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2018.12.17

「悩めるセグメント」のニーズに応える「タテオキクチ」のオーダースーツ

 ネット通販のZOZOTOWNも参入し、「オーダースーツ」は非常にホットな、言い方を変えれば激しい戦いを繰り広げる「レッドオーシャン」に突入しつつある。そんな業界内で生き残るための条件は何だろうか?

 アパレル大手のワールドが新たなブランドで業界参入をした。「アンビルト タテオキクチ」という。日経MJ12月17日号の記事によれば、オーダースーツの他、ジャケットとパンツの組み合わせであるセットアップとそれに合わせるスニーカーやリュックも提案してくれるという。また、<オーダー利用者を対象に、半年間、段ボール1箱分の衣料品の保管を1680円から受け付ける。2019年春をメドにネクタイのレンタルをはじめるのを皮切りに、レンタルサービスも拡大する予定(記事より)>というから、至れり尽くせりではないか。

 オーダースーツに対するニーズとは何か?「自分にピッタリの服を着たい」と答える人は多いだろうが、「自分にピッタリの服」は、ニーズを満たすための「ウォンツ(モノ)」である。ニーズは(自分にピッタリの服で)「きちんとした人と言われたい!」「デキル男に見られたい!」「モテたい!」…などではなかろうか。そうすると、ターゲットは「オシャレな人」ということになる。確かに自分だけの一着を仕立てるというのは、本来贅沢であり洒落者の粋を満たすモノだ。だがそれは「顕在ニーズ」である。「アンビルト タテオキクチ」は、もっと潜在的な未充足ニーズを狙っているのだ。

 ターゲット候補である「セグメント」は、性別・年齢・職業・所得…等々の「属性」で分類するのではない。「ニーズで括る」のが原則だ。前掲の「きちんとした人と言われたい!」「デキル男に見られたい!」「モテたい!」…などのニーズに注目すれば、前述の通り、「洒落者」が1つのわかりやすいセグメントとして浮かび上がってくる。しかし、スーツや服を巡るニーズは洒落者のそれだけではない、逆に、もっと切実なものがある。<職場でカジュアル化が進むが「毎日コーディネートを考えることが面倒」「何を着ていいか分からない」といった声に応えるのが同店の狙いだ(記事より)>という。つまり、着るモノが分からない=「不明」、人からダサいと言われる=「不安」、毎日のコーディネートを考える面倒さ=「負荷」…ニーズは「ふ(不・負)の字」に隠れているのだ。そして、同店のターゲットは、そんな「ふの字」を抱えた「悩める、非・洒落者層」である。対応するニーズとターゲットがはっきりしているため、魅力の打ち出し方=ポジショニングも非常に明確になっている。<ビジネス服の悩み解決を一手に引き受ける店(記事より)>である。

 モノが満ちあふれ、ほとんど市場のニーズは刈り尽くされてしまっていると言われているが、まだまだ、発掘されていない「ふ(不・負)の字」は存在していると言えるだろう。

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