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2011.07.11

オーケストレーターとなるか、下請けとなるか?

 7月8日付日本経済新聞にカタログ大手通販会社・千趣会の新展開が報じられた。記事は「千趣会 クリーニング衣料最長8ヶ月保管」というタイトルである。その狙いは何だろうか。

千趣会が展開するのは<衣類のクリーニングと最長8ヶ月の長期保存を組み合わせたサービス>だ。12日からスタートするという。具体的には<ネットで受注後、利用者の自宅に専用のバッグを送り、宅配便で衣類を回収する。クリーニングした衣類は防虫・防カビ対策を施した24時間の空調の専用倉庫で保管し、利用者が事前に指定した返却時期に自宅まで届ける>というものだ。利用者にとっては便利この上ないように思えるが、このサービスのもたらす意味とは何だろうか。

 上記のサービスをバリューチェーンで描いてみると、集荷→クリーニング→保管→配送という流れになる。千趣会はクリーニング業者ではないし、衣類の保管は「防虫・防カビ対策」という通常の通販貨物のストックとは異なる物流のため<クリーニングと保管は大阪府内の専門業者に委託>するという。

 通常のクリーニング業者は顧客が店舗に持ち込んだ衣類を工場でクリーニングし、店舗で一時的に預かってして返却する。当然、店舗のストックスペースには限りがあるので、なるべく早く返却したい。格安なクリーニング店では1週間以上取りに来ないとペナルティーを科される場合もある。

 しかし、何かと手狭な何かと手狭な日本の住宅事情においては、裏シーズンの衣類保管スペースを何とかしたいというニーズは大きい。それに応えているのが倉庫業者だ。例えばトランクルームの「寺田倉庫」は「ハンガーボックス」というサービスを提供している。10~15着の衣類を専用ボックスにハンガーに掛けた状態で集荷してもらい預け入れし、季節がくると配送してもらうというしくみだ。
 預けるには便利だが、衣類のクリーニングまではやってくれない。そんな時に便利なのが、大手クリーニング業者の「白洋舎」は、クリーニングした衣類を除湿・防虫効果の整った保管庫で預かるというサービスを行っている。しかし、こちらは白洋舎の店舗まで持ち込みが原則のようだ。
 なにやら「帯にたすき」でワンストップでのサービス提供がなされていないなぁ、と、消費者視点では感じられる。そこに目をつけたのが千趣会なのだ。

 千趣会は集荷→クリーニング→保管→配送というバリューチェーンのどこを自社で行っているかというと、集荷・配送は運送会社、クリーニングはクリーニング会社、保管は倉庫会社が担当していると思われるので、実はどこもやっていない。つまり、バリューチェーン全体を統制し、新たな価値を作り出している「オーケストレーター」という役割を担っているのである。

 千趣会がサービスに乗り出したのはナゼか。それは、自社の通販顧客に対し利用促進し、一定のサービス利用の確保を見込めるからである。サービスを軌道に乗せるにあたっての難所は、「集客」だ。一定規模があれば、運送、クリーニング、倉庫という各業者にボリュームディスカウントの交渉が可能となる。その結果、手ごろなサービス価格で利用者をさらに増やすという好循環が作れるのである。

 衣類のクリーニング・保管サービスのオーケストレーターにはベンチャー企業も挑戦している。元々はベンチャー企業であったデルコンピューターが、オーケストレーターの代表的存在なのでそれは十分可能な話だ。「株式会社クリエイターズ・ラブ」が運営する「dressphile.jp オンラインクローゼット」というサービスは、預けた衣類の画像を管理してくれて、PC上であたかも自分のクローゼットを覗いているような利便性を提供し、差別化を図っている。集客に課題はあるが、消費者のニーズをとらえた取り組みだといえるだろう。

 このサービスの中核を担っているクリーニング業者の現状はどうなっているのだろうか。
 2010年10月17日のmsn産経ニュースに厳しい現状が掲載されていた。タイトルは「縮むクリーニング市場、ピークの6割減 高機能アイロンは商機」。<2009年に家庭で支出した衣類のクリーニング代は約8000円で、ピークの1992年と比べて約6割減ったことが、総務省の家計調査で分かった。クリーニング市場の規模は推計で約8200億円から約4300億円に縮小、事業者数も減っている>という。さらに、<家計調査によると、2人以上の世帯の09年のクリーニング代は、前年比8.1%減の8131円で、ピークの92年(1万9243円)から17年連続で減少>だという。

 単独では衰退していくビジネスも、複合することによって魅力を増すこともある。生き残りのために料金交渉に応じて下請けとなるのか、オーケストレーターとなるのか。それを分けるものは、市場の「未充足ニーズ」に目をこらすことができるか否かであるといえるだろう。

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