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2019.04.03

共感形成ブランド“COHINA”が急成長しているワケ

 女性向けアパレルのブランド“COHINA(コヒナ)”が急成長していると、日経MJで3月29日号・4月1日号と連続で報じられていた。2018年に立ち上がったブランドで、記事によれば、月商は数千万円となり、なお毎月20~30%の成長を遂げているというから素晴らしい勢いだ。同ブランドは「身長155㎝以下の小柄女性に特化している。マイケル・ポーターの「戦略の3分類」でいえば、集中戦略(差別化集中戦略)が当たったと言えるが、それだけではない。その人気の秘密を記事から紐解いてみる。

 COHINAは身長150㎝前後で、自分自身も服選びに悩んでいたという2人の女性が立ち上げたという。小柄女性向けブランドがあるカタログ通販や百貨店の商品は<「デザインが40代以上向けだったり、価格が高かったりする。20~30代書生が無理なくオシャレを楽しめるブランドは需要があると考えた」(日経MJ3月29日号)>と、同社代表が語る。商品企画は自社で行い、生産は複数のOEMメーカーに委託しているという製品の価格は、<「プチプラよりも良いものを、百貨店ほど高くない価格で提供することを意識している」(同)>と代表が語っている。価格と価値を2軸とした時、価格が低ければ価値は低く、価格が高ければ価値は高くなるという関係になる。正比例し「バリューライン」を超えたところに勝てるポジションがある。<コヒナの価格帯はパンツが約9000円で、トップスが約7000円、アウターも1万円台だ(同)>というから、プチプラ並みの価格で、百貨店並の価値を目指そうとしている。つまりバリューラインを大きく超えた、「スーパーバリュー」のポジションを取りに行っているのだ。
 自社で企画を行っているというCOHINAの製品の「価値」は、「品質」だけではない。そこが同ブランドの最大の強みだろう。同ブランドの共同代表の2人が毎日、インスタでライブ配信をしている。<開発中のサンプル商品も紹介。「丈はもう少し短くして欲しい」「赤色が欲しい」などの声を踏まえて商品を改良する。顧客も参加し一緒にブランドを作り上げていくという、一種の「コミュニティ」を形成している(日経MJ4月1日号)>という。フィリップ・コトラーが「マーケティング3.0」で述べた、コトラーの言う「新時代のテクノロジー」であるSNSを活用して、「企業と顧客が協働する」という、まさにマーケティング3.0の姿が実現されているのである。

 COHINAのブランドとしての成立のしかたも非常に良い形になっている。ブランドマネジメント論の大家であるケビン・ケラーは著書「戦略的ブランド・マネジメント」の中で、ブランドの構成要素として、「理性的側面」と「感情的側面」を挙げた。前者は、製品の「性能・昨日」や製品品質などの「客観的評価」をいう。後者は、製品に対する「イメージ」や使用者に与える「情緒的要素」を指す。つまり、「ブランド」というものは、「機能的価値」と「情緒的価値」を車軸の両輪として成り立つというものである。その上で、ブランドは顧客からの愛着や好意、積極的な関与の上に成り立つ「共感(resonance)」によって完成されるというものである。
COHINAの「スーパーバリュー」を取りに行っている価格ポジションや、インスタのライブ配信で、身長別のモデルに試着をさせるというわかりやすさは、「理性的側面」への訴求として効いている。もう一方の「感情的側面」としては、共同代表の2人が自身の体験からスタートしたブランドストーリーは、同じ悩みを抱える顧客の共感を誘う。サンプル品をライブ配信で意見を吸い上げて完成させていくという「協働」も共感に至るしくみとして機能している。

 COHINAが上記のようなマーケティング論で考えると非常に合理的なアプローチを、どこまで「狙って」やっているのかはわからないが、急成長を維持しているという背景には、うまくいくだけの理由が整っていることは間違いない。今後の同ブランドの成長に注目してみたい。

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