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2011.11.07

戦略の極意は「捨てること」:ベンチャーアパレルの挑戦

 選択するとは捨てること。わかっていてもなかなか難しいその原則を確実に実行して伸びているベンチャー企業がある。その秘密は何だろうか。

 ファストファッションの店舗に行くと、筆者は密かな楽しみ方をしている。商品のタグに書いてある生産国を確認するのだ。ZARA、H&M、フォーエバー21、トップショップなどの海外勢の商品を見るとよくわかる。バングラデシュ、ベトナムなどの東南アジア。トルコなどの中東圏、ギリシャ、ポーランドなどの欧州。実に多彩だ。比べてみれば、ユニクロはまだまだ中国製がほとんどで、生産国シフトと分散化が遅れていることが明確だ。
 生産国シフトは中国の人件費高騰を考えれば火急の懸案事項だ。分散化の重要性も今回のタイの洪水の例でよくわかるだろう。

 11月4日付の日経MJに、そんな海外生産どこ吹く風とばかりに、日本国内生産にこだわっているベンチャーのアパレルメーカーが紹介されている。エスワンオー(東京・目黒)。ブランド名は「サティスファクション・ギャランティード(sg)」。主な購入客は日本人ではない。<フェイスブックの登録ファン数は64万人><ファンの97%がインドネシアやインドなどアジアの若者>だという。実店舗は<東京・渋谷と代官山の2店舗しかない>という堂々たるネット企業である。それもそのはず、社長はネット広告会社に属していたこともある。

 同社の戦略は、マイケルポーターの「戦略の3類型」で考えれば、明確な「差別化集中戦略」、限定的な市場で差別化を武器にする戦い方だ。まず、日本という市場は<少子化に加え、低価格なファストファッションの台頭など市場縮小が続く>ため、バッサリと「捨てた」のだ。東京の2店舗は、あくまで広告等の位置づけであるはずだ。狙いはアジア。
 アジアなど新興国を狙う場合、「BOP(Bottom Of Pyramid)」がキーワードになっているが、そんなトレンドにはれには目もくれない。<「新興国では富裕層が年々増えておりそのうちのわずかの人が買っても、収益は大きい」>とターゲティングは明確だ。

 「差別化集中」の武器は「日本製であること」。クールジャパンに代表されるように、アジア諸国から日本に注がれる視線は熱い。しかし、単に日本製であることにあぐらをかいているわけではない。ダイヤモンドとスカルを組み合わせた「スカル×ボーン」のロゴは社長がデザインを手がけた。なかなかクールなデザインだ。情緒的な価値だけではない。<シャツには速乾性の機能素材を使い、日本の縫製工場で製造するなど日本製にこだわった>という。暑いアジアの国でこそ、速乾性の機能素材は生きる。機能的価値もクールである。
 日本製へのこだわりは、バリューチェーン(VC)から考えてもメリットがある。<sg(サティスファクション・ギャランティード)はサイトでファンの反応が得られる。好感触を得たデザインに絞って製品化すれば、在庫も極力減らすことができる>という狙いがある。ファストファッションのZARAは店頭での商品の売れ行きを完全に把握し、好評な商品をわずか2週間で再度アレンジして新商品として並べることで知られている。その、ZARAの必殺技をネット空間に絞り込むことでさらに高速回転させることも可能になるというわけだ。

 「選択と集中」とはいうものの、「捨てること」はとても難しい。エスワンオー社がサティスファクション・ギャランティードで、様々な可能性を捨て、「日本のデザイン+機能性を、日本で造りアジアの富裕層にネットで販売する」という極めて限定的な戦いの場を設定したのだ。
少し前から「断捨離」がブームである。いろいろな情報を絶って狙いを絞り、アタマの中にはびこるアイディアのがらくたを捨て、「でかく儲けよう」という妄執から離れると新たなモノが見えてくるかもしれない。


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