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12 posts from June 2012

2012.06.28

P&Gの徹底した「引き算戦略」

 先頃発表された「2012年上期・日経MJヒット商品番付」。その西の前頭三枚目に異色の商品が列せられた。P&Gの「レノアハピネス アロマジュエル」である。「レノア」といえば多くの人が知る同社の「衣類柔軟仕上げ剤」のブランドだ。だが、この商品は衣類をふんわりと仕上げるという機能、つまり柔軟仕上げ剤の機能がない。「香り付け専用」なのである。この商品の狙いは何だろうか?

 「レノアハピネス アロマジュエル」の売上は凄まじい。2012年2月中旬より発売開始をしたところ、わずか3週間で当初予定の2.5倍の売上を記録。3月中旬より出荷を一時停止するほどの人気商品となったのである。前頭三枚目に列せられた理由もその辺りにあるのだろう。

 柔軟仕上げ剤の「中核価値」は、「衣類をふんわりと仕上げること」だ。それをどのように実現するかという「実体価値」である「より肌触りの良い仕上がり」に各社がしのぎを削る。しかし、P&Gが米国を中心に販売していた柔軟仕上げ剤「ダウニー」の香りが日本でも大ヒットしたことから、近年、「付随機能」である「良い香りの仕上がり」が注目されるようになってきた。コモデティー、成熟市場である柔軟仕上げ剤では、もはや中核価値、実体価値での差別化が困難になっていたため、現在の主戦場は付随機能である「香り」となっているのだ。

 成熟市場で製品の価値構造を変化させている例としては、カラオケボックスが挙げられる。業界第1位のシダックスでは、カラオケボックスの中核価値である「歌を歌う」という要素を廃し、さらにそれを実現する実体価値である「カラオケマシン」までをスポイルさせて「歌わないカラオケルームの使用法」を提唱している。用いるのは実体価値の「個室・防音」という要素と、付随機能の「飲み物の給仕」だ。つまり、カラオケボックスの「会議室利用」を推奨しているのだ。一般の貸し会議室より料金が安価であることから、特に日中は人気を博しているという。価値構造の中核と実体の一部を「引き算」して新たな価値創造を行ったのである。

 「レノアハピネス アロマジュエル」は従来の柔軟仕上げ剤の価値構造を変化させ、中核はおろか、実体も全て捨て去り、カテゴリーの枠を飛び出した徹底した「引き算戦略」を実行したのである。
 実は、P&Gは以前にも「引き算戦略」の商品を2009年に上市している。衣類用洗剤の「さらさ」である。同商品は中核価値である「衣類の汚れを落とす」ことにフォーカスし、実体価値である「より白くする」という機能を引き算した。つまり、漂白剤や蛍光剤成分を取り除いた商品として製品化し、「洗剤の余計な成分が気になる」という層をターゲットとしたのである。

 「レノアハピネス アロマジュエル」の引き算戦略の真価はどのように現れるのか。それは、「+α」の売上をもたらしてくれるのだ。P&Gによれば、「使用量によって好みの香りの強さを実現できる」としているほか、「他の柔軟仕上げ剤と組み合わせて好みの香りを作れる」ことをアピールしている。それはもちろん、自社の製品に対してだけではない。競合他社の商品との組み合わせも当然OKだ。
 P&Gは柔軟仕上げ剤のシェア1位ではない。そして、トップから1位を奪取することは容易ではない。だが、徹底して「引き算」を行って価値構造を変化させた結果、柔軟仕上げ剤というカテゴリーの商品ではなくなった、「レノアハピネス アロマジュエル」は他社商品と共生できる無敵の存在となったのだ。

 「顧客はドリルが欲しいのではない、穴を開けたいのだ」とは、顧客ニーズの本質についてセオドア・レビットが著した有名な言葉だ。
「顧客はふかふかだけが欲しいのではない、良い香りが欲しいのだ」。消費者のニーズは刻一刻と変化している。それを見極め、価値構造を変化させ、大胆な「引き算」を展開したP&Gの勇気が大ヒットにつながったのだといえるだろう。

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2012.06.27

「試してシュー」を狙う資生堂

 資生堂が男性向け制汗剤の販売強化策を展開している。そのキモは、「お試し」と「口コミ」だという。

 6月27日付日経MJ記事によれば、同社の制汗剤ブランド「エージープラス」を男性向けに販促展開を強化するという。
 そもそも、制汗剤といえば女性向けのイメージが強いが、女性用市場は横ばいが続く中、男性用は2桁の伸びを示しているという。「ニオイを気にする、清潔志向の男たち」によって市場環境が変化しているのである。

 一人二人のイノベーターが使い始めたのではなく、アーリーアダプター層まで拡大したとすれば、第一のキモは「試用」である。E.M.ロジャースの「普及要件」的にいえば、「試行可能性」。消費者の態度変容モデルである「AMTUL(Awareness:認識→Memory:記憶→Trial:試用→Usage:日常使用→Loyal:ロイヤル化)」で考えれば「Trial」をいかに実現するかが最初の難所だ。
 そこで資生堂は制汗スプレーとシートを組み合わせた試供品をオフィスに無料で提供するという施策を展開した。記事によれば<オフィスのトイレなど共有スペースに試供品を設置><制汗スプレーなどを職場で使うことへの抵抗感を和らげる>とある。

 もう一つのキモが、「口コミ」だ。一人で「シュー」とするのはどこか気恥ずかしく、やりにくい。みんなでやれば恥ずかしくもなく気持ちよさが共感できる。<共有してもらうことで商品が話題になる効果が期待できる>としている。
 インターネットでの口コミ伝播に注目した「AISAS(Attention:認知→Interest:興味→Search:ネットでの検索→Action:購買行動→Share:ネット上での共有)」で考えれば、試用した商品がどんなものなのかを検索してより知ってもらうこともでき、試用感をTwitterやFacebookなどで共有するという行動が期待できるのだ。

 この施策を資生堂は<まず、400~500カ所で始め、7月中に2000カ所程度まで増やす目標>だという。伸長目覚ましい男性用制汗市場は、成長戦略のフレームワークで考えれば、「従来の商品を、新たな市場に展開する」という「新市場開拓」にあたる。ここでいう新たな市場とは、地域的な拡張ではなく、あらたな属性(この場合は異性)に展開することを意味している。
 制汗市場の新市場開拓が、この販促施策でどこまでさらに伸長できるか要注目である。


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2012.06.20

シニアターゲットで生き残りを狙う第一興商

 今日、カラオケボックス業界は衰退の危機に瀕している。2007年度の市場規模は4270億円で10年前比35%低下であるという。施設でみれば、ルーム数も129,400室と同10年前比8割の水準である。(全国カラオケ事業者協会調べ)市場は成熟期を過ぎ衰退傾向が顕著である。そんな環境下で生き残りを賭けた一手を第一興商が放った。

 6月20日付けの日経MJ記事によれば、同社は奈良に所有する温浴施設にシニア向けのカラオケコーナーを開いたという。体操用にアレンジした歌謡曲などの演奏に対応した同社のカラオケマシンを設置して、体操や歌謡教室を週1階1時間、無料で開催する。
 同社は教室を施設の目玉と位置付けているようだ。2012年度の年間入場者数で11年度比4割増の10万人を目指すという。

 もちろん第一興商の本業は温泉施設の運営ではない。カラオケボックスの運営である。いかにそこにつなげるかがキモとなる。
 温浴施設での展開のミソは、「週1回1時間」というところだろう。明らかに物足りない。そこで、実は施設内にはカラオケルームが4つ併設されているという。「それでもまだ足りない!」というシニアは街中の同社カラオケボックスに足を運ぶに違いない。

 成熟産業で生き残りを目指すなら、一つは「新市場への展開」が考えられる。「新市場」といっても2通りの意味がある。一つは文字通り「地域的な拡張」だ。多くの産業がアジア新興国を目指しているのがそれだ。もう一つが「新たな属性への拡張」である。女性向けラインのブランドが男性向けを出すという展開などはそれにあたる。第一興商の展開は正にそれにあたる。
 街中のカラオケボックスをみてみれば、若者をメインとして、夜は二次会の会社員や、まれに昼間利用のママ友などが利用層で、シニアの姿はほとんど見られない。その未開拓層を温浴施設から既存の自社カラオケボックスに送客することが、この温浴施設の「歌謡教室」の裏ミッションなのである。恐らく、温浴施設オリジナルの体操曲や楽曲も既存店全店に配信されるようになるに違いない。

 「販売シナジー」という。販売拠点を活かして新たなビジネス要素との相乗効果を生む。例えば、セブン銀行はセブンイレブンという顧客ベースと販売拠点を活かしてATM事業を始めた。第一興商は街中に数多くのカラオケ店があり、そこをシニアの受け皿とすることを考えているのだ。

 日本市場は成熟し、今後衰退していく可能性も濃厚だ。そんな中で生き残りを図ろうとするなら、今まで見逃していた属性はないかを見直すことと、自社内で活用できるシナジーが働く既存のリソースがないかを洗い出すことが欠かせないのである。

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2012.06.19

人間観察ブログ好調更新中

マーケティングの基本は人間観察。・・・ということで、「人間観察ブログ」、好調更新中です。

リンクはこちら→ http://kmo.air-nifty.com/tw/

街で見かけたこんな人、あんな人。
一瞬見ただけではただの「通行人」ですが、よーく観察すると、そこには「ドラマ」が見えてくるのです。

観察の武器は鋭い観察眼と地獄耳。
そして、ブログ記事にする時は背景情報をインサイト(洞察)する果てしない妄想力。

実はこれらの要素は、マーケティングの基本であるターゲティングと、その応用である「ペルソナ」(一人のターゲット人物像を詳細に記述していく手法)の練習になるのです。

さて、あなたは今日、街でどんなドラマと出会うのでしょうか?

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2012.06.18

「補聴器」の普及を考える

 ここに一つのデータがある。2011年度の補聴器年間出荷台数48.8万台。そしてそれは、ここ数年横ばいだという。(日本補聴器工業界調べ)。

 聴力に不自由を感じていない人が増えていないなら、横ばいは結構なことだろう。だが、年々難聴が増える環境にあるのも事実だ。「騒音性難聴」という。大音量で長時間使用するヘッドホン。都心部の騒音環境などがそれを作り出しており、通常は40代ぐらいから低下する聴力が最近では20代から衰え始めているというのである。

 もう一つ見逃せないのが、補聴器システムの在り方研究会・著の「補聴器システムの在り方に関する研究・二年次報告-補聴器普及のシーズに関する調査」にある数字だ。聴力が低下している人の推定人口は、日本の総人口の約15.43%。それを母数として、“『きこえ
』に不自由を感じているものの、一度も補聴器を使用したことがない人“が約29%もいることだ。無自覚な難聴者は47%と大きな数字を占めているが、それは検診機会を増やすなどの方策が考えられる。しかし、一度も使っていなという層は、金銭的な理由を除けば補聴器そのものに「抵抗感」があるのだと推察できる。

 ナゼ、抵抗感があるのか。それは、「ネガティブなイメージ」によるものではないか。47%の「自覚ある補聴器の潜在需用者」は「付けていることが目立つことがイヤ」という購買棄却理由を持っているのではないだろう。故に、現在の補聴器のポジショニングは「目立たない×よく聴こえる」ことをKBF(Key Buying Factor=購買要因)として訴求している。しかし、「完全に見えない補聴器」をつくることはできない。その訴求では限界があるのではないだろうか。ネガティブなイメージが「試用」を躊躇させて、普及の妨げになっているのではないかと考えられるのだ。人の購買に至る態度変容を表した「AMTUL」で考えても、A=Awareness(認知)→M=Memory(記憶)という段階まで進んでも、T=Trial(試用)で断絶し、U=Usage(日常使用)→L=Loyalty(手放せなくなる)という過程に進まないのだ。

 価値観の転換が必要なのだろう。現在、補聴器各メーカーもカラフルなカラー・柄、オシャレなデザインの商品を開発・発売している。自ら装飾を施した「デコ補聴器」を作り上げているユーザーも登場している。それをさらに推し進め、「補聴器はQuality Of Life(QOL)を高めるポジティブなツールである」というポジショニングを確立する必要がある。

 そのためにはポジショニングを実現する整合した4Pが求められる。
 Product(製品)としては、「アクセサリー的に積極的に“魅せる”補聴器」というレベルまでデザイン性を高めてはどうだろうか。そうした商品が受け入れられるのであれば、次のキモはPlace(販路)だ。補聴器の販売店は細かい調整やコンサルティングが必要なため、狭いチャネルに限られている。それを、Promotion(販売促進)を兼ねて広げるのである。最終的に販売・調整するのは技術を持った既存の販売店とするにしても、受注・送客は例えば低価格眼鏡店など、より多くの店舗数を持っているチャネルにバックマージンを払って利用するのである。ファッション感覚でメガネを選ぶというKBFとも整合する。Awareness → Memoryだけでなく、デザイン見本(モック)を置くことによってTrialまで態度変容を一気に進ませることができる。
 残るはPriceの問題であるが、新たなポジショニングが定着し、「魅せる補聴器」の販売が29%の自覚的潜在需要層により多く進めば、「規模の経済」が働いて原価率が低減し、低下が安くなっていくに違いない。そうすれば、より多くの人に普及する加速が付くことだろう。

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2012.06.13

「香りの衣料」の登場とこれから

 「香り付きシャツ 女性客取り込め」。6月13日付日経MJ記事のタイトルだ。衣料品専門店で香り付きの商品を販売する動きが広まっているという。そのワケは何だろうか。

 製造・販売を手がけているのは「マックスハウス」や「クロスカンパニー」。香りのヒミツは<生地の表面に微少のカプセルを付着させた>という。
 マックスハウスは異色のコラボレーションでそれを実現した。香りの正体はライオンの柔軟剤「ソフラン」だ。マックスハウスがライオンに打診し、実現。店頭ではソフランの実物を置いて香りをアピールしているという。
 ナゼ、「香り」が脚光を浴びるようになったのか。<「業界全体が価格競争に陥るなか、香り付きシャツは競合との差異化につながる」>と、マックスハウスの担当者は語っている。

 ユニクロに代表されるSPA(衣料品の製造小売り)が業界のスタンダードとなりつつあり、H&Mやforever21など海外ファストファッションも攻勢を強めるなか、本来、オシャレを楽しみ、人との違いを演出する衣料はどんどんコモデティー化し低価格化が進んでいった。
 製品のライフサイクルが「導入期」→「成長期」→「成熟期」→「衰退期」と進むほど、消費者の期待は本質的な部分から遠くなっていく。製品を手に入れることによって実現したい「中核価値」→その実現に欠かせない要素である「実体価値」→中核の実現に直接関わらないが、存在を期待される「期待価値」→本来期待されていないが、あれば価値が高まる「拡大価値」→通常意識されていないが、提示されれば価値が評価される「潜在価値」。フィリップ・コトラーの『製品特性5層モデル』である。衣類の「香り」は典型的な「潜在価値」であるといえるだろう。つまり、SPAによる「低価格・中品質衣料」が完全な成熟期を迎えたからこそ、登場したという背景があるのだ。

 成熟期のマーケティング目標は、成長期の「シェア拡大」とは異なり、「シェア維持・顧客囲い込み」である。しかし、記事では<香り付き衣料も「大手量販店も商品化する動きが見られる」>としている。同質化と模倣の泥沼に陥る可能性も否めない。その中で、さらなる付加価値が求められるのは間違い状況なのである。


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2012.06.12

「ステテコ外出」は流行るのか?

 「すててこ」=(1)ズボン下の一種。さるまたより長く,膝 (ひざ)の下あたりまであるもの。(大辞林)

 下着である。れっきとした。それが街に飛び出そうとしている。

 6月12日付日本経済新聞消費欄の「旬スポット」にユニクロ銀座店の様子が伝えられている。「ステテコBAR」というらしい。<バーテンダーと名付けた店員が、タブレットを使いながら、部屋着やレジャーなど用途に応じたコーディネートを提案する>という。<「レジャーで着るなら襟付きのポロシャツと合わせるのがお薦めです」>という具合に。

 記事では<ステテコは肌着として親しまれてきた。このため「外出時に着るのは抵抗があった」(55歳会社役員)>という声が紹介されている。
 筆者、カナモリ(46歳自営業)の場合、肌着としての親しみはない世代だ。(つまり、ズボンの下にも履いたことはない)。しかし、親父や社員旅行の温泉場で見た上司のステテコ姿は知っている。で、はっきり言って「カッコワル~」と思っていた。そういう世代である。
 しかし、時代は変わった。<(ユニクロは)色鮮やかな商品が並ぶ売り場で「カクテルを選ぶように選んで欲しい」>と提案しているのだ。確かに、プリント柄のカラフルなヤツなら、部屋でなら履いてもいいかしらん?と少し思う。

 だがやはり、外出は別だ。なんたって、元が下着なんだから。ただ、快適そうではある。そこで、E.M.ロジャースの「イノベーション普及要件」で、「ステテコ外出」が普及するかを考えてみよう。

1.相対優位性
 →ジーンズやチノパンに比べれば圧倒的に涼しいだろう。いや、コットンのハーフパンツに比べても、ヘロっとした素材は涼しいはずだ。今年も節電の夏。涼しさは正義ですらある。優位性十分といえるだろう。
2.両立性
 →それこそ、TPOに併せて履き分ければいい。特に問題ない。
3.複雑性
 →ステテコがナゼ涼しいのか。その素材が涼しさをもたらすワケがうまく伝われば、有り難みも増そうというものだ。
4.試行可能性
 →決して高いモノではない。特にユニクロで売っているなら、「お試しに1枚」は容易だろう。試し買いして家の中でしばらく履いて慣れてしまえば、外出のハードルは低くなる。
5.観察可能性
 →目に見える効果=涼しい&オシャレとなると、涼しさが外すコトはないが、オシャレはともすると外すおそれもある。そこで、ユニクロの「ステテコBAR」なのだ。バーテンダーのコンサルティングによって成功確率を高め、失敗を回避する。ユニクロのビジネスモデルは、「まとめ買い」&「追加買い」だ。1枚買って失敗!では商売がたち行かない。故に、観察可能性=人からオシャレ!と言われるコーディネートを指南するのである。

 と、考えると、ヒートテックやブラトップと一世を風靡した商品を世に送り出したユニクロが本気を出し始めていることからして、この夏はステテコが街を闊歩するかもしれないのである。
 

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2012.06.11

【セミナー情報】論理的思考基礎セミナー

「ペンギンが考える」出版記念セミナー~90分で基礎から学び直す論理的思考~
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・日時:6月27日(水)19:00~20:30
・場所:半蔵門
・参加費:3,800円(書籍代・税込)
 (書籍を既に持っている方は2,600円)
・定員:20名


「わかっているつもり」だけれど、いざとなると実践できない論理的思考。それは、「基礎」がおさえきれていないから。

「ペンギンだって考えなければ生きていけない」。
大好評の書籍「ペンギンが考える」をベースに、今さら人に聴けない、
わかったつもりでもできていないかもしれない、そんなポイントをわかりやすい例題を解きながら学びます。


・アジェンダ概要

1.論点を押さえる
2.前提条件を疑う・確認する
3.分解して「ナゼ?」考える・深掘りする
4.分解して「どうするか」を考える・・・など

※テーマや予告無く変更する場合がございます。
また、進行上、省略するテーマが発生する場合もありますのでご了承ください。
        

【お申し込みと詳細】↓
https://www.insightnow.jp/communities/application/141
※ 登録画面が煩雑ですが、ご了承ください。

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2012.06.10

紳士服店でおしぼりを配る意図

 「冷たいおしぼりをどうぞ」は、飲食店ではアタリマエの風景。しかし、場所は紳士服量販店「はるやま」系の2プライススーツ店「P.S.F.A」の店頭である。(6月6日日経MJ記事より)

 ひとことで言えば、これは「アタマのいい販促」だといえる。
 「P.S.F.A」は来店客に買い物前にまず、冷たいおしぼりを提供するという。店ではおしぼり専用の冷蔵庫を店内に設置して、節電・スーパークールビズ対応する施策だという。考えてみれば来店客全てに配るということは、その分のコストが上昇する。購入してくれた客に「お礼」として提供するという手もあるはずだ。だが、あえて全ての来店客に提供する。

 おしぼりは習慣的に差し出されると受け取ってしまう。しかし、サービスを提供されると、何らか「買わなくちゃ」という負い目が心理的に生じる。「返報性の原理」という。<通常、人は他人から何らかの施しをしてもらうと、お返しをしなければならないという感情を抱くが、こうした心理をいう。この「返報性の原理」を利用し、小さな貸しで大きな見返りを得る商業上の手法が広く利用されている。至近な例では、試食がある。(Wikipediaより)>つまり、顧客心理を巧みに掴んだ施策なのである。
 さらに、店側としては、汗まみれで商品を試着されてしまうという問題を解決できる。おしぼり一本で二重にオイシイサービスなのである。実にアタマのいいサービスなのだ。

 このサービスから学べるところは大きいといえる。そもそも、サービスを始めようとしたきっかけは「返報性の原理」を狙ったのではないだろう。展開しているのは東京5店舗、関西7店舗。いずれも繁華街の1階に出店している路面店でのこと。つまり、暑い街中からいきなり店内に飛び込んでくる来店客に「駆けつけ1本」のおしぼりサービスを開始したのである。顧客の姿をよく見て、どんなニーズがあるかを見極めるところが原点であったはずだ。恐らくこの施策も「売上増」だったり、「顧客の固定化・ファン化」という効果が後から付いてくるはずだ。

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2012.06.05

商品再活性化の源泉は「デザインの力」:「スコッチ(R) メンディングテープ」の場合

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 「テープディスペンサーは使用頻度からすると99%は活動していないが、その1%の使用機会をいかに楽しく、驚きに満ちたものにするかがチャレンジだったんだ」。住友スリーエム初のデザインマネージャー、フィリップ・レフュアーは自ら発案したコンセプトである「進化したデザイナー文具」について語った。

■市場が消える?!

 「スコッチ(R) メンディングテープ」をご存じだろうか。粘着テープの表面につや消し加工が施され、貼り跡が目立たない。コピーをとってもほとんど影が映らず、テープの表面に文字が書けるという上質なテープのブランドである。だが、「知っている」という人は圧倒的に40代以上の人が多いはずだ。ナゼなら、パソコンの普及と共に「切り貼り」の文化がなくなり、オフィスでの需要が大きく縮小したからである。バブル崩壊以降の失われた20年という不景気も追い打ちをかけている。単に「貼るだけ」なら安価なテープで事足りる。ユーザーの認知は低下し、需要は細る。まさに市場消失の危機が目の前にあったといっても過言ではないだろう。

■「こだわりの個人」を狙え!

 「昨今、自分で使う道具を(企業や学校から)与えられたモノではなく、自ら買い揃えるという“こだわり”を持った人が増えているのです」。ステーショナリー製品マーケティング部部長の石川由佳はユーザーの変化を指摘した。
 市場縮小の中、ユーザーの変化は商機となる。大きく2つの戦略ターゲットが設定された。
 1.企業・学校などの中でこだわりを持った「組織内個人」
 2.将来にわたるユーザー育成対象としての若年層
 そして、戦略実行の第1弾として10代女性をメインとした製品企画が行われた。

■3Mがドーナツを売る?

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※スコッチ(R) メンディングテープ ドーナツ & スコッチ(R) メンディングテープ リングドーナツ

 商品は2008年に台湾でデザインされた。テープを包み込む親しみやすいリング型でドーナツを模した形状。日本のマーケティングチームで、「スコッチ(R) メンディングテープ ドーナツ」(写真左)という名称を決め、2010年1月によりドーナツらしい色やパッケージにブラッシュアップして上市した。さらに、2010年8月には「リングドーナツ」(写真右)として新しいシェイプのシリーズを展開した。
 ドーナツといえば、「ミスド」(ミスタードーナツ)である。同店の店頭で大規模なコラボレーションの販促が行われた。店頭での陳列に加えて、景品としてサンプリングを行ったのである。それによって、戦略ターゲットの認知・使用率をアップさせることに成功した。

■エモーショナルなコミュニケーション

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 ドーナツ型からの学びは「エモーショナルなコミュニケーション」の重要性だ。そこで、製品の第2弾を展開すべく、フィリップ・レフュアーがデザインを担当することとなった。「感性に訴える。使う楽しみ。User Experienceというものをカタチにしたかったんだ」と同氏は語る。
 2つの製品が企画された。1つはハート型。もう1つはボックス型だ。
 ハート型は普遍的なデザインであるが、より若い女性に持ち歩いてもらうような意図を込めて作られた。より「楽しい」ことを強調したのである。
 ボックス型は「感性に訴えたデザイン」である。ビジネスデスクに馴染むスクエアな静かなデザインであるが、ひとたび開けばその開き方、手応え、開閉音などがクセになる。そのデザインが認められ、2012年3月にドイツの「レッドドット・デザイン賞」を受賞した。

■製品価値を向上させる

 フィリップ・コトラーの「製品特性3層モデル」で考えれば、その製品を購入して実現したい「中核価値」とはテープカッターの場合、「テープが切れる」である。そしてテープディスペンサーにとってデザインは、「中核価値」とは直接関係のない、「あればウレシイ」=「付随機能」という要素だ。一般に、製品のPLC(Product Life Cycle)が進めば進むほど、求められる価値は「付随機能」に移行していく。その意味で一連のデザインされたテープディスペンサーは製品戦略の王道を歩んだといえる。
 しかし、3Mのテープディスペンサーは「付随機能」としてのデザインが優れているだけではない。従来のカタツムリ型と比べて、テープを包み込む形状であることから、テープ自体にホコリが付いたり汚れたりしない。また、キレイにテープが切れて、テープ本体に巻き付くような状態にならないという切れ味を実現している。つまり、「中核価値」を実現するための欠かせない要素である「実体価値」である「切れ味」「テープの保護」を向上させているのだ。

■4Pの整合性

 優れた商品(Product)を作っただけでは売れない。他の3つのP、価格(Price)・販売チャネル(Place)・販売促進(Promotion)との整合が求められる。
 価格は商品の特性からして、「手に取って使われてこそ」だ。いくら優れたデザインであるからといって、手を出しにくい高価なものであってはいけない。そのため、294円という価格が設定された。市場に広く行き渡ることを意図した「ペネトレーションプライシング(市場浸透価格設定)」である。販売チャネルは一般の文具店だけでなく、Loftや東急ハンズといった「こだわりのターゲット」が集うチャネルをおさえることに注力した。プロモーションは商品力を活かし、POPなどで商品を目立たせるという店頭訴求を行っている。

■商品再活性化のコツとは

 前述の通り、商品を再活性化するためのコツとは、1つは「商品力の強化」である。商品の価値構造を明確にして現在のPLCで求められる要素を的確に提供し、さらに価値を高める要素を補完していくということが欠かせない。
 もう1つは「商品力を補完する要素を適切に展開する」ことだ。つまり、商品力だけに頼るのではなくそれを高めるべく、4Pをターゲットが魅力的に感じるようにミックスすることだ。

 再活性化が求められる商品は市場に多数存在する。「スコッチ(R) メンディングテープ」のテープディスペンサーから学ぶところは大きいといえるだろう。


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2012.06.04

【残り5席】第2弾・『ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本​』出版記念セミナー

※定員24名中、現在残り5席です。お申し込みはお早めに!

「どう売ったらいい?という商品のマーケプラン、あなたは作れますか?」
~リアルな事例で学ぶ『使える』マーケティング~


 大好評の当セミナー。東京会場は早々に満席となってしまったため、第2回の開催を多数ご要望いただいていました。
 但し、同じ内容を2回やるのはツマラナイ・・・ということで、ケースを刷新して第2弾を開催します


「マーケティングの本をいくら読んでも、結局は仕事現場で活かせない」。そんな悩みをよく耳にします。
4P?、3C?、SWOT?
理屈はわかるけれど、それをどう使えばいいのか?
今回のセミナーでは、経営者の視点で『使える』マーケティングをインタラクティブに学んでいただきます。
正確にいえば、学ぶのではなく実践して身につけていただくことが目標です。

セミナー修了後、あなたはきっと
『使える』マーケティングノウハウを持ち帰れるはずです。


<お申し込みと詳細はこちら↓>
 https://www.insightnow.jp/communities/id/137
 ※お申し込みページに進むと、最初にログイン登録が求められます。お手数ですが、ご容赦ください。


【セミナーのキモ】

■そんな時、あなたはどうする?

 書籍は客足が落ちたレストランを、経営戦略(ポーター)とマーケティング(コトラー)の理論を実践的に活用して立て直すストーリーです。
 セミナーでもその流れを踏襲。しかし、状況は「客足の落ちたレストラン」より厳しい。舞台はあるメーカーのマーケティング部。機能満載だけど、エンドユーザー視点が感じられない新商品が開発部から持ち込まれます。そして、あなたはそれを売るためのマーケティングプランを考えなければならないのです!

■ありがちな間違いを考え直す:その1「マーケティングったら、“4P”でしょ!」

 ・・・ということが間違いなのは、マーケティングを体系的に学んだ人ならすぐわかること。しかし、そんな人でも実際に自分のビジネスを考えるときにはやってしまうのが、この間違い。長くマーケティングを支配してきた「強力な4Pの呪縛」なのです。
 今回のセミナーでは、絶対にそこから入らないことを強調・矯正します。

■ありがちな間違いを考え直す:その2「とりあえず、環境分析でしょ?」

 ・・・というのが、マーケティングやMBA科目を学んだ人ほどやってしまいがちな間違いです。そう。それではダメなのです。その前にやることがあるのです。
 ヒントは、「己を知り、敵を知れば百戦危うからず」。あれ、「敵を知り、己を知れば・・・」じゃなかったっけ?と思った方、孫子の言葉としてはそれが正解。でも、正しいマーケティングでは順番が違うのです!

■実は、4Pなんて、どーでもいい!

 ・・・と、言い切るのはあまりに無謀すぎますが、コトラー大先生は「マーケティングのキモはポジショニングである!」と断言されてます。(←意訳ですが、コトラーのマーケティングコンセプト:東洋経済に書いてあります)。ポジショニングとは、ターゲットのニーズを汲んだ「あるべき姿」。つまり、4Pとは製品・価格・販路・販促をつかってポジショニングを実現することに他ならないのです。
 ・・・と、言うからには、最も大事なポジショニングの前に、もっと大事なことが何かわかりますね?

■2.5時間のセミナーでの心構え

 書籍は「2.5時間でわかる本」。なので、セミナーも2.5時間で行います。でも、実際に2.5時間なんてあっという間です。その時間を有効に過ごすために、とにかく「アウトプット志向」で参加してください。講師からの問いかけには「手を挙げる」。グループ(机の前後4~5人)毎にホワイトボードを用意しますので、考えを出し合って、書いて、発表できるようにしてください。
 と、言ってもびびる必要は全くありません。いわゆる「座学」のセミナーにしか参加したことがない方でも、楽しく参加できる雰囲気満載です。(で、そんなスタイルが気に入った方は、金森も教鞭を執っているビジネススクール、経営大学院のグロービスへどうぞ!←宣伝)

■セミナー後のお楽しみもあり!

 22:00にセミナーを修了したら、速攻で懇親会場へ。(あ、懇親会参加費は実費別会計です)。セミナーで聴けなかったこと、残った疑問を解消しましょう。

■あ、セミナー参加のお値段の話・・・

 たったの8500円!まぁ、いわゆる「ペネトレーションプライシング」ですね。(←意味がわからなかった方は、セミナー中で解説します)。とにかく、価格を抑えて「お値打ち」に設定しましたよ!
 ※第1弾より時間を変更・延長してたため会場費の関係で1,000円値上げさせていただきました。

<お申し込みと詳細はこちら↓>
 https://www.insightnow.jp/communities/id/137
 ※お申し込みページに進むと、最初にログイン登録が求められます。お手数ですが、ご容赦ください。

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2012.06.01

「クリニーク」の販促バスツアーの効果と今後を考える

 高級化粧品ブランドの「クリニーク」が若年層の新規顧客獲得を狙って、販促バスツアーを展開した。その設計と効果のほどはどうだっただろうか。

 6月1日付日経MJのコラム「プロモーションスタイル」に同施策が紹介された。しくみはブランドロゴと商品を印刷したラッピングの二階建てロンドンバスで東京以西の会場をめぐって、同社の商品を体験してもらうというものだ。仕上がりを撮影し、雑誌「ノンノ」風の冊子の表紙にモデルとして載せてもらえるというオマケ付きである。

 景気低迷の折り、販路である百貨店の集客は低迷し、売り場も2割減少。若年層の来店も減る中、その層との接点確保が課題であったとのことだ。<百貨店に足が向かないのは単に高級化粧品に興味がないわけではなく、気軽に化粧品を試しにくい売り場の雰囲気を問題視>したのが施策展開の原点だという。

 今までと異なるモノを導入する際に必要な要素を、「イノベーション普及論」のE.M.ロジャースが定義しているが、その中でも「試行可能性」は極めて重要だ。本格使用に至る前に、試し、効果を実感することが欠かせないのだ。
 消費者の態度変容モデルの1つである「AMTUL(Awareness:認知→Memory:記憶→Trial:試用→Usage:日常使用→Loyalty:ロイヤル化)」でも「Trial」を獲得できるか否かは、その後、実際に購入し日常的に使用するようになるためには欠かせない分水嶺なのである。

 この施策の秀逸なところは、「単に試して終わり」ではなく、実店舗への誘導が設計され効果を挙げていることだ。そのカギとなっているのが「ノンノ風冊子」である。<そこに近隣の店舗を記載したところ、約4割が来店した>とある。
 消費者の商品認知から初回購入までの態度変容を表すなら、「AIDMA(Attention:注意→Interest:興味→Desire:欲求→Memory:記憶→Action:購買行動)」が有名であるが、冊子を手元に残させることでMemoryさせて百貨店の売り場に足を運ばせ、購買行動に移させるという効果を発揮しているのである。もちろん、イベントバスでTrialしているため、普段なら足を運びにくい百貨店の売り場というハードルも簡単に越えることができる。

 記事では、<1回のイベントで参加できる人数に限りがある>ということから、<効果は未知数>としているが、だとしたら、バスだけに頼らない展開もあるのではないだろうか。
 例えば、「ノンノ風冊子の表紙」をデジタル化してWebにアップして、参加者がその画像を自由に使えるようにする。そしてネット上の口コミの核とするのだ。ネットを媒介とした態度変容モデルには「AISAS(Awareness:認知→Interest:興味→Share:情報共有→Action:購買行動→Share:情報共有)」がある。表紙画像とお試しをした感想をShareさせ、百貨店で購入した商品の感想などを再度共有させるのである。共有のための場は、今日Facebookをはじめとして多数ある。スペース的な問題はあろうが、バスだけではなく、百貨店売り場で冊子表紙の撮影が簡単にできる仕掛けも作れればさらにShareは加速するはずだ。

 効果的な販促は、設計がキモだ。そのために様々な態度変容モデルで消費者の行動を考え、どのように誘導するかを考えることは欠かせない。今回各モデルで検証してみた結果からすると、クリニークの販促は効果的であり、今後さらなる可能性が考えられるといえるだろう。

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