続編的「サービスの価値」の話:マッサージ篇
昨日の記事「サービスの価格と価値を再考する」では、端的に言えば一つの結論は「業界の中心的相場=中価値戦略に安穏としていることはできない」ということだ。そこは既に、W・チャン・キムの「ブルーオーシャン戦略」がいうところの、血みどろの戦いの場である「レッドオーシャン」になることが運命的になっている。サービス品質はそのままに、価格を下げて提供する「グッドバリュー戦略」に転換することが一般的だろう。しかし、固定比率の引き下げができなければ収益的に破綻を来すことになる。
その一つの形が写真の「頭専門マッサージ」だ。
マッサージ店は乱立し、近く過当競争に入るだろう。一部では「30分2000円」という店も増えている。大抵がビルの空中階(2階以上)に立地し、中国人などがサービスを提供している。地代家賃と人件費を抑制して損益分岐点を引き下げているのだ。しかし、それにも限界はある。
写真の店は京都で見つけた。四条烏丸と四条寺町の2店展開だという。「頭専門」というからには、精神的ストレスや眼精疲労などで凝り固まった頭をほぐしてくれる。サービスが終わるとパンパンに張ってた頭皮が緩んでいることに気付く。サービスを受ける姿勢もリラックスチェアで楽々である。で、気になるお値段だが、キレイに「10分ごと1000円」のメニューとなっている。「中価値戦略」を保っているのだ。
マイケル・ポーターは企業の戦略を「戦いの武器」と「戦いのフィールド」によって3つに類型した。コストを武器に広い市場全般で戦う戦略は「コストリーダーシップ戦略」という。対して、競合に対する差別化要素を武器に戦いのが「差別化戦略」である。一方、戦いのフィールドを狭く特定市場に限定して戦うのが「集中戦略」である。
さらに細分化すると、特定市場で集中戦略をとりながらコストを武器に戦うなら「コスト集中戦略」。差別化を図るなら「差別化集中戦略」となる。「頭専門マッサージ」は、「差別化集中戦略」の好例といえるだろう。
一方、フィリップ・コトラー的に解釈をすれば、「頭専門マッサージ」は「セグメント戦略」だ。市場に散らばるターゲットとなり得そうな対象を、いくつかの切り口で「意味のあるカタマリ」にする。一番簡単なのが、「性別」で分類し、「男の人と一緒の場所でマッサージはイヤあぁ~」という女性をターゲットとしているのが「女性専用マッサージ店」だ。一方、マッサージというと、どこか前近代的だったり、アジア人がサービス提供をするというイメージを忌避する層に対して「洗練されたリラクゼーション」という価値を提供しているのが「英国式リフレクソロジー」である。その見方をすれば、前述の通り、精神的ストレスや眼精疲労などでひどい場合は頭痛まで引き起こしている人をターゲットにして、その緊張を解くことを「価値」としている。
ちなみに、店の名前は「悟空のきもち」という。西遊記で三蔵法師によって頭に輪っか(緊箍児・きんこじ)をはめられた孫悟空。その戒めから解かれた時の気持ちになれるという意味のようだ。
より広い市場を相手にし、ターゲットを広く取れば顧客も増えるということは、もはや幻想にすぎない。自社でターゲットを設定することと、実際に顧客化できることの間には大きな開きがあるのである。確実に顧客化できる市場に集中する。セグメントを狙うことが生き残りの秘訣なのである。
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