« 「パーソナルスタイリング」が目指すものは何か? | Main | 400億円市場の「漫画アプリ」と「AARRRモデル」 »

2019.01.07

「アネロのリュック」が大ヒットした理由は…?

「リュック」という定番アイテム、成熟市場において<累計870万個を売り上げる大人気商品(日経MJ12月21日号)>になっている商品がある。「アネロ」のリュック( http://www.anello.jp/products/ )だ。そのヒットした背景を考えてみよう。

 870万個という数がどれくらい大きいのか実感がつかみにくいかもしれないが、街行く人の背中のリュックを注意して見れば、その上部中央に「anello」という小さなロゴをかなりの確率で発見できるだろう。それぐらいアネロのリュックは普及している。大ヒットのきっかけになったのは、2005年から発売している同ブランドのリュックを、2014年に<モノを出し入れする開口部をがま口タイプにした「口金リュック」を投入した(同)>ことだという。
 そもそも人はなぜ、リュックを用いるのか。背中に背負うことで、荷物の運搬の負荷を軽減できということが根源的なニーズだろう。「ふの字」のあるところにニーズはある。この場合、「負荷」の「負の字」だ。しかし、この「ふの字の解消」は、リュックであれば全て可能だ。荷物を運ぶためには、それを出し入れする。しかし、多くの場合縦長のリュックの上に設けられた開口部から荷物を出し入れするのは、出し入れしにくく、中に入っている物が探しにくい。「不便」の「不の字」が存在する。これは差別化要因になり得るが、開口部を大きく取ってこの「ふの字の解消」をしている製品も多い。
 そんな中で、アネロのリュックが差別化要因となっているのは、「“極端に”荷物の出し入れがしやすい・中が探しやすい」ということだ。「口金タイプ」は、開口部が大きいというレベルではなく、リュックの上部がガバッと全面開口する。この開けっぴろげ感は、他の商品と一線を画すると言っていい。つまり、「ふの字」に対してアネロのリュックは、「徹底して解消」しているのだ。
アネロのリュックは<当初は20代などの若者をターゲットしていたが、「口コミやSNSで小さい子どもを育てる母親世代に広がった」(同)>という。その世代が最も強く「ふの字」を抱えていたのである。<開口部が大きく中がよく見えるため、鞄の中で捜し物をしている間に子どもから目を離してしまう心配もない。さらに地面に置いても自立するため、荷物も多い小さい子を持つ親の心をつかんだ(同)>のである。「ふの字の解消」も、売り手の自己満足で終わっては何の意味もない。それを享受する顧客が確かにいることがヒットの絶対条件であるということだ。

 成熟市場で競合に対して明確な差別化要因を打ち出して大ヒットを飛ばすということはなかなかに難しい。「ふの字の解消」はあらかた行われていて、「新たなふの字」を探すことが困難だからだ。しかし、「ふの字の解消」を「徹底して行うこと」。そして、「それで幸せになる人が確実にいるということ」という重要な要件をアネロのリュックの事例は教えてくれている。

|

« 「パーソナルスタイリング」が目指すものは何か? | Main | 400億円市場の「漫画アプリ」と「AARRRモデル」 »