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2011.06.01

リピーター8~9割!:丸亀製麺の成功のワケ

 モノゴトがうまくいっている時。その陰には「成功の理由」が存在している。しかし、それを表面的にとらえず最も有用なポイントを深掘りしていくことが成功のためには欠かせない。

 6月1日付日経MJに掲載された「第37回・飲食業10年度調査」。店舗売上高伸び率28.7%で3位となったトリドール。セルフ式うどん店「丸亀製麺」といった方がわかりやすいだろう。記事によれば、店舗数は現在約450店。今年度も約100店ペースの出店を計画しているという。ライバルだった「はなまるうどん」は調査では293店舗。年20店舗ほどの出店で、売上高伸び率も2.6%。既に後方に抜き去った感がある。

 調査ランキングを伝える同紙の1面記事では、同社は「個店に裁量、出来たて感 脱・集中調理」とタイトルが付けられている。タイトル通り、同社の成功は450もの店舗を抱えているのに、「セントラルキッチン」を持たないという特徴に依存する。しかし、一足飛びに思いつきでそのスタイルを確立したわけではない。そこに至るまでには「環境の変化」と「顧客のニーズ」をしっかりと読み取った同社のマーケティング眼が存在しているのである。

 きっかけは市場のマクロ環境・法規制の変化だった。「トリドールの出店地域は商業施設のフードコートが主だった。法改正によって郊外の商業施設の出店にブレーキがかかり、路面店に軸足を置かざるを得なくなった」と記事にある。
 では、路面店に来る顧客(Customer)のニーズはどのようなものだろうか。「路面店では”しっかりした食事をとりたい人が目立つ”」と同社社長が語っている。ショッピングセンターなどのフードコートなら、顧客は「買い物のついで客」が多い。ニーズは味もさることながら、「手早く食べられること」だ。一方、路面店への来店者は食事そのものが目的だ。しっかりと食べたい客が基本となる。その違いを明確につかんだのだ。

 競合(Competitor)の環境も異なる。フードコートは多数の飲食店コーナーがオープンスペースに軒を連ねている。手早く提供でできず、行列ができようものなら途端に他店に客は流れる。また、料理と価格が極めて簡単に比べることができるのも特徴だ。それに対して、路面店の場合「客単価はショッピングセンター内の店舗よりも50円高い520円」だという。

 軸足を切り替えた自社(Company)は、競合にさらされないだけ、コストにも余裕ができる。その余裕をもって「しっかりした食事をとりたい」というニーズに応える。同社がセントラルキッチンを持たないのは、「面を製造交渉から店舗へ配送すれば時間のロスを生み、コシのある出来たての麺が提供できないから」だという。

 うどんは食べるのに要する時間が極めて短い。筆者がかつて本場・高松に頻繁に出張していた時、店内の客の滞在時間を計ったことがあるが、2分そこそこだった。しかし、同社の設計は、うどんをすすっている時だけを「顧客体験」にしていないのが妙だ。フードコート客のニーズは「手早さ」。ともすれば、他の店で違う料理を買って受け取っている同行者がいれば、待ち時間は気が気ではない。しかし、路面店の来店客にはもう少し余裕がある。同社の特徴は「製麺作業や天ぷらを揚げる作業が“ガラス張り”仕様の店舗レイアウト」にある。それが好循環を生んでいるとある。即ち、「壁をなくした同じ空間を共有することで、従業員とレジ待ち客との間で会話も生まれる」という。

 記事には驚異的な数字が掲載されている。「来店客の8~9割」がリピーター。
顧客の顔が見える。声が聴ける。ニーズが直にわかる。そこに同社の最も大きな成功のヒミツが隠されているのだ。同社はセントラルキッチンを持たないだけでなく、「麺の原料となる小麦の仕入れから、おにぎりの製造に至るまで、各店の裁量に任せる」という。店舗毎に来店する顧客のニーズにできるだけ沿うように、各店が工夫を重ねている。それがバリューチェーンで考えれば一見不効率にも思える「脱・集中調理」こそが、成功のカギ(KSF=Key Success Factor)となっているのだ。

 大きな環境(マクロ環境)の変化に対応することは生き残りの基本だ。また、競合環境が変化したら、自社の戦略を見直すことも欠かせない。しかし、最も重要なことは、顧客の変化を捉え、そのニーズを深掘りし、充足させるためのしくみを全体の整合性を持って構築することなのだ。
 記事には「16年の1000店達成まで突っ走る」とある。顧客の心を捉えて放さない、同社の快進撃は続くだろう。

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Comments

本日丸亀製麺でうどんをいただきましたが、おいしかったです。
相変わらず繁盛していたので「なぜか?」と思っていたとろ丸亀さんのFBにこの記事がリンクされており、読ませていただきました。
確かに店舗で粉をこねるところからつくっている様子には、初めて訪れた時に感心した記憶があります。
私も何度も訪問していますが、その理由の1つは「いつ行ってもおいしい」からです。
現場に裁量が委ねられると、品質にムラが出そうですが、それがあまりないのでオペレーション、教育も他社とレヴェルが違うのかなと思います。スタッフのみなさんがいつも元気なので人事制度も気になりました。

Posted by: denjiro | 2011.06.03 02:47 PM

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Tracked on 2011.06.02 06:26 AM

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