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2011.06.28

将を射んと欲すればまず女子高生を射よ:シーブリーズの噴水戦略

 「シーブリーズ」の日焼け止めが売れているという。主要購入客は女子高生だ。業界の常識を覆したというその製品戦略の狙いは難だろうか。

 6月27日付日経MJに「色鮮やかな容器 女子高生つかむ シーブリーズUVカット&ジュエリー」という記事が掲載された。記事にはイエロー、グリーン、オレンジ、マゼンタの鮮やかなカラーの容器の写真が添えられ「容器は全4色で香りもプラスした」とある。フローズンシトラス、グリーンアップル、ソープ(せんっけん)、クラッシュベリーの香りだ。
 記事には「女子高生に楽しんでもらいたい」という商品のメーカー・資生堂担当者のコメントがある。<日焼け止め商品の容器といえば、通常は白色が多い。紫外線から肌を守り、美白を維持するという商品イメージを連想してもらいやすいからだ>(同記事)という。業界の常識に反して鮮やかなカラー展開にしたのは女子高生ターゲットであるためだ。
<紫外線対策の意識が浸透するにつれ、日焼け止めクリームを利用する年齢層も広がっている。女子高生の使用率は制汗剤(80%)に次いで60%と2番目に高い>とある。

 シーブリーズといえば、まず「女子高生向け制汗剤」というイメージが出てこないだろうか。
1969年に日本で正式発売され、1982年に外資系医薬品会社のブリストルマイヤーズスクイブがブランドを獲得、翌年にテレビCMが放映され若者の人気に火が付いた。シャンプーから始まり、デオドラント製品(パウダー入りローション)を展開したのは96年のこと。しかし、徐々に売上は低迷し2000年に資生堂に事業譲渡。資生堂はシーブリーズの従来のターゲットとポジショニングである「夏」「サーファー御用達」から、大胆に「女子高生」「恋の気分」にシフトし、商品名を「シーブリーズ デオ&ウォーター」として8種類の容器を採用。微妙なオトメゴコロに対応できるよう8種の香りのバリエーションに拡大し、今日では女子高生の定番ブランドとなっている。
 女子高生の間での浸透率は凄まじい。記事には「女子高生の2人に1人が使っている」と担当者がコメントしている。

 圧倒的なターゲット浸透率を持つ「シーブリーズ デオ&ウォーター」から、「UVカット&ジュエリー」を派生させたのは記事にあるような「使用年齢の広がり」という商機ばかりではない。競合からの脅威への対応という意味も考えられるのだ。
 ニベア花王のデオドラント製品の大定番ブランド、「8×4」だ。1974年にドイツの化粧品会社の製品を技術提携しニベア花王が日本市場に展開。今日に至るまで、パウダースプレーやロールオンタイプを基本として様々な製品バリエーションを市場に送り込み、常にマイナーチェンジを繰り返している。そして、3月には発売された「デオウォーター」という製品を発売した。パッケージは「シーブリーズ デオ&ウォーター」とそっくりである。女子高生の主要購買チャネルであるドラッグストアの店頭支配力を活かして棚を取り、価格も100円ほど安くするという攻勢を各地でかけている。

 迫り来る競合、コンビニブランドの業界リーダーによる「同質化戦略」の回避に「UVカット&ジュエリー」はどのように貢献できるのか。
 同商品が展開する4色の容器・香りは<人気の4色を使い、日焼け止め商品としては珍しい香りも加えて女子高生の遊び心を刺激する>とある。日焼け止めは<これまでは日中に何度も塗り直す必要があるため面倒に思う女子高生が多く定着に時間がかかった>という。朝のお出かけ前に制汗剤をつけてお気に入りの香りを身にまとい、同じ香りの日焼け止めをつけて香りを持続させる。本来面倒な作業も楽しみに変わるという寸法だ。
 日焼け止めを塗り直して香りをさらにつけるという行為を促すことは、「8×4デオウォーター」への強力な対抗策となる。同商品は、花王が石けんやシャンプー、洗剤、柔軟剤などに用いている、「香りが長続きする」という得意技である、「はじける香りカプセル」を採用しシーブリーズの上を行こうという戦略だ。それに対して、制汗剤の香りを持続させるのではなく、日焼け止めを楽しみながら塗らせて香りをさらにつけるという行為に代替させることができるのである。

 「8×4デオウォーター」の同質化戦略をかわしつつ、シーブリーズは別のターゲットも狙っている。<制汗剤の場合、年代別の使用率は10代に次いで40代が高い。子どもにせがまれて買ってきた親が気に入ってそのまま使うケースが多いという>とある。40代の親は「元祖シーブリーズ世代」だ。「あら、シーブリーズがこんなにオシャレになっちゃって!」と抵抗なく試用し、お気に入りになる確率は高いだろう。
 記事では<日焼け止めクリームも噴水のように下から上に需要層を広げていけるかも見どころだ>とまとめている。
 ターゲットを評価するには「5R」という考え方を用いる。Realistic Scale(規模), Rate of Growth(成長性), Reach(到達性), Rival(競合状況), Rank & Ripple Effect(優先順位と波及効果)という検証ポイントの頭文字5つのRだ。
 シーブリーズの場合、Rank & Ripple Effect(優先順位と波及効果)において、制汗剤で主使用層として女子高生を優先し、そこからその母親に波及させた。日焼け止めにおいても同様の展開を意図しているのだ。

 「シーブリーズUVカット&ジュエリー」の今後の課題は、記事にある「噴水効果」を実現することだ。40代母親層が選択する日焼け止めは、機能性やブランドなど様々な切り口で多数の商品が存在する。その中で、「娘と一緒」「青春の日々に使ったブランド」など刺さるKBF(Key Buying Factor)を訴求していくことがキモとなる。しかし、そこでDMU(Decision Making Unit=購買関与者)としての娘・女子高生をうまく動かすことが欠かせない。「娘の使う商品のついで買い」ということは、娘にとっては自分の小遣いで買うのではなく「母親に買ってもらえる」ことを意味する。せっかく4種の香りがあるのだ。「毎日の気分によって使い分ける」ことなどを流行らせ、母親に「大人買い」させて、使用を習慣化させることなども有効だ。

 うまくすれば、大人買いしてくれるお金を出す母親をユーザーとして取り込むには、「将を射んと欲すればまず馬を射よ」だ。いかに女子高生を今以上のファンにさせ、母親に働きかけをさせるかがカギとなるだろう。

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