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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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November 2015の4件の記事

2015.11.28

【連載第14回】花王・アジエンスに見る「お試し」施策の可能性

グロービスのサイト「知見録」の連載、「知りたい!ヒットの舞台裏」の新作が公開されました。


花王のアジエンスが「お試し」に注力したコミュニケーション戦略を行っています。その理由は「従来のマス広告のアプローチが効かなくなってきているから」。
となると、AIDMAをはじめとした、いわゆる消費者の「態度変容モデル」はどう考えればいいのでしょうか。
AMTUL、AISAS、SIPSなどでも検証してみました。


これからのコミュニケーション戦略の在り方とは・・・?


■花王・アジエンスに見る「お試し」施策の可能性  →  記事はこちらをクリック! http://globis.jp/mba/4615/

2015.11.21

飽和市場におけるこれからの差別化マーケティング

今夏、イズミヤグループの社内報「季刊イズミヤ総研」に寄稿した原稿を全文公開します。

イズミヤ株式会社は、2014年6月1日付で阪急百貨店や阪神百貨店のグループ統括会社・エイチ・ツー・オー リテイリングと経営統合したことでも話題になった、近畿地方を中心に、関東・中国・九州地方にスーパーマーケットチェーンを展開する日本の大手小売業者です。

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 「モノが売れなくなった」と言われて久しい今日。景気は多少上向いたとも言われているが、本格的に生活者が消費マインドを回復するまでには至っていないように見える。いや、むしろ、「買わないこと」が当たり前な風潮が、日本という成熟市場のスタンダードとなりつつあるのかもしれない。そんな市場の中で、いかにして生き残るべきなのかを本稿で考えていきたい。

■マーケティング環境の変化と今日の実態

 筆者がセミナーなどでオーディエンスに「最近、思い切って何かを買うという消費行動をした方はいますか?」と聞くと、パラパラと手が挙がる。何を買ったか聞いてみると、「iPhone6を買いました」とか、スマホを初めとしてデジタルモノは多く聞かれる。だが、スマホはもはや必需品だ。他には英会話やビジネススクールの学費を払いましたなどという極めて堅実な消費が聞かれる。そして、多くの人の手は挙がらない。
 戦後日本の消費の原点を考えてみると、そこは高度成長期にあるだろう。1955年(昭和30年)~1979年(昭和54年)。三種の神器=白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫、新三種の神器(3C)=カラーテレビ・クーラー・マイカーが家庭内に次々と入ってきて、人々は「世間並みの幸せ」を味わった。モノを作れば売れた大量生産・大量消費時代。企業にとってのKSF(Key Success Factor=成功のカギ)は、いかに大量に作って店頭に大量に並べるかであった。

 そうした消費文化はバブル経済の時代・1986年(昭和61年)~1991年(平成3年)に頂点を迎えたと言えるだろう。海外旅行・スキー・ディスコブーム、DC ブランド・ボディコンファッション、高級車(日産シーマ・BMW)などの流行が懐かしい。企業にとってのKSFは、いかにトレンドを作り出し、消費者を乗せて踊らせるかであった。
 しかし、いい時代は長くは続かない。1991年(平成3年)にバブルが崩壊し、1993年(平成5年)から失われた20年に突入した。その後も2008年9月15日にはリーマンショックが発生した。景気が後退し、経済が浮上しない時代が長く続き、企業の経費引き締め・消費者は生活防衛に走った。
インターネットの普及も消費者と企業との関係を大きく変えた。「情報の非対称性の崩壊」ともいわれるが、消費者は情報格差のハンデがなくなり、ガラス張りになった。

 企業の思い通りに消費者は購買行動をしなくなった。無理に背伸びをしたり無駄モノを買ったりしない。企業や流行に踊らされない。そんな消費者像を「買わない自由を手に入れた賢い消費者」ともいう。
だが、「賢い消費者」も生活必需品ぐらいは買う。その選択基準を聞いてみると、「どれでもいいじゃん、みんな同じだし。ぶっちゃけ安いのかな。こだわりないし」。というような答えが返ってくる。実にそこが企業の抱えている大きな問題点だ。各企業の研究が進み、技術的差異が縮小して、どこでも同じようなモノを作れるようになった。ヒット商品を出しても他社もすぐマネできるようになっている。「ちょっとした差別化・工夫」では商品に差が出ない。故に、消費者から見れば「商品はどれも同じ」となるからこそ、価格勝負になる。そして、それが儲からない原因となっている。日本はもはや明確な縮小市場である。その中で、「買わない消費者」をめぐって企業同士が「決定打のない喰い合い」をしているというのが現状なのだ。

■「売れない販促」ばかりが行われるワケ

 モノが売れない!となると、販促に頼るのはいささか短絡的に過ぎるが、その販促にかけたコストも正しい設計の元に行われなければ効果が出ないのは自明だ。効果的だった販促の事例から成功のヒミツを解き明かしてみよう。ロッテのガム「Fit’s(フィッツ)」の例だ。 
ガム業界は2004年を境に需要減に転じた。咀嚼力低下やタブレットやグミなどの代替品の登場による「若者のガム離れ」が原因だ。ロッテはガム市場の60%の市場を握るリーダー企業。市場を再活性しなければ生き残れない。しかし、もはやターゲットである若者はガムに対する興味を失い、自らが購入するモノとしての認識すら持っていない。今日の市場全体を覆う「買わない消費者による消費低迷」とよく似た構図と言えるだろう。
 消費者の態度変容モデルで最もポピュラーなのは「AIDMA」だ。商品を認知(Attention)させ、興味(Interest)を持たせ、購買欲求(Desire)を喚起し、記憶(Memory)させ、購買時期が来たら確実に購買行動(Action)を起こさせるという仕掛けを設計することだ。

 まず、ロッテは咀嚼力の落ちた若者向けに「やわらかな噛み心地」の製品、「Fit's(フィッツ)」を開発した。しかし、どんなに素晴らしい製品を開発しても、ターゲットである若者はガムに対する興味を持っていない。いくら「ガムを噛みましょう」「ガムは美味しいです」といっても響かない。そこで、商品特性を詳細に伝えることは避け、「楽しさ」を最大限に訴求し、興味喚起に徹することとした。キャラクターにモデルの佐々木希(ささき・のぞみ)と俳優の佐藤健(さとう・たける)を起用。二人がガムの噛み心地を表現したダンス、「フィッツ・ダンス」を踊る。人気振付家のパパイヤ鈴木が担当し、思わず真似したくなるような印象的なダンスに仕上げた。Attentionはバッチリだ。

 製品のWebサイトでは、YouTubeと連携し、フィッツ・ダンスを踊って投稿、再生回数を競うコンテストを展開した。優勝賞金は100万円。ターゲットである若者を中心として様々な人々、グループが趣向をこらした踊りを披露し、さらに参加者は再生回数を稼ごうと、自らの投稿作品を見てくれるようにメールを友人、知人に発信したり、SNSやBlogに書き込んだりして、口コミが大きく拡大した。Interestもバッチリであった。
 いくら話題になっても、ターゲットが実際に購入してくれなければ広告戦略は成功したとはいえない。ガムは人が動く時に購入される商品なので、交通広告にもフィッツの場合注力した。車内広告に「噛むとフニャン」のコピーとダンスのポーズを取る佐々木希と佐藤健のビジュアルが目を惹くが、さらに特徴的なのは「HOW TO CHEW "Fit's"!!!」と題して「Pick ! Get !! Pull !!!」と、独特のパッケージから取り出して口に運ぶやり方が、3段階に分けてイラストで説明されていることだ。ガムの食べ方をわざわざ説明した広告などあまり前例がないはずだが、それだけに「一度食べてみようか」見る者に思わせる効果は高い。AIDMAにおける欲求(Desire)喚起が巧みに設計されている。

 広告やクチコミでの蓄積で商品の認知率は高まった。ターゲットの記憶(Memory)に残した後には、購買行動(Action)に導くことも抜かりなく設計した。JR東日本管内では駅ナカコンビニ、「ニューデイズ」ではレジ横のスペースを確保した。交通広告を見る。乗換駅で、飲料を購入しようとコンビニに立ち寄って支払いの際にレジに並
ぶと、フィッツが目に止まるという寸法である。スーパーの店内の導線設計にも注力した。店内に販促機材を投入し、通常の菓子売り場やレジ横などだけでなく、スーパーの店内でも最も購買頻度が高い青果、鮮魚、精肉の生鮮3品売り場から引き込むために陳列箇所を増やした。

 広告は楽しかったり、カワイかったりすればいいものではない。また、商品がアピールできればいいというものでもない。それではAIDMAの最初のAかI辺りで止まってしまい結局は売れない。いや、しっかりとターゲットを購入に向かわせるための「課題は何か」をきちんと分析しなければ、この例では興味喚起すらできずに見向きもされなかっただろう。また、最終的には売れなければ何にもならない。AIDMAの「購入」というゴールまで設計を行うことが欠かせないのである。その意味で、自社がいくら販促を行っても売れないという状況が起きていたとしたら、「そもそもの課題をしっかりととらえられているか」ということと、「購買までの設計がきちんとできているか」という点を再度確認することをお勧めしたい。

■態度変容モデルの過ち

 華々しい新発売のスタートを切って、メディアにも「巷で大人気!」などと紹介されたにも関わらず、後が続かず、大量の在庫をさばくことに苦労する商品もある。それは何がいけなかったのか。その一因として、態度変容モデルの設計間違いが挙げられる。物珍しさや特典に惹かれて再購入がされず、在庫の山を抱えることになる例は多い。
前項のAIDMAが初回購入までを設計しているモデルだとすれば、反復購入までを設計するモデルとしてAMTUL(Awareness=認知→Memory=記憶→Trial=試用→Usage=日常利用→Loyalty=ロイヤル顧客化)がある。AMTULで設計すべき所をAIDMAで設計していたら、せっかくフレームワークを用いていたとしても効果は出ない。適切なフレームを用いることが肝要である。

 では、AMTULの実際を見てみよう。例えば、新規顧客獲得に高い費用を投下しているため、最低3~5回は反復購入しなければペイしないとされている通販業界などの企業の多くはこのモデルを取り入れている。一例として再春館製薬所の事例をご紹介しよう。

 同社のAwarenessはマス広告で新規顧客獲得する「レスポンスCM」を中心としている。その中でも「肌の悩み」を中心に据えた内容が最も反応が高いという。「あなたの悩みを私たちが解決します」というスタンスを訴求する。フリーダイヤルを告知して、「無料お試しセット」を申し込ませるところから、全てのコミュニケーションが始まる。
 関係構築のためにも、まずは無料サンプル請求者を、商品購入まで引き上げなければならない。お試しセット請求時があってから3日以内にサンプルが届く。サンプルは3日間で使い終わるため、8日後頃にフォローを行う。その時点で商品の受注が得られなかった場合は、1ヶ月後に、そこでも受注が得られなかった場合は、不定期でDMを送付するなど息の長いフォローのしくみを構築している。しかし、フォローのキモは、サンプル請求時の電話受付が最も重要であり、そこでいかに顧客と悩み相談や雑談を共有するかがキモで、そうした顧客ほど商品購入への引き上げ率は高いという。

 リピート促進の柱は、ポイントインセンティブと、関係性強化を目的とした会報誌、会員限定イベントなどのメニューが用意されているが、それ以前に、「ホスピタリティーを高めるための努力」がポイントであるという。同社のコールセンターシステムは顧客の肌の状況などだけでなく、雑談などであっても徹底して記録する。手紙やDMなど、紙でのやりとりもスキャナで読み込んで記録してある。そうした、顧客とのコミュニケーション内容の徹底した記録によって、誰が応対しても高いホスピタリティーを実現している。その徹底ぶりは、通信販売業界においても他に類を見ない。そうしたコミュニケーションが顧客のロイヤルティーを獲得しているのは間違いない。
 ここまで徹底したリピート施策はコスト的に展開不可能な業種も多いだろうが、リピートさせ、ロイヤル化させるとはどういうことなのか認識いただくためにあえて例示した。日本はもはや縮小市場であり、顧客の数は限られている。一人失客したらまた次がいるという時代とは違った戦略が求められるのである。

■付随機能としての情緒的価値とプロダクトライフサイクル(PLC)

 ロッテのフィッツの例では、ガムに関心を持っていなかった若年層を巻き込んで「楽しさ」というムーブメントを作って成功した。再春館製薬所の例では、リピートを獲得するためには顧客の肌の悩みに「共感」することがキモであった。それは、ガムの「美味しさ・噛み心地」や化粧品の「効能」という本来の機能を離れた部分が顧客の買う理由(KBF=Key Buying Factor)となっていることを表している。

 フィリップ・コトラーは製品価値を表すフレームワークとして、「製品特性3層モデル」を紹介している。その構造と製品の普及過程を表すプロダクトライフサイクル(Product Life Cycle=PLC)を重ねてみると面白い関係がわかる。(図1)Plc

 製品の普及段階では、製品の中核的価値で十分ものは売れ、成長期になると実体価値が求められるようになる。さらに、成熟期以降では付随機能が差別化のポイントとなるということだ。腕時計を例に考えてみよう。腕時計を手に入れたい人は、「いつでも正確な時間を知ることができる」ということを実現したい。故に、初期段階では各メーカーは月差何秒という性能競争をした。成長期に入ると「より正確であること」が求められ、それを実現するためにクォーツや電波で時を刻む技術が開発された。さらに正確な時を手間なく知れる機能を実現するために、自動巻に始まり、バッテリー、太陽電池などの動力源が用いられるようになった。また、正確さの証明として信頼のブランドも求められるようになった。成熟期ではもはや正確な時を知れるのは当たり前な要素となっていることから、それとは直接関係のない「ファッショナブルな(もしくは自分に合った)デザイン・人に自慢できる・人からうらやましがられる高級さ」などが求められる価値となった。

 さて、前述のフィッツの「楽しさ」、再春館の「共感」は、製品特性でいえば付随機能に属するのは明かであり、その理由もガムも化粧品もとっくに成熟期を迎え、ガムはむしろ衰退期に入っていたからである。だが、ガム、化粧品に限らず、今日、多くの商品が成熟期や衰退期に入っているが、そこで重要なことは「付随機能が求められる」ということ以外にどんな注目点があるのだろうか。それは、機能・性能的な要素・価値より、「楽しさ」「共感」などのような「情緒的な価値」が求められることが多いということだ。(図1)

 その際、重要になってくるのはブランド論の大家、デビット・A・アーカーが「ブランドエクイティー論」の中で説いた、「知覚品質」という考え方だ。アーカーは品質を、絶対指標・数値的に表せるものを「工場品質」と呼び、その顧客が感じる主観的な価値を「知覚品質」と読んだ。簡単に「知覚品質」について説明を書いたが、「工場品質」との違いは実際にはとてつもなく厄介で、難解で、実現困難なものなのだ。なにしろ、工場品質は世の中の絶対指標だから、均一だ。技術レベルの高い日本ならお手の物である。しかし、知覚品質は個々の顧客によって尺度が異なる。つまり、一人ひとりの心の中まで入り込んで、そのニーズを見定めて、何を、どのように提供すべきかを設計する必要があるということなのだ。

■マーケティングの基本と7つのP

 知覚品質が求められるようになると、同じモノでも顧客によって同じ売り方では売れないということを意味している。となると、同じモノにどんな価値(その顧客が感じる情緒的な価値も含めて)を乗せて提供するかが問われてくる。「モノのサービス化」とか「モノ+サービス」などと呼ばれるようになってきているが、その背景は前述したようなことにあるのだ。

 成熟市場で求められる付随機能と情緒的価値の提供のためには、前出の再春館製薬所がそうしていたように、個々の顧客に対する深いレベルでの理解とそれに応じた対応が欠かせない。それは、多くの企業が高度成長期の大量生産・大量消費時代以来引きずっている、顧客を「消費者」と呼び、顔のないマス(大衆)としてとらえていては実現できない意味を持っている。マーケティングの基本はまず、顧客をしっかり見ること。そして、そのニーズを掘り起こし、潜在ニーズまで深掘りして対応することである。今、正にそれが求められているのである。

 では、具体的にはどのように実現すればいいのだろうか。フィリップ・コトラーは従来の4P(Product=製品・Price=価格・Place=販路・Promotion=販促)に3つのPを加えた7Pを提唱している。3つのP とは、Personnel=人(要員)・Process=プロセス(マニュアルなどの業務プロセス)・Physical Evidence=物的証拠(安心・安全・サービスの保障など)で、その根幹をなすのが「人」である所の、自社の人員である。前述の通り「モノのサービス化」「モノ+サービス」と言われる中で、本稿のタイトルである「差別化」に関して言及するなら、冒頭に記したように技術の平準化によって製品(モノ)での差別化が困難になってきている以上、コト、サービスが差別化要因としての比重が高くなる。そして、そのためには再春館製薬所の事例にあるように、自社の要員が顧客をよく見て、そのニーズを掘り下げ、共感を得る対応を行う事が欠かせないのである。

■「共感」という差別化キーワード

 共感を得る対応と書いたが、それはどのようにして実現できるのかが次なる問題となる。それには、ケビン・L・
ケラーの「トライアングル・モデル(ブランド共感のピラミッド)」が一番参考になるだろう。
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 ここでドトールコーヒーショップとスターバックスの違いについて考えてみよう。スターバックスは1996年に今まで展開してきた北米市場を離れて初のアジア進出として東京・銀座に1号店を開いた。当時の日本のカフェ市場は個人経営や珈琲館のような従来型喫茶店が、コーヒー1杯180円(当時)という安さと、カウンターでの立ちのみスタイル(当時)という気軽さで人気を集めていたドトールに駆逐されている状況だった。しかし、スターバックスは、ドトールよりもはるかに高い価格で進出してきたにも関わらず、あっという間に人気を集めた。それはナゼか。「ブランド共感のピラミッド」で考えてみよぅ。

 ドトールもスターバックスも、どちらも「(そこそこ)美味しいコーヒーが飲める」ということは認知されている。つまり、ピラミッドの最下段にある「主要な機能」と仕手のコーヒーショップとしての最低条件は同等だ。そこからがドトールは機能的で合理的という、理性面のアプローチ(ピラミッドの左側)に重きを置いているのに対し、スターバックスはイメージの良さや情緒性(ピラミッドの右側)に訴えかけることによってファンを増やし、共感を得て顧客維持をしているという違いがある。

 まず、ドトールは前述の通り「低価格セルフカフェ」の先駆けであり、その価格の安さ、合理的なサービス、カウンターを中心としたちょっとした休憩ができるスペースという「性能・機能」で評価されている。また、性能・機能はコストパフォーマンスの良さという「客観的判断」にも繋がっている。だが、それ以上の愛着・好感・共感という要素までは訴求・実現できていないといえるだろう。

 一方、スターバックスはエスプレッソマシンを用いる「シアトルスタイル」を日本に普及させ、ロゴマークや店舗空間と相まってオシャレなイメージを醸し出している(表象)。また、「サードプレイス」という、「職場と家庭の中間にあるくつろげる空間」というコンセプトを売りにし、気さくに話しかけてくる店員との会話の楽しさなどまでを提供し、単なるコービーを飲ませる場所ではなく、そこで過ごす時間を「情緒的価値(情緒的反応)」としている。その結果、多くのスターバックスファンの愛着・好感とコンセプトへの「共感」を獲得している。

 つまり、合理的・理性的に評価されるドトールは、その根源的価値であるコストパフォーマンスの良さからして、過度な付加価値は顧客から受け入れられがたい。それに対してスターバックスはモノ以上の情緒的価値を評価され、そこに共感が得られているため、モノの価値+αの無形の付加価値として顧客からが受け入れられ、そのために高価格も受容されているということになる。


■顧客への価値提供は、まずは社訓に見直しから

 スターバックスの情緒的価値を形成するものとして、店舗の雰囲気などだけでなく、スタッフ、つまりコトラーの7PにおけるPersonnel(要員)の要素も大きいといえるが、ではどのようにすれば組織全体で顧客に情緒的価値までを感じさせる「モノ+サービス」の提供ができるようになるのであろうか。そのためには、全社で「自社はどのような存在であり、どのような顧客にどんな価値を提供していくのか」ということが徹底されていることが欠かせない。それは、本来企業の社訓、もしくはミッションステートメントに示されているべきものであるが、多くの日本企業の社訓は聞き心地のいい意味のない言葉の羅列でしかない。
 パトリシア・ジョ-ンズ著の「世界最強の社訓」という本がある。その冒頭で訳者の堀紘一氏は、80年代に「Japan as No.1」と称された日本の成長に押されて沈下した米国企業の復活を支えたものは、各企業で日本が遅れたIT化をいち早く推進したことと、ミッションステートメントを書き換え企業の方向性を明確化したことであるとしている。
 では、どのようにミッションステートメントを作ればいいのか。それには筆者オリジナルのフレームワークを見て頂きたい(図)。
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 フレームワークは以下の5つの要素から構成される。
①価値理念・・・その企業の哲学を表す価値の根源ともなる部分。「自社は顧客に対してそのような存在であるのか」を明確にすることが中心となる。現実的にはここは今まで発信してきた従来の社訓・創業者の思いなどと整合性を取る必要のある所だろう。

②個性・・・他の企業にはない、その企業の独自性を表す部分。自社にしかできない、顧客に提示できることは何かを明確にする。特に自社のポジショニングとの整合性を図る必要がある部分である。

③理想とする顧客・・・誰も彼も「大切なお客様」としていたのでは「強いブランド」とはなれない。マーケティングにおけるターゲティングとは顧客を絞り込むことであると同時に、狙わない顧客を決めることでもある。自社はどのようなお客様のために存在するのかを明確に設定する。

④機能的付加価値・・・理想的な顧客に提供できる物理的メリット。自社が自信を持って提供できるものは何なのかを明確にする。

⑤情緒的付加価値・・・理想的な顧客との各種コミュニケーションを通じて、顧客をどのような気分にさせることができるかという、無形の付加価値を明確にする。

 上記①~⑤を設定するためには、図のピラミッドでそれぞれのパーツがどのような相互関係を持っているのかを意識して検討していくことが大切だ。そして次のような文章に当てはまる言葉として作り込んでいくといいだろう。

○○会社は、【価値理念】を約束します。
私たちは、【個性】として、
【理想的なお客様】に、
【機能的な付加価値】を提供し、
【情緒的な付加価値】を感じていただくため、努力をしていきます。

この【 】内に当てはまる言葉が見つかったら、前述の図のピラミッドに載せて相互関係を再度点検してみよう。違和感なく、整合性が感じられればブランドステートメントが完成するはずだ。

 飽和し衰退を始めた日本市場で生き残っていくためにはどうすればいいのかを考えてきたが、ここまで述べてきた要素のどれを実践すればいいかというわけではない。全てはこの環境を正しく認識し、正しい施策設計を行うためには顧客が求める価値の中心が「情緒的価値」や「共感」に移行していることを理解して、全社でその対応のために動けることが必要という一連のストーリーとして実行すべきことなのである。


2015.11.18

マクドナルドは復活するのか?~新興勢力と既存勢力攻勢~

ビジネスメディア「INSIGHT NOW」に書き下ろし原稿をアップしました。

マクドナルドの業績は8月の既存店売上高が19ヶ月ぶりにプラスに転じましたが、9~10月は再びマイナスに転落。苦戦が続きます。
そんな中、「シェイクシャック」「ベアバーガー」「ザ・サードバーガー」新興のハンバーガーブランドが続々攻勢をかけ、人気を集めています。
一方、既存の競合、「モスバーガー」や「フレッシュネスバーガー」もメニュー構成や価格帯をずいぶん変え、従来「高級」とみなされていたポジションから、十分マクドナルドに対抗できるレベルに変更しています。
顧客にどのような魅力を打ち出し、競合と差別化を図るかを考えるポジショニング。その大元となる考え方を「バリュープロポジション」という考え方で上記を整理した時、マクドナルドに復活の芽は果たしてあるのかを考えてみました。

■「マクドナルドは復活するのか?~新興勢力と既存勢力攻勢~」 →  記事はこちらをクリック!  http://www.insightnow.jp/article/macdonald

2015.11.12

【連載第13回】もはや眼鏡屋なのか?メガネスーパーの新業態店の価値提供に学ぶ

グロービスのサイト「知見録」の連載、「知りたい!ヒットの舞台裏」の新作が公開されました。

メガネ量販チェーンの老舗「メガネスーパー」。
しかし、昨今台頭してきた格安チェーンに圧されてかなり経営的にはかなりヤバイ状況にあるようです。

そんな同社は、もはやマスを狙うのではなく「高収益客シフト」を模索し始めたようです。
しかし、その手法が何ともユニーク!

「業界定義」によっては、「てもみん」とも競合になるのでは?というように、
集客・固定化・高収益化の必殺技が「マッサージ」なのです!

■もはや眼鏡屋なのか?メガネスーパーの新業態店の価値提供に学ぶ →  記事はこちらをクリック! http://globis.jp/mba/4599/

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