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2011.10.12

スマホの普及は「手取り足取り」の段階へ

 スマホ花盛りの今日、果たしてその普及の勢いはこのまま続くのだろうか。もし、問題があるとしたら、どこで、どのように解消すればいいのだろうか。

 イノベーションはよく知られたE.M.ロジャースのイノベーション論による分類では、イノベーター(またの名を“冒険家”:とにかく新しいものに飛びつく人)→アーリーアダプター(またの名を“尊敬される人々”:内容を精査して採用する人)に続いて一般大衆(マジョリティー)へと伝播する。一般大衆はアーリーアダプターの様子を見て「あの人たちが採用したなら間違いないだろう」と動き出す。しかし、動かない場合もある。ハイテク商品の場合に得てして起こるこの現象をジェフリー・ムーアが「キャズム(溝)」と名付けた。アーリーアダプターと大衆を溝が断絶してしまうのだ。

 何がキャズムとして存在するのかをロジャースの「イノベーション普及要件」で検証してみよう。
 ①相対優位性:いままでと比べて明らかな優位性があることが認識できることがキモだが、初心者が展示してある実機をちょっといじってもわからない。
 ②両立性:いままで使用していたものから完全に切り替えることなく併用できればハードルは下がる。だが、携帯は機種変更してしまうので両立性はない。
 ③複雑性:複雑すぎないことは重要要素であるが、操作方法が根本から異なるスマホは初心者にとっては複雑怪奇だ。
 ④試行可能性:「お試し」ができることも極めて重要だが、展示実機で試せる機能は少ない。かなりネックになる「入力」は、どの機能・アプリを選択すれば実感できるかわかる初心者は少ないだろう。
 ⑤観察可能性:目に見える明らかな効果を示すことが最後のキモだが、そこまで辿り着ける初心者はごく少数だろう。
 つまり、一般大衆である初心者の前には、実は広大なキャズムが広がっているのだ。

 <MM総研(東京・港)によると、2011年度のスマホの国内出荷台数は前年比2.3倍の1986万台になる見通し>と、10月12日付の日経MJ記事にあった。いつの間にやら記事中の表記も「スマートフォン」から「スマホ」に改められている。略称が一般的になったということだけでなく、毎日の紙面各記事でも頻出するからだろう。まさにスマホは普及の成長期真っ盛りとなっている。ということは、無事「キャズム」を超えたのだろうか。しかし、筆者はそう思わない。
 ロジャースの論では一般大衆を「アーリーマジョリティー(前期大衆)」と「レイトマジョリティー(後期大衆)」の2つに分類している。先日亡くなったスティーブ・ジョブズが世に送り出したiPhone。追撃するAndroid。それに煽られたアーリーマジョリティーが使用法や使い勝手を精査せずに前倒しで採用したのが現状だろう。この後、レイトマジョリティーとの間にこそ、キャズムが広がるはずだ。

 それを見越していま、従来の携帯電話、いわゆるガラケーから買い換えようとしている「スマホ初心者対応」を家電量販店各社は最優先課題と設定したようだ。日経MJ記事のタイトルには「スマホ初心者取り込みへ エイデオン、相談員増設 ビックは専用カウンター 客への商品説明重視」とある。エイデオンは「スマートフォン教え隊」という腕章を付けた販売員を最大で全国350店舗に設置。ビックカメラはスマホ専用カウンターを、グループ会社である「ソフマップ」に続いてビックカメラ本体の店舗にも拡大するとのことである。まさに手取り足取りで「試行可能性」を実現し、「複雑性」を受容させ、「相対優位性」を実感させる構えだ。

 上記のような施策にも人数的に限界がある。せっかくの担当者やカウンターの配置でも、そこが手一杯で放置されたのであればガッカリ感たっぷりになってしまうのは間違いない。
 これからのスマホの普及、そして量販店やショップでは、いかに確実な「手取り足取り」を実現するかが成功のカギ(KSF=Key Success Factor)となってくるだろう。

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