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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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October 2012の4件の記事

2012.10.30

【連載リンク】金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第14回:エプソン「カラリオ」

 前回はキャノンのデジタルカメラでしたが、今回はエプソンのプリンタです。ちょっと、リレーシリーズ的になっていますが、偶然です。偶然・・・。

  ・ ・ ・ ・ ・

  モノクロ印字の美しさを競う時代から、フルカラー写真印刷の美しさを競う時代へ。インクジェットプリンターの黎明(れいめい)期から市場をけん引し、「おうちプリント」を普及させてきたセイコーエプソンの「カラリオ」。1995年の発売開始以来、写真プリントの高画質性を追求し続け、現在はスマートフォンなどネットワークとつながる複合機として時代のニーズにこたえています。エプソン販売株式会社 取締役販売推進本部長の中野修義氏に聞きました。

○記事はこちらから!→http://bit.ly/VYypNz

2012.10.22

成熟期商品の生き残り方とは?:ポスト・イット ® 製品の場合

 一度軌道に乗った製品は、導入期、成長期、成熟期、衰退期の「製品ライフサイクル(Product Life Cycle)」を経る。そのサイクルの中で、衰退期に転落しないように成熟期で踏みとどまるという課題を抱えた商品は市場にも多く存在する。発売以来31年を経たロングセラー商品である、オフィスでおなじみの住友スリーエム「ポスト・イット ® 製品」も例外ではなかった。その生き残りのための挑戦を取材してきた。

■「アンゾフのマトリックス」のお手本的展開

 経済学者のイゴール・アンゾフは、企業の成長戦略を4つにパターン化した。いわゆる「アンゾフのマトリックス」だ。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
 3Mという会社は、優れた技術力で新製品を次々に世に送り出していくことで知られている。アンゾフのマトリックスで示せば、既存顧客に新製品を販売するという「新製品開発戦略」である。「経営戦略としても、全売上の40%以上を直近3年間で出した新製品が占めなければならないという目標を設けている」という。(「利益思考」嶋田 毅・著:東洋経済新報)
 一方で、既存の顧客に既存の製品を販売する「市場深耕戦略」も怠っていない。ポスト・イット® 製品のわかりやすい例でいえば、大容量のバリューパックを作ったり、多様な色の組み合わせのパッケージを展開していたりする。また、素材を紙からより目立ち、より丈夫なフィルム素材に変えたポスト・イット® ジョーブを展開したり、テープ状のロールタイプにしたポスト・イット® 強粘着ロールを発売したりもしている。特に注目したいのが「強粘着タイプ」だ。紙に貼るのではなく、PCの筐体やホワイトボードに貼るというような昨今のオフィスでの使われ方に対応して、はがしやすさは保ったまま、粘着力を通常品の2倍に強化した製品である。外部環境の変化に対応しているのである。そうした展開の結果、ポスト・イット® 製品は国内だけで400種ものSKU(在庫管理を行う場合の最小の分類単位。最小在庫管理単位)にのぼる多様性を見せているとのことなのだ。

■オフィスの外に飛び出せ

 しかし、国内の粘着メモ市場はここ数年、成長を見せていない成熟市場となってしまっているという。故に、3Mの日本法人である住友スリーエムとしてもポスト・イット® 製品も「オフィスの外への提案」が欠かせなくなってきている。つまり、パーソナルユースという新規の顧客に既存の製品を販売する「新市場開拓戦略」である。ターゲットは教育とパーソナルだ。

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 教育用で注目なのは「辞書引き用ふせん」だ。これは、中部大学の深谷圭助准教授が提唱する、自ら学ぶ習慣が楽しく身につく勉強法として注目を集める「辞書引き」学習専用に開発したポスト・イット® 製品である。かなりニッチな市場であるが、ふせん紙を大量に使用するという相性のよい学習法を見逃さずに市場拡大を狙っていることがわかる。他にも専用のポスト・イット® 製品を発売するだけでなく、ふせん紙を用いたKJ法(データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめていく手法)を学校に提案するなどの展開を行っているという。

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 パーソナルにおけるメインターゲットはポスト・イット® 製品にオフィスで慣れ親しんだOLだ。男性は手帳の電子化が進んでいるが、女性は紙の手帳の愛用者が多いことから発案したターゲティングであるという。しかし、事務用品としてのポスト・イット® 製品を自分の手帳に用いて「自分の手帳にしっくりこない」「可愛くない」と考えていた潜在的なニーズギャップが存在していたことを開発担当者は見抜いた。そこで、「様々な用途に対応する各種リフィル」と、リフィルを自分の好みに合わせて組み合わせ持ち運べる「可愛いケース」を発売したのである。製品名を「ポスト・イット® 手帳用製品 ポータブルシリーズ」という。9月からの発売であるが、売上は当初予想を上回って上々ということだ。

■エモーショナルなブランド訴求を展開する

 上記の通り、アンゾフのマトリックス的にモレのない成長戦略をとっているが、まだ、克服すべき弱点があることがブランド調査で判明したという。
 ポスト・イット®ブランドのイメージとはどのようなものだろうか。「メモを書いて、貼って、はがして、また貼って」という使用方法にピッタリな程よい粘着度が製品の中核的便益であることは間違いない。その品質の高さは、100円ショップなどで販売されているノーブランドの付箋紙と比べれば明かだ。調査でもそのファンクショナルな価値の高さには高い支持が寄せられた。今後は「使ってみたくなる」「楽しい」などというエモーショナルな価値に対する支持を高めたいという。実は、前出の「ポータブルシリーズ」もその一環であり、単に女性向けにターゲットを拡大するのが狙いではなく、「楽しい商品群」を開発するというエモーショナル戦略の一部を担っているのである。
 エモーショナルなブランド訴求のために、7年ぶりにテレビCMも制作した。
 
 (※YouTubeでの掲出は12月まで)
 「ジブンをひらけ。」と題されたCMではさりげなく、「どこにでも貼れる」という機能も示されているが、それ以上に「前向きな自分に導く」というエモーショナルな訴求がなされていることがわかるだろう。

 自社商品が成熟期に差し掛かったとき、どのような対応を行うのかの判断は企業によって異なるだろう。だが、今回の住友スリーエムにおけるポスト・イット®のアンゾフ的なモレヌケのない商品展開の可能性を探る展開と、ファンクショナル+エモーショナルなブランド価値をさらに高める余地を探る訴求は参考になるだろう。商品開発も、ブランド訴求も、大概のことはやり尽くしたと考えがちな成熟期において、微に入り細をうがつような展開によって、成長余地を見つけることもできるのである。その意味で、ポスト・イット® 製品の事例は大いに参考になるだろう。


2012.10.17

ドロリッチ:鋭敏な市場ニーズの把握で市場を開拓し続ける挑戦

 ヒット商品を作るには。そして、ヒット商品をロングセラー化するには。グリコ乳業は大ヒット商品「ドロリッチ」で、商品開発の一大テーマであるその解を「環境変化への対応」という基本から導き出した。その過程を開発チームへのインタビューで追ってみよう。

■市場のニーズ:2007年当時

 「飲料の世界では明らかなトレンドが見て取れました。その消費者のニーズを捉えることができれば、新たなカテゴリを創造できるかも知れないと考えたのです」。グリコ乳業のマーケティング担当者は当時を振り返った。
 カフェゼリーとクリームがほどよく混ざった食感が特徴の「ドロリッチ」は主にCVS(コンビニエンスストア)のチルド製品棚で販売されている。それは、「飲料」なのか、「デザートなのか」と、大ヒット・ブームの中でファンが論議することが多かったが、答えは「デザート飲料」という両者の中間的存在なのである。元々、「デザート飲料」というカテゴリが市場に存在していたわけではない。それこそがドロリッチが作り出したカテゴリなのだ。
 開発に際して、グリコ乳業の開発チームはまず、欧米で「スムージー」が大人気となっていることに注目した。同様なトレンドが日本でも見て取れないか。そのため、チームメンバーは駅などのジューススタンドやカフェの店頭で来店客の購買行動を徹底して観察したという。その結果、ジューススタンドでは利用者のビジネスマンやOLの40~50%が、「とろり」としたミックス系ジュースを選択し、朝食代わりのライトミールとしていることを発見した。また、カフェではスターバックスの「フラペチーノ」に代表されるような、コーヒーや果汁等のデザート的飲料が大人気でメニューも充実してきており、商品の構成比は6~7割に登り、来店客の注文比率が高いことも確認したという。そして、開発チームは観察の中から3つのキーワードを発見した。「スピーディー」「ながら飲み」「腹持ちの良さ」だ。

■独自ポジショニングの確立

 「スピーディー」「ながら飲み」「腹持ちの良さ」というキーワードに「ほっと一息できる」というベネフィットを加えた訴求ポイントが整理されたが、そこから単純な飲料ではなく、デザートの特徴を取り込んだ独自の商品として展開する可能性を追求することとなった。実は、商品開発のチームは市場自体が飽和している「飲料」ではなく、成長余地のある「デザート」のチームが主管しているのである。故に、ブランドネームも単純な「コーヒーゼリー“飲料”」などではなく、新カテゴリを表すような従来にないインパクトのあるアンブレラネームを必要とした。
 差別化ポイントは「固体と液体がほどよく混ざったとろり濃厚食感」であると整理され、そこから「ドロリッチ」というネーミングが検討された。「ドロ」という食品らしくないネガティブな語感が含まれるネーミングは、社内からの猛反対を受けた。しかし、他社の類似商品との明確な差別化のために開発チームは社内の幹部までを丹念に説得し、ネーミングを押し通したのである。

■2011年の転機

 ドロリッチは2007年に発売され、2009年には一大ブームを巻き起こし、市場を席巻した。しかし、翌年から徐々に売上は右肩下がりになってきた。理由は明確だ。PB(プライベートブランド)の拡大で棚が狭められたことと、他社のタピオカ飲料など「食感飲料」としての競合の出現である。手作りスイーツブームで消費者の舌が肥えてきたことも原因だ。購入者数、購入回数とも減少傾向が明らかになってきたのである。
 「ブランドの延命のためには、ブランドエクステンション(派生商品の投入)が行われますが、もはや本体商品のテコ入れが欠かせないと判断しました」と担当者は言う。
 市場のさらなる変化も明確になっていた。グリコの調べで2007年当時と比較すると、朝・昼・夕の「基本の三食」の崩壊が進んでいた。朝・昼の欠食に加えて、夕食も欠食する傾向が見て取れた。では、その変化は何を表しているのか。「おやつ化する食」である。基本の三食が乱れる一方、間食シーンは平日10時、15時、16~17時、20時、22時という5回のピークが確認できたという。

■新製品の上市

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 デザートの食事化。その市場ニーズの変化を受けて、開発チームは「コロンブスの卵」的な方針転換を決めた。今までも製品改良を行ってきたが、それらは全ていかに味をよくするか、風味をよくするかという「コーヒー」部分の改良であった。しかし、ニーズの腹持ち満足感を満たすためには、ゼリーとクリーム感の改良に踏み切ることが欠かせない。そこで、製品の構造を従来から根本的に改めることとなった。特筆すべきは市場の変化に対応して、開発チームが社内を俊敏に動かしたことだ。通常、1~2年程度を要する開発期間を、わずか6ヶ月に短縮したのである。
従来は容器の中では「クリームがコーヒーゼリーに程よく不均一に包まれた状態」になっていた。それを、クリームを「ホイップクリーム」に変更し、「ゼリーの上に乗った状態」に作り替えたのである。飲むときに強く振ることでホイップクリームの中にコーヒーゼリーが浮いているような状態となり、「クリームたっぷりのデザートを食べたときのような満足感を味わえるようになった」という。
 製品の進化は明確だ。筆者も取材時に現行製品と新製品を飲み比べたが、クリームの濃厚さが際立ち、味わいと、腹持ちの良さが格段に向上した。試飲会ではあるコンビニエンスストアのバイヤーは「新発売当時の感動を思い出した」と感想を漏らしたという。

 新製品は10月22日に北海道~関西地区で、11月5日に中四国地区以西で発売される。CM展開の他、そのコンセプトと新たなる製品価値は「体験すればわかる」ということで、サンプリングなども計画しているということだ。リニューアルによって、市場のニーズを捉えたモノとなっているか、一度お試しすることをお薦めしたい。

2012.10.12

新連載:「あの商品、このサービスがヒットするわけ」第1回

宣伝会議社の広告関連専門Web媒体「AdverTimes(アドタイ)」で6回限定連載を行う事になりました。


<このコラムについて>

「モノが売れない」といわれて久しい時代。そんな中でもヒット商品は存在します。その裏側にはどんなヒミツが隠されているのか。マーケティングのセオリーで読み解いていきます。


「とかくこの世は忙しい…『スマート飯(SMARTHAN)』」

世は時短時代である。洗剤は「すすぎ1回」がウケて、「アタックネオ」をはじめとしたコンパクト液体洗剤が売れている。掃除だってお掃除ロボット「ルンバ」にお任せだ。では、あとはどの時間が切り詰められるだろうか。そこで、「食事の時間」に目を付けたのがタカラトミーアーツの「スマート飯(SMARTHAN)」の登場である。

続きはこちら→http://www.advertimes.com/20121009/article88490/

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