男だってギュギュッとして欲しい?:着圧ソックスは流行るのか?
「男は家を出れば七人の敵がいる」といわれるが、その敵の1つに「足のむくみ」を挙げたい人は少なくないだろう。靴をすり減らして歩き回る営業、同じ姿勢で長時間座っている出張。ちなみに筆者は講師を務める時の長時間立ちっぱなしが堪える
オトコの隠れた悩みを打ち明ければ、昨今は「オンナだって働く条件も悩みも同じ」と突っ込まれそうだが、女性には力強い味方があるようだ。
4月16日付・東京ウォーカーの記事によれば、<美脚ストッキングの「メディカルステイフィット」>という<テレビショッピングで1日1億8000万円と記録的な売上を作った>という商品があるという。
http://news.walkerplus.com/2011/0416/6/
むくみを防ぐ仕組みをもったストッキングは同商品だけでなく他にも数多くあるが、基本的な仕組みは同じだ。<“第2の心臓”とも言われる足首に一番強い圧力をかけ、上に行くにつれ圧力を弱めることで、下にたまりがちな血液をポンプのように心臓に押し戻し、脚を気持ち良く引き締めよう、と開発されたもの>だという。
「そんなスグレモノの技術を「丸腰」で戦うオトコの足に提供して欲しい!」というニーズがあるに違いないと、メーカーは<“着圧ソックス”「メディカルステイフィット UOMO」(2100円)>を開発し、<4月11日から人気セレクトショップBEAMSで発売>だれることになったという。
すばらしい商品だと思うのだが、メーカーは以外に弱気だ。記事では広報担当者が<「男性の間で“着圧ソックス”の存在はあまり知られていませんし、男性用着圧ソックスで成功している商品はほとんどないんですよ」>と、<男性向けの着圧ソックス市場は未知数の状態だ>とコメントしている。
冒頭挙げたように、女性だけでなく男性も足のむくみと闘って働いている。しかも丸腰で。それに対して、男性・女性という性別ではなく、足のむくみの悩みがある・ないというニーズに注目したメーカーの視点は間違っていない。だが、そのニーズは「潜在」しており、「顕在化」していないところが厄介だ。
モノの選別眼が高い顧客をターゲット(Targeting)として、BEAMSを販売チャネル(Place)として、その店頭で陳列・販促(Promotion)を行うことは有効だろうしかし、それだけではまだ「大ヒット」への道のりは確かに厳しいかもしれない。
同様の商品を流通大手のイオンも手がけているようだ。
<今年の2月には、業界初の試みとして、全国のイオンの婦人雑貨売り場(一部店舗を除く)に、男性向けの着圧ソックス「女性が選んだ 男がよろこぶ靴下」(924円/ソックス 987円/ハイソックス)が登場>したと記事にある。
イオンの狙いは的確だ。潜在している男性の「足のむくみ解消ニーズ」を顕在化させるため、女性から働きかけるという戦略をとっているのである。そのために、「婦人雑貨売り場」という販売チャネルを選択しているのだ。商品(Product)コンセプトも<着圧の良さを知っている女性が、身近な男性のために購入してほしい」>であり、ターゲット(Targeting)を女性としてその購入を<意識した商品のネーミングやパッケージとなっている>という。女性が用いるわけではないが、ニーズが潜在化している真のターゲットに対して、需要を喚起するDMU(Decision Making Unit=購買関与者)として設定しているのだ。そして<売り場を訪れた女性たちは「バレンタインや父の日など、身近な男性へのちょっとしたプレゼント>という打ち出し方(Positioning)を設定しているという。
靴下は1足買えば終わりではなく、洗い替えのために複数の購入が必要で、さらに傷めば買い換えも必要になる。さらに、「男性用着圧機能付き靴下」においては、一度「試用」することがキモである。実は筆者は既に着圧機能付きを愛用しており、この原稿は出張中の新幹線の中で書いている。脚はすこぶる快調だ。そのように、一度使えば手放せなくなるのだが、ニーズが潜在化していると「試す」という行動になかなかつながらない。
上記を態度変容モデル「AMTUL」を用い、イオンのように女性がDMUとして介在した場合で考えてみよう。
A(Awareness=認識):女性からのオススメで認知する。
M(Memory=記憶):そんなにいいのならと一応記憶しておく。
T(Trial=試用):プレゼントされて試す。もしくは、靴下の買い換え・補充や、脚がしんどい仕事があった日などに「買ってきてくれ」と頼んで試す。
U(Usage=日常使用):脚が疲れそうな仕事の日には欠かさず使用するようになり、買い増しをする。
L(Loyal=忠誠):手放せなくなる。
女性向けのストッキングは「テレビショッピングで1日1億8000万円」だというが、ターゲットを男性にした場合、大ヒットまでの道のりはまだ確立されていない。そのためには、直接ターゲットに働きかけるだけでなく、DMUを活用し、4Pを最適化し、態度変容をしっかりと設計することが必要だ。
世の中にはまだまだ潜在したニーズはたくさんあるはずだ。それを顕在化させ、大ヒットにつなげる工夫として、このソックスの普及過程は要チェックである。
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Comments
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確かに気になりますね(・・)
Posted by: 着圧ソックス愛好家 | 2011.05.10 12:07 PM