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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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July 2012の3件の記事

2012.07.31

スピード経営と顧客視点:アパレルブランド「kay me」の場合

 外資系コンサルティング会社出身の毛見純子(maojian works株式会社 代表取締役)はマーケティングコンサルティング会社経営のかたわら、自らも働く女性としての視点を活かし、アパレルブランド「kay me」を立ち上げた。そのスピード感とマーケティングエクセレンスな展開をインタビューで追ってみよう。(文中敬称略)

■事業への想い

 3.11・東北地方太平洋沖地震。形ある物が儚くも消え去り、その後経済の停滞が続いた。その様を見て、コンサルティングを生業とする毛見は「有形のモノを生み出して、経済の復興の一助となりたい」との思いを強くしたという。
 事業としてアパレルを選んだのは、自らが大阪・繊維関係の商家出身であることと、何より自らがリアルターゲットとして「ニーズに応えてくれる服がない。同様な未充足ニーズを抱えている人が少なくないに違いない」という読みからであった。

■「差別化集中戦略」としての事業ドメイン設定

 アパレル業界のトレンドはファストファッションやユニクロに代表される低価格大量生産と、モード系ブランドのような高価格少品種に二極化している。つまり、マイケル・ポーターが「企業戦略の3類型」で指摘した「コストリーダーシップ戦略」と「差別化戦略」である。そこで、毛見は第3の選択肢を取った。「集中戦略」である。ジャージー素材と呼ばれる伸縮性のある素材のみを使用したイタリア製プリント柄の「働く女性のための」ワンピース。そのニッチなドメインに勝負をかけた。

■キャリア女性の未充足ニーズ

 勝算はあった。毛見自身がキャリア女性であるが、朝から夜遅くまでの長時間労働を動きにくい黒いスーツに身を固め働く姿を目にするに、「もっと楽に、職場でも華やかに過ごしたい」という未充足ニーズを感じていたという。
 毛見はフットワークを使った調査を開始した。有楽町阪急、西武(当時)、セレクトショップのエスティネーションなどキャリア女性の買い物場であるショップを徹底的に調査した結果、「華やかでカラダを楽に過ごせるジャージー素材のワンピース」が売り場にないということを実証した。調査対象はアラフォー、アラサーキャリア13ブランド426着(売り場の型数)。そのうち、ワンピースは59着。ジャージー素材は23着。さらに、時間が経っても着崩れないタイプで、1着4万円以下のものはゼロだったという。
 ここで重要なポイントは、「市場調査」といいうと、フォーカスグループインタビューやネット調査などの実施が思いつくところであるが、「答えはデータの中にだけにあるわけではない」ということだ。自分の仮説を元に、何が売れるのかを「現場」で探索することの重要性が示されているのだ。

■バリューチェーンの構築

 「売れる商品」というKey Success Factor(KSF=成功のカギ)がわかっても、その商品を作るためのバリューチェーンを構築しなければ事業として成り立たない。調達→パターン製作→縫製→在庫→出荷→販売→アフターサービスという一連のビジネスプロセスを実現しなければならない。そこで毛見はSNSやFacebookのつながりを辿り、大阪・船場の繊維商社との窓口を開拓することに成功した。しかも、毛見の熱心なプレゼンテーションによって「kay me」ブランドの将来性が買われ、大きな費用がかかる生地の在庫負担などバリューチェーンの大半のリスクを商社が負ってくれる契約を取り付けた。キャリア女性が手軽に手が届く1着4万円以下の価格実現も堅持した。
 驚くべきはここまでのスピードだ。震災を機に事業を思い立ってから実に1ヶ月強しか経っていないのである。

■半径5メートルでの実証調査

 毛見の最初の会社であるベネッセ。女性の多い会社としても知られているが、その元同僚にも同窓会で商品が出来上がるまでの間にヒアリングを行った。その結果、服のタイプと値ごろ感は大きな賛同を得られた。手応えがさらに強まった。
 商社とのバリューチェーンが動きだし、商品が完成した。そこで毛見は「試着会」の開催に動いた。商品を30着制作してFacebookで来場者を募り、ホテルの一室での試着会も行った。「kay me」ブランドが世に出た瞬間である。参加者は服を気に入るだけでなく、参加者同士で「このニーズは私だけではなかった」という共感が広まった。するとその場で「売って欲しい」という要望が相次ぎ、全着が完売した。そこに至って大きな手応えを感じたという。
 ここでも注目すべきは、スピード感を重視した「自分から半径5メートル以内」での調査・検証だ。ビジネスの確度を高めるためには調査は欠かせない。しかし、そこで時間を費やしてスピード感を失えば本末転倒になる。最初の30着が売れたのは、事業発案から僅か3ヶ月目のことである。

■利便性向上へ

 「kay me」ブランド販売開始から8ヶ月後の2012年2月。それまで銀座7丁目のマンションの一室に開いていた「予約制サロン」の限界が露呈し始めていた。ターゲット顧客であるキャリア女性の買い物時間と運営時間が合わないのである。また、地方からの引き合いも多くなってきた。そこで、顧客の元へ商品数着を届け、気に入った商品を購入してもらうという「無人外商サービス」である「試着便」サービスを始めた。米国の靴の通信販売で有名な「ザッポス」と同様、不要であれば返品自由というしくみだ。サービスを始めてみると、「手持ちの服と合わせて試せる」「家人の意見を聞くことができる」と大好評であり、数着送った商品の中から必ず1着は購入してもらえるという結果になったという。
 ここで注目すべきは、顧客に対して実現しているのは「利便性の向上(Time saving)」だけではないということだ。実は、利便性を上回る「痒いところに手が届く」=「私のニーズに細かく対応してくれている」という「心理的な満足感(Peace of mind)」が実現されているのである。店舗の悪条件を克服するために、顧客の立場で考えたサービスの結果である。

■銀座4丁目の常設店舗開設へ

 さらなる顧客利便性の向上のため、7月に銀座4丁目に店舗を開設した。営業時間は20時まで。予約があれば21時まで開店しているという。
 開店して1ヶ月経ってわかってきたことも多い。何といっても顧客の買いやすさが向上した結果、売上が大きく伸長した。それだけではない。店が顧客同士のコミュニケーションの媒介となっている点が大きい。単独客もいるが、グループ来店の顧客も多いという。そこでの顧客とのやりとりの情報は重要な商品開発のヒントになる。現在、さらなる品目数の増産を計画中であるという。

■「マーケティング3.0」の実現

 フィリップ・コトラーは、これからのマーケティングは「顧客との共創」が重要であるとして、「マーケティング3.0」を著した。その実現された姿が「kay me」では見て取れる。
 銀座4丁目の店舗内だけでなく、多くの購入客とはメールのやりとりが続いている。その中で、他の人が「kay me」をステキに着こなしている姿を見た情報や、自分が着て人から褒められた話などが寄せられ、商品の柄やパターン、ディテールなど、より売れる商品のヒントが得られている。また、生地の柄選びにおいては、大手企業の秘書課を訪れ秘書全員に人気投票をしてもらい感想を聞いたこともあるという。 
 「試着便」も新たな使われ方をしはじめた。熱心なファンである顧客が、地方の自宅で自主的に友人を集めて「試着会」を開くようになってきているというのである。それは海外在住の顧客の間でも広まりつつあり、「kay me」ブランドは顧客の手によって海を渡るようになってきたのだ。

 「スピード経営」「顧客視点」「マーケティングの整合性」。ビジネスの課題としてはよく上がることではあるが、その実現は容易ではない。それをスピーディーに、軽やかにやってのけている毛見純子とブランド「kay me」。その原点は、「自分自身も一人のターゲット顧客として、顧客視点で考えること」にある。インタビューの最後に、「kay meを一番好きな顧客は誰か」と尋ねたところ、「それは自分だと思う」と即座に回答があった。
 画家のミレーは「人を感動させるためには、まず自らが感動しなくてはならない」という言葉を遺した。自らの商品・ビジネスへの愛、そして顧客へ向けた視点を、まだ小さなブランドから学ぶことは多いといえるだろう。

2012.07.03

【連載リンク】金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第12回:カルピス

 今回は誰しもが知るブランド、「初恋の味」、カルピスです。ブランドの歴史は遠く大正時代にまで遡りますが、特に今年実施された新型ボトルの投入など、新しい動きにもフォーカスをしてお話を伺ってきました。

 ・ ・ ・ ・ ・ 

  独特の甘酸っぱい香りとさわやかな風味で子供から大人まで愛されている「カルピス」。誕生は大正時代にさかのぼり、「初恋の味」という名キャッチフレーズも生まれました。おいしさの秘密は、生乳を脱脂し、「カルピス菌」で乳酸発酵させ、熟成後、再度酵母発酵させる製法です。今年6月、大正から続く水玉柄を残しつつ、容器のデザインを大幅に刷新。新たな飛躍を目指しています。コンク・ギフト事業部 統括マネージャーの逸見将氏に聞きました。


○記事はこちらから!→ http://adv.asahi.com/modules/long_seller/index.php/calpis_0.html

2012.07.02

伊藤園のトクホ炭酸飲料戦略

 伊藤園から新しいトクホ飲料が発売された。その注目ポイントを考えてみよう。

Itoen


 新商品は本日より全国発売される「Stylee Sparkling(スタイリー スパークリング)」500mlペットボトル。同社のニュースリリースによれば、中性脂肪を減らす作用のある柑橘類由来のポリフェノールの一種を配合し、中性脂肪が高めの方や、脂肪の多い食事を摂りがちな方に適した製品設計にしたとしている。また、価格は150円。主な販路は全国のコンビニエンスストアや量販店などの全業態で展開。プロモーションは、新作TV-CMを放映し、新たな付加価値のある炭酸飲料として広く市場に認知させ、定着を図っていくという。つまり、伊藤園としてのかなりの本気度が伺えるのである。

 本気度を示す一番の証拠が「価格」である。トクホ炭酸といえば、トクホの代表格である花王の「ヘルシア」ブランドから派生した「ヘルシアスパークリング」が先駆けであるが、価格は189円だ。「トクホのコーラ」として話題になった「メッツコーラ」も価格政策としては、通常のコーラと10円程度しか変わらないという157円で投入し、コストパフォーマンスの良さもあり大人気となっている。そして、伊藤園は「トクホなのに通常の清涼飲料の価格と全く同じ150円」という、高付加価値・中価格である「高価値戦略」を取ってきているのである。

 150円という価格が実現する可能性としては、「自販機での販売」がある。リリースでは「全国のコンビニエンスストアや量販店などの全業態」としているが、150円・500mlという価格は通常の飲料と並べて自販機で売れる可能性を示唆している。同じトクホであるサントリーの「黒烏龍茶」も自販機で販売されているが、170円・350mlと割高感が出てしまい、正直なところ、売れ行きは芳しくないと業界筋はコメントしている。
 自販機での販売を示唆するものとして、ボトルの形状が挙げられる。通常、コンビニを販路とした場合、他商品との差別化を図るため、ボトルを特殊形状(サントリー伊右衛門の竹筒型が有名)にする。一方、自販機の場合、機械への収納と破損防止の観点から極めてシンプルな形状にするのが普通だ。伊藤園の「Stylee Sparkling」の場合、まさしく後者である。

 ターゲットに関しては、炭酸好きの40代50代男性を設定しているようだ。だが、ヘルシアスパークリングが20代後半から30代女性をターゲットとしてスタートして、男性に購買層が広がったように、女性層への広がりも期待できるかもしれない。何より、味が「ショウガとレモンの風味で後味すっきり」と女性好みにも仕上げている。あとはどのようなCMを展開するかにかかっているだろう。

 お茶といえば「お~い、お茶」の伊藤園。野菜飲料、そして、時間をかけて立ち上げたTULLY’Sブランドの缶コーヒーに続く、第4の柱になるか。その売れ行きから目が離せない。


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