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2011.04.14

美容室Shampooに学ぶ、低価格・最適プロセスの設計法

 美容室・田谷の低価格店「Shampoo(シャンプー)」は顧客が自分で髪を整えるセルフブローならカット料金が1900円。美容師によるブロー仕上げでも2400円という低価格が売り物だ。そのShampooが「自動受付機」を導入するという。その狙いはどこにあるのだろうか。

 4月13日付・日経MJに「美容室の田谷 低価格店に自動受付機」という記事が掲載された。「来店客が画面上でカットなど希望するメニュー内容を打ち込むと、案内時間をメールで知らせるなどのサービスが受けられる」という仕様だ。5月から本格導入・夏までに全国32店舗に広げるという。

 美容業界(美容サロン)ではなく理容業界(床屋)で低価格の代名詞といえば「QBハウス」をまず思い出すだろう。つり銭なし、きっちりと代金の千円札を客に用意させ、来店順に手の空いた理容師の待つ席に座ってチケットを購入して髪を切る。洗髪・顔剃りなしが基本の極限まで簡素化されたサービスが特徴だ。
 2010年4月11日付・日経MJコラム「底流を読む」にQBハウスに関する以下のような記述がある。
 「理美容の業界には「“10分1000円の法則”がある。10分あたりの料金設定の目安であり、このラインを下回ればそれだけ価格競争が激しいことになる。(QBハウスは)割安感を前面に出してはいるが、料金設定はこの法則に則っている」。

 美容業界も基本的には「10分1000円」が基本だ。その証拠に、各店とも「前髪カット」は10分間・1000円の相場で提供されている。だとすれば、「Shampoo(シャンプー)」はカットのみを約20分、ブロー仕上げ付カットを約25分で提供していることになる。しかし、それだけでは「相場」の範疇を出ずに差別化ができず、業界の中に埋没していくことになる。かといって、「過剰サービス」を行えば、「利益=売上-コスト」のコストが膨らんで利益が出なくなる。自動受付機の効果の1つは人件費削減だ。一般の中〜大規模美容サロンには、「レセプショニスト」という受付担当者を配置しているが、そのコストが不要になる。

 次は売上をもう少し細かく分解してみよう。年間売り上げ=客数×客単価×平均来店数回数×失客率となる。
 「売上」に関してまず、てこ入れすべきは、「機会損失」の防止だ。「Shampoo」はQBハウス同様、「予約なし・並んだ順」である。しかし、その際に「担当者の指名」はできる。その分、シャンプーは待ち時間が長くなる。記事には「店内で並んでいるのを見ると、他の美容室に行ってしまう客もいた」という機会損失が問題であったことが書かれている。自動受付機は受付時にQRコードを発行し、顧客が空メールでメールアドレスを登録すれば指名した美容師の手が空く順番が近づくと、お知らせメールが送られてくるという。「Shampooは商業施設内にあることも多く、客は(受付機で登録した後にメールでの呼び出しまでの間)買い物に充てるなど待ち時間を有効に使える」という。

 自動受付機の最大の眼目は、「来店回数」の向上と、「失客率」の低下となるはずだ。記事には「これまでは実施していなかった顧客へのダイレクトメール発送なども検討する」とあるが、それはQRコードで取得した空メールのアドレスに対する携帯メールだろう。
 美容室の販促といえば駅前でのチラシの立ち撒きが想起されるが、それは新規来店客獲得目的だ。実際にチラシで来店する数は多くないが、他にやる事がないから続ける。やらされる若い美容師のモチベーションも下がる。それよりも注力すべきは再来店促進だ。穴の空いたバケツで水を汲むのではなく、まず、穴をふさぐ。そのためにはアフターフォローが肝要なのだ。
 ついつい、忙しさにかまけて髪を切ることを先延ばしにしてしまう。そんな顧客に来店を促すことができれば、年間の来店回数向上することができる。また、低価格故に美容師との接触時間も、短くロイヤリティー形成ができていないがために「なんとなく他の店に」流れていくという顧客。その失客率も、DMによるフォローメールプログラムを設計・実施することによって低下させることができるだろう。

 消費者の財布のひもは、震災の影響もあり、ますます硬く閉ざされていくことは想像に難くない。それに対応するために、コストを削るだけ削った。サービスプロセスをシンプルにできるだけした。そうした企業も多くなるかもしれない。そのとき、果たしてそこに自社の利益をしっかりと残せる仕組み、競争優位を保って顧客を逃がさない仕組みが構築できているのかを振り返ってみたい。「Shampoo」の「自動受付機」は、その1つの解となるのだろう。

 

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