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2011.09.02

恋せよオヤジ?:BEAMSポスターのナゾ

 8月31日。誰しも知るオヤジの街・新橋。その最深部ともいうべき烏森の入り口であるJRの駅通路にオシャレな駅貼りポスターが出現した。広告主はセレクトショップのBEAMS。キャッチコピーは「恋をしましょう」だ。ナゼ、新橋にポスターを貼ったのか?

 「恋をしましょう」は、BEAMSが全ブランドを横断して展開するキャンペーンである。「KOIWEB」という専用サイトを作って、女優・蒼井優が歌って踊る「恋をしましょう体操」の動画を公開している。素朴な少女の姿を描いた写真集「未来ちゃん」で人々の心をとらえた写真家・川島小鳥が8組のカップルの姿を写し撮ったアルバムも公開されている。FacebookとTwitterに連動したと連動したアプリ、「恋センサー」をアップされている。盛りだくさんで贅沢なサイトだ。

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 そのキャンペーンメッセージとWEBサイトを告知するポスターが各駅に掲出されている。その1つが新橋の烏森口改札を出て右側の壁面に登場した。

 ローカルな話題なので少々説明をしよう。ほろ酔いのお父さんたちがテレビのインタビューを受けることで有名な「SL広場」とは山手線・京浜東北線ホームの前後反対側に位置する。改札を出て左に進めば日テレなどもある汐留・シオサイトに行き着く。オシャレなポスターは、シオサイトに向かう人の注目を集めようとしているのかといえば、そうではない気がする。確かに改札で待ち合わせをしている人の目には多少入るが、メインの導線上ではない。右に出れば、細々とした飲み屋がひしめくディープなゾーンへと続く。そんな場所にBEAMSのポスターが掲出されたのだ。しかも「恋をしましょう」である。

 屋外広告として通行量は文句の付けようのない優良物件だ。反対側の壁面にはパナソニックの電動シェーバーが長く陣取っている。確かにひげ剃りは新橋に似合う気がする。商品のキャラクターがKAT-TUNの亀梨和也だと前を通るオジサンが認識するかは怪しいが、商品には注目するだろう。では、BEAMSのポスターは誰に訴えかけているのだろうか。

 「恋をしましょう」は同社の35周年記念でもある。1976年創業。1980年代に雑誌・ポパイとコラボレーションをして若い男性の間にBEAMSブームを巻き起こした。当時ポパイでファッションから恋愛までを学んだ20代の若者も現在では40代半ばから50代だ。BEAMSの凄いところは当時からのファンを顧客として囲い込みながら、新たな若い顧客を取り込んで成長し続けたことだ。その意味では、ポスターは新橋を拠点とするビジネスパーソン(レディースも展開しているので、当然女性も含む)に訴求しているのだと考えるのが自然だ。だが、それならばわざわざオヤジ比率の高い新橋烏森口にポスターを貼る必要があるのだろうか。

 オヤジの「恋」というと、なにやら不倫臭が漂い、ドロドロしたイメージが想起されるかもしれない。だが、誰もが「天城越え」的な情念の世界にまで足を踏み入れるわけではない。

 「恋は遠い日の花火ではない」。
 サントリーオールドのCMの名コピーだ。長塚京三、田中裕子、大森南朋らが演じるのは「恋の気配」だ。実際には何にもないかもしれない。だけど、胸が温かくなる想いを持ってみなよ、というメッセージが伝わってくる。

 BEAMSのサイトには3篇の「恋をしましょう体操」がアップされている。
娘である蒼井優が言葉の通じないインド人の彼氏を親に紹介する「異国の彼篇」で、母親が彼氏を気に入り「イメージは大切よ!」と父親に力説する。
 友達の彼を好きになってしまう「人の彼篇」。付き合いが長いという友達と彼氏。彼はデートの際に鼻毛が飛び出している。惰性の生活はダメというメッセージだ。そんな彼のどこに惹かれたのかはナゾであるが、ともかく蒼井優は「磨くわワタシあそこもここもピカピカに」と歌う。
 「恋人だらけのカフェ篇」では、「なんにもないとかそんな日は、恋とか落ちたらいいかもね」「怯えていたらなんにもないのわかってる」とさらに背中を推す。
 3つの動画では、「まずは自らのイメージを良くせよ」「自分を磨け」「惰性の日常と決別せよ」とメッセージを伝えているのだ。

 新橋烏森口を通行するオヤジたちは、実は最もキャンペーンの対象になるのではないか。
 かつてはポパイを買い、恋にトキメキ、BEAMSの服を買って自分を磨いていた青年も家庭を持ち仕事と生活に追われるようになった。だが、ある程度地位と収入も上がり、子どもも自立していった。そんな時にぽっかりと空いた胸の穴ボコに気付く。それを見ないようにして日常に埋没していく日々。そんなオヤジにBEAMSは「戻っておいで」というメッセージを込めてポスターを貼ったのではないだろうか。

 恋は遠い日の花火ではなかったら、どうすればいいのか。まずは「自分を磨く」のだ。イメージを良くして、人からよく見られることもさることながら、自分に自信を持つ。そうして、実際は何もなくとも「なんにもないとかそんな日は、恋とか落ちたらいいかもね」と、恋するココロを思い出してみる。すると、惰性に満ちた日常が意外と輝いて見えてくるかもしれない。

 「恋をしましょう」のポスターとWEBサイトにあるコンセプト全文を引用したい。

 みなさん恋をしましょう。誰かを好きになりましょう。そして自分を好きになりましょう。みなさん恋をしましょう。それは世界を新しくしますから。知らなかった歌を好きになりますから。ゴハンが美味しくなったりしますから。深呼吸の意味を変えたりしますから。それは嘘の悲しさを教えてくれたりしますから。たとえそれが終わっても、きっと何かを残してくれたりしますから。さあ、年齢を超えましょう。性別を超えましょう。経験を超えましょう。地球は愛が救ってくれますから。

 ※「KOIWEB」 http://koiweb.beams.co.jp/

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