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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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August 2012の4件の記事

2012.08.27

累計10億本のパルム :そのヒミツはコンセプトの明確さ

 アイスクリームのPARM(パルム)シリーズ、累計販売数10億本。新商品の「PARM ピュレコーティング オレンジ&バニラ」も5月末の発売以来1ヶ月で年間目標の半数である710万本を売り、現在(取材時期:8月下旬)までの約3ヶ月間で既に年間目標を達成しているという破竹の勢いである。そんなパルムの「売れ続けるヒミツ」を森永乳業のブランド担当者にインタビューしてきた。

 パルムが市場に登場した2005年当時、プレミアムアイスはハーゲンダッツが約90%という不動のシェアを占めていた。一方、マルチパック、つまり箱入りアイスは子ども向け、親子向け商品ばかりが棚を占めていた状況であった。

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 「大人向けの箱入りアイスを作る。それが最初の挑戦だったのです」。担当者は当時を振り返った。
「大人向け」というポジショニングをどのように実現したのか。それは、製品(Product)と価格(Price)のバランスにある。当時の箱入りアイスは店頭価格300円が相場。そこを50円あげて350円(当時)というターゲットプライスを設定した。それによって、バリュープロポジション(そのブランドや製品がとり得るポジションニングの前提となる相対的な提供価値の分類)を明確にする「高価値戦略」狙いである。(図1)

 製品へのこだわりは凄まじいものがある。パルムは「なめらかな口どけのチョコレートとリッチなミルク感」を特徴とした商品だ。それを実現するために、プレミアムアイスクリームと同様のクリーム・脱脂濃縮乳を使い、急速冷凍することで氷の結晶の細かいなめらかなアイスを実現したという。さらに最大の特徴はアイスクリームを包むチョコレートは体温と同じ温度で溶けるようにコントロールされており、口に入れた時になめらかに溶ける仕組みに仕上げたのだ。

 発売後に実施した消費者に対する定性調査では、箱入りアイス以外のプレミアムアイスと比較しても遜色ない評価を得られた。ハーゲンダッツに代表されるプレミアムアイスは「週末に気合いを入れて食べる」という用いられ方をする。それに対し、6本入りのパルムは平日に家の中でゆったりと毎日食べるという用い方をしていることが明らかになった。そこから、「毎日のちょっとしたぜいたく」=「デイリープレミアム」というメッセージが紡ぎ出されたのである。

 2005年の発売時、最初の半年間はやはり350円という高めの価格が引っかかり、苦戦をすることとなった。しかし、粘り強い店頭での試食プロモーションが奏功し、小売店の空きの棚替えの時期に棚をしっかりと確保して消費者の人気にも火がついた。そこから、累計10億本ロードが始まったのである。

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 パルムは年間100億円の売上を達成するに至り、森永乳業の社内では新たな挑戦の機運が盛り上がってきた。「チョコ素材以外で、新たなコンセプトを作り上げようと考えたのです」。ブランド担当者は開発当時を振り返る。
 「家の中で自分の時間でゆったりと食べる」。そんなパルムのコンセプトは十分に浸透した。では、次なる挑戦はどのようなシーンを狙うかだ。毎年繰り返しやってくる猛暑。今年の夏も暑くなるだろうと予想して、氷系のアイスに狙いを定めた。氷系のアイスといえば代表格は「ガリガリ君」だろう。それは食べれば確実にカラダをクールにしてくれる。だが、それはどちらかといえば物性的な価値だ。それに対し、パルムは「外から帰ってきて、家の中でゆっくりとしながらカラダも気持ちもクールダウンする」。そんなコンセプトが考案された。

 新たな商品は、「PARM(パルム) ピュレコーティング オレンジ&バニラ」。なめらかなオレンジアイスとしっとりしたバニラアイスを、オレンジ果肉とオレンジピールを含む果汁で包んだアイスバーの誕生だ。それは、パルムのコンセプトである「デイリープレミアム」=「日常のちょっとした贅沢」に、「リゾート」の要素を取り入れた新商品である。
 面白いデータがある。森永乳業の調査によれば、実際に「パルム ピュレコーティング オレンジ&バニラ」を食べた70%以上の対象者が「リゾート地に出かけたようなちょっとした贅沢な気分を楽しんでいる」という。そこから「イエナカ・リゾート」というコンセプトが新たに設定された。

 パルムの従来のターゲットは20~30代の独身有職女性。ピュレコーティング オレンジ&バニラは40~50代の中高生の子どもを持つ主婦をメインとしている。子どもが大きくなり、一緒に長期旅行をする機会も少なくなる。その「自分時間」を「イエナカ・リゾート」というコンセプトで狙っているのである。
 リゾートを感じるパッケージ。「ガリガリ」ではなく、「しっとり」とした贅沢な食感。そしてすっきりとした味わいで従来のチョコ系のパルムともカニバリすることなく棲み分けが成立するスグレモノの商品なのだ。

 プロモーションは寺尾聰をセレブレティーとしてテレビCMをスポットで投下したが、それ以上に口コミが効果を発揮した。試食会などで実際に口にしたファンがFacebookやTwitterなどSNSで自ら情報を拡散し始めたのである。根強いパルムのファンからの支持が証明されたのである。

 現在、パルムブランドはアイスクリームの業界で5位だという。その中で、「男性を取り込んでいくのが課題なんです」と担当者は今後の課題を語った。パルムのブランド認知率はまだまだ低く、特に男性のそれが低いという。パルムの最大の武器は「デイリープレミアム」という明確なコンセプトだ。それをどのように男性向けに展開していくか。今後も挑戦が続く。

2012.08.15

成功すべくして成功した:アクエリアス ゼロ1億本への道のり

 5月7日の発売以来累計5000万本を突破したアクエリアス ゼロ。8月に入ってさらにスピードは加速し、1億本の大台も視野に入っているという。その背景には「成功すべくして成功したマーケティング計画」が存在することが、日本コカ・コーラ、アクエリアス ゼロ担当マネージャーへの取材から明らかになった。

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■中長期計画
 「それまでのアクエリアスは、 “スポーツ飲料”のイメージが強かった。それをより幅広い概念に拡大したかったのです」。スポーツマンらしい日焼けして引き締まった身体に笑顔が印象的なアクエリアス ゼロ担当マネージャーは意外な言葉から話を始めた。
 時は2010年に遡る。「Fit body. Fit life. いきいきしたカラダへ」。幅広い人々に向けたブランドとなるため、アクエリアスの中長期ブランドスローガンが設定されたのである。

■危機
 スポーツ飲料カテゴリーは2004年をピークに下降傾向を示し始めた。カテゴリー№1の日本コカ・コーラにとっては由々しき事態である。シェア第一位にとって、カテゴリーの衰退はそのまま自社の業績悪化に直結するからである。
 年代別の飲用状況を調査すると、人口のボリュームが大きい40~50歳代が「スポーツ飲料離れ」を示していることが確認された。ミネラルウォーターや茶系飲料へのスイッチが起こっているのだ。

■追い風
 2010年。その夏も記録的猛暑に見舞われた日本。売上の下落傾向に歯止めがかかった。さらに「熱中症」の認知率も79.3%を越えた。(2011年日本コカ・コーラ調べ)。アンケートを採ると、ナトリウム、電解質、イオン…といったキーワードも数多く対象者から聞き出せたという。

■市場のホワイトスペース アクエリアスのベネフィットとは「優れた水分補給」であると定義されていると担当マネージャーは語った。「優れた」とは何か。ブルーのパッケージである「アクエリアス」は4種類の電解質が含まれ、適度な糖分と電解質によって「水より優れた水分補給」を実現する。一方、2005年に発売されたイエローのパッケージである「アクエリアスビタミンガード」はビタミンCが1000mg配合されており、「ビタミンCの水分補給」を実現する。では、「スポーツ飲料離れ」をしている35歳以上にとっては何が有効なのか。そこに手が付けられていないホワイトスペースが存在した。「全方位」で展開をする「リーダーの戦略」ならではの展開である。

■ターゲットの未充足ニーズ
 ターゲットである35歳以上のニーズは何か。それは2008年に特定健康検査(いわゆるメタボ健診)が法制化されて以来高まった「お腹のたるみ」や「中性脂肪」の抑制である。そのため、駅でエスカレーターを使わずに階段を使用する。通勤時に1駅分多く歩くなどの軽い運動を実践する人も少なくない。また、味の好みもターゲットと10~20代では異なることが分かった。ターゲットは、よりスッキリした、甘さが控えめの、濃すぎない味を好む傾向がある。激しい運動をしないために、ニーズも嗜好も異なるのだ。

■競合
 軽い運動をした後、ターゲットは何を飲んでいるのか。それは前述の通りミネラルウォーターやお茶だ。なぜならば、「カロリーがゼロだから」。それは「スポーツ飲料離れ」という危機をもたらしている一方で、大きなビジネスチャンスを示していた。なぜならば、カテゴリー内に競合となる商品が存在していないからである。「アスリート向け」「運動向け」から「日常向け」にイメージ転換を図れば、カテゴリーのオンリーワンになれることを示している。

■失敗
 しかし、日本コカ・コーラには苦い過去があった。カロリーゼロのアクエリアスを2008年9月に市場に投入し、販売に苦戦し、撤退しているのである。その時はターゲットを女性としたが、味もいまひとつという評価となってしまったのだ。

■開発・発売
 市場の追い風を捉え、冒頭の「Fit body. Fit life. いきいきしたカラダへ」のスローガンも掲げた2010年。今を遡る2年前から「アクエリアス ゼロ」の開発はスタートしていた。飲料としては異例に長い、周到な準備期間だといえる。2008年の失敗を教訓として、何よりも中心は「味」の開発に置かれた。ターゲットの未充足ニーズである「すっきりした美味しさ」の実現だ。さらに燃焼系サポート成分である「カルニチン」も配合された。かくして、「カロリーゼロの水分補給」である「アクエリアス ゼロ」が5月7日に誕生した。

■コミュニケーション
 コミュニケーションターゲットとしてはビジネスターゲットである40~40代への波及効果を狙って35才という年齢が設定された。セレブレティーはオダギリジョーが選ばれ、CMは「軽い運動をサポートする」という意味合いから「チアリーダーが日常の運動を応援する」というシーンが演出された。
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 実は現代日本人のカロリー摂取量は戦後一貫して減少している。しかし、肥満を示す「BMI値」は上昇を続けている。要するに身体を動かさなくなっているのである。そこで、京都大学大学院人間・環境学研究科応用生理学研究室の森谷敏夫教授の監修を受け、「ちょこ運動」、つまり毎日こまめにカラダを動かすことを訴えることにしたのである。ターゲットが実践している「軽い運動」を無駄にしない、そのための燃焼系サポート成分「カルニチン」配合をさりげなく訴求する施策なのだ。

■マーケティングマネジメント
 よい製品を作っただけではモノは売れない。環境の変化を掴んで市場のニーズ、未充足ニーズ・市場機会を明確にし、ターゲットをはっきりさせる。ターゲットのKBF(Key Buying Factor=購買決定要因)を洗い出し、競合の動きを察知し、勝てる要素(KSF=Key Success Factor)を設定する。製品の「価値」を消費者まで確実に伝達して売る「しくみ」を構築すること。その一連の「マーケティングの流れ」をモレ抜けなく設計することが重要なのである。

 仕事は「段取り八分」ともいう。その意味からも、2010年から始まっていたアクエリアス ゼロの開発計画は、確実に「成功すべくして成功する」ことを狙った周到なマーケティングの勝利だということができるだろう。

2012.08.02

誰が・ナゼ飲んだ?アクエリアス ゼロ5000万本

 日本コカ・コーラの「アクエリアス ゼロ」が発売10週間で5000万本の販売を突破したという。どのような新たなターゲットとポジショニングを開拓したのであろうか。

 暑い。連日、うだるような暑さである。それは室内にいても容赦ない。国立環境研究所「平成23年度熱中症患者情報速報」によれば、熱中症の36%が室内で発生しているという。そこで、冷たいものを飲む。震災以降、ミネラルウォーターの備蓄をしている家も少なくない。だが、それではダメなのだ。電解質(ナトリウムなど)も補給しなくては体液が薄まってこれまたヤラレてしまうのだ。そこで、スポーツ飲料の出番である。水分吸収がいい。でも待てよ。スポーツしないのに、スポーツ飲料。なにやら最近、ポジショニングが変化していないだろうか。

 スポーツ飲料の草分けといえば「ポカリスェット」である。しかし、同商品が一貫して訴えてきたポジショニングは「水分吸収がいい」。それ一本だ。
 ポジショニングは通常、2つのキーワードを使って二軸で表現する。しかし、たった一言でその商品の魅力がより鮮烈に伝わるのであれば、それにこしたことはない。例えば、プレミアムカーのBMW。「駆け抜ける喜び」。単なる「走る」ではない。走ることによって喜びまで与えてくれるのがウチのクルマですよ、とひと言でエンスー(クルマ好き)をノックダウンする。同様に、輸液の最大手である大塚製薬は、「水分吸収」一本で勝負を賭けたのだ。

 飲料業界第1位の日本コカ・コーラは、しかし、そんな動きを見逃さなかった。リーダーの戦略の基本である「同質化」。先行する商品と同様のモノを開発して強固な販売力を活かして市場を席巻する戦略である。そうして開発されたのが、「アクエリアス」だ。その時、より「スポーツ」という消費者のKBF(Key Buying Factor=購入理由)を加えたのである。

 さて、「アクエリアス ゼロ」は誰が飲んでいるのか。スポーツをするなら、カロリーを消費する。しかし、チョビッとしかカラダを動かさない層にとってスポーツドリンクのカロリー数は脅威である。すると、「アクエリアス ゼロ」が取っているポジショニングは、「水分吸収」×「太らない」で、「スポーツ」はどこかに消えてしまったことを意味している。しかし、そのポジショニングが、潜在的にスポーツ飲料のカロリーを気にしつつ、水分吸収の機能に魅力を感じていた層にウケたのである。

 「アクエリアス ゼロ」はアクエリアスのブランドエクステンションである。しかし、他にも数ある派生商品とは異なり、本体ブランドが取り込めていないターゲット層を見事にすくい取った商品であるといえる。この商品はさらに暑くなるこの夏をバネにして「それいけ1億本!」という勢いでブランドの新定番になって行くに違いない。

 

2012.08.01

売れるか?プリウスPHV:トヨタのポートフォリオ計画

 目標年間4万台に対して半年で5千台の販売と業界筋では言われているプリウスPHV(プラグインハイブリッド)。苦戦である。そこには商品の良さが伝わり切れていないというだけでなく、戸建て住宅でないと充電設備が設置できないというハードルが存在する。しかし、巻き返しのチャンスも到来しているようだ。

■トヨタのポートフォリオ計画

 トヨタのラインナップにおいて、プリウスはもはや「金のなる木」として存在している。初代発売以来15周年を迎え、かつての金のなる木、カローラを過去の存在として「黙っていても売れるオイシイ車種」となっているのだ。
 代わって、ポートフォリオの「花形」の存在となっているのは「アクア」である。本体価格の安さや取り回しの良さがウケて大ヒット。なおも伸び盛りの車種となっている。
 そして、「問題児」のポジションにあるのがプリウスPHVである。ポートフォリオマネジメント(PPM)の原則からすれば、「次世代スター」に「問題児」を育てるためにはコミュニケーションコストを中心として多額のキャッシュを「金のなる木」から搾り取って投資する必要がある。しかし、オイシイ金脈が転がっているのである。

■「問題児」の育成にオイシイ補助金

 「エコカー補助金(環境対応車普及促進対策費補助金)」がそろそろ底を尽きると囁かれている。しかし、リリースによればエコカー補助金はこれだけではないという。「クリーンエネルギー自動車等導入対策費補助金(通称:CEV補助金)」。実は、PHV、EV、クリーンディーゼル車にはという“第2のエコカー”を対象とした補助金が存在するのである。現行の制度では、平成25年2月28日までに新車登録された対象車に適用されるため、通常のエコカー補助金が切れる今後、申請の増加が見込まれている。

■マクロ環境(PEST)分析の「Political」要素がカギか?

 マクロ環境における「政治的な影響要因」は主に規制事項に注目することがポイントだが、今回に関しては前述の通り、「補助金」という要素が大きい。もう一方で、「消費税増税」という大きな要素も忘れることはできない。補助金との関係で考えれば、今車検を迎えるユーザーが次回の車検を迎える2014年度には今よりも消費税は8%となって3%上がる。自動車購入に際して3%の差額は約10万円多く支払うことになり、CEV補助金の適応がなくなることも考慮に入れると、プリウスPHVにおいては50万円以上の差額が出ることになる。一部では消費税増税をにらんでプリウスだけでなく、自動車、住宅など高額商品の購入を考える層が増えているという。それが追い風になるのか。

■ロイヤルカスタマーの動きがキモ

 昨今の自動車の買換年数は平均10年を超えており、そんなに話はうまく進まないようにも思われる。
だが、 だが、トヨタマーケティングジャパンの資料によると、トヨタ自動車が集計した「プリウスPHV」の下取り車内訳では、元プリウスユーザーが4割超を占めていることが判明しており、「プリウス」から「プリウス PHV」に移行する彼ら先進層を確実に囲い込むことが、「次世代エコカー」市場を制するためのカギになるという。しかも、現行のプリウスが発売3年目を迎え、今夏から毎月約2万人以上のペースで、初回車検のタイミングを迎え始めていることになるというのである。
しかも、リリースによると、プリウスユーザーは約3割が1日当たり30km以上を走行しており、20km以上を走行する割合も乗用車・ワゴンを所有する全体数より5%以上高く、4割を超えているという。また、プリウスユーザーの4割が、月1回以上の頻度で遠出(100km以上運転)をしており、これは乗用車・ワゴンを所有する全体数と比較して15%も高い数値となり、2~3カ月に1回の割合で遠出をする頻度も10%以上高く、プリウスユーザーの長距離運転の頻度が大幅に高いことが見てとれるという。

 アクティブな現行プリウスユーザーの存在。それが、どの程度プリウスPHVへ移行するのか。トヨタがいかにロイヤリティーを獲得できていたのかが試されるところである。


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