ヨーカ堂のPB衣料、その可能性と課題
イトーヨーカ堂が20~40代向けのカジュアル衣料などのPB(プライベートブランド)「グッデイ」の衣料品を発売し、SPA(製造小売り)に始めて乗り出したという。一方、従来からの国産PB「Made in Japan」も息の長い取り組みをしている。
<GMSの衣料品改革はできるのかイトーヨーカ堂がSPAに参入する訳>(9月9日・週刊ダイヤモンド)
http://diamond.jp/articles/-/13945
従来のスーパー・GMSのアパレルは商品の委託販売を基本として、<(メーカー・卸からの)仕入購買→出荷物流→販売>というバリューチェーンを組んでいた。それに対し、SPAは製造小売りの名の通り<調達購買物流→商品開発→製造→出荷物流→販売>と川上統合をしたものだ。効果として同記事では<原価は15~16%下がる>としている。しかし、一方で<GMSでは肌着のような必需品は売れるが、本当に欲しい“必欲品”を生み出すセンスはない>ともあり、その改革は未知数であるとしている。
日本におけるアパレルSPAの王座にあるのはユニクロを抱えるファーストリテイリングであるといって間違いない。9月9日、かつて鳴り物入りで登場したデザイナーのジル・サンダーとのコラボ商品「+J」が今シーズン限りという最後の売り出しを開始した。
ナゼ、人気の「+J」が販売終了になるのだろうか。メディアは「ブランド価値向上に対する一定の貢献があり、役割を終えたため」という趣旨のユニクロからのコメントを伝えていた。客足は上々で、8日の銀座店での先行販売では2時間待ちの列もできたという。筆者が店舗を訪れた9日もまるでバーゲン会場であるかのようにごった返し、次々と商品が売れていった。だが、気になることがあった。「+J」の購入客は、他のユニクロ商品を併買する割合が非常に低いのだ。一方のユニクロは、ジーンズのラインナップを広げすぎて失敗をした教訓などを元に、現在はファッション性より「ベーシック回帰」の方向性を明確にしている。「ヒートテック」の販売を1億枚という途方もない目標に置いたのも象徴的だ。かつてのファッションブランドの巨匠とベーシック回帰するSPAでは、シナジーは出にくかったということなのだろう。
同じく9月9日の日経MJに「ヨーカ堂、国産PBの売り方」という記事が掲載された。「色・サイズを豊富に品揃え/商品情報を売り場にこまめに提供/オーダーメイドでオリジナル感」とサブタイトルがある。
PBは「Made in Japan」。もう何年もヨーカ堂が育てている日本国内で製造した商品を取りそろえたブランドだ。記事にある商品の例としては、例えばジーンズの名産地・岡山で作られたデニム地の帽子。<高い縫製技術を活かして、かぶった際のフィット感を大切にするために(中略)サイズは1cm刻みで取りそろえた>という。オーダーメイドの革製かばんの例もある。<形は10種類、素材は3種類、色は7色を用意するなど、組み合わせは7種類を用意するなど、組み合わせは1000種類を超える。(中略)商品は2週間で完成する>という。
ユニクロがベーシック回帰する一方で、海外ファストファッション勢は相変わらずファッション性が売り物だ。H&Mは世界規模での販売を前提に「多品種大量販売」を仕掛ける。ZARAは売る場で売れている商品を製造現場にフィードバックして、再度製造から販売までのバリューチェーンを高速回転させる「少量高回転大量販売」を得意技としている。
消費者が「購入する理由」をKey Buying Factor(KBF)という。価格の安さ、品質、オリジナリティーなど個々人において様々なKBFが存在する。そして、そのKBFを実現する成功のカギをKey Success Factor(KSF)という。するその中で、「Made in Japan」は「多品種少量」による自分にピッタリであるというフィット感やオリジナル感というKBFを実現しようとしている。そして、そのKSFは日本メーカーとのコラボレーションによって、<調達購買物流→商品開発→製造→出荷物流→販売>というバリューチェーンの物理的距離を短くし、短時間で回していくことにある。
だとすれば、「Made in Japan」は上記のZARAのモデル以上に国内産地のメリットを活かした「少量高回転」が可能となる。消費者の欲しいものや流行をキャッチアップして、すぐに製造し売り場に並べるのである。そこで必要なものは、多少割高でも「価値」を納得して買ってもらえるような商品企画のノウハウであり、それを可能にする販売現場での顧客の声の吸い上げだ。
大量生産による「規模の経済」によって安価に商品を提供するSPAの逆張りともいうべき展開は、確かに<中国製など海外製品に比べると平均3割ほど高い>という。しかし、<「品質を意識する人が増えれば、今後はプラスワンとして日本が注目されるようになる」>と同社では読んでいるという。
大震災以降、消費者のモノの購買に対する意識は変化している。不要不急のモノの購買を控えるという段階からは脱しているが、自らの納得するモノを選ぼうという意識は強まっているように思える。その意味では、ヨーカ堂の「Made in Japan」にはチャンスが到来していえるといえるだろう。
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