ペプシドライ100万ケース目標が意味するモノとは?
ここ数年来、夏、もしくは夏・冬の季節の風物詩ともいうべき存在になっていたものが、今年は姿を現さない。中元・歳暮ではない。「変わり種ペプシ」だ。その代わりに、期待を背負って登場したと思われるのが「ペプシドライ」である。
6月17日付日経MJのコラム「着眼発想」に「ペプシドライ」が取り上げられていた。5月下旬に発売された、商品パッケージにも明記されている「甘くないコーラ」である。記事によれば<世界でも珍しい>という。飲んでみると、確かにその「甘くないっぷり」が際立つ。それもそのはず、<甘さを示す糖度が5.2と一般的なコーラの半分弱>という商品だ。
米ペプシコのライセンスを受けているサントリー食品インターナショナルが発売元であるが、ペプシドライは日本オリジナル商品である。ターゲットは「甘さから離れる30〜40代で、人工甘味料が嫌いな層」。ポジショニングはズバリ、「甘くないコーラ」。コラムには同社の開発担当者が登場し、<「さっぱりとした味の需要が拡大しているのではないかと仮説を立ててみた」>と開発のきっかけを語っている。市場ではカロリーを抑制した商品が伸長しているが、ペプシには甘味料を使ったゼロカロリーの「ペプシネックス」がある。一方、酒類はビールの消費が減る一方、スッキリ系のチューハイやハイボールが好調。そこに、「ペプシネックス」とのカニバリ(喰い合い)を回避しつつ新たな価値を訴求できるホワイトスペースを見出したのだ。
試飲を数百回繰り返しバランスを整えたというが、完成した商品は100mlあたり21kcal。<カロリーをゼロにしなかったのは、人工甘味料を嫌い消費者が少なからずいるからだ。また、ペプシネックスとの違いをはっきりさせておく必要もある>という。つまり、「砂糖・カロリーたっぷりだけど、美味しい←→カロリーゼロだけど、人工甘味料味」というトレードオフの関係を離れたポジションを開拓しようというのが狙いなのである。
販売目標はペプシブランド全体3000万ケースに対し、100万ケースと設定されているという。そこに、「ペプシドライ」の戦略的位置づけが見える。
衝撃的なキュウリ味の「ペプシ・キューカンバー」で注目を集め、一昨年は和の味をテーマに「ペプシ・しそ」、昨年はアフリカに自生する木の実の味をモチーフにし「ペプシ・バオバブ」という謎のコンセプトで話題になった「変わり種ペプシ」。年1~2回発売され、毎回の販売数は20~30万ケースという実績だとされている。ブランド全体の1%弱でしかないが、確実に市場で話題となり販売チャネルの棚を確保することは、業界リーダーであるコカ・コーラに対する「差別化戦略」としては大きな貢献をしているといっていいだろう。
ペプシドライの販売目標は変わり種ペプシの3~4倍だ。つまり、新しいモノ好きが一度購買するだけでは達成しない数字である。確実にリピート購買を狙っている。それが変わり種ペプシとの違いである。つまり、市場に定着させ、定番化させる狙いがあるのだ。
一方、ペプシドライを一度試した消費者からは、その新しい味に驚きつつ1本あたり100kcal強のカロリー数を気にする意見も散見される。その層はどうするのか。
当然、ペプシドライの開発においても人工甘味料の使用は試行されたはずだ。しかし、100kcalという犠牲を払っても「味の不自然さ」をなくし、新しい価値(ポジショニング)が際立つ商品を市場に出しておきたかったという意図なのではないだろうか。故に、あくまでペプシドライは100kcalを気にしない人をターゲットとして展開し、ヒットすれば継続販売し、次の段階で「人工甘味料の味がすることより、100kcalが気になる」という層、よりストイックなダイエッターなどを狙って「ペプシドライ・ダイエット」を展開しようという意図なのかもしれない。つまり、100万ケースという目標は、その試金石なのだ。
もう少し深読みもできる。日本オリジナル製品の変わり種ペプシは、米ペプシコとの調整と開発に18ヶ月かけると以前にメディアで報じられていた。そうすると、ペプシドライ・ダイエットはもうほとんど完成していて、先行商品であるペプシドライの売れ行きを見守っているのではないかとも考えられるのだ。
世界に先駆けて、日本の市場に新しい価値を投げかけたペプシドライ。その100万ケースの目標達成いかんで、さらにコーラ市場はオモシロイ展開が待ち受けているかもしれない。この動きは必見である。
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