対メガマック?ケンタッキーはナゼ「肉食女子」を狙うのか?
5月12日、胸肉1枚をまるまる使ったというボリューム満点のチキンサンドを、綾瀬はるかが豪快にかぶりつくCMがオンエアされ、新商品発売もスタートする。その名もケンタッキーフライドチキン「ローストチキンサンド」(←意外とネーミングはフツーだ・・・)。狙うは「肉食女子」だという。その戦略の背景を考察してみよう。
■綾瀬はるかさんがKFCの新作サンドのTVCMに登場!!迫力の一枚肉にかぶりつきます!(同社ニュースリリース)
http://japan.kfc.co.jp/news/news110509kfc.html
実は、迫力満点のメニューが登場するのはケンタッキーだけではない。13日には、マクドナルドから2年半の沈黙を破って「メガマック」が6月上旬まで期間限定発売される。米国からの黒船メニュー、「クォーターパウンダー」や、ビーフパティを同じくする「ビッグアメリカ」シリーズの陰に隠れ人々の記憶からも消え去ったかに思われたが、パティ4枚を挟んだ迫力満点の勇姿で帰ってくるのだ。
パティ4枚の「メガマック」 対 胸肉まるまる1枚の「ローストチキンサンド」。胸躍るようなガッツリ頂上対決に思えるが、上記ニュースリリースにあるように、ケンタッキーフライドチキン(KFC)は「昨今急増の肉食女子にもオススメのサンドです」と、メインターゲットを女性にしている。
KFCは目下、日本マクドナルドとの「チキン戦争」の戦時下にある。コトの起こりは日本マクドナルドの原田社長の発言からだ。
2010年6月20日のチキンメニュー製品発表会での発言。「チキン市場3950億円のうち、マクドナルドは640億円。すでに16.3%のトップシェアを持っているが、まだマクドナルド=チキンという認知がされていない層がある。」(J-CASTニュース 6月20日)
名実共に不動のチキン1位を目指して開始されたマクドナルドの侵攻は、CM大攻勢と店頭での試食キャンペーン、メニューの連続投下によって、主力の「アイコンチキン」がすっかり定着した。
守勢に廻ったKFCはコロンブスのタマゴとして、社名にあるまじき(?)「揚げないチキン」で反転攻勢をかけた。7月8日から「オーブンローストチキン」というノンフライのメニューを開始したのだ。新メニューは従来店舗と異なる新型店舗で提供される。店舗の什器・装飾などや、サラダなどのサイドメニューを充実させ女性にアピールする店舗である。新型店は3年で100店舗という方針が打ち出されているが、今回は「ローストチキンサンド」という1メニューを切り出して全国販売したと解釈できるだろう。
メニューのボリューム感だけを見ると、「メガマック」 対 「ローストチキンサンド」という構図が思い浮かぶが、KFCはターゲットを明確にして直接競合を回避していると考えられる。
理由は2つだ。1つは強大なるコストリーダーであるマクドナルドの「全方位戦略」と競って無用な消耗戦を避けるため。全面対決をするのであれば、CMも綾瀬はるかの起用ではなく、男女セットだったり、老若男女を取り混ぜた人物だったりを登場させただろう。実際、チキンメニューの攻勢に際しては、CMには中年男性の鶴瓶を起用しつつ、女子学生との会話のシーンで構成するなど、オールターゲットへの訴求をしている。オールターゲットへの浸透を図るには、CMの投下量も大量にならざるを得ず、コストも膨らむ。
もう1つの理由は、ターゲットをキッチリ絞ってそのターゲットに確実に販売するためだ。「ローストチキンサンド」をリリースの要素から分解して考えてみると、「胸肉1枚、レタス、スライストマト、グラハム粉と粗挽きのバンズ」となる。セットならこれにポテトとドリンクだ。それらを別々に盛りつければ、「チキンソテーと付け合わせポテト・パン、サラダ、ドリンク付き」という結構普通のランチセット的メニューになることがわかる。つまり、「肉食女子」や「ガッツリ女子」という特殊な女性でなくとも食べきれるのである。ターゲットとしては、ダイエッターなどを除いてしっかりと食べたい女性を幅広く取り込むことを狙っているのだ。
このメニューとCMでアピールしたいのは、「食べた時の満足感」と「食べることの罪悪感を打ち消すこと」だ。それはとりもなおさず、自社の弱みを払拭することでもある。
まさに低価格競争の「チキンレース」を繰り広げている牛丼業界。それに引きずられて、外食業界全般のランチ価格がデフレ化しているのに比べてれば、KFCのセットメニューには割高感があるといえよう。そこで、「胸肉まるまる1枚」という明確さで、単品410円、セットで710円という価格の妥当性をアピールしているのである。一方、しっかり食べつつも、ヘルシーでローカロリーであってほしいのはオンナゴコロ。そこで、もともとローカロリーな「チキン」を揚げずに「ロースト」して、さらにレタス・トマトではさんだというところを訴えているのだ。従来の満足感はあるものの、食べちゃった罪悪感に悩むフライドチキンとの違いを明確化しているのである。「食べることの罪悪感」を持たずに「食べた満足感」を得たいというニーズを持っているのが最も多い層が女性であるが故に、そこに集中して「チキンシェア奪還」を効率的に、着実に行おうとしているのだ。
強大なリーダー企業との直接競合を回避しつつ、割高と思われがちな自社の価格イメージを払拭し、ヘルシー訴求による女性層集客とういう従来の戦略を強化する。そんな狙いがバッチリとあたるのか。同商品の販売期間は6月まで。売れ行きの様子を楽しみにウォッチしてみたい。
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