【例題】「ある、ゴルフ場密集地域“美容サロン業界”の数奇な運命」
東京から100Km弱の地域は昭和62年(1987年)を境に風景が一変した。世は金余りのバブル経済に沸いていた。総合保養地域整備法、通称リゾート法の制定によって地域は環境破壊の批判もどこ吹く風でゴルフクラブの開発が相次いだ。大量の雇用も産んだ。地域の主婦の多くがキャディーとして採用された。ゴルフ客の落とすカネで地域の経済も潤った。飲食などの直接的な消費によるものだけではない。現金収入が増えた地元住民。とりわけキャディーとなった主婦たちは、家の外に出て働くという意識から美容に金をかけるようになった。その恩恵を受けたのが美容サロンである。新規出店が相次いだ。しかし、出店を上回る需要が眠っていたために、数多くのサロンが大きなパイを分け合い、好景気をエンジョイしたのである。
バブル経済は1991年に崩壊した。実際にはそれに気付かずに踊っていた人も多かったため、「失われた20年」は1993年を基点としているが、ともかく祭りは終わったのだ。一時は高騰したゴルフ会員権も値を大きく下げ、破綻するゴルフクラブも相次いだ。キャディーたちを顧客としていた美容サロンは顧客の来店頻度の低下にあえいだ。収入がなくなった、もしくは減った主婦たちが財布のひもを絞ったのだ。パーマにヘアカラーなどをやめて、カットのみにするという客も増え、客単価も低下した。
その後、生き残ったゴルフクラブを見ると、キャディーたちの姿がほとんど消えていた。ゴルフカートである。コストをかけずにゴルフを楽しむというニーズの高まりに対応し、多くのゴルフクラブがセルフサービスのラウンドに移行してカートの導入を進めた。
近年のその地域のサロンを覗いてみると、顧客もサロンの店主も共に歳を取った姿が見て取れる。店に着いた客、囲い込みに成功した客は相変わらず訪れているが、新規の顧客が取れていないのだ。では、若年層はどこにいるのか。もちろん、東京の有名サロンまで足を伸ばすファッション高感度層は存在するが、多くを吸引したのはいわゆる「ファミリーサロン」である。
1996年に世に登場した低価格理容室「QBハウス」は、「洗髪/セットなし・カットのみ10分間1000円」を売り物に店舗を破竹の勢いで拡大した。それを模してシャンプーカットを2000円程度に押さえた「ファミリーサロン」といわれる勢力が美容業界に登場した。贅沢を嫌い、簡素を尊ぶ時代の価値観ともマッチして、若年層を中心に地域の多くの人々を引きつけたのである。
さて、この地域の美容業界に起こった出来事を整理するためにはどのようなフレームワークを用いればいいのだろうか。答えはPEST分析である。
PESTはマクロ環境を構成する4つの要素の頭文字だ。
・Political=政治的な規制事項の影響要因
・Economical=経済環境の影響要因
・Social=社会情勢の影響要因
・Technological=技術的成熟度の影響要因
上記の4つの切り口で、自社や自社の属する業界に大きなインパクトを与える要因がないか。あるとしたら、それはプラスに作用するのか、マイナスに作用するのかといったことを洗い出していく。 それなりにメジャーなフレームワークなのだが、実際には3C分析の「市場環境(Customer)」、「競合環境(Competitor)」などに入れ込むことで割愛されてしまうことも多い。しかし、環境変化の激しい時期にはこのフレームワークを用いて丁寧に分析していくことが求められる。
前出の「ある地域の美容サロン業界」はPEST分析でどのような変転を辿ることになったのか、キレイに説明できるはずだ。一度お試しあれ。
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