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1 post from June 2013

2013.06.07

コカ・コーラ ゼロの「思い切り味わおう」に隠された「選択」

 「正直な所、少し悩んだりしましたね」。2012年の秋を振り返って、コカ・コーラ ゼロのブランド戦略担当者は苦笑いを見せた。
 日本コカ・コーラのコカ・コーラ ゼロは2013年6月4日に発売6周年を迎え、累計販売60億本を超えた。そのビッグブランドもキリンビバレッジのメッツコーラやサントリーフーズのペプシスペシャルという「特保コーラ」の発売によって話題を奪われることとなったのが昨秋のことだ。

■ゼロコーラ市場の伸長と特保コーラの登場

 「カロリーを気にしてコーラから離れていく、20代後半から30代前半のコーラ好きの“ためらい”を取り外す」のがコカ・コーラ ゼロの狙いであると担当者は語った。
 コーラの主たる飲用層は10代で、年齢が高まると共に離れていく。そんな構造を変えたのが「カロリーゼロ」を売り物にしたゼロ系炭酸飲料だ。世間では「ゼロコーラ戦争」などといわれるなか、生産量が拡大していくことになった。
 しかし、2012年に状況が変わった。「特保コーラ」が相次いで発売され、目新しさと健康イメージでコカ・コーラ ゼロなど既存のゼロ系炭酸のシェアを脅かしはじめたのである。そんな環境の中で2013年に向けてどのように成長戦略を描くのかが検討された。
 リーダーの戦略の基本は「全方位戦略」であると考えれば、先行する商品に同質化戦略を仕掛け、特保コーラを上市するというシナリオもありえる。一方で「特保は“健康”が売り物だが、“健康”も“おいしさ”も両方あるのがコカ・コーラ ゼロなので、“健康”だけを訴求したくないという思いもあった」とも担当者はいう。どこに軸足を置くべきかが最大の論点となったのである。

■特保市場では戦わない!

 「ブランドの根本に立ち戻って“ゼロ”の定義をし直した」と担当者はいう。
 コカ・コーラ ゼロは2007年に「糖分ゼロ」として発売して以来、2009年に「保存料ゼロ」、2010年に「合成香料ゼロ」を加え、「3つのゼロ」を訴求してきた。しかし、特保コーラの登場した現在、それを見直すと「3つのゼロに寄りすぎていたかもしれない」と担当者は振り返った。
「3つのゼロ」も「健康」というキーワードも、身体にいいということを考えて左脳的に飲む飲み方だ。だが、「コカ・コーラ」ブランドを冠するコカ・コーラ ゼロの一番の強みは、「おいしさを味わい、リフレッシュするという感覚的な飲み方フォーカスすることが正解ではないかと考えた」という。市場調査の結果、「特保飲料ユーザーは特保カテゴリーの中でのブランドスイッチが多い」というデータも背中を押した。
 結論としては、特保市場はコカ・コーラ ゼロの戦いの場ではないと判断し、それでも特保がいいという人はターゲット外であると割り切ったのだ。担当者は「特保ユーザーを取り合うのではなく、飲料商品ユーザーのうち7割残っているゼロ系飲料未飲用者を狙うという戦略」であると語った。

Cczero

■キャンペーンメッセージを研ぎ澄ます

 特保にはないコカ・コーラ ゼロの魅力を伝えるにはどのような訴求の切り口を持つべきなのか。それには、「炭酸飲料本来の飲み方を思い出させることが必要だと考えた」という。それは、特保のように食事のシーンに特化するのではなく、「リーダーブランドとしてあらゆるシーンで飲まれ、共感されることを念頭に置いた」のだという。
 コカ・コーラ ゼロはこの4年間、「ワイルドヘルス」というメッセージングを行ってきたが、今年2月より「ゼロリミット 思い切り味わおう」というメッセージに変更し、市場への新たなる登場感を演出してきた。それを、6月3日より再調整し、より切り口を鮮明にしたメッセージに切り替えた。「思い切り味わおう ゼロリミット」である。メインメッセージとサブのメッセージを入れ替えただけのように見えるが、その狙いは大きい。特保コーラとのベネフィットの違いを強調させるための結論であり、軸足の置き場所は「味=おいしさ」だ。それを明確に伝えるためなのである。

■「また飲みたくなる」ために

 「思い切り味わおう ゼロリミット」というメッセージのキモは「また飲みたくなるという、シズル感」だという。
 セレブレティーとしては引き続きEXILEを起用。前CFではメンバーが氷の中から商品を取り合うような表現で登場感を演出したのに対し、今回はより具体的な飲用シーンのカットを多用し、容器が空になるまでゴクゴク飲み切る姿までを表現している。
 コカ・コーラシステム(コカ・コーラグループ)には飲料業界最大の約98万台に登る自動販売機チャネルがある。そこでは、コンビニエンスストアやスーパーなどの店頭での販売のように「ついで買い」ではなく、飲みたいと思った時に購入する「目的買い」を最大化させることも課題となる。いずれのチャネルでも、「飲みたい」と思わせるために、「ゴクゴク飲む」という表現でメッセージをつないでいるのである。

 リーダー企業やブランドは、とかくの「全方位戦略」を展開するのが正解だと考えられがちである。しかし、戦略を決めるということは、「やらないことを決める」ことでもある。このコカ・コーラ ゼロの事例は、リーダーといえども「選択」を適切に行っているという意味において学ぶべきところが大きいといえるだろう。


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