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10 posts from July 2011

2011.07.25

P&Gの「髪の手触り」という訴求に学ぶ

 P&Gから、「髪の手触り」に焦点をあてたシャンプー、コンディショナー、トリートメントなどのヘアケア製品がリニューアル発売された。その意図はどこにあるのだろうか。

 発売されたのは、「ハーバルエッセンス なめらかスムース シリーズ」と「ハーバルエッセンス うるおいモイスチャー シリーズ」。ヘアケアブランド「ハーバルエッセンス」は従来から、「香り」を訴求ポイントとしている。ニュースリリースでも、<発売当初から「香り」にこだわってきたブランド>であり、<いつまでも髪から咲き誇る表情豊かな香り>という特徴が挙げられている。
 その「香り」を強化する一方、今回のリニューアルでは、ニュースリリースによれば、<消費者の髪に対するニーズであるなめらかな髪の手触りを実現>したという。P&Gといえば、製品づくりに関して徹底した消費者調査を行う事で知られているが、今回も消費者ニーズを的確に捉えて商品を市場に投入したということだろう。しかし、この商品のマーケティング的注目点は、その訴求の切り口にある。

 この商品の提供価値をコトラーの「製品特性5層モデル」で考えてみるとわかりやすい。

・中核=製品を手に入れることで実現できる中心的な価値→ヘアケア製品の場合、髪を清潔にする。洗い上がりを(ゴワゴワにならないように)整える。

・基本=中核価値を実現するために欠かせない要素(価値)→簡便に使用できること。(昔のシャンプーは2度洗いしたり、コンディショナーはお湯に溶かしたり、トリートメントは水分をふき取って、髪に馴染ませてしばらく時間を置かなければならないなどいろいろ面倒だった!)

・期待=中核価値を直接実現する要素ではないか、付加されていることが期待される価値→髪を「しっとり」や「サラサラ」にする(成分が配合されている)。

・拡大=価値として提供されることで魅力を高める要素→髪が良い香りになる。他の商品でも「香り」を工夫しているが、この商品は従来、特にこの価値を高め、強調していた。

・潜在=消費者が気付いていない、または期待されていないが、実現されれば魅力を高めることになる要素→今回、従来はスキンケアに用いられる「手触り」という価値要素をヘアケア製品に持込み、この部分を強化した。

 製品の価値構造は、普及の前段階、つまり導入期や成長期においては価値構造の中心部分、中核や基本的価値で十分消費者のニーズを充足させることができる。しかし、成熟期に入ると求められる価値が中核からどんどん付加的な要素になってくるのである。そのため、「ハーバルエッセンス」は従来になかった「手触り」という切り口を訴求しているのである。

 製品の提供価値は目に見える、有形のスペック(仕様)的な価値=「機能的価値」と、無形で感じ取る、気分などに影響する「情緒的価値」に二分できる。

 ヘアケア製品は成熟化しており、機能的価値では差別化困難なため、「ハーバルエッセンス」は従来から「香り」=ヘアケア製品の拡大価値に注力して「情緒的価値」を訴求していたといえる。体臭も薄く身体や身に付ける物に関して「無臭」を好んでいた日本人にとって、「香り」を身にまとうということは特別なこと、「ハレとケ」の「ハレ」である。リリースでも<いつまでも髪から咲き誇る表情豊かな香りが、ハッピーの予感に満ちた一日をナビゲートする>としている。
 だが、日本人の香りに対する関心は年々高まっている。「衣類の洗濯」の世界を見れば、「ダウニー」が火をつけ、国産メーカーもこぞって参戦している「香り付き柔軟仕上げ剤」が人気になっていることがその証左だ。そうなると、早晩ヘアケア製品も差別化の主戦場は「香り」になることが予想される。
 そこで、P&Gは先手を打ち、髪の「手触りが良くなる」という消費者にとっては潜在的な状態ではあるが「髪をさわって(さわられて)気持ちが良い」という機能と情緒両面に働きかける価値を訴求したのだと考えられる。先に挙げたリリースの一文には前段がある。<1回使っただけで実感できるなめらかな髪と、いつまでも髪から咲き誇る表情豊かな香りが、ハッピーの予感に満ちた一日をナビゲートする>というのが全文だ。新たな訴求ポイントを強調していることがわかる。

 重要なのは、P&Gが製品の技術に用いた、髪を「なめらか」にするという技術を、「手触り」という「効用」伝えることでシズル感を高め、情緒的価値に昇華させることに成功している点だ。機能的価値はなかなか具体的に伝わりにくいため、「○○配合」や「□□技術」という訴求しがちだ。技術を顧客視点で「効用」に置き換えることはとても大切なことなのだ。

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2011.07.22

モスの低価格カフェ「MOSCO」は何を狙っているのか?

 モスバーガーが新たにセルフコーヒーショップの「MOSCO」をオープンするという。その勝算はどの程度あるのだろうか。

 モスがセルフスタイルのコーヒーショップ「MOSCO」を板橋にオープン!(2011年7月21日(木)15時13分配信 東京ウォーカー)
http://t.co/mOgBMuX

 「MOSCO」は「モスのコーヒーショップ」を表しているというが、上記記事によれば、<1号店となる店舗は「低投資」「新立地」「スピード提供」を開発コンセプト>としているという。
 コーヒーショップの「商品(Product)」は、飲み物とフードと、そこで過ごす店舗空間であるが、メニュー構成は大規模な店舗設備を不要とするため「コーヒー」とオリジナルの「白いトマトジュース」(←ちょっと謎。話題性喚起のキモか?)を中心に、「ホットドッグなどの軽食メニュー」とシンプルメニュー構成に徹している。店舗は面積約9坪と小規模ながら、快適性を高めるため全席禁煙であるという。
その商品を提供する「価格(Price)」は、200円台を中心とした低価格に設定している。
 さらに、「立地(Place)」は、<エキナカ、空港、書店併設など、新たな立地に出店を積極的に進め、2012年度までに5店舗の出店を目指す>と記事にある。

 カフェ人気であるが、世の中のカフェの1種類は高~中単価である「シアトル系」で、完全禁煙の「スタバ」、分煙(完全分煙と不完全分煙は店舗によって異なる)「タリーズ」など。もう1種類が、低価格・分煙(完全分煙と不完全分煙は店舗によって異なる)の「ドトール」「ベローチェ」などだ。そうしてみてみると、「低価格で完全禁煙」というポジションがホワイトスペースであることがわかる。「ちょっと小休止する程度だからあまりお金はかけたくないけど、タバコはイヤ!」というニーズギャップに応えているカフェは意外と少ないことがわかる。それを、モスフードサービスはフランチャイズの投資負担を小さくして、スピーディーに展開していこうという狙いなのだろう。

 モスのカフェといえば、銀座7丁目に展開している「モスカフェ」があるが、(※モスカフェに関するBlog過去記事→ http://tinyurl.com/3c42y7s )上記は定番メニューに絞り込んでいるとはいえ、バーガーなど通常店のメニューも置いている。また、全くの別ターゲットを狙っているかというと、そうではなく、ターゲット層を通常客に加えてカフェ&スイーツ愛好客に拡大したのではないかと考えられる。

 一方、今回のMOSCOはフードはホットドッグなどで基本のバーガーも置かない。また、ポジショニングを端的に表しているコンセプトが記事にあるように、「“元気充電コーヒーショップ”」であるように、ターゲットはエキナカ、空港、書店併設などの好立地=通りがかりに、短時間の休息=充電をしたい人に設定されている。つまり、ファストフードではなく、比較的ゆっくり食事をしたいという、従来のモスの顧客とはかなり異なる。

 モスカフェの展開を企業の成長戦略を考える「アンゾフのマトリックス」でみてみよう。既存の顧客を対象にするのか、新規の顧客を狙うのか。既存の製品を用いるのか、新製品を開発するのか。顧客・製品、新規・既存の掛け合わせの4つだ。
 モスカフェで考えれば、「(一部)既存顧客×(大半が)新商品」という、「新商品開発」にあたり、マイケル・ポーターが検証したところによれば成功率の高いパターンである。しかし、MOSCOは「(ほとんどが)新たな顧客層×(ほとんどが)新商品」という、最も成功率の低い「多角化」のパターンだと考えられるのである。

 「多角化」のパターンを成功させるには、自社の既存事業とのシナジーが欠かせない。
モスの従来事業とのシナジーという観点でMOSCOを検証すると、意外としっかり狙っていることがわかる。

・生産シナジー=工場設備や原材料の共有
 バリューチェーンで考えれば、ショップで用いられる食材は既存のモスやモスカフェ、MOSCOも同じ工場(セントラルキッチン)で作ることができる。ランニングコストの低減に反映できる。

・経営シナジー=人材や経営ノウハウの共有
 カフェの運営も人を使うことがキモである。まして、モスはフランチャイズが大半のため、マニュアル化が欠かせない。そのノウハウは十分にある。オペレーションの安定が早期に図られ、ロスを最小化できる。

・投資シナジー=技術特許やブランドの共有
 従来のモスに足を運んでいる客以外も立地の利便性で取り込むことを主眼としていると思われるが、それでも「モスバーガー」の名前は知っているだろうし、なにやら「食材のこだわり」だったり、「オーガニック」だったりというキーワードのいくつかはインプットされていると思われる。つまり、それらのブランド資産が活きてきて、名も知らぬ店が通り道に出店する場合より、足を止めさせ店内に引き込む力があるということだ。認知獲得、ブランド構築のための初期投資を抑えることができる。 

 「MOSCO」が第1号店を成増(東京都板橋区)から展開というのは、モス独特の「実験段階」であることを意味している。モスカフェは1号店は江ノ島であり、ミスタードーナツとのコラボで作られた「モスド」は広島に展開していることからもわかる。しかし、このMOSCO、都市部の顧客ニーズギャップ(低価格・完全禁煙で小休止できるカフェがない!)をしっかりとらえ、シナジーを効かせてローコストオペレーションができるように設計されていることがわかる。
 今後、成増から他にどのような所に出現するのか楽しみである。

 

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2011.07.21

ニーズを聴け!枠を壊せ!:縮む市場での生き残り術

 7月20日付・日経MJに目を惹く2つの記事が掲載されていた。そこから何が学べるだろうか。

 1つはコンビニエンスストアでのクリーニング取り次ぎサービスに関する小さな記事だ。「水洗いクリーニング コンビニで受け付け CVSベイエリア」とタイトルにある。千葉県と東京都で「サンクス」のFCを展開する同社が7月から東京都中央区の4店舗で試験的に始めたサービスである。Tシャツなら30枚入る専用バッグにTシャツやズボン、靴下などを詰めて持ち込むと1回1,500円で水洗いして3日後に返却されるしくみだ。働く女性や洗濯する余裕のない会社員らの利用を見込むとある。
 している。

クリーニング市場は総務省の家計調査からの推計値で、1992年のピーク約8,200億円から2009年に4,300億円まで減っているという。クリーニングの事業者も減少し、クリーニング事業者向け業務用洗濯機から三菱重工機器が09年に撤退するなどの動きもあった。
 不景気による生活防衛、節約志向から消費者は家庭での洗濯を強化した。クリーニングの代替として男性用の形態安定シャツや高性能アイロン、衣類にやさしい斜めドラムの洗濯機が普及し、臭いを防止しよい香りをつける柔軟仕上げ剤の発売も相次いでいる。
 クリーニング事業者はまさに存亡の危機に立たされているわけだが、取り次ぎ業務を行うコンビニにとってもあてが外れた格好になっていた。「Convenient=便利な」の意味通り消費者のかゆいところに手が届くサービスを提供して来店頻度を増やすのが目的で、都市部で行っていたクリーニングの取り次ぎサービスも利用者が減っては意味がない。

 CVSベイエリア社が目をつけたのが、「水洗いクリーニング」である。もともとは米国でコインランドリーの付帯サービスとして発祥したといわれているが、日本では「デリウォッシュ( http://www.deli-wash.jp/ )」などが展開し、利用が広まっている。
 コンビニの主要顧客でもある、「働く女性や洗濯する余裕のない会社員」というターゲットは「家庭での洗濯を強化」という世の中の動きとは異なる。その時間と手間をかける余裕がないのだ。故に、クリーニングできちんとプレスしたシャツを提供されるだけでは不十分であり、「普通なら自分で洗濯するような衣類も人に洗って、干して、たたんで欲しい」というニーズを潜在的に持っているのだ。
 従来のクリーニングでは解消されない未充足ニーズを発見し、そのニーズに応えるサービス提供者と結びつけることで利便性を提供し、コンビニもまたオーバーストア、過当競争のなかで生き残りを図っているのである。

 もう1つの注目記事は「雑貨店 20~30代女性向け拡大 ワッツ 若い母親の需要開拓」という記事だ。「ワッツ」は100円ショップ業界第4位の企業である。同社が展開する店舗ブランドの1つ「ブォーナ・ビィータ」は、記事によれば「ピークの04年に14店あったが、採算悪化により新規出店を凍結。不採算店を閉め、一時は6店まで店舗を減らした」とある。復活の転機は取扱品目を見直したことだ。「その後、1000円前後の商品を投入するなど100円商品を主体にした品揃えを見直したところ、収益が徐々に改善。08年から出店を再開し、好調だったため出店拡大に踏み切る」という。

 記事にある「20~30代女性」「若い母親」というターゲットのニーズは何なのか。
 100円ショップ業界の企業であるワッツが提供していた「100円商品」はニーズを満たす対象物=「ウォンツ」にはなり得ていなかったのである。彼女らに大切なことは、「価格が100円であること」ではなく、「そこそこ安くて、オシャレな雑貨」であることだったのだ。現在、「同雑貨店の平均客単価は1200円程度」というのがその証左である。
 同じ100円ショップ業界では業界第2位の「セリア」が従来の100円雑貨を「オシャレな100円雑貨」に絞り込んで「カラーザデイズ」の店舗ブランドを展開し、今年3月にはマルイジャム渋谷店(東京・渋谷)に大型ショップを開いた。全く同じ土俵で勝負してもつぶし合いになるだけだ。ワッツはセリアと同じターゲットを狙いつつ、商品価格の枠を広げ、100円ショップ業界から一歩踏み出すことで生き残りを賭けているのである。

 人口減少時代に入った日本。景気に薄明かりが見え始めた矢先に起きた大震災。座しているだけでは市場は縮小し、売上は低下する。そんな環境の中、自らの枠を壊して新たな需要を取り込む試みをはじめたコンビニ&クリーニングと100円ショップの企業事例。これらから学ぶところは大きいだろう。

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2011.07.19

サッポロライオンの物流革命を検証する

 ビアホール運営のサッポロライオンが物流体制を刷新するという。そのインパクトを読み取っていこう。

 7月18日付日経MJに「サッポロライオン、物流体制を刷新 食材、各店ごとに一括発送」という記事が掲載された。11月をめどに各店舗で卸売業者が個別に納品する現状を、物流センターに全ての食材を集約して仕分け、店舗ごとに一括発送するという体制を作るということだ。記事には「スーパーなど小売業では物流拠点から店舗への一括発送は定着しているが、外食産業では珍しいという」と書かれており、大規模な外食チェーンでは当たり前と思っていたので筆者もちょっとビックリした次第である。
 記事の詳細を見ると「首都圏にある飲食店約30業態、計120店を対象とする」とあるが、現状は「各店舗は肉などの食材を約80の卸売業者から個別に仕入れている」という状態だという。その結果、「120店に食材を届けるトラックは1日に合計約1500台。特に銀座の店舗では1日50台近くが乗り付け、『近隣に迷惑を与えかねない状態にあった(同社)』」という。それを、物流業者が持つ神奈川の物流センターに「卸売業者はいったん食材を配送。必要な食材が揃った段階で店舗ごとに仕分けし、各店舗に1日1便、トラックを出す体制に改めるという。

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 フィリップ・コトラーは流通チャネルの役割として、「生産者と消費者との間に卸売業者や小売業者が入ることで、全体の取引数を減らすことが出来る」ことだとしている。
 サッポロライオンの場合で検証してみよう。
 直接取引の場合、総取引数=納入業者数×店舗数となるため、その数は単純計算で80×12=9,600に上る。
 間に流通業者が1社入った場合は、総取引数=流通業者数(納入業者数+店舗数)となり、1(80+120)=200に集約される。

 上記試算の通り、物流革命のインパクトはかなり大きい。しかし、今までかかっていなかった物流業者への支払い、物流センターのコストが発生する。それをどうするのか。記事では「(納入のための)各店舗への配送回数が減り、卸売業者は物流コストを抑えることはできる。サッポロライオンは卸売業者に対し食材の卸売価格の引き下げで還元を求めていく考えだ」とある。しかし、値引き交渉によって物流コストがトントンになるのであれば、サッポロライオンにはさらに大きな利益を得ることになる。「食材の在庫を余分に抱える必要がなくなるため、倉庫スペースを縮小できる」という点だ。現在出店を注力している50席規模の「エビスバー」の場合、「倉庫スペースを10%削減できれば、1~2席増やせる」という。

 実際の売上貢献がどの程度になるかは、詳細がわからないためフェルミ推定を行う。
 平均客席数増設を1.5席、ランチと夜の合計の客席回転を4回転、平均客単価を3,500円、営業日数を月25日と考え、「エビスバー」以外の店舗も同様であると仮定して120店舗、12ヶ月では、1.5席×4回転×3,500円×25日×120店舗×12ヶ月=756,000,000円である。たかが1.5席の増席効果も積み上げれば馬鹿にできないことがわかるだろう。

 物流、つまりロジスティックは原材料調達から製品配送までの物流システム全般を指すが、別の言葉を使うなら「兵站」である。「戦場の後方にあって,作戦に必要な物資の補給や整備・連絡などにあたる機関(大辞林)」。華々しい敵との直接戦闘に目を奪われ、兵站をおろそかにすると負けるのは近代戦の原則である。サッポロライオンは遅れた飲食業の物流体制を変革したが、他業種でも目に見えない部分でおろそかになっていることはないか検証してみる必要があるだろう。

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2011.07.14

マクドナルド新型クーポン1000万人配信のウラを読む

 一人ひとりにカスタマイズされたクーポンが配布される。ある意味で革命的ともいえる販売促進が日本マクドナルドで本格施行される。その背景を考察してみよう。

 7月14日付日本経済新聞に「マクドナルド 一人ひとりに異なる値引き 新型クーポン1000万人に配信 購買履歴を分析」というタイトルの記事が掲載された。同社の抱える携帯電話サイトに登録している約2000万人の会員のうち、おサイフケータイ機能を持った約1000万人が対象だという。
 会員の特性に合わせたクーポンの例も挙げられている。「土日の昼にコーヒーを頻繁に購入する→週末の朝にコーヒーが無料になる」「一定期間、来店していない→従来よく購入していたハンバーガーなどを割引」「来店頻度は高いが、新発売のハンバーガーを購入していない→新発売のハンバーガーを大幅に割引」「ハンバーガーのセット商品の購入頻度が高い→アップルパイなど1品加えても手軽に食べられるメニューを割引」などだ。

 同記事にも書かれているが、日本マクドナルドは90年代後半から2000年代初頭にかけて最安値ではハンバーガーを50円台で販売するなど、極端な価格政策を展開して業績の低迷とブランド価値の棄損を招いた。その反省から、一時期は「クーポンは禁じ手」とされたこともある。転機が訪れたのは、携帯電話の普及である。それ以前の96年に日本マクドナルドのWebサイトが開設された時から顧客自らがプリントアウトして来店する「Webクーポン」が実施されていたが、さらに顧客の携帯電話にクーポンが配信されるしくみに進化した。それをさらに磨き上げ、<20004年以降、計300億円をかけて顧客情報などを分析するITシステムを構築。来店客の購買パターンなどのデータが一定程度蓄積されたため、本格的な個人向けサービスに踏み切る>(同紙)のだという。

 安値攻勢の反動で苦しんだ日本マクドナルドは、現在の原田社長体制となってからは「売上=客数×客単価」の基本を徹底して行っている。コーヒーや飲料、ナゲットなどの無料や100円販売は「コマセ」の施策として「客数増」のために実行。定番メニュー・セットの定価は決して値引きすることなく静かに「定置網」のように販売しつつ、Big Americaシリーズやチキンメニューの中~高価格帯メニューは針を仕込んだ「喰わせエサ」として投入する。「定置網」と「喰わせエサ」は「客単価」の維持と増加のための施策だ。

 マクドナルドはもはや単に「ハンバーガー業界の王者」であるだけでなく、「1000円以下のカジュアル外食のリーダー」企業であらんとして戦っている。そして、事実、チキンメニューではシェア№1となっている。しかし、決定的な弱みがある。それは、同社が「日本マクドナルド」であることだ。

 牛丼戦争といわれ、200円台前半まで低価格競争が進んだ牛丼業界は、実は戦いの場は中国にも拡大している。吉野家は同社ホームページに以下のような記述がある。<2010年末、吉野家の海外店舗は全体で439店舗、なかでも香港を含む中国が261店舗と半分以上を占めます。中国においては速やかに1,000店舗を達成することが当面の目標です>。すき家を運営するゼンショーも中国進出に力を入れはじめた。
 牛丼チェーンの狙いは明らかだ。人口の縮小が加速化する日本市場より魅力的な中国市場を拡大する。しかも、吉野家の北京では牛丼並盛が13.5元(日本円にして約190円)という現地としては高価格で販売されている。利益の出ない価格で限られたパイを奪い合う日本での戦いとは大きく様相が異なる。

 日本マクドナルドの営業エリアは日本市場に限られる。外食産業総合調査研究センターによると、2008年の国内外食市場は前年比0.5%減の24兆4315億円と、ピークの1997年から16%も縮小しているのである。市場の縮小を前提とした戦略を立てねばならない。戦略の基本としている「売上=客数×客単価」の客数、新規顧客の伸びはもはや期待できない。故に、「(のべ)客数=顧客数×利用回数」「客単価=商品単価×注文数」にもう一段階分解して展開を考えているのである。その方策として利用回数と注文数を増す、「一人ひとりに最適化されたクーポン」を配信するのである。
 日本の人口動態の変化は日本マクドナルドにとってフォローの風も吹いている。人口縮小はもはや止めようもないが、2015年までは世帯数の増加が予想されている。ナゼか。それは単身世帯の増加によるものだ。晩婚化、少子化、高齢化・・・結果的に「お一人様需要」が増えている。昨今のマクドナルドの店舗を見れば、ひとりでも気兼ねなく食事ができる「お一人様用席」を増やしていることがわかるだろう。また、中食需要の高まりや家庭内での個食化もテイクアウト利用を増すことになる。マクドナルドではドライブスルー併設店は昨今、利用が2桁の伸びであるという。その、フォローの風を受けて、さらに売上上昇につなげるために「個別クーポン」が効いてくるのだ。

 人口動態や食事に対するニーズの変化という社会的な変化ばかりではない。今、新クーポンをリリースするのは、技術的な成熟度の観点からもタイミング合っている。前掲の記事の内容にあるように、対象となるのは「約2000万人の会員のうち、おサイフケータイ機能を持った約1000万人が対象」だ。携帯電話はスマートフォンへの買い換えが進んでいる。主力のiPhoneにはおサイフケータイ機能は搭載されていないが、おサイフケータイ機能を利用可能にするFeliCaシール、「電子マネーシール for iPhone 4」がソフトバックBBから発売されている。Android OSを搭載した国内勢も従来の携帯電話=ガラケー(ガラパゴス携帯)の機能を取り込んだ「ガラスマ(ガラパゴススマートフォン)」で巻き返しを図りはじめた。おサイフケータイ機能非対応の携帯電話利用ユーザー1000万人もスマートフォンへの買い換えでクーポンの対象会員となるかもしれない。さらに<マクドナルドに月1回以上のペースで来店する優良顧客は約3000万人>いるという。登録顧客ベース拡大のチャンスもある。

 商圏が限られている。商圏内人口が縮小している。そうした逆風をはねのけるため300億円を投じたという、日本マクドナルドの入魂の施策がどのような実を結ぶのか注目である。

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2011.07.11

オーケストレーターとなるか、下請けとなるか?

 7月8日付日本経済新聞にカタログ大手通販会社・千趣会の新展開が報じられた。記事は「千趣会 クリーニング衣料最長8ヶ月保管」というタイトルである。その狙いは何だろうか。

千趣会が展開するのは<衣類のクリーニングと最長8ヶ月の長期保存を組み合わせたサービス>だ。12日からスタートするという。具体的には<ネットで受注後、利用者の自宅に専用のバッグを送り、宅配便で衣類を回収する。クリーニングした衣類は防虫・防カビ対策を施した24時間の空調の専用倉庫で保管し、利用者が事前に指定した返却時期に自宅まで届ける>というものだ。利用者にとっては便利この上ないように思えるが、このサービスのもたらす意味とは何だろうか。

 上記のサービスをバリューチェーンで描いてみると、集荷→クリーニング→保管→配送という流れになる。千趣会はクリーニング業者ではないし、衣類の保管は「防虫・防カビ対策」という通常の通販貨物のストックとは異なる物流のため<クリーニングと保管は大阪府内の専門業者に委託>するという。

 通常のクリーニング業者は顧客が店舗に持ち込んだ衣類を工場でクリーニングし、店舗で一時的に預かってして返却する。当然、店舗のストックスペースには限りがあるので、なるべく早く返却したい。格安なクリーニング店では1週間以上取りに来ないとペナルティーを科される場合もある。

 しかし、何かと手狭な何かと手狭な日本の住宅事情においては、裏シーズンの衣類保管スペースを何とかしたいというニーズは大きい。それに応えているのが倉庫業者だ。例えばトランクルームの「寺田倉庫」は「ハンガーボックス」というサービスを提供している。10~15着の衣類を専用ボックスにハンガーに掛けた状態で集荷してもらい預け入れし、季節がくると配送してもらうというしくみだ。
 預けるには便利だが、衣類のクリーニングまではやってくれない。そんな時に便利なのが、大手クリーニング業者の「白洋舎」は、クリーニングした衣類を除湿・防虫効果の整った保管庫で預かるというサービスを行っている。しかし、こちらは白洋舎の店舗まで持ち込みが原則のようだ。
 なにやら「帯にたすき」でワンストップでのサービス提供がなされていないなぁ、と、消費者視点では感じられる。そこに目をつけたのが千趣会なのだ。

 千趣会は集荷→クリーニング→保管→配送というバリューチェーンのどこを自社で行っているかというと、集荷・配送は運送会社、クリーニングはクリーニング会社、保管は倉庫会社が担当していると思われるので、実はどこもやっていない。つまり、バリューチェーン全体を統制し、新たな価値を作り出している「オーケストレーター」という役割を担っているのである。

 千趣会がサービスに乗り出したのはナゼか。それは、自社の通販顧客に対し利用促進し、一定のサービス利用の確保を見込めるからである。サービスを軌道に乗せるにあたっての難所は、「集客」だ。一定規模があれば、運送、クリーニング、倉庫という各業者にボリュームディスカウントの交渉が可能となる。その結果、手ごろなサービス価格で利用者をさらに増やすという好循環が作れるのである。

 衣類のクリーニング・保管サービスのオーケストレーターにはベンチャー企業も挑戦している。元々はベンチャー企業であったデルコンピューターが、オーケストレーターの代表的存在なのでそれは十分可能な話だ。「株式会社クリエイターズ・ラブ」が運営する「dressphile.jp オンラインクローゼット」というサービスは、預けた衣類の画像を管理してくれて、PC上であたかも自分のクローゼットを覗いているような利便性を提供し、差別化を図っている。集客に課題はあるが、消費者のニーズをとらえた取り組みだといえるだろう。

 このサービスの中核を担っているクリーニング業者の現状はどうなっているのだろうか。
 2010年10月17日のmsn産経ニュースに厳しい現状が掲載されていた。タイトルは「縮むクリーニング市場、ピークの6割減 高機能アイロンは商機」。<2009年に家庭で支出した衣類のクリーニング代は約8000円で、ピークの1992年と比べて約6割減ったことが、総務省の家計調査で分かった。クリーニング市場の規模は推計で約8200億円から約4300億円に縮小、事業者数も減っている>という。さらに、<家計調査によると、2人以上の世帯の09年のクリーニング代は、前年比8.1%減の8131円で、ピークの92年(1万9243円)から17年連続で減少>だという。

 単独では衰退していくビジネスも、複合することによって魅力を増すこともある。生き残りのために料金交渉に応じて下請けとなるのか、オーケストレーターとなるのか。それを分けるものは、市場の「未充足ニーズ」に目をこらすことができるか否かであるといえるだろう。

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2011.07.07

女性限定マラソン大会・参加費8000円は高いか安いか?

 2011年7月2日付日本経済新聞の東京・首都圏経済欄に掲載されたイベントの情報。女性限定のマラソン大会が開催されるというが、その価格設定について考えてみたい。
 短い記事なので以下に全文を転載しよう。
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『女性限定マラソン大会9月18日にお台場で開催』
 女性のモデルやデザイナーらで設立した一般社団法人「ランガール」は女性限定のマラソン大会「ランガール・ナイト」を9月18日に開催することを決めた。女性ならではのニーズに対応し、更衣室や託児所なども用意する。深海副都心の潮風公園(東京・品川)をメーン会場に5キロメートルと10キロメートルのコースを設定した。500人を募集。参加費は8000円。
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■参考:一般社団法人「ランガール」→ http://www.rungirl.jp/

 5kmまたは10km走って8000円。このプライシングを高いとみるか、安いとみるか。
 TwitterとFacebookで意見を、聞いてみた。
 「高いとは思わない」という声もあったが、大半は「高い」という感想だった。

 プライシングには「3C」の視点が必要だ。即ち、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)である。

 「ランガール・ナイト」と競合になり得る存在として、まずは人気のマラソン大会という意味で、参加当選倍率が10倍を超えたといわれる「東京マラソン」と比較してみよう。フルマラソン42.195kmが10000円。10kmコースは5000円である。
距離の設定が近いところでは、ホノルルマラソンの姉妹大会となっている三浦国際市民マラソンは、ハーフマラソンで4000円、10kmが3500円、5kmが2500円。
 競合の価格を見てみると、10kmの同距離で比べれば、大人気の東京マラソンの1.6倍、いわゆる市民大会である三浦国際ハーフの2.3倍だ。

 では、顧客である参加者にとっては8000円にどのような価値があるのだろうか。
 レースにはその時間を超えるとタイム計測対象外となる「制限時間」が設定されているが、10kmが1時間30分。5kmが50分である。つまり、純粋に走っている時間だけの価値で考えれば、映画1本分とほぼ同等の時間であるにもかかわらず、映画チケット1800円の4.4倍の価格となる。レジャーとしてはかなり割高であることになる。
 しかし、この大会の価値は走っている時間以上に、その前後に重きを置かれている。2010年の大会概要、その中のタイムテーブルを見てみるとよくわかる。
 http://www.rungirl.jp/archives/

 13:30の大会開始から21:00の終了まで、メイクレッスンにエクササイズ、アフターパーティーまで様々なイベントが実施されている。オマケに、会の趣旨である「チャリティー活動」に自分の参加費の10%が自動的に振り当てられるとある。

 自社の視点、つまり、「ランガール」の原価構造はわからないが、これだけ盛りだくさんなメニューを行って、チャリティーにも売上を10%振り当てるとなると、それなりに原価率は高くなっていると考えられる。それを補うために、そうそうたる企業・団体が後援に名を連ねている。もちろん、企業は会場にブースを展開し、自社の販促に余念はなかったようだが。

 他の大会に比べれば割高な価格設定ではあるが、イベントてんこ盛りで原価もかかっていると思われるこの大会。では、どのようなプライシングの意図が込められているのだろうか。 それを考えるには、このイベントのターゲット顧客像を明らかにしなければならない。

 マラソンやランニングという行為の価値とは、「走ることによる健康維持や体力作り」が中核価値だろう。それを実現するだけであれば、場所は問わないし、服装も関係ない。事実、筆者の自宅付近である荒川の土手を走っているランナーたちは地味~な人々が多い。
 それに対し、流行りの「皇居ランナー」に代表される人々は、その中核価値を実現するのに、「オシャレに走ること」という実体価値が欠かせない要素になっている。中核価値だけでなく、実体価値として「オシャレ」を求める人でなければ、「ランガール」の大会に参加する意味はない。
 もう1つ、この大会に参加する重要な価値がある。それは、参加者が女性に限定されていることと、その女性に向けたレース前のイベントであるメイクレッスンやエクササイズでの学びや、レース後のアフターパーティーでの交流という付随機能があることだ。付随機能は単にレースに出て記録を出すことだけを目的としない、オシャレで意識の高い仲間の輪に入るという、マズローの欲求5段階説でいうところの「所属欲求」の充足である。

 そう考えると、8000円というプライシングは、その価値を認めるターゲットを意識した、ある種の排他性のある「ターゲットプライス」であるといえる。イベントなども含めて、8000円という価格に価値の妥当性を感じない人はあえて取り込まない。むしろ足切りをするための価格でもあるのだろう。そうすることによって、同質な価値観を持つ参加者が集い、参加者の満足度は向上するのである。また、協賛企業にとっても、そうした明確な属性の参加者のリストをサンプル提供か何らかの方法で取得できれば大きな意味を持つことになる。
ちなみに、参加費は昨年より1000円の値上げをしている。ターゲティングをより明確化した結果であるとも考えられる。

 ランニングブームも成熟期になってくると、ターゲットとそのニーズは細分化してくる。それに対応する「ランガール」のように尖った大会も開催されるようになってくるのだ。
一方、先端的な層(イノベーター〜アーリーアダプター)は「皇居ランナー」ももはや飽和状態であるといわれているし、興味は他に移っていくとも考えられる。「山ガールブーム」とも相まって「トレイルランニング」などが次に熱くなるのかもしれない。

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2011.07.05

もしも、今度の「変わり種ペプシ」が美味しかったら・・・

 毎年2回恒例、「ちょっと変な味」で話題を集め続けている「変わり種ペプシ」が今年も発売される。しかし、昨年あたりから様子が変わってきた。妙に美味しいのだ。それはいったい、何を表しているのだろうか。

 今年の「変わり種ペプシ」は「ペプシ カリビアンゴールド」。7月26日(火)から全国で季節限定の発売だ。サントリーのニュースリリースによると<カリブ海沿岸や中南米に生育する果実「ホワイトサポテ」のフレーバーを採用した、爽やかな味わいのコーラです>とある。
 http://www.suntory.co.jp/news/2011/11100.html

「ホワイトサポテ」とはまたなじみがない果実だが、<亜熱帯性の柑橘類(ミカン科)の果樹。果皮は緑色から薄い黄色をしており、果実は非常に甘い>と注釈が付いている。<カリブ海を思わせる青色のラベルと財宝をイメージした金色の液色でリゾート地の贅沢な雰囲気を演出しました>というパッケージと相まって、何とも美味しそうではないか。

 「変わり種ペプシ」が注目を集めたのは、2007年のキュウリ風味「ペプシキューカンバー」によってだ。キュウリというよりはスイカの白いところまで欲張って噛んでしまったような、薄甘くてほのかに青臭い味にケミカルっぽさが漂う衝撃の味であった。以来、2009年のしそ風味の「ペプシしそ」など、独特のケミカルっぽさを伝承し飲む者を唸らせてきたのである。
 「変わり種ペプシ」は、究極のチャレンジャー戦略の武器である。チャレンジャーはリーダーとの差別化が命。日本のコーラ市場におけるリーダーブランドであるコカ・コーラが決して発売しないようなフレーバーで、「さすがペプシはぶっ飛んでる!」というパーセプションを獲得するのが使命なのだ。

 ところが、昨年5月25日に発売された「ペプシバオバブ」はその認識を多くのファンが改めざるを得ない商品であった。
「バオバブ」は、アフリカに自生する巨木。その実をイメージしたという、かなりナゾなコンセプトではあったが、変わり種ペプシ独特の「ケミカルさ」は陰も見せず、甘味料を使ったゼロ系コーラに慣れた舌には素直な甘味が実に美味しく感じられたのだ。ネット上でも「美味しい変わり種ペプシ」は大きな話題となり、「こんなハズはない!」という意見の一方、「これなら定番商品化できるんじゃね?」という感想も多かった。

 「ぶっ飛んだチャレンジャー」としてのパーセプションではなく、何を狙ったのか。
 飲んだ消費者の感想が「このちょっと変わったペプシ、おいしい!」だったとすれば、それに続くのは、「ペプシって、こんなのも作れるんだ!」だろう。となれば、「次はどんな味のペプシが出るんたろう?楽しみ!」だ。つまり、新たなペプシファン獲得と囲い込みが可能になってくるのだ。

 なぜ、戦略の転換をしたのか。それは、リーダー、コカ・コーラの背中が見えたからではないだろうか。
2009年3月31日付FujiSankei Business iに興味深い生地が掲載されていた。サントリーは「ペプシネックス」と「ダイエットペプシ」の2商品を持っているが、2008年の時点では2商品合わせても<シェアは44%と日本コカ・コーラにわずかに後塵(こうじん)を拝した>という。それを2009年の<販売数量を13%増><シェアも47%に引き上げる計画>であり、さらに<国内シェアを早期に約20~30ポイント上昇の60~70%に引き上げる>という計画をぶち上げたのである。
 果たして、その結果はどうだったかは続報がなかったが、今こそ、それが現実的なシナリオになろうとしているのではないだろうか。

 では、コカ・コーラは「美味しい変わり種ペプシ」を先兵としたペプシの戦略に、「美味しい変わり種コカ・コーラ」という同質化戦略で対抗してこないのだろうか。結論から言えば、それはあり得ない。
 Wikipediaに「カンザス計画」という実に面白い項目がある。
 http://tinyurl.com/2688ee8

 公知の事実ではあるが、ある意味でのコカ・コーラの黒歴史を記述しているのだ。
 <カンザス計画(カンザスけいかく)は、コカ・コーラが過去に一度だけ、その味を改革した試み><新旧の味を併売せずに全て新しいフレーバーに入れ替えたため、消費者から「昔の味を返せ」と抗議が殺到。たった3カ月で元の味のコカ・コーラを「コカ・コーラ・クラシック」として再発売する結果になった>というものだ。
 味の変化に厳しいファンは、派生新商品であったとしても、「コカ・コーラ」のブランドを冠した商品で「変わり種」は認めないだろう。また、ブランドとしても「カンザス計画」のトラウマがある以上、冒険はしたくないはずだ。

 リーダーができない戦略を展開するのがチャレンジャーの真骨頂。既にペプシは「ペプシドライ」で「甘くないコーラ」という新たなコンセプトを世に問うて消費者から一定の評価を得ている。そして、今回は、従来のように単に変わった、珍しいだけの「変わり種」ではなく、シェア逆転の一撃ともなる武器として繰り出そうとしていると考えられるのである。

 ・・・と、以上は「ペプシ カリビアンゴールド」が美味しかったら、という前提に立った仮説である。果たして、現実はどのようになるのか。発売の7月26日が楽しみである。
 
 

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2011.07.04

J-Waveの「Hallo World」出演ログ

少し古い話で恐縮ですが、6月24日(金)にJ-Waveの「Hallo World」という番組に生出演しました。
番組ホームページ→ http://www.j-wave.co.jp/original/helloworld/

番組はUstreamでも放送され、ラジオなのにスタジオの雰囲気を伝えることができて、聴いていた方からは「楽しそうでしたね」との声をいただきました。
はい。DJのサッシャさんと楽しくトークさせていただきました。
Twitterからはリスナーのツイートがバンバン届いて、そこから気になる話題をPick upしてトークするなど、ラジオはすっかりインタラクティブでソーシャルなメディアになっているんだなぁと、今さらながら実感したのでした。

番組を「聞き逃した!」「どんな話だったの?」という声もいただいておりますので、本日はその内容をお伝えします。
・・・ただ、文字にすると無味乾燥になってしまいますし、おおよその流れを文字に起こしただけなので、実際の番組のトークとは異なる点をご容赦ください。

<J-Wave「Hallo★World~Heart ON-LINE Special・ドライブスルー最前線」>

22:05番組開始
22:10 ゲストとして金森登場
*サッシャがライブでお届けしているJ-Wave「Hallo★World~Heart ON-LINE Special」。
 今夜は、金森マーケティング事務所の金森さんをゲストにお迎えしていますが・・・
*金森さんはどんなお仕事をしているのですか?
■マーケティングコンサルタントをしています。
 簡単にいうと、「どうやったらもっとモノが売れていくのか、どうやったらお客様がもっと喜んでくれるのかを企業と一緒に考える仕事です」。

*近年の不況のなか、「最近ドライブスルーが活況」といわれていますが、それは本当ですか?
■ドライブスルー対応の店も増えているし、利用者も増えているという状況です。

*以前とくらべ、どの程度、「活況」なのでしょうか?
■日本経済新聞によると、マクドナルドではドライブスルー併設店はここ数年、売上げが2桁近い伸びです。
「長崎ちゃんぽん」のリンガーハットは2010年6月から既存店約40店にドライブスルーの併設を進めた結果、売上高が5%増加。
カレーのCoCo壱番屋は対応店23店では月商が50万円上昇です。
 月に50万円というとたいしたことはないように感じるかもしれませんが、カレー500杯分です。つまり、それだけお客さんが増えているということです。

*活況の理由はどこにあるのでしょうか?
■失われた20年、デフレ、リーマンショックなど不景気が企業の収益を直撃していますが、そのなかで少しでも収益を上げようという企業側の努力と、消費者の意識や行動、生活スタイルの変化がマッチした結果でしょう。

*ここ数年、ドライブスルーはどのように変化しているのでしょうか?
■本来ドライブスルーは「自動車に乗ったまま商品の受渡しや支払いができる店の形    式」を意味しますが、日本では飲食がメインのイメージがあります。しかし、最近はその意味の通り業種の幅も広がってきているのが特徴だといえるでしょう。

<曲 Better Sweet Friday : bird>

*サッシャがライブでお届けしているJ-Wave「Hallo★World~Heart ON-LINE Special」。
 今夜は、「ドライブスルー最前線!」に注目しています。
引き続き、金森マーケティング事務所の金森さんに最近のドライブスルー事情を分析していただきます。

*ドライブスルーの利用傾向に変化は見られますか?日頃からドライブスルーを利用している方の割合は?
■インターネットの調査では、日頃からドライブスルーを利用しているのは約4割で、そのうち約3割が3年前より利用頻度が増加していると答えています。利用するためにわざわざクルマで外出する人も2割近くいるという結果です。

*消費者はドライブスルーに何を求めていると思われますか?
■大前提として「時間短縮」「○○のついでに食事の調達などの用事が済ませられる」という「簡便性・便利さ」があるはずです。
それ以外にもドライブスルーに関するインターネット調査結果では、「自分のペースで行動したい」という現代人のライフスタイルが伺えます。
回答は「天候を気にしなくていい」が約4割、それに「身なりを気にしなくていい」「1人でも入りやすい」「子ども連れでも利用しやすい」「他の客を気にしなくていい」などが続きます。

*今後もドライブスルーは増えていくと思いますか? 
■消費者のニーズにマッチしているため増えていくでしょうね。
例えば掃除・洗濯という代表的な家事でも「すすぎ1回」で10分間時間が節約できる洗剤が売れていたり、お掃除ロボットの「ルンバ」がヒットしていたりと「簡便性」「時短」に関するニーズは高まっていて、ドライブスルーを利用する理由とマッチしています。
また、消費者の生活スタイルで考えれば、ネット調査の回答であった「1人でも入りやすい「他の客を気にしなくていい」というニーズに対応するために、マクドナルドは「お一人様席」を増やすなどの対応をしていますが、ドライブスルーも同様のニーズに対応する手段でだと考えられます。

<曲 Annie Waits : Ben Folds>

※リスナーからのツイート「クリーニングのドライブスルーがある」が各地から送られてくることに対して・・・
■これは大きなチェーン店で展開しているためですね。秋田に多いですが、埼玉などでも「うさちゃんクリーニング」という店が展開しています。
※「ドライブスルーATM」という意見に対して・・・
■長野県に多くみられるそうですね、全国のドライブスルーATMの半数以上が長野県に設置されています。車王国長野ならではですね。

<曲 ひかり : ASIAN KUN-FU GENERATION>

*サッシャが六本木ヒルズからライブでお届けしているJ-Wave「Hallo★World~Heart ON-LINE Special」。
 今夜は、金森マーケティング事務所の金森さんをゲストにお迎えして、ドライブスルー最前線に迫っています。
 続いては、ユニークなドライブスルーに注目するのですが、近年、飲食以外のドライブスルーが増加している理由について、金森さんはどう分析しますか。
■「めんどくさくない」という「時間短縮」。「車から降りなくていい」という「人目を気にしないでマイペースに行動できる」ということ。「車から降りなくていい」という「バリアフリー」などがポイントです。そのようなニーズは飲食に限ったものではありません。

*さぁ、今回、番組が注目したユニークなドライブスルー、まずはドライブスルーの本屋さん!
 日本で唯一ドライブスルーがある書店、久美堂 本町田店。
 こちらは、40年ほど前、社長の井上賢一さんが留学先のアメリカでみたドライブスルーの書店を参考にして昭和63年にオープン。
 どのように利用するのかというと、一般的なドライブスルーと同じように、店内にある雑誌、書籍をメニューボードに向かってオーダー。そして、カウンターで本を受け取ります。事前に電話で取り置きしたものも受け取ることができ、利用料金はゼロ。
 お店の方にお話を伺ったところ、雨の日の利用率が高く、子連れのお母さん、タクシーの運転手さん、雑誌を定期購読している方や、コミックを全巻「大人買い」する方などが利用しているそうです。
■今日、インターネットで本は買えますが、受け取りが面倒という人も少なくありません。「自分で取りに行く」という形態は「マイペースで行動したい」というドライブスルーへのニーズにマッチしていますね。

*続いては、茨城県石岡市にあるドライブスルーの動物病院、みむら動物病院。
 6年前に開設されたこちらは、主にワンちゃんやネコちゃんを診察する動物病院。
 ドライブスルーでは犬猫の注射をするわけではなく、蚤駆除製品、内服薬などの販売をメインにしているそうです。
■薬の販売であれば、犬猫用ではなく人間用の調剤薬局のドライブスルーが仙台などにありますね。お年寄りが車で病院に行って、帰りにそのまま降りずに薬をもらえるというバリアフリーを実現しています。
*こちらはドライブスルーを開設したことで、待合室に入らずに診察できるので、院内感染防止に役立っているとのこと。また、国内唯一のドライブスルーの動物病院ということで、注目率がアップしたそうです。

*本屋さんに動物病院だけじゃありません!何と、質屋さんのドライブスルーもあるんです。
 2005年10月、埼玉県越谷市にオープンした「ドライブスルー 質 ハラダ」です。
 質屋さん初心者にも気軽に利用してもらおうとドライブスルーを導入。
 こちらも従来のドライブスルー同様に、車に乗ったまま専用窓口で上品の尾「買い取り」や「質預かり」ができます。雨の日や、お子様連れの方は車から降りる手間なく取引ができることに加え、初めて利用する方には「入りやすい!」と、特に女性に好評とのこと。
■不要なブランド品を質屋で売ることは一般的になってきましたが、まだまだ抵抗がある人もいると思うので、まさに、ドライブスルーに求める「人目を気にしなくていい」というニーズがマッチしていますね。

<曲 Cars And Girls : Prefab Sprout>

*サッシャが六本木ヒルズからライブでお届けしているJ-Wave「Hallo★World~Heart ON-LINE Special」。
 引き続き、金森マーケティング事務所の金森さんをゲストにお迎えして、ドライブスルー最前線に迫っていきたいと思います。

先ほどは「書店」「動物病院」「質屋さん」とユニークなドライブスルーを紹介しましたが・・・
何と「つけ麺」が食べられるドライブスルーに注目です。
「えっ、つけ麺が食べられるドライブスルーってどんなだよ!?」と思った方、そのリアクション、間違ってないと思います。ボクもそうでした。
つけ麺が食べられるドライブスルーとは、武蔵村山市の青梅街道沿いにある「しゃりん」です。
一人じゃお店に入りにくいという女性にも「つけ麺」を楽しんでもらおうと昨年オープンした「しゃりん」。
お話を伺った広報担当・稗田さんによると、ドライブスルーで購入した「つけ麺」を駐車場に車を停めて、社内でいただく女性も多いそうです。
■これも「人目を気にしなくていい」というニーズを叶えていますね。
 麺類のドライブスルーでは「リンガーハット」も「ちゃんぽん」を提供していますが、汁がこぼれないようにするトレーなど様々な工夫があったようです。

※番組レポーターの現地リポートをUstreamで放送
※「しゃりん」の広報担当者のコメント

*ドライブスルーの「つけ麺」をいただいたグッチ(レポーター)によると、麺もスープも、お店でいただくのと何ら変わりなく、とても美味しかったそうです。
注文から2分ほどでゆであがる麺」は開発までに1年半かかっているそうです。
■有名ラーメン店のカップ麺も次々と開発され、一人で手軽に楽しめるようになっていることですし、これからもドライブスルーのラーメンは登場するのではないでしょうか。

*さりげないこだわりがたっぷりと詰まった「しゃりん」のつけ麺、ボクも食べた~い!

<曲 Hallo! : YUKI>

*サッシャが六本木ヒルズからライブでお届けしているJ-Wave「Hallo★World~Heart ON-LINE Special」。
 今夜は、金森マーケティング事務所の金森さんをゲストにお迎えしていますが・・・
*これからのドライブスルーは、どう進化していくと思いますか?
■都市部では知られていませんが、日常的に自動車を移動手段として使用している地域では「こんなものが?」という変わり種ドライブスルーがたくさんあります。先ほどお話しした、「ドライブスルー薬局」「ドライブスルーATM」「ドライブスルークリーニング」などがその代表です。都市近郊でも、「客数を増やす」という目的で客数、利用機会や利用頻度を増やすため、現在主に導入されている飲食などだけではなく、多くの業種・業態で多様な展開を見せていくことは当然考えられますね。
それだけでなく、ただ単に、車に乗ったままか、降りるかの違いだけではない「ドライブスルーならでは」の便利さを提供して顧客の支持を高められるような進化をしていくことも考えられます。

*金森さんは、どんなドライブスルーの誕生を期待していますか?ボクは「ドライブスルーポスト」なんてあっていいと思うんだけど。
■「ドライブスルーポスト」、ありますよ。長野県に多いそうです。
*また長野キター!
 それじゃぁ、金森さんの考えるどらいぶするーとは?
■料理や本などの単品を買うのではなく、ワンストップでいろいろな買い物が一度に済むという店があってもいいと思います。
その意味では、一番近いのが「スーパー」のドライブスルー。ネットスーパーがどんどん普及していますが、ネットで注文しておいて、自分の都合のいい時にまとめて受け取れる。これは既に大阪府和泉市に「ネットスーパーオークワ和泉小田店」というのが既にあるし、もっと普及すると思います。
さらにその「コンビニ」版があればもっと便利だと思います。コンビニのサービスには既にATMもクリーニング受け取り対応の店もあるので、買い物に、クリーニングの受け取りも同時にできて、ちょっと車を進めればドライブスルー用ATMも置いてあるというような合わせ技のワンストップも実現できるでしょう。
■「ドライブスルーならではの価値」という意味では、車で行くということは、必ず車にはナンバーが付いている点に注目です。ナンバーをキーにしてわざわざカードなどを提示しなくても来店や利用に対するポイントを付加してくれるしくみがあってもいいですね。お財布にぎっしりと詰まっているポイントカードがさっぱりできます。

*ということで、金森さん、今夜はどうもありがとうございました!

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2011.07.01

理美容業界の稼ぎ上手・キュービーネットの新展開に注目!

 「10分間1000円」の低価格カット専門店「QBハウス」を展開するキュービーハウスが新業態の展開を開始した。その巧妙な収益化戦略に注目してみよう。

 7月1日付の日経MJに「キュービーネット 若者向けヘアサロン」という記事が掲載された。7月1日に東京・中目黒に「FaSS(ファス)」1号店としてオープンしたという。記事の写真は白い壁と白木の木目調の無印良品的なイメージの店内を映し、「ナチュラルかつエコな店舗をコンセプトにして、若い層を取り込む」とキャプションが添えられている。清潔さと機能性に特化した既存の「QBハウス」の店舗とはだいぶ様相が違う。コストもかけたのかなと思うと、記事には「無駄を省き出店コストはQBハウスと同程度に抑える」とある。初期投資とその償却費が重くならないようにするというポリシーはさすがである。

 記事のサブタイトルには「カット・スタイリングで2100円」とある。「QBハウス」は「カットのみ、洗髪・顔剃り・セットなし・カットのみ」という、従来の理容店が行っているサービスを分解し、カットのみに特化したことが1000円という価格設定のポイントだ。「カット・スタイリング」ということは、スタイリングが1000円に相当するということだろう。
 記事によれば「QBハウスと同様にコスト削減のため洗髪は手がけない(筆者注:QBハウスは洗髪しない代わりに巨大そうじ機ノズルのようなもので切った毛くずを吸引する)が、カットに加え、ヘアワックスなど整髪料によるスタイリングに対応」とある。そして、「20分程度で仕上げる」とある。

 キュービーネットの戦略の基本はプライシングにある。前述の通り、従来の利用サービスを要素分解し、10分間のサービスに1000円という価格設定を行っている。QBハウスはカットのみで10分=1000円、FaSSはカット+スタイリングで10分+10分=1000円×2=2000円(税抜き)と、基本的なプライシングのポリシーは変えていない。

 10分で1000円という価格は、意外かもしれないがキュービーネットが考えだしたものではない。理容・美容業界の相場なのだ。サービスの総提供時間を時間単価に換算すれば1分100円になるはずだ。それを上回る価格が設定されている場合は、店内装飾に凝って「高級店」というポジションを設定しているか、「○○アーティスト」など、スペシャルな肩書きが設定されている担当者がカットをしている場合だ。つまり、付加価値、もしくは付随機能。
 業界相場が最もよくわかるのは、美容サロンによくある「前髪カット」だ。相場は1000円か1500円。所要時間は10~15分だ。サービスとして付加価値が設定しにくいため、各店とも業界相場そのものの価格に設定されていることが多い。理容店なら「顔剃り」。夕方などにうっすらと延びたヒゲをカミソリで剃ってもらう。スッキリして気持ちがいいし、デート前などにはオススメなのだがこれも相場は1000円か1500円。所要時間は10~15分だ。

 新型店「FaSS」がカットのみ1000円でないのは、「サービスを拡充して料金の範囲を広げる」ためだと記事にはある。しかし、もう少し考えてみると狙いはもっと深いはずだ。
 スタイリングのみの価格は1575円だという。カット・スタイリングで2100円から考えればすこし割高に感じるかもしれない。だが、自分でやるのではなく、わざわざスタイリングをしてもらいに来るのはどんな時だろうか。デート前の顔剃りではないが、何らか気合いが入っている時に違いない。そんな時、1500円は高いと感じないだろう。一方、サービスを提供する側としては、洗髪なしのスタイリングなので、およそ10分程度で終わるだろう。故に、スタイリングのみのサービスは利益率が高いことになる。
 前髪カットは735円。7分間という細かい時間刻みでサービスを提供しようというわけではないだろう。本来10分1000円というところを、利用しやすい価格設定にして顧客の来店頻度を高め、囲い込みをする狙いで設定している価格だと考えられる。

 「FaSS」の2100円という価格は、美容サロン大手TAYAの展開する低価格ファミリーサロンの「Shampoo」などと競合する。同店にはヘアセットを顧客自身が行う「セルフブロー」で1900円のコースもある。そうした競合環境下で、目標は「5年内に50店目指す」と記事のサブタイトルにもある。「Fass」の店内には「QBハウス」でおなじみの釣り銭が出ない1000円のカット券販売機がないという。その理由は「料金設定を柔軟とし、新規メニューを増やしやすくする」ためだという。また、「ショッピングセンター内に出店する場合にも全館共通の割引キャンペーンなどに参加しやすくする」という狙いもあるという。

 自社の提供するサービスを要素分解し、業界相場である「10分1000円」をカットのみに集約させて成長した「QBハウス」。そして、サービスを拡大し、顧客ニーズに柔軟に対応させて収益化を図るモデルを多様化させたのが「FaSS」だ。そのプライシングの柔軟性は競合環境にも対応できるように設計されているはずだ。今後、どのようなメニューを展開し、どのようにプライシングしていくのかも注目のポイントである。
 

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