研修講師を生業としているが、クライアントとのミーティングも、研修の講義も9割方がオンラインになっている。当然、コンサルティングでのプレゼンテーション・報告会や、講師として研修の講義を行う時などは、ネクタイ、ジャケット着用である。しかし、何度も顔を合わせている担当者とのミーティングなどは、タートルネックセーターなど、カジュアルなスタイルで失礼させていただいていることが多い。相手の担当者も在宅ワークでわざわざカッチリしたスーツに着替たりぜずに、カジュアルな服装なことが多いからだ。ただ、時々、担当者がオフィスに出社して会議室からアクセスしてきたり、そういうときに限って予告なしに上司の方も同席していたりして、揃ってカッチリしたスタイルだったりすると、かなり気まずい。
筆者のように、対クライアントであればかなり問題だが、同じ社内でもシフトを組んでオフィス出勤者を制限している企業も多く、相手のシフトまで覚えていないので、どんな服を着て画面に現れるかは、接続してみないとわからないなんてことも多いだろう。
自宅でのリモートワーク中は、負担のない楽な格好で過ごしたい。かといって、オンラインミーティングの度にわざわざ着替えるのは煩わしく、負荷がかかる。でも、カッチリした服装の相手と全く合わないような、不格好なことにはなりたくない・・・。
筆者は「ニーズは、ふ(不・負)の字に隠れている」と、ニーズを明らかにする方法をかねてから提唱してきたが、正に、「負担・負荷・不格好・・・」という「ふの字」=「ニーズ」が、多くのリモートワーカーには存在しているわけだ。つまり、「不格好にならずに、ある程度相手に対する印象が良く、かつ、着替えの負担・負荷なく楽に過ごしたい」というニーズである。
そんなニーズに応える、素晴らしい「ウォンツ(モノ)」が発売されている。その名も、「パジャマスーツ」。紳士服のAOKIの商品。2020年11月からの販売である。
日経MJ2月1日号によれば、<今春までに売り場面積の1割まで広げる>という力の入れようであり、販売実績も<計画比の2倍><海外からも多数販売の問い合わせが集中している>と、2月8日号の日経電子版で、AOKIホールディングス社長 青木章宏氏がインタビューに答えている。
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO6877120003022021000000?channel=DF060420172329&page=3
同社の商品紹介ページでは、<「パジャマ以上・おしゃれ着未満」をコンセプトに、パジャマの快適さとスーツのフォーマルさを兼ね備えたセットアップアイテム。新生活様式により、「自宅でくつろぎながら、仕事時にはきちんとしていたい」というニーズに応え、「あったらいいな」を具現化しました>というコピーがある。
https://www.aoki-style.com/feature/pajamasuit/?gclid=Cj0KCQiApY6BBhCsARIsAOI_GjZbRJOOUkVvm2MGuid_CKhqM09koLsX32ZlBzvon4MP5fm4I0Gv-2kaAqFBEALw_wcB
「パジャマ」と「スーツ」という、対極にあるモノを組み合わせたネーミングだが、「できれば、寝起きのままのパジャマ姿で楽に仕事がしたい!だが、さすがにそれはできないけど、スーツに着替えるような負担はイヤだ!」という、顧客の心の声、ニーズを代弁しいて素晴らしい。創業者の青木拡憲会長が名付け親だというが、さすがである。
商品仕様としては、<ハリ感のあるニットやジャージー生地を使う。色は黒や紺などを用意し、着心地ときっちりした見た目を両立させた>とのことで、<税抜き価格はジャケットとパンツいずれも女性用が4900円、男性用が4990円>と、気軽き変える価格で提供されている点もポイントだ。(日経MJ2月1日号)。同社の生産、及びプライシングのノウハウが結実している。
コロナ禍は、様々なビジネスに打撃を与えている。しかし、その中でも、顧客のニーズに真摯に耳を傾ければ、新たなチャンスも見えてくる。コロナが収束した後にも、今の生活様式が「ニューノーマル」になると言われている。ニューノーマルの時代の新たなニーズ発掘は、多くの企業の課題である。
今回の「パジャマスーツ」は、主にリモートワーカー向けであるが、実はシニアの方にも是非ともお勧めしたい。2月10日に、JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study,日本老年学的評価研究)のプレス発表があった(ZOOMによるオンライン)。その研究発表の1つに、「(65歳以上の主にリタイヤ層において)オンラインでの交流をしている人はうつ発症リスクが 3 割少ない」というものがあった。中高年のオンライン交流はFacebookでの文字と写真がメインかもしれない。しかし、オンラインミーティングツール、ZOOMの利用はビジネスだけでなく、「ZOOM飲み」などにも代表されるように、プライベートでの利用もどんどん広がっている。
そんなとき、どんな格好で、画面越しの相手に会うのだろうか。
格好を気にしなくなると、人間、かなりヤバい。
「楽だけど、パリッとして見える・パジャマスーツ」は、いかがだろうか?
(初出・一般社団法人日本元気シニア総研 メールマガジン2月)
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