チャレンジャーはリーダーにどう戦いを仕掛けるべきか?
後発だったり、圧倒的に彼我の力に差があったりするとき、戦いはどのように展開されるべきなのだろうか。2つの事例から考えていこう。
11月25日付日経MJに紹介された、資生堂「スーパーマイルドシャンプー」のアプローチが面白い。狙っているポジションは「親子で使う家族のシャンプー」だ。しかし、「家族のシャンプー」というポジションには強力な先行ブランドがある。花王「メリットシャンプー」である。
メリットシャンプーが登場したのは1970年のこと。コマーシャルは女優の田中裕子が若い女性に向けてアピールしていた。しかし、それから四半世紀以上が経った今日、若い女性向けシャンプーは最新の成分を配合し、華やかな広告で訴求する新しい商品が目白押しだ。故に、その後は歴代有名タレント夫婦をCMキャラクターに起用し、「家族全員が健やかな髪と地肌で過ごせる」ということを訴えて、「家族のシャンプー」というポジションを確固たるものにしている。
メリットシャンプーにチャレンジャーとして戦いを挑んだのがスーパーマイルドシャンプーだ。同紙には「父と子の入浴を応援 資生堂“スーパーマイルド”で “風呂場遊び”カード配布」とタイトルにある。<育児期の父親と子どもの楽しい入浴を応援する「パパフロ」キャンペーン>を始めたとある。そのキャンペーンもなかなか大がかりだ。入浴中の遊びを提案する12種のカードを店頭で配布し、ワークショップも開催。普段から父子入浴を実践している芸能人を「パパフロ大使」として任命するという。
ポジションを確固たるものにしているリーダー商品がある場合、真正面から戦いを挑んでは消耗戦になり得策ではない。そこで、スーパーマイルドはターゲットを絞ったのだ。狙いは「育メン(育児に積極的に関与する夫)」だ。チャレンジャーは真っ向勝負をかけるのではなく、特定セグメントから切り取っていくのが定石。まさにその原則通りの戦いがこれから展開されようとしているのだ。
一方、「ダウンジャケットといえば・・・」という問いを発すれば、多くの人が「ユニクロ」と答えるだろう。ユニクロのウルトラライトダウンは、今年も数百万枚レベルの販売目標数を発表している。押しも押されもせぬリーダーのポジションを確固たるものにしているのである。
そこに「アミアン・カンパニー」という企業が切り込んだ。11月28日付日経MJで紹介された商品は「フローラルフレグランスのダウンコート」。その名の通り、ほんのりとした芳香を楽しめる女性用コートである。ヒミツは羽毛にある。独自技術でフッ素樹脂に香水を練り込んでおり内側に香気をためる。昨今、潜在や柔軟剤で衣類の香りにこだわる人も多い。価格は8,295円から。ユニクロのダウンよりも価格は高めながら、「芳香」という独自の付随機能価値でアピールするニッチャーの戦略だ。リーダーであるユニクロからの同質化が心配されるが、香りには好みがあるため、「万人向け」が基本のユニクロは恐らくスルーだ。そこにニッチャーたる独自の生存領域を見出しているのである。
「チャレンジャーはリーダーの10倍頭を使え」が戦いの基本姿勢。そして、全面戦争を避け、勝てるところで勝つ。独自の生存領域を確保するのである。もはや日本市場は成熟し、人口縮小という衰退期に向かっている。黙って新規顧客を獲得できる環境にはない。他からむしり取らねばならないのだ。そんな時、対リーダー戦略はどんな企業・ブランドにも課題となってくる。今回の事例のその後をウオッチし、自社の参考にすることをオススメしたい。