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【マーケティング講座】

お勧めマーケティング関連書籍

  • 金森 努: 3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング(DOBOOKS)
    初めての人から実務者まで、「マーケティングを体系的に理解し、使えるようになること」を目的として刊行した本書は、2016年に「最新版」として第2版が発売されました。 それから6年が経過し、デジタル技術の進化やコロナ禍という大きな出来事もあり、世の中は既に「ニューノーマル」に突入しています。 その時代の変化に合わせて本文内容の改訂、新項目の追加や事例の差し替えなどを大幅に行ないました。
  • 金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)

    金森 努: 9のフレームワークで理解するマーケティング超入門 (DO BOOKS)
    「マーケティングって、なんとなく知っている」「マーケティングのフレームワークは、わかっているつもりだけど業務で使いこなせていない」・・・という方は意外と多いのが実情です。 「知っている」「わかっている」と、「使える」の間には、結構大きな溝があるのです。 その溝を、最低限の9つのフレームワークをしっかり理解し、「自分の業務で使いこなせる」ようになることを目指したのがこの書籍です。 前著、「最新版図解よくわかるこれからのマーケティング」は、「教科書」的にマーケティング全体を網羅しているのに対して、こちらの「9のフレームワーク・・・」は、「実務で使いこなすための「マニュアル」です。 もちろん、フレームワークをしっかり理解するための、実事例も豊富に掲載しています。 「よくわかる・・・」同様、多くの企業研修テキストとしてもご採用いただいています。

  • 金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)

    金森 努: 最新版 図解よくわかるこれからのマーケティング (DOBOOKS)
    旧版(水色の表紙)は6年間で1万部を販売し、それを機に内容の刷新を図りました。新章「ブランド」「社内マーケティングとマーケティングの実行」なども設け、旧版の70%を加筆修正・新項目の追加などを行っています。本書最新版は発売以来、10ヶ月で既に初版3千部を完売。以降増刷を重ね、約1万部を販売していおり、多くの個人の方、大学や企業研修で「マーケティングのテキスト」としてご愛顧いただいております。

  • 金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)

    金森努(監修): あのヒット商品はなぜ売れるのか? ─気軽に読むマーケティングのツボ─ (TACビジネススキルBOOK)
    ヒット商品ネタ51連発!このブログ記事のネタを選りすぐってコンパクトで読みやすく図表付きに再編集しました!

  • 金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)

    金森 努: 「売れない」を「売れる」に変える マケ女<マーケティング女子>の発想法 (DO BOOKS)
    打倒「もしドラ」!を目論んだ(笑)ストーリー展開のマーケティング本。初心者にもわかりやすいマーケティングの全体像に基づき、実践・実務家も納得のリアリティーにこだわりました!

  • 金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える

    金山宇伴(著)・金森努(監修) : ペンギンが考える
    ペンギンの世界を舞台に「考えるとはどういうことか」「論理的思考(ロジカルシンキング)とは何か」を考える、スラスラ読めて身につく本です。初心者の入門書として、一度学んだ人の復習にと活用できます。

  • 金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本

    金森努: ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本
    マーケティングをストーリーで学び、「知っている」が「使える」になる本。1つ1つのフレームワークが、面白いように「つながっていく」感覚を実感してください!

  • 金森 努: “いま”をつかむマーケティング

    金森 努: “いま”をつかむマーケティング
    7編の取材を含む、2010年のヒット商品など約30事例をフレームワークで切りまくった「マーケティング職人・金森」渾身の1冊。フレームワークを学びたい人にも、フレームワークの具体例を知りたい人にも、朝礼で話せるコネタが欲しい人にも役に立つこと間違いなしです!

  • 長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語

    長沢 朋哉: 世界一やさしい「思考法」の本―「考える2人」の物語
    「分かるとできるは違う」と言われるが、両者間には距離がある。実業務のどこで使えるのか気づけない。だから使えない。本書はお菓子メーカーのマーケティング部を舞台にした「若者2人の成長物語」を通して、戦略思考、論理思考、クリティカル・シンキングなどの、様々な思考法が展開されていく。ストーリーで「使いどころ」をつかめば、実践できない悩みの解消が図れるだろう。 (★★★★★)

  • ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」

    ダン アリエリー: 不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
    フレームワークの「使用上の注意」は、「人の心はフレームワークだけでは切れない」を常に認識することだ。「行動経済学」に注目すれば、経済合理性に背く人の行動の謎の意味が見えてくる。謎の解明を様々なユニークな実験を通して、著者ダン・アリエリー節で語る本書は、「フレームワーク思考」に偏りすぎた人の目から何枚もウロコを落としてくれるはずだ。 (★★★★★)

  • セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践

    セオドア レビット: レビットのマーケティング思考法―本質・戦略・実践
    「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」や、「マーケティング近視眼(Marketing Myopia)」で有名なレビット教授の名著。製品とは何か。サービスとは何か。顧客とは何か。そして、マーケティングとは何かと問う、今まさに考え直すべき原点が克明に記されている名著。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則
    コトラーはマーケティングは「製品中心(Product out)=1.0」「消費者中心(Customer Centric)=2.0」。それが「人間中心・価値主導(Social)=3.0」にバージョンアップしたと論じている。本書は「マーケティング戦略」の本というよりは、今日の「企業のあるべき姿」を示しているといえる。その意味では、「では、どうするのか?」に関しては、新たなソーシャルメディアの趨勢などに考慮しつつ、従来のコトラー流2.0を十分に理解しておくことが必要だ。 (★★★★)

  • 鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)

    鈴木 準・金森 努(共著): 広告ビジネス戦略―広告ビジネスの基礎と実践 (広告キャリアアップシリーズ 1)
    広告に関する本は、いわゆる広告論や広告制作の手法を述べていても、マーケティング理論を前提としたものは少なかったように思います。「マーケティングの中における広告ビジネス」を具体的にまとめました。さらに、当Blogで「勝手分析」した事例を企業取材によって、マーケティングと広告の狙いを検証しました。多くの現役広告人と広告人を目指す人に読んでいただきたいと思います。

  • 金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)

    金森 努: 図解 よくわかるこれからのマーケティング (なるほど! これでわかった) (DO BOOKS)
    金森の著書です。フレームワークやキーワードやセオリー、事例をマーケティングマネジメントの流れに沿って102項目で詳説しました。フレームワークの使いこなしと事例には特にこだわりました。金森のオリジナル理論もあり!

  • 山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える

    山田 英夫: 新版 逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変える
    リーダーの戦略や、チャレンジャーがリーダーを倒す方法など、ポーター、コトラーの理論を更に実践的な事例と独自フレームワークで解説した良書。事例がちょっと古いが、今、読み返してもためになる。在庫が少ないので、中古本でも出ていれば即買いをお勧め。 (★★★★)

  • 金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)

    金森 努: 実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則 (ビジマル)
    このBlog記事一話一話が見開きで図解されたわかりやすい本になりました。ヒット商品のヒミツをフレームワークで斬りまくった、ネタ56連発。是非一冊!

  • 後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて

    後藤 一喜: 費用対効果が見える広告 レスポンス広告のすべて
    「レスポンス広告」とは資料・サンプルの請求や商品の注文を消費者から獲得するための広告のこと。そのための方法論は、ブランドイメージをよくするといった目的とは全く異なる。本書は多数の広告サンプル(精度の高いダミー)を用いてレスポンス広告のキモを具体的かつ詳細に解説している。「レスポンス広告の鬼」たる筆者ならではの渾身の1冊。 (★★★★★)

  • ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン

    ジョン・P・コッター: カモメになったペンギン
    どんなすばらしいマーケティングプランも、結局は人が動かなければ成功しない。故に、リーダーシップ論が重要となる。本書はコッター教授の「企業変革8ステップ」が寓話の中でわかりやすく記されている良書である。金森絶賛の一冊です。 (★★★★★)

  • マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則

    マルコム・グラッドウェル: 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則
    2000年発売の良書。旧タイトル「ティッピング・ポイント」が文庫本化されたもの。クチコミの本ではなく、イノベーションの普及が何かのきっかけで一気に進む様を、各種の事例を元に解明した、普及論にも通じる内容。(うっかりリストに入れ忘れてました)。オススメです。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学

    野中 郁次郎: イノベーションの作法―リーダーに学ぶ革新の人間学
    経済分野最強のジャーナリスト勝見 明紙と、経営学の大家野中 郁次郎先生という黄金コンビによる傑作。いくつもの企業でのイノベーション事例を物語風に紹介しながら、その変革の要諦を解明、さらなる提言をメッセージしている。読み応え十分。 (★★★★★)

  • 野中 郁次郎: イノベーションの本質

    野中 郁次郎: イノベーションの本質
    最新刊の「イノベーションの作法」に比べると、少々こちらは「野中理論」の難しい部分が表面に出ているように思えるが、発売当初、ナレッジマネジメントの観点からしか読んでいなかったが、読み返してみれば、本書の1つめの事例である「サントリー・DAKARA」はマーケティングでも有名事例である。むしろ、本書での解説は、マーケティングのフレームワーク上の整合ではなく、そのコンセプト開発に力点が置かれており、その精緻な記述は圧巻であった。読み直して得した気分になったので、ここで併せて紹介する。 (★★★★)

  • グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業

    グレン・アーバン: アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業
    だいぶ発売されてから時間が経ってしまったのですが・・・。 二度目に読んで、「お勧め」しようと思いました。 そのわけは、一度目は「いかに顧客と優良な関係を構築することが重要か」という当たり前なことを力説しているだけの本だと思ったからです。 事実、そうなんです。アドボカシー(advocacy=支援)という新しい言葉を遣っただけで。 ただ、その「当たり前なこと」のまとめ方が秀逸であり、我々マーケターにとっては「当たり前」でも、その考え方がどうしても理解できない石頭な人に読ませると、なかなか効果的だと分かりました。 さて、皆さんもそんな人が周りにいたら読ませてみては? (★★★)

  • レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」

    レスター・ワンダーマン: ワンダーマンの「売る広告」
    ダイレクトマーケティングの創始者であり、金森の心の師でもある、レスター・ワンダーマンの「BEING DIRECT」(英文名)が12年ぶりに改訂されました。 詳しくは、Blog本文の10月16日の記事を参照ください。 必読の書です。 前版は電通出版だったので入手が少々面倒でしたが、今回は一般の出版社からの刊行なので、アマゾンで購入できます。この本の画像をクリックすれば、アマゾンのサイトにリンクしますので、是非! (★★★★★)

  • フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式

    フレドリック・ヘレーン: アイデア・ブック スウェーデン式
    実は、この本は金森の入院中の頂き物。結構はまりました。 スウェーデンの売れっ子セミナー講師が自らのセミナーで用いている30の設問を、気の利いたイラストに載せて紹介している。「レンガの使い方を10通り挙げなさい」のような、「ん?どこかの自己啓発セミナーで聞いたな~」というようなネタもありますが、ひねりの効いた問いかけもいっぱい。ざっと流し読みしたら20分で読み終わってしまう絵本になってしまいますが、本気で問いかけの答えを考えると、なかなか論理思考も鍛えられます。金森もお気に入りの問いかけは出典を明らかにして、自分の企業研修で使わせてもらっています。 ちなみに、この本の2(続編)も出ています。2冊揃えば送料も無料。「あわせて買いたい!」。 (★★★★★)

  • パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う

    パトリシア ジョーンズ: 世界最強の社訓―ミッション・ステートメントが会社を救う
    重要な本をお薦めするのを忘れていました。この本も結構、私の座右の書となっています。「ミッションステートメント」の重要性もコラム等で繰り返し述べてきました。それがしっかりしていないが故に、会社自体が方向性を見失い、社員も求心力をなくす。また、顧客のことも忘れてしまう。ミッションステートメントは壁に黄ばんだ紙に書いてあるものを、朝礼で呪文のように唱和するためのものではないのです。社員全員、全階層がそれを本当に理解し、行動できれば会社に強大なパワーが生まれるはずです。この本は「強い企業の強いステートメント」が紹介・解説された良書です。 (★★★★)

  • エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学

    エベレット・M.ロジャーズ: イノベーション普及学
    もはや絶版でプレミアがついて現在ユーズドで3万円!(昨年までは2万円以下でした。定価は8千円弱)。 しかし、一度は翻訳版とはいえ原書を読みたいもの。 私のコラムでもよく取り上げています。 様々なマーケティングの入門書にも部分的に取り上げられていますが、誤った解釈も多く、「イノベーションの普及速度」などの重要項目も抜けています。 ただ、基本的には社会学の学術書なので、完読するのはチトごついかも。(それで星4つ。内容的には断然5つですが。)3万円ですが、手にはいるならラッキー。 10万円にならないうちに・・・? (★★★★)

  • ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業

    ジャストシステム・エンタープライズソリューション協議会/JECS: 思考停止企業
    すみません。これは宣伝です。 Blogにも「共著で実践的なナレッジマネジメントの本を出しました」と紹介いたしましたが、この度第二版(重版)ができました。 初版で終わったしまうことの多いビジネス書において重版はうれしい! まだお読みになっていない方は是非! (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪

    フィリップ・コトラー: マーケティング10の大罪
    これも分かっている人向き。 コトラーの中では「最も今日的な本」であると言えるでしょう。コトラー大先生と私ごときを並べて語るのは不遜の極みですが、私が旧社電通ワンダーマンのニューズレターや日経BizPlusの連載でしきりに訴えてきた内容が集約されている気がします。うーん、大先生と何か視点が共有できているようで読んでいて嬉しくなってしまった一冊でした。 (★★★★★)

  • フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト

    フィリップ・コトラー: コトラーのマーケティング・コンセプト
    今度は分かっている人向け。そういう人はたぶんもう買っていると思いますが・・・。 コトラー特有の大作ではなく、マーケティングの中でも重要なコンセプトを80に集約して解説を加えた、ある意味他のコトラー本の「攻略本」とも言える。 常にデスクサイドに置いておき、用語集として使うもよし、ネタに困ったときにパラパラと眺める「ネタ本」としてもよし。マーケター必携の本であると言えましょう。 (★★★★★)

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2011.08.31

【加筆修正】 「BIG ISSUE」のおじさんに教わったこと

 「ビッグイシュー(BIG ISSUE)」という雑誌を知っているだろうか。全32ページで300円という体裁と価格だけを聞くと高いと驚くかもしれない。その価格にはワケがある。「ホームレスの自立支援」だ。1991年に英国で発足し、世界で展開。日本版は2003年にスタートした。300円には、路上で雑誌を販売するホームレスの取り分、160円が含まれている。雑誌の販売収入を得て「路上生活→簡易宿泊所(1泊千円前後)→アパート賃貸・住所取得→住所をベースに新たな就職活動開始」という自立への目標ステップがあるという。
 老子の言葉「授人以魚 不如授人以漁」(人に魚を与えれば一日で食べてしまうが、釣りを教えれば一生食べていける)と同じ思想だが、目標達成は容易ではない。暑さ寒さに耐え、1冊ずつ160円の収益を積み上げていく日々だ。買ってもらうために身なりをこざっぱりとし、「ベンダー」と呼ばれる売り子としての登録を証明する身分証を首からさげ、雑誌を高く掲げてアピールするのが彼らのスタイルである。

■2010年11月のはじめ:売り手と買い手の「あるべき姿」とは・・・

 ある日の夕暮れ時、筆者は足早に有楽町・交通会館側の駅前を歩いていた。目にBIG ISSUEの売り子が目に入ったが、少々急いでいたことと、財布に小銭がなかったことを思い出して、その横を通り過ぎた。通りすがりざまに売り子と目が合った。そして、なんとなく気になって、100メートルぐらい進んでから引き返し、彼に「ください」と声をかけた。
すると、その売り子は「きょうは線路の反対側に来て売ってるからね」と笑顔を浮かべて妙なことを口にした。その笑顔、少しいたずらっぽい目の光を見た刹那に記憶が蘇った。BIG ISSUEを買う場所はいつもバラバラで、出張先の名古屋駅前で買ったこともある。だた、確かにこの売り子から何度か購入したことがある。
 彼は話を続けた。「いつも反対側(東京国際フォーラム)を通るでしょ?今日はどうしたのかな、違う人だったのかなと思っちゃった」。

 彼は、何度か不定期に購入しただけの相手のことを覚えていたのだ。そして、覚えていることがさも当然というように話しかけてきたのだ。それ以前に、すれ違いざまに「ここにいるよ」と目で合図を送ってくれていたのだ。

 「顧客の認知」。売り手が顧客を覚えていること。それは商売の基本だ。しかし、不特定多数の顧客を相手に低廉な商品を販売する場合、なかなかに実現は困難だ。それを彼はやってのけている。簡易宿泊所と食料を確保するためには、BIG ISSUEを毎日10~20冊は売らなくてはならないのにだ。

 そこまで考えてから、ふと、「きょうは線路の反対側に来て売ってるからね」と唐突に言った彼の言葉を思い出した。彼は、買い手である筆者も売り手である彼を認知していると信じて「きょうは・・・」と話を切り出したのだ。
売り手が顧客を覚えていたとしても、顧客も売り手を覚えておく義理はない。ましてや、通りすがりに何度か雑誌を買っただけの相手だ。「顧客も自分を覚えていてくれるに違いない」と思うのは、単なる彼の思い込みにすぎない。だが・・・。
 あまたいるBIG ISSUEの売り子。何人もから購入した経験の中で、思い起こしてみれば彼ほど明るく人なつこい表情と話をする人が何人いただろうか。そして、ホームレスとは思えない、前向きな目の輝きを持った人は。そもそも、通り過ぎてからその目が気になって、きびすを返して彼の元へ引き返してきたのだ。
 
 雑誌を手渡し、千円札を受け取って釣り銭を数えながら、彼は言葉を続けた。「年末宝くじが始まったら、また反対側に戻っちゃうからね」。その言葉に筆者は「ああ、それじゃあ、今度は気をつけて探してみるよ」とほほえみを返した。
300円の対価として受け取ったもの。それは、薄い雑誌だけではない。形容しがたい満足感だった。何か、胸が温かくなるような。

 売り手と買い手の関係は、商品と対価の交換において対等である。であれば、「顧客満足」があるなら、「販売者満足」があってもいいのではないか。顧客は自分のことを売り手が認知してくれていることに満足する。顧客も売り手を認知していれば、売り手もうれしくなるはずだ。
 顧客は自らの支払う対価以上の満足を得ることが当然の権利と思いがちだ。そして顧客の過度な要求にモチベーションが低下した売り手は、顧客への信頼と敬意を忘れ、対応が形骸化する。そんな悪循環を顧客の側から断ち切る努力があってもいいと思った。少なくとも、どんな商品を購入する時にでも、売り手のステキな対応にであった時には、顧客の側も敬意を払い、相手を認知するようにしたいと思った。

■2011年1月のはじめ: 人の好意にどう応えるべきなのか?

 お互いが顔見知りになったという認識ができると、とかく相手が気になるもの。特に彼のいる駅前は、筆者の定番タウンウォッチのルートになっている。
ところが、彼の姿が年末年始と見当たらなかった。年の瀬が慌ただしくなる前に最新号を買った。月2回発行なので、少なくとも松飾りが取れる頃には次の号が売り出されるはずだ。
正月休みにして、郷里に帰ったのだろうか。それとも、晴れて自立して売り子を卒業したのだろうか。もしかして、病気でもしたのだろうか。名も知れぬホームレスの雑誌売り。その姿のない駅前を通るたびに、気がかりさと期待がない交ぜになりつつ増していく自分の心を不思議に思った。

 何度目かの通り道。雑誌を右手に高く掲げた「BIG ISSUE」売り独特のポーズの彼を見つけた。いつもの如く、筆者を遠くから見つけてニコリと人なつこい笑顔を投げかけてきた。
ポケットの小銭入れから300円を取り出しながら、彼のところに歩み寄って雑誌と交換する。
 「しばらく見かけなかったから、故郷に帰ったか、卒業したか、病気にでもなったのかと思ったよ」。と話しかけると、いつものクリクリとした瞳が少しだけ伏し目がちになった気がした。
 「故郷に帰りも、卒業もしないですよ」。
 いつもより小さな声でポツリと言ったあと、
「カラダは見た目以上にポンコツですが、何とか病気はせずにやってます!」
 と、少し声を大きくして言葉を続けた。
 何か、触れない方がいいものに触れた。開いてはいけないものを開いた気がして、少し気まずかった。

 「もっと寒い故郷で新聞屋をやってたんですよ。頬が切れるくらい冷たい風が吹くところで、真っ暗で星が出ているうちから新聞を配っていたんです。だから寒さには強いんですよ」。
 問わず語りに初めて彼が身の上話のようなことをつぶやいた。
 もっと自分のことを話すのか。聞いて欲しいのかと思ったが、話はそれで終わりだった。いや、話したかったというふうではなかった。少し昔を思い出したことが、口から出たというような話し方だった。

 筆者は一旦その場を去って、再び戻り、彼にレジ袋を差し出した。近くの果実店で買い求めたバナナ四本と蜜柑一山。合計500円だった。現金を渡したのでは、商売をしている彼に失礼だ。かといって、何かできないかと思案した結果の代物だ。それでも恐らく、差し出す筆者の姿はひどくおずおずとした様だっただろう。

 「ありがとうございます!遠慮なく!」
 思案したのは全くの無駄であった。彼はいつもの人なつこく、クリクリした目を輝かせて躊躇なくレジ袋を受け取った。
 決して、ちょうど空腹であったからとか、「タダでもらえるものならば」といった様子ではない。かといって、差し出されたので義理で受け取るという風情でもない。

 人の好意に感謝して素直に受け取る。その表現が最も適切に彼の反応を表現する言葉であるはずだ。
 思えば、自分自身が人に対してそんな応え方をいつしただろうか。
 「いやぁ、いいですよ~」。
 「本当ですかぁ~、いいのに・・・。スミマセンねぇ・・・。」
 また一つ、大切なことを彼から思い出させてもらった。

■2011年1月のおわり: 街の人の視線

 「BIG ISSUE」は月2回発行される。1月の2号目の発売日からだいぶたったある日の夕方、いつもの駅前で雑誌を左手で高く掲げ、販売のアピールをした彼の姿を見つけた。
 久しぶりだった。発売日には欠かさず駅前に立つ彼の姿がここしばらく見えなかったのだ。

 私が彼を見つける以前に、彼はこちらに気がついていたようだ。遠くでニコッと笑顔をみせている。近づいてみると、もともと小柄な彼の姿が一回り小さくなったように感じた。雑誌代を手渡す前に、珍しく彼から話しかけてきた。
「いや~、ついに風で寝込んじゃいましたよ・・・」
インフルエンザではなかったというが、一時は体温が39度近くになり、都合10日間は寝込んだという。
 「ちょうど新刊が出る前後だったんで、何とかしようと思ったんですが、無理をすると死んでしまうんで・・・」

 日常的に「死ぬ」という言葉は比ゆ的によく使う。「仕事が多すぎて、もう死にそう」とか。しかし、彼の日常で「死ぬ」は、文字通り「死ぬ」なのだ。ほんの少しの差で、死が隣にあるある暮らしをしている。

 「保険証を持ってないんで、こじらす前に休む。なけなしの金をはたいて、薬局で薬を買って、とにかく寝る。本当は医者の薬、抗生物質があれば一発で治るんでしょうが、そういうわけにもいかないんで、とにかく手に入る薬を飲んで寝て治す。これしかないんですよ。で、10日もすると、たいがい手元の金も、食べるものもなくなって、それ以上休むと首をつらなきゃならないようになる頃、治るんです」。

 完治して調子がいいのか、シリアスな内容に似合わないニコニコ顔で、いつもよりよくしゃべった。
 病み上がりには見えないほど、いつも以上に身奇麗にもしている。きれいにヒゲをあたって、頬が青々としている。シャツの襟首もきれいだ。「身支度はモノを買ってもらう以上、お客に対する最低限のマナーだ」というのが彼のポリシーである。しかし、路上ではなく簡易宿泊所に泊まって身支度を整えるためにも、雑誌の販売収益を上げることは欠かせない。病床から復帰して間もない今日は、特に気合が入っているということだろうか。ちょっと見た限りではホームレスには見えない。
 
 寒い故郷出身だといっていた彼だが、今回は不覚だったなどと語り、大事にしなくてはなどと私が話す。そんなやり取りの横を通る街の人々の視線が気になった。

 彼は独特の間合いで待ち行く人々に声をかける。
 「BIG ISSUE 最新号発売中です」
 大きな声で叫ぶのでなく、彼の「間」入った人に呼びかけるような、問いかけるような動作だ。私と話している間も販売の基本動作として途切れることはない。
 彼の「間」に入っても、多くの人は一瞥もくれずに通り過ぎていく。それはそれで仕方ない。私も「BIG ISSUE」のことを理解する前はそうだった。
 中にはチラリと侮蔑の色が浮かぶ眼差しを向けて通り過ぎる人もいる。確かに身奇麗にしているとはいえ、おしゃれな街の入り口の駅前広場では、いかんせん彼の姿はみすぼらしくみえる。

 そんな人々の視線を見ながら彼と会話をしていると、ふと彼が言った。
「今回は何人ものお客さんに心配されちゃいましたよ。『発売日に姿が見えないってことは、これはきっと寝込んでいるに違いないと思った』ってね。ありがたいことですよ」。

 彼は雑誌を売って、ものを食べ、簡易宿泊所で眠り、身支度を整える。そして金をため、いつか定住できる部屋を借りて職業を探すことを夢見ている。無関心だったり、蔑んだりする街の人の視線の中で、「死」がすぐ近い距離にあることを意識して生きているホームレスの雑誌売りを、その名前も知らぬ人のささやかな再起をかけた夢を支え、心を通じて暖かい視線で見守っている人がこの街にも何人もいたのだ。

 この街も、この世の中も悪くないじゃん・・・。久しぶりに、そんな気持ちになった。

■2011年8月中ごろ:人と人の思い

 有楽町駅前に立つ「BIG ISSUE」の売り子のおじさん。その姿を見かけなくなって、既に半年以上が経っていた。1月頃にも偶然タイミングが合わなかったり、彼が体調を崩して休んでいたりで幾度か姿を見かけないこともあった。しかし、最後に姿を見かけたのは2月ごろだった。以前、「帰る郷里やあてなどない」とも言っていたので、よほど重い病気にでもなったのかと心配になった。しかし、その消息を知る術はない。彼の姿がない駅前を通る度に気になったが、「きっと、立派に自立したんだ」と思うようにしていた。

 ある日、何事もなかったかのように販売する雑誌を高く掲げて駅前に立つ彼の姿を発見した。
聞けば、3月11日の震災の日が「BIG ISSUE」の発売日だったそうだ。発売日には大量の雑誌を抱えて、電車賃の節約のために簡易宿泊所まで歩いて40分かけて戻る。ただでさえ大変な道のりなのに、その日は大勢の帰宅困難者に巻き込まれて動きが取れなくなったという。

 「ホームレスが帰宅困難って、笑えないですよね」と、彼特有の人懐っこい顔で笑う。「ビルのエントランスで普通の人と一緒に夜明かししたんですよ」と、日頃の立場、地位、境遇に関わりない連帯感が生まれた夜を懐かしそうに語ってくれた。

 その日の無理がたたり1ヶ月以上ダウンしたとのことだが、5月には復帰。結局その後3ヶ月は筆者とは街でタイミングが合わなかったため出会わなかったようだ。

 「先生が消息がわかった最後のお客さんですよ」と、彼が妙なことを口にした。聞けば、彼は5月に復帰して以来、馴染みの購入客に再び会えたたびに無事を喜んでいたという。
 彼の姿が見えないと心配していた筆者であるが、筆者もまた心配されていたのだった。

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一般的に結婚式の招待状,パーティーなどの招待状
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