フレッシュネスバーガー変身計画のナゾに迫る!
6月22日付の日経MJに「フレッシュネス200店全店、面積倍増」という記事が掲載された。サブタイトルは「5年後メド セルフ型に転換」。写真のキャプションには「今後は都心の1等地などに積極的に出店する(東京都千代田区の日比谷店)」とある。さらっと書いてあるが、これって、「別モノ」になってしまうぐらいの大変身ではないだろうか。そんな変身ができるのか?いや、そもそも、その狙いは何だろうか?
■日経MJの記事によると・・・
1等地戦略に転換というのは、フレッシュネスは創業以来<他のファストフードチェーンが出店を控えるような2等立地や3等立地を狙ってきた>(同記事)からだ。つまり、ニッチ戦略だ。ニッチという意味では、世情の禁煙・分煙が厳しくなるまで「全席喫煙可」を一つのウリにもしていた。差別化戦略としては、ファストフードながらバーガー類は全て作りたてで、店員が客席までの配膳をするしくみを取っている。モスバーガーもその点は同様だが、フレッシュネスはフレッシュジュースを絞りたてで提供したり、食器類に登記を使ったりという差別化も行っている。つまり、ファストフードではなく一種のスローフードであり、合理的なオペレーションよりもどちらかといえばユルい手作り感たっぷりの運営を特徴としているのだ。
新戦略ではタイトルにあるように、従来店舗面積が50~70平方メートルだったところを115~130平方メートルに拡大し、配膳は客がカウンターで商品を受け取り、自ら運んでいくセルフサービス式に転換するという。既に日比谷店など全体の約5割の店を新型店に切り替えたという。
当然、地代家賃が上昇する。しかし、記事によれば「セルフ化による店内オペレーションの効率化で1等立地の運営コストを吸収。出店済みの日比谷店は店舗面積が2倍になり売上が3倍になった」という。また、「面積拡大でタブレットなどの菓子類やトートバッグなどのPBをレジ前に陳列して売る」というアドオン・セールスも見込んでいるという。
新戦略は奏功しているようだ。「4~5月の既存店売上高は前年同月比約3%増と好調」であり、特に「アボガドバーガー(620円)などの高単価商品の売れ行きが良い」ことが寄与しているとある。
■新戦略の狙いと背景を考えてみた
記事をよく読むと疑問が出てくる。売上=客数×客単価 だから、単純に面積を2倍にしても売上は2倍にしかならない。3倍になっているという日比谷店のヒミツはなんだろうか。
まず、「客単価」を考えてみる。記事にあるように、高単価バーガーが売れていることもあるし、レジ横PB商品が売れているのかもしれないが、それで3倍にはならないだろう。
もう1つの変数「客数」は立地に依存するところが大きい。「客数」にはさらに「回転率」が関係する。人の往来が多い1等立地への出店で入れ替わり立ち替わり客が入って「のべ客数増」を見込む。そうすれば「売上」は上がる。
しかし、利益=売上-コストだ。売上が上がれば、売上の中の粗利の総額は高くなる。
しかし、コスト面で考えると1つ疑問なのは、1等立地への移行は記事にあるようなセルフ化=店員が配膳をしないという効率化・コスト削減でまかなえるのかということだ。
もう1つの疑問は、客数も増えて回転率が上がる状況で、しかも「セルフ」にして、従来の「つくりたて」ができるのかということだ。オペレーションを変えなければ、カウンターに出来上がるまで客を立たせておくことになる。それを避けるためには、マクドナルド型の「見込み作り置き」をすることになる。そのノウハウが蓄積できていないと、「廃棄率」が上がってさらにコストアップ要因になる。
■現地で確かめてみた!
Facebookで上記の謎を提起して議論したが、解明ができなかったので、日比谷店に行ってみた。
日経MJにある写真の通りの真新しい店舗である。ロケーションは晴海通りに面し、日比谷シャンテに向かう角の文字通り1等地である。
4階建のビル1棟丸々が店舗だ。4フロアのうち4階のみが喫煙席で完全フロア分煙を実現している。従来からの喫煙者のファンを逃がさず、時流通り非喫煙者のニーズにも応える造りとなっている。
日経MJの記事にあった通り、PBグッズがレジ前に並んでいたが、まだアイテムが少なく、これからという感じだ。
1階部分はレジと、その後ろにオープンキッチンがあって、レジに続いて商品受け渡しカウンターとなっている。1階にもカウンター席が窓の方を向いて並んでいるが、繁忙時間には客が背面のレジ~受け渡しカウンター側に並ぶのですこし落ち着けない感じになる。急いで食べて出て行きたい人向けというところだろう。
疑問点の1つであった「作りたて否か」は、前者であった。注文をすると、レシートに「お呼び出しNo.」が印字され、商品受け渡しカウンターに進むよう促される。カウンターにストックはなく、作りたてが渡されるしくみだ。但し、オープンキッチンではハンバーガーのパティが常にざっと10枚ぐらい焼かれており、ある意味での「見込み生産」をしているといえる。
カウンター内はレジ1名、商品受け渡し1名、オープンキッチン内調理スタッフ4名という体制だ。みんなキビキビ動いている。従来点の良くも悪くもユルい感じは微塵もない。マニュアルを1から作り直し、それを徹底していることが伺える。
レジでオーダーし、商品受け取りまでの待ち時間を計ってみた。ちょっと意地悪く「豆腐バーガー」を頼んだので、見込み生産したパティは使えない。待つこと約5分。12時少し前の時間だったから注文が円滑にさばけたのかもしれないが、豆腐バーガーを一から作ったとしては、ストレスなく待てる範囲内だといえるだろう。
2階客室は下手なスタバより、ずっと居心地がいい。客の滞留時間長そうに思える。
しかし、地域特性か慌ただしく食べて出ていく客も少なくない。考えてみれば、そもそもファストフードを食べに来ているので、ビジネス客、買い物客など本来の目的があって、長時間過ごすことはない。事実、ランチ時間帯の平均滞在時間は20~30分というところだろう。
売上・利益アップをどう図るかという謎の答えは、前述の「居心地のいい客席」かもしれない。それによって、ランチや軽い夕食需要時間以外の「カフェ客」を吸引する。客席の空き時間がなくなり、稼働率が高まる。しかも、ドリンクはバーガー類より格段に利益率がいい。思い出してみれば、従来店も店頭に「飲み物だけでもどうぞ」と看板が出ていたが、正直なところ入りにくかったし、そもそも2等3等立地にはカフェ需要客は通りかからない。
フレッシュネスバーガーが1等立地戦略に転換し、オペレーションをセルフスタイルに変更したのは、「客数増・客席稼働率向上」が狙いで、そのために相当の努力をしてマニュアルの変更をはじめとしたオペレーション改良を行った。そして、さらなる収益化のカギは、食事時ではないバーガー類販売の閑散時間にゆったりした空間をカフェ需要客に提供し、客席稼働率を上げつつ、高収益のドリンクで稼ぐことなのだろう。
そうなると、フレッシュネスは時間帯によってはスターバックスが競合になる。そうなると、課題は意外にも円滑だったオペレーションではなく、ドリンクのメニューと味ということになる。個人的な好みかもしれないが、アイスコーヒーSサイズ・300円也は、氷ばかりで量が少なく、味は苦味はあるが風味に乏しい。氷がクラッシュアイスのため、さらにすぐに薄まってしまい300円の価値は感じられなかった。オペレーションの次には、ドリンクの商品力がどのように上がっていくのかも楽しみである。
« メローイエロー&スプライト復活のナゼ?を考える | Main | ゼンショー値下げに松屋・吉野家追随せず?牛丼戦争は終わるのか? »
« メローイエロー&スプライト復活のナゼ?を考える | Main | ゼンショー値下げに松屋・吉野家追随せず?牛丼戦争は終わるのか? »
Comments