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10 posts from January 2012

2012.01.31

【フレームワーク】マーケティングマネジメント統合フレームワークシート

 マーケティングの分析、及びプランニングを行うときに便利なのが「フレームワーク」。マイケル・ポーターやフィリップコトラー、大前研一などの先達が編み出した手法がそこには凝縮されている。しかし、フレームワークの使用にはいくつかのポイントがある。その最重要なものの1つが「ブツ切りで使わないこと」だ。つまり、一連の流れとして各々の「整合性」を考慮して考えることが大切なのである。

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 とはいっても、「流れで考える」「整合性を取る」は個々のフレームワークが使える人でもなかなか難しい。そこで、ワークシートを作ったので提供したい。このワークシートにしたがって考えていくことでモレ抜け防止にもなる。

 真ん中の「SWOT分析」が少々見慣れないフォーマットになっているが、これは筆者のオリジナルである。真ん中に“ファクト(事実関係)”を列挙する欄を設け、そこに出てきた意見を仮置きする。しかる後に、“解釈”をして、それがプラスに作用するのかマイナスとなるのかに分類していくのである。最後にSWOT全体を俯瞰しての意味合いを導出する。その際にも、「市場機会」とそれを実現するための「事業課題」の両方を明らかにすることが重要だ。そしてそれはワークシートの最後の部分にも当てはまる。「ポジショニング」を実現する施策である「4P」に落とし込んだ後もそれで安心することなく「戦略のキモ」は何なのかを意識して意味合いを明文化することが重要なのだ。そうすることによって、実際にこの戦略の実施に携わる全ての人が意識共有することができるようになる。

 悩むよりまず、手を動かすことが先に進む早道だ。だが、どこかで道を間違えないためにも、このワークシートを活用いただければ幸いである。

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2012.01.23

【例題】「ある、ゴルフ場密集地域“美容サロン業界”の数奇な運命」

 東京から100Km弱の地域は昭和62年(1987年)を境に風景が一変した。世は金余りのバブル経済に沸いていた。総合保養地域整備法、通称リゾート法の制定によって地域は環境破壊の批判もどこ吹く風でゴルフクラブの開発が相次いだ。大量の雇用も産んだ。地域の主婦の多くがキャディーとして採用された。ゴルフ客の落とすカネで地域の経済も潤った。飲食などの直接的な消費によるものだけではない。現金収入が増えた地元住民。とりわけキャディーとなった主婦たちは、家の外に出て働くという意識から美容に金をかけるようになった。その恩恵を受けたのが美容サロンである。新規出店が相次いだ。しかし、出店を上回る需要が眠っていたために、数多くのサロンが大きなパイを分け合い、好景気をエンジョイしたのである。

 バブル経済は1991年に崩壊した。実際にはそれに気付かずに踊っていた人も多かったため、「失われた20年」は1993年を基点としているが、ともかく祭りは終わったのだ。一時は高騰したゴルフ会員権も値を大きく下げ、破綻するゴルフクラブも相次いだ。キャディーたちを顧客としていた美容サロンは顧客の来店頻度の低下にあえいだ。収入がなくなった、もしくは減った主婦たちが財布のひもを絞ったのだ。パーマにヘアカラーなどをやめて、カットのみにするという客も増え、客単価も低下した。
 その後、生き残ったゴルフクラブを見ると、キャディーたちの姿がほとんど消えていた。ゴルフカートである。コストをかけずにゴルフを楽しむというニーズの高まりに対応し、多くのゴルフクラブがセルフサービスのラウンドに移行してカートの導入を進めた。

 近年のその地域のサロンを覗いてみると、顧客もサロンの店主も共に歳を取った姿が見て取れる。店に着いた客、囲い込みに成功した客は相変わらず訪れているが、新規の顧客が取れていないのだ。では、若年層はどこにいるのか。もちろん、東京の有名サロンまで足を伸ばすファッション高感度層は存在するが、多くを吸引したのはいわゆる「ファミリーサロン」である。
 1996年に世に登場した低価格理容室「QBハウス」は、「洗髪/セットなし・カットのみ10分間1000円」を売り物に店舗を破竹の勢いで拡大した。それを模してシャンプーカットを2000円程度に押さえた「ファミリーサロン」といわれる勢力が美容業界に登場した。贅沢を嫌い、簡素を尊ぶ時代の価値観ともマッチして、若年層を中心に地域の多くの人々を引きつけたのである。

 さて、この地域の美容業界に起こった出来事を整理するためにはどのようなフレームワークを用いればいいのだろうか。答えはPEST分析である。

PESTはマクロ環境を構成する4つの要素の頭文字だ。
・Political=政治的な規制事項の影響要因
・Economical=経済環境の影響要因
・Social=社会情勢の影響要因
・Technological=技術的成熟度の影響要因

上記の4つの切り口で、自社や自社の属する業界に大きなインパクトを与える要因がないか。あるとしたら、それはプラスに作用するのか、マイナスに作用するのかといったことを洗い出していく。 それなりにメジャーなフレームワークなのだが、実際には3C分析の「市場環境(Customer)」、「競合環境(Competitor)」などに入れ込むことで割愛されてしまうことも多い。しかし、環境変化の激しい時期にはこのフレームワークを用いて丁寧に分析していくことが求められる。
 前出の「ある地域の美容サロン業界」はPEST分析でどのような変転を辿ることになったのか、キレイに説明できるはずだ。一度お試しあれ。

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2012.01.20

BigIssue売りのおじさんシリーズ:年末年始編

ホームレスの自立支援の雑誌「BigIssue」。その売り子を有楽町駅前でやっているおじさんと知り合ってから、もう2年ぐらいになる。彼との何気ない会話からいろいろなコトを学ばせてもらったが、また少し発見があったのでご紹介したい。

今までの経緯は↓のとおり。
http://kmo.air-nifty.com/kanamori_marketing_office/2011/10/post-9606.html


■戻ってきた出張族

 彼にとってうれしいお客は、一度に複数冊まとめ買いしてくれる客だ。それはなにも同じ雑誌を大量に買うのではなく、久々にやってきてバックナンバーを半年分(12冊)とか買って帰る客だ。その多くは出張族だという。
 以前はそうした人がそれなりにいて、売上のベースを構成していたが、震災以降ぱったりと途絶えてしまったとのことだった。それが戻ってきているという。彼の分析によれば、震災以降に広まった「直帰志向」は出張族にも顕著に表れ、用事が済んだら日帰り。もしくは元々日帰りの予定でもとにかく速い列車で帰るという傾向がしばらく続いていたのだという。それが、ルミネや阪急メンズ館のオープンなど街の変化にも後押しされ、再び有楽町に足を運ぶようになったのではないかという。
商売の基本はとにかく外部環境、顧客環境の変化をつかむことだ。おじさんはしっかりそれをやっている。その姿勢に学びたいものだ。


■支える人々の輪

 有楽町のおじさんにはファンが多い。固定客だ。ただ雑誌を買うだけでなく、彼を励まして会話していく人や、ちょっとしたプレゼントを持参する人が少なからずいる。
 ある日、私の前におじさんと会話していた馴染み客とおぼしき男性は、妙に膨らんだコートのポケットから大量の使い捨てカイロを取り出して差し出した。ちょうどクリスマス寒波で街の人が凍えていた時だ。そんな時でもおじさんは生活のために街角に立つ。簡易宿泊所ではなく、定住する住まいと定職を得るだけの準備資金を貯めるために。そんな彼を支える人の輪が、目に見えないけれどしっかりと存在している。それは人なつこい彼の性格によるところが大きいのだが、少しだけ心が温かくなる話だと思った。私はその日、雑誌の代金と共にユンケルをおじさんにあげた。風邪を引かないようにと思って。彼は「ユンケルなんて何年ぶりだろう!」と喜んで飲んだ。
 使い捨てカイロにユンケル。何気なく普段使っているものが、特別な存在である人もいるのだ。その人の立場になって考えてみることが大事なんだと学んだ。


■根っこ

 あるとき、おじさんの姿が2~3日見えなかった。また、風邪で寝込んだかなと少し心配したが、そうではなかった。聞けば、ホームレスになる前にやっていた新聞配達員の仲間と専売所の社長のところに厄介になっていたらしい。泊まりがけの同窓会のようなものだ。懐かしいのはいいとして、街角に立たなければそのつきの売上は確実に下がる。しかし、その集まりには欠かさず出席するのだという。
 「あそこが自分の根っこだから」と彼は言った。自分は新聞配達しかできない。だから、このBigIssue売りとホームレスを卒業したら、また新聞配達の仕事に戻るのだと。それが彼の夢だという。
 「自分の根っこはどこにあるのだろう?」と、ふと思った。
 あなたの根っこはどこにありますか?

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2012.01.19

【インタビュー】商品をめぐる「物語」が消費動機になる時代

朝日新聞のサイト『ウェブ「広告月報」』に、今年のマーケティング展望を語ったインタビュー記事を掲載していただきました。


「2011年の生活者意識と企業活動は、震災前後で大きく変わったと思います」と話す、金森努氏。企業の事業戦略・マーケティング戦略の立案・実行や、マーケター育成を支援する同氏。様々な実践に携わる立場から、消費者の新しいニーズや企業の目指すべき方向性について語ってもらった。

 続きはこちら↓

■金森のインタビューページhttp://adv.asahi.com/modules/feature/index.php/content0516.html

同サイトでは「スペシャルインタビュー」として同様のテーマで、クリエーティブディレクター 箭内道彦氏、電通 電通総研 ヒューマン・インサイト部長 四元正弘氏、谷山広告 クリエーティブディレクター/コピーライター 谷山雅計氏が同様のテーマで語っています。

■トップページはこちらhttp://adv.asahi.com/

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2012.01.17

「ポスト団塊」をどうするか?京王百貨店新宿店の挑戦!

 店内に椅子やベンチが異様にたくさん設置してある百貨店といえば・・・答えは、京王百貨店新宿店。ターゲットを高齢者に定めた施策の一環だ。その京王百貨店新宿店が大変身しようとしているという。

 同店のターゲットの絞り込みとその展開は明確でスピーディーだった。2004年11月に創業40周年を迎える新宿店は、高齢社会に対応した改装や売場づくりを打ち出し、新宿店の5・7・8階の3フロアを高齢社会や中高年層の生活感変化などに対応した売り場に改装。商品構成を変更し、フロア構成も見直した。3フロアにわたる大規模改装は1989年、つまりバブル期以来の大改装だった。そして、新宿店は改装によって、中高年顧客を主要ターゲットとしてきたポジショニングを一段と進化させ、競合環境の中でひときわ目立つ存在となったのだ。

 顧客は歳を取る。いくら高齢者ターゲットで突出した存在となっても、徐々に寄る年波で来店回数を減らし、逝去する顧客も出てくる。囲い込み自体に意味がなくなる。そこで新方針を打ち出したのだ。
 1月11日の日経MJインタビューコーナー「消費見所カン所」で、同社の林社長が「ポスト団塊世代をつかむ」というタイトルで語っている。「現在の団塊世代より上のシニア層から、団塊世代より若い消費者も開拓し顧客層の拡大を目指す」とある。団塊世代より下の層には、いわゆるバブル層が控えている。圧倒的なボリュームを持っていた団塊世代より客数は減るも客単価は期待できるだろう。これは、同社長が着任して以来の改革の柱だ。昨年春からの改装も進んでいる。

 業界筋の話では、林社長は「(店内の)平場をやめる」という方針も明言しているようだ。平場といえば、百貨店のバイヤー、マーチャンダイザーが独自に編集を行う「顔」のようなものだ。対して、テナントはそのテナントのブランドのファンを集める集客装置のようなものである。平場で稼ぐことと、テナント収入で稼ぐことは似て非なるモノだ。後者の代表といえば昨年有楽町店をオープンさせ話題となった「ルミネ」である。より魅力があり、独自性のあるテナントを集め、鮮度を維持するために随時入れ替えも行っていく。そうして「館」としての価値を高めていくのである。京王百貨店新宿店はそうした業態に転換するともいえる大変身を企図しているのである。
 なぜ、大胆ともいえる変身を行うのか。それは、ターゲットの変更と整合性を取るためだ。バブル世代を含むポスト団塊にとって、百貨店の平場は魅力的に思えない。ルミネ同様、テナントの魅力で成長を遂げた「丸井」でファッションをおぼえた人も多い。その意味からすると、京王百貨店新宿店の今回の変身は、ある意味で「百貨店」から「テナントビル」への業態転換に近い。

 顧客の環境は変化し、顧客も入れ替わっていく。それに合わせて自社のポジショニングと展開施策を整合させていくことは、生き残りに欠かせない。同社の挑戦は業界の、そして他業種にとっても、これからの人口動態の変化にどう対応していくのかという普遍的なテーマに対する事例として要注目である。

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2012.01.11

2012年「この1字」

<GLOBIS.JP( http://www.globis.jp/ )の新春企画より転載します。>


 大震災からの復興が一層進んでいく今年、2012年はどのような一年になるのだろうか。さまざまな環境変化や急速なグローバル化に直面する私たちの社会、世界は、どこへ向かうのか。GLOBIS.JP執筆陣が漢字一字でその方向性を示す。(このシリーズは3回連載です。書:編集部・藤井亜希子)

 金森努(グロービス経営大学院客員准教授 連載「それゆけ!カナモリさん」著者)

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 財団法人日本漢字能力検定協会が、その年の世相をあらわし毎年12月に発表している「今年の漢字」。2010年は「絆」だった。京都・清水寺の貫主が揮毫した実物を見たが、その墨文字は驚くほど太く黒々として力強かった。

 昨年は3月11日の震災を機に、日本中がかつてないほど「絆」を意識・実感した年であった。太く黒々とした墨文字のように力強く。だが、張りつめた糸は太くともいつか緩んでいく。ともすると、時の流れは記憶を風化させる。2012年は「緩」の文字を見て、「気持ちは緩んでいないか」を内省しながら、「緩やかだが、よりしなやかな絆」を広めることに注力したい。

 インターネット時代の「絆」の特徴は「緩やかで幅広い」ことだ。より多くの人が結びつき、少しでも自分のできることを自然体で探す。そんな思いを込めて、「今年の一字」を「緩」としたい。広辞苑には「緩」は「動作・運動が時間をかけて行われるさま。急がないさま」とある。素早さが価値であることもある。しかし、息長く継続する価値を考え実行していきたいものである。

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他の執筆陣の「この1字」は以下のリンクへ
その1:http://mailmag.globis.co.jp/mail/u/l?p=LwgQEyfBOhP1-xFUMOEmxgZ
その2:http://mailmag.globis.co.jp/mail/u/l?p=LwgQEyfBOhN8gOJ_Gl1Q6QZ
その3:http://mailmag.globis.co.jp/mail/u/l?p=LwgQEyfBOhMZ8t_6Jo9NMAZ

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2012.01.10

顧客基点の統合フレームワーク

 本日は1つのチャートをご紹介したい。筆者オリジナルだが、1つ1つはありふれたフレームワークだ。大前研一がマッキンゼー時代に考案した「3C分析」。マイケル・ポーターが自動車会社のGMを研究して作り上げたVC(バリューチェーン)。大学やビジネススクールの基礎コースで習うものばかりである。

 あえてここに取り上げたのは、フレームワークは事実関係を埋め込んで整理するためのツールではなく、「意味合い」(結論)を出さねば意味がないいということ。そしてそのためには、時に複数のフレームワークを連続して使わねばならないということを強調したかったからだ。

 もちろん、はじめは1つ1つのフレームワークから意味合いを抽出することすら慣れるまでに時間がかかる。だが、その先、実務で活用するためにはどのような工夫が必要かを示したかった次第だ。

 是非、ご活用あれ。

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2012.01.06

続編的「サービスの価値」の話:マッサージ篇

 昨日の記事「サービスの価格と価値を再考する」では、端的に言えば一つの結論は「業界の中心的相場=中価値戦略に安穏としていることはできない」ということだ。そこは既に、W・チャン・キムの「ブルーオーシャン戦略」がいうところの、血みどろの戦いの場である「レッドオーシャン」になることが運命的になっている。サービス品質はそのままに、価格を下げて提供する「グッドバリュー戦略」に転換することが一般的だろう。しかし、固定比率の引き下げができなければ収益的に破綻を来すことになる。

 では、どうするか。
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 その一つの形が写真の「頭専門マッサージ」だ。
 マッサージ店は乱立し、近く過当競争に入るだろう。一部では「30分2000円」という店も増えている。大抵がビルの空中階(2階以上)に立地し、中国人などがサービスを提供している。地代家賃と人件費を抑制して損益分岐点を引き下げているのだ。しかし、それにも限界はある。
 写真の店は京都で見つけた。四条烏丸と四条寺町の2店展開だという。「頭専門」というからには、精神的ストレスや眼精疲労などで凝り固まった頭をほぐしてくれる。サービスが終わるとパンパンに張ってた頭皮が緩んでいることに気付く。サービスを受ける姿勢もリラックスチェアで楽々である。で、気になるお値段だが、キレイに「10分ごと1000円」のメニューとなっている。「中価値戦略」を保っているのだ。

 マイケル・ポーターは企業の戦略を「戦いの武器」と「戦いのフィールド」によって3つに類型した。コストを武器に広い市場全般で戦う戦略は「コストリーダーシップ戦略」という。対して、競合に対する差別化要素を武器に戦いのが「差別化戦略」である。一方、戦いのフィールドを狭く特定市場に限定して戦うのが「集中戦略」である。
 さらに細分化すると、特定市場で集中戦略をとりながらコストを武器に戦うなら「コスト集中戦略」。差別化を図るなら「差別化集中戦略」となる。「頭専門マッサージ」は、「差別化集中戦略」の好例といえるだろう。

 一方、フィリップ・コトラー的に解釈をすれば、「頭専門マッサージ」は「セグメント戦略」だ。市場に散らばるターゲットとなり得そうな対象を、いくつかの切り口で「意味のあるカタマリ」にする。一番簡単なのが、「性別」で分類し、「男の人と一緒の場所でマッサージはイヤあぁ~」という女性をターゲットとしているのが「女性専用マッサージ店」だ。一方、マッサージというと、どこか前近代的だったり、アジア人がサービス提供をするというイメージを忌避する層に対して「洗練されたリラクゼーション」という価値を提供しているのが「英国式リフレクソロジー」である。その見方をすれば、前述の通り、精神的ストレスや眼精疲労などでひどい場合は頭痛まで引き起こしている人をターゲットにして、その緊張を解くことを「価値」としている。
 ちなみに、店の名前は「悟空のきもち」という。西遊記で三蔵法師によって頭に輪っか(緊箍児・きんこじ)をはめられた孫悟空。その戒めから解かれた時の気持ちになれるという意味のようだ。

 より広い市場を相手にし、ターゲットを広く取れば顧客も増えるということは、もはや幻想にすぎない。自社でターゲットを設定することと、実際に顧客化できることの間には大きな開きがあるのである。確実に顧客化できる市場に集中する。セグメントを狙うことが生き残りの秘訣なのである。

 

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2012.01.05

サービスの価格と価値を再考する

 本日からBlogを再開します。
 昨年後半から業務多忙で更新頻度が落ちていましたが、今年は週3回の更新をめどに、息の長いBlogとなるよう頑張ります。

 ちょっとイメージが伝わりにくいかもしれないが、「特殊技能を持った無名のスタッフが提供する、原材料比率が低いサービス業」という業種の大きな括りを定義してみる。具体的にいえば、理美容、ネイルアート、マッサージ、スポーツトレーナー等々だ。何らかのサービス提供の場(ハコ)は必要で一定の固定費は発生するが、サービスに要する原材料の費用は総じてゼロか低い。
 では、それらの価格の相場はいくらかといえば、概ね「10分1000円」だ。最もわかりやすい例でいえば、低価格理髪チェーンとして有名な「QBハウス」。カットのみ。洗髪、ヒゲ剃り、セットなしで10分1000円。だが、同チェーンが理容業界で価格破壊を起こしているかといえば、実はそうではない。フルサービスの旧来の理髪店もサービス提供時間が40分程度で価格は4000円程度のはずだ。つまり、10分1000円。美容室もカットで60分6000円。パーマで90分9000円。10分1000円換算になるだろう。
 理美容だけではない。ネイルアートもツメの形を整え、甘皮処理をし、表面を磨くという最も基本のコースだと40分4000円。マッサージは大手チェーン「てもみん」の価格がスタンダードとなってか、30分なら3000円、60分なら6000円と各コースの10分単価は1000円が程度だ。マンツーマンのスポーツトレーナーは60分6000円が多い。

 標準的な内容に対して業界相場でサービス提供をすることを、「中価値戦略」という。もっと高い価格を設定したい場合には、何らかの価値を上げ、「プレミアム戦略」を取る必要がある。美容業界なら、いわゆる「カリスマ美容師」的な人が担当するなら、10分1000円の相場を上回るプレミアム価格となる。
一方、業界の相場価格である「中価値」を下回る価格で、サービスの質も下げて提供することを「エコノミー戦略」という。しかし、比較的割安な価格で業界相場が「中価値」に集中している場合、その戦略は顧客が魅力を感じないため成立しがたい。

 では、エコノミー戦略→中価値戦略→プレミアム戦略と、価格と価値が正比例した関係、「バリューライン」から飛び出るにはどうしたらいいのか。最もやりやすいのが、価値はそのままで、価格を下げて「グッドバリュー戦略」に転換することだ。価格を下げる余地は固定費を圧縮することである。イメージとしては個人経営の理美容店。自宅の1階をサロンとしている場合など、元々が自社物件であるため、価格の固定比の組み込みを下げればサービス提供価格を引き下げられる。実際にQBハウスの近隣にある個人経営理容室は「カット・シャンプー・セットで1500円」などというサービスを提供している店も多い。かかる時間は15分を超えているが、固定比率の引き下げによって店としての損益分岐点を下げているため成立している。

 その他の業界の今後を占ってみると、ネイル業界であれば、現在のところマニキュアのように家庭ではできない「ジェルネイル」や、さらにそれに絵柄を加える場合なども相場を上回る価格設定ができている。しかし、そろそろ過当競争が始まっているため、プレミアムなサービスをそのまま価格を下げて提供する「高価値戦略」への転換が求められるだろう。となると、元々原材料比率が低い業界のため、固定比率をどう下げるかが課題となってくる。
 マッサージ業界はプレミアム要素を提供しているプレイヤーがあまり見当たらないので、近く過当競争に突入すると考えられ、「グッドバリュー」に集約されそうだ。マンツーマンのスポーツトレーナーは市場自体まだ大きくないため、黙っていてもプレミアム価格が受け入れられている場合も少なくないが、今後は「独自のメソッドを提供する」など何らかの価値向上が求められる。それによって「高価値戦略」で差別化・生き残りを探ることとなるだろう。

 転じて、企業に勤めるビジネスパーソンの場合はどうか。
 今年、経済環境は一層厳しさを増すことを暗示する事象が正月からいくつも伝えられている。中価値戦略で禄を食むことは続けられない。黙っていれば、企業は固定比率引き下げにかかってくるだろう。だからといって、黙って給与下げに甘んじるわけには行かない。
 だとすれば、同じ給与を保つために付加価値を高めて「高価値戦略」を展開するか、もっとスーパーな存在になって、給与上げも狙う「プレミアム戦略」を展開するしかない。

 どんな業種も、個人も、「相場」に安住することが許される時代ではなくなっているのである。

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2012.01.01

企業は消費者とどのような「絆」を構築すべきなのか

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。

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 2010年は大震災にも見舞われ大変な年でしたが、日本中が「絆」を意識した年だったといえるでしょう。NHKの紅白歌合戦では、司会者や出演者、審査員がこれでもかというほど、「絆」というキーワードを連呼して、少々お腹いっぱいの感もありましたが、今年も引き続き意識し続けるためにも、あれはあれで正しい発信だったといえると思います。

 機会があって昨年末に京都・清水寺を訪れ、貫主が揮毫した「今年の漢字」である、「絆」という文字を観ました。太く力強く黒々と書かれた文字は、震災を風化させないための「アイコン」たり得る迫力を持っていました。

 では、実際に今日の人と人とのコミュニケーションはどうかといえば、例えばFacebook。何年も会っていない人を発見しネットを介してつながりが復活したり、実際に対面する以上にコミュニケーション頻度が高まったり、実際には面識の薄い人と深く知り合ったりという現象が起きています。「遠くのリアル友より、近くのFacebook」というところでしょうか。

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 Facebookの特徴は、そのレスポンスと伝播の速さにあるといえるでしょう。例えば昨夜アップしたスカイツリーの写真には、ちょうど「あけおめ」タイムだったことも手伝ってか、100件近い「いいね!」と10件ほどのコメントを寄せていただきました。

 では、企業と消費者の「絆」はどうかといえば、まだまだ希薄なものでしかありません。清水寺に掲げられた文字ほど、太く力強い「絆」は一朝一夕に築けるものではありませんが、まずはFacebookの活用など、緩やかなつながり(Weak tied)を構築することから始めるのもいいでしょう。
 10年以上前にブームとなったCRM(Customer Relationship Management)が再燃しています。2000年当時はテクノロジーが追いつかずコンセプト倒れになってしまいましたが、技術的には今、機は熟しているといえるでしょう。しかし、技術先行では再びコンセプト倒れに終わる懸念もあります。まずは、消費者とどのような関係を構築すべきかを熟慮するところから始めるべきです。消費者間の「絆」は緩く・広く拡大し続けています。そこに企業とどのような「絆」を結ぶべきなのかが今年最大のコミュニケーションテーマとなるのは間違いありません。

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