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2012.06.18

「補聴器」の普及を考える

 ここに一つのデータがある。2011年度の補聴器年間出荷台数48.8万台。そしてそれは、ここ数年横ばいだという。(日本補聴器工業界調べ)。

 聴力に不自由を感じていない人が増えていないなら、横ばいは結構なことだろう。だが、年々難聴が増える環境にあるのも事実だ。「騒音性難聴」という。大音量で長時間使用するヘッドホン。都心部の騒音環境などがそれを作り出しており、通常は40代ぐらいから低下する聴力が最近では20代から衰え始めているというのである。

 もう一つ見逃せないのが、補聴器システムの在り方研究会・著の「補聴器システムの在り方に関する研究・二年次報告-補聴器普及のシーズに関する調査」にある数字だ。聴力が低下している人の推定人口は、日本の総人口の約15.43%。それを母数として、“『きこえ
』に不自由を感じているものの、一度も補聴器を使用したことがない人“が約29%もいることだ。無自覚な難聴者は47%と大きな数字を占めているが、それは検診機会を増やすなどの方策が考えられる。しかし、一度も使っていなという層は、金銭的な理由を除けば補聴器そのものに「抵抗感」があるのだと推察できる。

 ナゼ、抵抗感があるのか。それは、「ネガティブなイメージ」によるものではないか。47%の「自覚ある補聴器の潜在需用者」は「付けていることが目立つことがイヤ」という購買棄却理由を持っているのではないだろう。故に、現在の補聴器のポジショニングは「目立たない×よく聴こえる」ことをKBF(Key Buying Factor=購買要因)として訴求している。しかし、「完全に見えない補聴器」をつくることはできない。その訴求では限界があるのではないだろうか。ネガティブなイメージが「試用」を躊躇させて、普及の妨げになっているのではないかと考えられるのだ。人の購買に至る態度変容を表した「AMTUL」で考えても、A=Awareness(認知)→M=Memory(記憶)という段階まで進んでも、T=Trial(試用)で断絶し、U=Usage(日常使用)→L=Loyalty(手放せなくなる)という過程に進まないのだ。

 価値観の転換が必要なのだろう。現在、補聴器各メーカーもカラフルなカラー・柄、オシャレなデザインの商品を開発・発売している。自ら装飾を施した「デコ補聴器」を作り上げているユーザーも登場している。それをさらに推し進め、「補聴器はQuality Of Life(QOL)を高めるポジティブなツールである」というポジショニングを確立する必要がある。

 そのためにはポジショニングを実現する整合した4Pが求められる。
 Product(製品)としては、「アクセサリー的に積極的に“魅せる”補聴器」というレベルまでデザイン性を高めてはどうだろうか。そうした商品が受け入れられるのであれば、次のキモはPlace(販路)だ。補聴器の販売店は細かい調整やコンサルティングが必要なため、狭いチャネルに限られている。それを、Promotion(販売促進)を兼ねて広げるのである。最終的に販売・調整するのは技術を持った既存の販売店とするにしても、受注・送客は例えば低価格眼鏡店など、より多くの店舗数を持っているチャネルにバックマージンを払って利用するのである。ファッション感覚でメガネを選ぶというKBFとも整合する。Awareness → Memoryだけでなく、デザイン見本(モック)を置くことによってTrialまで態度変容を一気に進ませることができる。
 残るはPriceの問題であるが、新たなポジショニングが定着し、「魅せる補聴器」の販売が29%の自覚的潜在需要層により多く進めば、「規模の経済」が働いて原価率が低減し、低下が安くなっていくに違いない。そうすれば、より多くの人に普及する加速が付くことだろう。

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