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2011.05.10

親子で2倍?!QBハウスの新戦略!

 「お散歩感覚“10分間の身だしなみ”」がキャッチフレーズの1000円理容室、「QBハウス」がJR東日本と組んで、親子連れを狙った新店舗の展開をはじめた。その戦略を読み解こう。

 5月10日付日経新聞に「家族連れ向けの理容店 キュービーネット」という記事が掲載された。キュービーネットはQBハウスの運営会社である。記事によれば、「店名はIKKA(イッカ)“で、1号店をJR東日本系の駅ビル“イーサイト籠原”(埼玉県熊谷市)に開いた」とある。店名も違えば、店舗内の設計も従来のQBハウスの店舗とは全く異なるようだ。「小さな子どもが親と一緒にカットを受けられるように座席の間に間仕切りを設け、レンガ風の壁面など内装も一新する」とある。変わらないのは「料金はQBハウスと同様に一律1000円に設定。洗髪や顔ぞりのサービスは省く」というところだ。

 ちょっと考えれば、「親子」というセットを狙えばオイシイことはわかる。「売上=客数×客単価」だからだ。特にQBハウスの場合客単価が1000円に固定されているが故に、客数をいかに増すかが売上アップのキモである。親子なら一度に二人。2倍だ。狙いは「親が子どもを連れてくる」というパターンだけではない。「子どもが親を連れてくる」というパターンも考えられる。特に小学校入学前ぐらいの子どもは、母親が家庭でカットしているケースも多い。それが「1000円ぽっきり」だとすれば、「お父さん連れてってちょうだい!」と省力化を図ろうとすることも大いに考えられる。父親は他の店でカットしていたかもしれないが、子どもがきっかけで利用するようになるのだ。

 「客数」に関係する変数は「来店頻度」である。
 「親子」の場合、父親の来店頻度向上にも寄与する。QBハウスの来店客を観察してみると、2つの種類に大別されると思われる。「お散歩感覚」のキャッチフレーズどおり、こまめにカットに通うタイプと、かなり髪が伸びるまで放置しておいてバッサリ切るタイプだ。一方、子どもは「髪の毛伸び放題」という風情はあまりいないだろう。小学生ともなれば、「衛生検査」で「前髪が長すぎ!」とか怒られてしまう。(←最近はそんなのない?)故に、こまめに手入れをする。子どものカットのタイミングに合わせて父親もカットするようになり、来店頻度が向上するのだ。

「客数」に関係するもう1つの変数が「リピート率」である。
 働きに出ている父親は、仕事の空き時間や通勤の帰りなどにカットをする機会がある。昨今ではQBハウス系列店だけでなく、「1000円カット」の競合も乱立傾向にある。そんな環境の中で、「子どもと一緒」にカットするのか習慣化すれば、他店にスイッチする可能性を低減できる。高リピート率な優良顧客化できるのである。

 いいことずくめに思える「親子で一緒にカットの店」だが、どこでも成立するというワケではない。まずは、低年齢人口が多く、住宅地と商業施設などとの利便性が高いという立地が求められる。どちらかというと都市型のQBハウスがJR東と組んだのは、郊外の駅ビルという、その条件をクリアする物件を多数所有しているからだろう。
 条件は立地だけではない。「親子で一緒」を実現するには、「親子が同時にカットをスタートして、終了すること」が求められる。QBハウスのスタイルは、所要時間は10分と決まっているので、同時終了は間違いない。では、同時スタートはといえば、QBハウスは理容師の指名なしなので、これも可能なのだ。前の客が終わったら、手が空いた理容師に呼ばれてカットを受ける。一見、機械的に見える方式が、「親子一緒、同時スタート・終了」には実に都合がいいのである。

 2010年4月11日付日経MJ・3面コラム「底流を読む」にQBハウスの事例が掲載され、以下のような記述があった。「理美容の業界には“10分1000円の法則”がある。10分あたりの料金設定の目安であり、このラインを下回ればそれだけ価格競争が激しいことになる」。ジャスト10分・1000円の価格設定は、実は業界の標準価格であり、「旧来の理容店がシャンプー、ひげそり、それに軽妙な会話までをパッケージで売っていたものを、QBハウスはカットだけ売ることにした」ことがQBハウスの成功の方程式なのだ。それをさらに「売上」を要素分解し、「客数」を増し、さらに「来店頻度」と「リピート率」を高めるため、新業態「IKKA(イッカ)」をJRと組んで展開したというのが今回の戦略のキモなのだ。

「売上を上げよう!」「利益を高めよう!」というかけ声だけでは何も改善しない。具体的に高めるべき変数は何なのかを「要素分解」して、具体策を考えていくのが肝要なのである。

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