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2018.12.10

マーケティングの「基本のき」はニーズの明確化!「ふの字探し」を励行しよう!

 砂漠でダラダラと汗をかいて苦しそうにしている人の絵を見せ、「この人のニーズは何?」と聞くと、かなりの確率で「水」という答えが返ってくる。だが、「水」は「ウォンツ」。「ニーズ」は「喉の渇きを潤したい」である。
「ニーズ」という言葉は、マーケティングに携わっている者でなくても、今日、カタカナ言葉として当たり前に使われている。しかし、対になる「ウォンツ」という言葉は意外と流通しておらず、「ニーズ」と取り違えて使われている例が散見される。
 ではなぜ、ニーズとウォンツを峻別しなくてはならないのか?それは、ウォンツ(製品)から考えると、自社の製品ありきで顧客にモノを提示する、顧客のニーズを無視したいわゆる“Product out(製品志向)”になってしまうからだ。それでは売れない。マーケティングの原点、「基本のき」は、ニーズの明確化なのである。

 2018年12月3日の日経MJに興味深い記事が掲載されていた。3輪エアチューブタイヤのベビーカー「エアバギー」を扱うGMPインターナショナルの取り組みだ。今日、こだわりの高品質ベビーカーの種類も多くなってきたが、ベビーカーの使用期間はせいぜい2~3年と短い。また、市場環境は少子化と縮小が免れない。同社の<飯田美恵子社長がたまたま愛犬をエアバギーに乗せて散歩に出かけたところ、思いのほか快適だったことに気づく。ペットが乗せられるユニットを取り付ければ長く使ってもらえるのでは、と考え、ペット用ユニットを付けて販売した。(記事より)>という。さらに、また、チャイルドシートをベビーカーに取り付けられる機能も搭載したという。
 ニーズは「ふ(不・負)の字に隠れている」。つまり、ニーズを明らかにしたければ、「ふの字探し」をすればいいのだ。
 「エアバギー」の製品特性は、「軽く押せる」ということ。つまり、ベビーカーを押すときの「負担」という「負の字」を軽減し、「もっと楽に使いたい」というニーズを充足しているのだ。高齢者用の補講補助器として利用できるよう、ブレーキとショッピングバスケットを付ける機能も搭載したモデルも発売したというが、高齢者という属性のターゲットが同様に持っている「もっと楽に使いたい」というニーズを実現したウォンツを提供したことになる。
 一方、ベビーカーには、赤ちゃんという「自分の大切な存在を運ぶ」という特性がある。つまり、運搬中の「不安」という「不の字」を払拭する価値が求められているわけだ。そこに注目すれば、安全性の高いチャイルドシートをそのまま使用するという展開もアリだと考えることはできるだろう。また、少子化の今日、我が子同様に大事にされている存在を考えれば、ペット用という展開も発想できるのだ。

 GMPインターナショナルのエアバギーは<「4通りの使い方を提案することで、ベビー用品店以外にもペット洋品店やカーディーラーでもエアバギーを取り扱ってくれるようになりました。おかげで顧客層は一気に広がりました」。(記事より)>と同社広報担当者のコメントが掲載されている。また、結果として<4通りの使い方で商品寿命が延びただけでなく、販売力も飛躍的にアップ。今では年間3万台を出荷する(記事より)>という。

 消費が高度化した今日、顕在的なニーズはほとんど刈り尽くされたと言われている。しかし、「ふの字」に注目してみれば、もっと多くのビジネスチャンスは見つかるだろう。
 

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