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2018.12.13

ワコールの事例で考える「ニーズから見た」競合環境の変化の捉え方

 日経MJ12月3日号のワコールホールディングス安原社長のインタビュー記事が興味深い。
 記者の<下着業界で「ユニクロ」が大手になるなど、事業環境の変化をどう捉えていますか。(記事より)>という質問に対して、<「最近の快適性を求める傾向がワイヤなしブラの人気につながっている。ユニクロさんは代表的な例で、もう少し快適性というニーズにちゃんと向かい合っていれば良かったな、という思いはある。(後略)」(記事より)>と述べている。

 「(ブラを作っている)下着業界のプレイヤー」で考えれば、ワコールの最大の競合はトリンプインターナショナルだ。また、ビクトリアズ・シークレットは通信販売がメインで業態が若干違うが女性の支持を集めているという意味で当然競合になる。しかし、ユニクロは当初、ブラを作っていなかったので業界内の競合と見なしていなかったわけだ。
 ユニクロを運営するファーストリテイリングがブラの製造販売に乗り出した原点は、タンクトップにカップを付けた「ブラトップ」である。同社はブラトップの付け心地にこだわり、毎年製品改良に大きな力を注いでいる。その結果派生的に、(付け心地のいいワイヤ無しの)ブラそのものも製造販売するようになったのである。それが、「楽に過ごしたい」という女性のニーズを捉えて大ヒットし、あれよあれよという間に下着業界のリーダー企業であるワコールを脅かすほどの大手競合となってしまったわけだ。
 ブラに対する女性のニーズには、「胸の形を美しく整えたい」というものもあるだろう。そのニーズを満たすウォンツ(モノ)としては、ワイヤ入りは欠かせないのだろう。ワコールとトリンプのブラを巡る戦いを見ると、寄せたり上げたりと、正に「胸の形を美しく整える」というニーズを満たすための製品作りでしのぎを削ってきたと言える。しかし、ワコールの安中社長のコメントにあるように、それ以上に「快適性≒楽に過ごしたい」というニーズが高まっていて、その変化を見逃したが故に、業界外のプレイヤーに成長機会を与えることになってしまったのである。

 ニーズは「現状と理想的な状態のギャップ」であると言える。つまり、「未充足な状態」がニーズの正体だ。故に、そこには必ず「ふ(不・負)の字」が隠れている。上記のブラの例で言えば、ワイヤ入りによる窮屈な「不満・不愉快」、着けていることの「負荷」という未充足な状態があり、「もっと楽に過ごしたい」というニーズが生まれたのだ。そして、その未充足な状態を解消するウォンツとして、ワイヤなしブラが人気を博したという構図である。
 「業界」という言葉は、「事業者(企業)の視点」である。故に、ともするとウォンツ先行になりがちだ。しかし、顧客のニーズを満たすモノは全て競合となり得るのだ。つまり、ワイヤ入りブラの代替品であったユニクロのブラトップという代替品が発達して、ワイヤなしブラのヒットにつながったのがその証左である。
 競合を捉えてその変化を正確に知ることは環境分析の必須要素だ。しかし、競合を定義するには市場における顧客のニーズに注目し、代替品にまで目を光らせることが欠かせないのである。

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