もしも、今度の「変わり種ペプシ」が美味しかったら・・・
毎年2回恒例、「ちょっと変な味」で話題を集め続けている「変わり種ペプシ」が今年も発売される。しかし、昨年あたりから様子が変わってきた。妙に美味しいのだ。それはいったい、何を表しているのだろうか。
今年の「変わり種ペプシ」は「ペプシ カリビアンゴールド」。7月26日(火)から全国で季節限定の発売だ。サントリーのニュースリリースによると<カリブ海沿岸や中南米に生育する果実「ホワイトサポテ」のフレーバーを採用した、爽やかな味わいのコーラです>とある。
http://www.suntory.co.jp/news/2011/11100.html
「ホワイトサポテ」とはまたなじみがない果実だが、<亜熱帯性の柑橘類(ミカン科)の果樹。果皮は緑色から薄い黄色をしており、果実は非常に甘い>と注釈が付いている。<カリブ海を思わせる青色のラベルと財宝をイメージした金色の液色でリゾート地の贅沢な雰囲気を演出しました>というパッケージと相まって、何とも美味しそうではないか。
「変わり種ペプシ」が注目を集めたのは、2007年のキュウリ風味「ペプシキューカンバー」によってだ。キュウリというよりはスイカの白いところまで欲張って噛んでしまったような、薄甘くてほのかに青臭い味にケミカルっぽさが漂う衝撃の味であった。以来、2009年のしそ風味の「ペプシしそ」など、独特のケミカルっぽさを伝承し飲む者を唸らせてきたのである。
「変わり種ペプシ」は、究極のチャレンジャー戦略の武器である。チャレンジャーはリーダーとの差別化が命。日本のコーラ市場におけるリーダーブランドであるコカ・コーラが決して発売しないようなフレーバーで、「さすがペプシはぶっ飛んでる!」というパーセプションを獲得するのが使命なのだ。
ところが、昨年5月25日に発売された「ペプシバオバブ」はその認識を多くのファンが改めざるを得ない商品であった。
「バオバブ」は、アフリカに自生する巨木。その実をイメージしたという、かなりナゾなコンセプトではあったが、変わり種ペプシ独特の「ケミカルさ」は陰も見せず、甘味料を使ったゼロ系コーラに慣れた舌には素直な甘味が実に美味しく感じられたのだ。ネット上でも「美味しい変わり種ペプシ」は大きな話題となり、「こんなハズはない!」という意見の一方、「これなら定番商品化できるんじゃね?」という感想も多かった。
「ぶっ飛んだチャレンジャー」としてのパーセプションではなく、何を狙ったのか。
飲んだ消費者の感想が「このちょっと変わったペプシ、おいしい!」だったとすれば、それに続くのは、「ペプシって、こんなのも作れるんだ!」だろう。となれば、「次はどんな味のペプシが出るんたろう?楽しみ!」だ。つまり、新たなペプシファン獲得と囲い込みが可能になってくるのだ。
なぜ、戦略の転換をしたのか。それは、リーダー、コカ・コーラの背中が見えたからではないだろうか。
2009年3月31日付FujiSankei Business iに興味深い生地が掲載されていた。サントリーは「ペプシネックス」と「ダイエットペプシ」の2商品を持っているが、2008年の時点では2商品合わせても<シェアは44%と日本コカ・コーラにわずかに後塵(こうじん)を拝した>という。それを2009年の<販売数量を13%増><シェアも47%に引き上げる計画>であり、さらに<国内シェアを早期に約20~30ポイント上昇の60~70%に引き上げる>という計画をぶち上げたのである。
果たして、その結果はどうだったかは続報がなかったが、今こそ、それが現実的なシナリオになろうとしているのではないだろうか。
では、コカ・コーラは「美味しい変わり種ペプシ」を先兵としたペプシの戦略に、「美味しい変わり種コカ・コーラ」という同質化戦略で対抗してこないのだろうか。結論から言えば、それはあり得ない。
Wikipediaに「カンザス計画」という実に面白い項目がある。
http://tinyurl.com/2688ee8
公知の事実ではあるが、ある意味でのコカ・コーラの黒歴史を記述しているのだ。
<カンザス計画(カンザスけいかく)は、コカ・コーラが過去に一度だけ、その味を改革した試み><新旧の味を併売せずに全て新しいフレーバーに入れ替えたため、消費者から「昔の味を返せ」と抗議が殺到。たった3カ月で元の味のコカ・コーラを「コカ・コーラ・クラシック」として再発売する結果になった>というものだ。
味の変化に厳しいファンは、派生新商品であったとしても、「コカ・コーラ」のブランドを冠した商品で「変わり種」は認めないだろう。また、ブランドとしても「カンザス計画」のトラウマがある以上、冒険はしたくないはずだ。
リーダーができない戦略を展開するのがチャレンジャーの真骨頂。既にペプシは「ペプシドライ」で「甘くないコーラ」という新たなコンセプトを世に問うて消費者から一定の評価を得ている。そして、今回は、従来のように単に変わった、珍しいだけの「変わり種」ではなく、シェア逆転の一撃ともなる武器として繰り出そうとしていると考えられるのである。
・・・と、以上は「ペプシ カリビアンゴールド」が美味しかったら、という前提に立った仮説である。果たして、現実はどのようになるのか。発売の7月26日が楽しみである。
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