スタバ対抗!キーコーヒーは勝てるのか?
キーコーヒーが個人経営喫茶店を、コーヒーチェーン店に対抗できるような店舗とする支援を開始するという。その背景と勝負の行方を考えてみよう。
5月4日付日経MJ記事に「キーコーヒー 個人喫茶店に新型店舗提案 チェーン店に対抗」という記事が掲載された。業務用豆の卸し先支援のため、「焙煎方法やメニューなどの運営方法も一緒に提案する」という。記事には店舗の写真が添えられており、「“キーズカフェ”で統一する」とある。
記事によれば、「個人喫茶店は“スターバックスコーヒー”や“タリーズコーヒー”などの海外のコーヒーチェーンの普及で市場の縮小が続いている。キーコーヒーは業務用の卸売りが売り上げ全体の4割を占めており、収益改善に向けたテコ入れ策が急務になっている」とある。
メーカーと販売チャネルの関係は「愛と憎しみの世界」である。チャネルはメーカーのいいなりでは生きていけない。かといって、メーカーがなければ売るモノがない。メーカーの立場にしてみれば、販売チャネルに甘い顔ばかりはしていられないが、チャネルがなければモノは売れない。互いの利害が絡み合った複雑な関係なのだ。
しかし、コーヒー業界に関しては、販売チャネルである個人経営の店舗の弱体化が進み過ぎている。記事にあるスターバックス、タリーズコーヒー等のシアトル系カフェや、ドトール、ベローチェ等の低価格カフェは、いわゆる「垂直統合型」のビジネスモデルだ。コーヒー豆の調達→焙煎→豆の販売・コーヒーの販売というバリューチェーンを自社1社でまかなう。そこにコーヒー豆のメーカー・卸会社の入り込む余地はない。メーカーとしては何とかテコ入れしなければ、花が枯れ果ててしまったミツバチのように死んでしまう。そのため、「既に取引のある事業主が店舗をリニューアルする際や新規出店の検討時に提案する。同業態で新規に事業を始めたい人も積極的に開拓していく方針」だという。
そもそも、個人経営の喫茶店はスターバックスが1996年にアジア進出第1号店として、銀座の百貨店・松屋の裏に出店した時に既に衰退期にあった。低価格カフェの普及によってだ。低価格カフェの戦略を3C分析的に説明するなら、当時の顧客(Customer)は、もっと気軽ってコーヒーを飲んだり小休止をしたりすることができる店を求めていた。それに対して、競合(Competitor)である旧来の個人経営喫茶店は、コーヒー1杯を500円~600円程度で、過度に(?)ふかふかなソファーと、ウエイトレスによるおしぼりの提供・受注と商品を席までデリバリーするフルサービスで提供していた。それに対し、自社(Company)である低価格カフェは、セルフサービスでコーヒー1杯150円~200円という価格で提供していた。KSF(Key Success Factor=成功のカギ)は、狭い空間に座席数を少しでも多く確保すること。コーヒーマシンで商品の提供時間を短縮すること。そして、客の滞在時間を短くし回転を早くすることだ。
それでも、「本格的なコーヒーを飲みたい」「ゆったりと過ごしたい」というニーズを持った顧客(Customer)の存在で個人経営喫茶店は生き長らえていた。そこにとどめを刺したのが、スタバなどのシアトル系だ。市場を席巻しつつある低価格カフェを競合(Competitor)と考えれば、その特徴は価格が安いものの座席は狭く、長時間ゆったりするのではなく、主に喫煙者や男性向けの短時間の休憩場所という性格いといえる。またメニューもブレンドコーヒーと1~2種類の果汁ジュース程度に限られていた。それに対して自社(Company)のスタバは、最高級コーヒー豆の使用と豊富なメニューとコーヒーのバリエーション、高級ソファーや絵画などのオシャレな店内に加え、徹底した店員教育によるホスピタリティーを実現した。価格もセルフサービスの低価格カフェと、個人経営喫茶店の中間である300円~500円台として、旧来のカフェと喫茶店に不満を持つ非喫煙者や女性、若年層を中心に取り込んだのである。KSFは中間価格帯で高い品質の商品(コーヒー・店内空間・接客)を提供する「高価値戦略」の実現である。
では、キーコーヒーが展開する「キーズカフェ」はスタバに対抗できるのだろうか。
価格は(Price)はどうだろうか。「割安な大手チェーンに価格ではなく品質で勝負する」と、記事には同社のコメントが掲載されている。あくまで卸→販売という商流のため、中間マージンが発生するのでコスト勝負はできず、低価格カフェと競合するつもりはなく、あくまでシアトル系のスタバ、タリーズとの勝負である。そして、それらに対して高価格だが品質の高い「プレミアム戦略」を仕掛けるつもりであろう。
では、プレミアム戦略の要である商品(Product)としてのコーヒーの品質、メニュー、店員のサービスはどうだろうか。記事によれば、コーヒーの品質は「全国に70あるキーコーヒーの営業所の従業員が各店舗を廻り、コーヒーの焙煎方法などを指導する」とある。メニューは「コーヒー飲料のほか、デザートやサンドイッチなどフードメニューも含め、約50品目を扱う」とある。さらに店員教育は「子会社の外食産業であるイタリアントマトが持つパート従業員教育のノウハウも提供していく」とある。キーコーヒーグループ総がかりの構えだ。
販売拠点(Place)はどうか。「標準の売り場面積は30~50平方メートル」「最小は15平方メートル」で、「従来、個人事業主が開店できなかった駅ナカやサービスエリアなどに出せる」と同社のコメントがある。スタバも駅ナカやサービスエリアには出店済みだ。
プロモーション(Promotion)はどうか。スタバは広告をしないポリシーで有名だ。その代わり、徹底して同社のロゴを前面に押し出して刷り込みを図る。そのブランドとしての蓄積は大きく、「キーズカフェ」の認知を高めるにはそれなりの時間がかかるだろう。
上記のように4P(商品・価格・販売拠点・プロモーション)で、スタバとキーズカフェを比較してみたが、キモはやはりスタバに対する「プレミアム戦略」が奏功するか否かにかかっているだろう。先に旧来の個人経営喫茶店に対する低価格カフェ、低価格カフェに対するスタバを3C分析的に考えた結果のように、「明確なニーズを持った顧客の存在」がカギとなる。
現在、市場に存在するスタバが取り込めていないニーズギャップを持った顧客とはどのような存在だろうか。
あくまで個人的な見解だが、スタバのコーヒーに慣れるとついつい忘れてしまうが、スタバのコーヒーに足りないものは「香り」ではないだろうか。筆者は趣味で神田神保町界隈の古い喫茶店に行くことがある。その中には時流に合わせて完全分煙をしている店もあり、店内に入るとコーヒーの香りにはっとする。「香りの品質」は1つのカギだと思う。
もう1つはフードの充実ではないだろうか。スタバがフードを改訂したのは2002年のこと。味に対する不満の声も多かったことから、パン・デニッシュ類をパンのアンデルセングループから調達することとした。常にフードメニューのラインナップは入れ替え、改訂を行っているが、デニッシュが半分近くを占めるメニューは高カロリーで、健康志向やダイエットを気にする顧客には手を出しにくいように思われる。そうした、コーヒーやフードの「味」にまだまだ満足できていないターゲット層を取り込むことが必要となる。
もう一方、ターゲットとして取り込みにくい層もある。「味」以上に、スタバの「空間」を重視し、対価を払っている層だ。キーズカフェは狭小スペースにも展開できることを個人事業主への売りとしているため、店舗のスペース効率も重要視されると思われる。パソコンを広げて1時間も2時間も過ごす快適性を求める顧客は相変わらずスタバに通うだろう。
とすれば、KSFはズバリ「味」となる。
「キーズカフェ」は現在、福岡県や埼玉県など3店舗で試験的に営業されており、今期中に10店舗、3年で全国50店舗の展開を予定しているという。50店舗はまだまだ、「規模の経済」が効く店舗数ではない。それだけに、キーコーヒーの全面バックアップのもと、各店舗があくまで「味勝負」で「プレミアム戦略」を実現できるかにかかっているといえるだろう。
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Posted by: jps | 2011.05.06 12:48 PM
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Posted by: Aleisha | 2012.11.06 06:52 PM
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Posted by: blog about data | 2013.01.03 01:48 PM