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14 posts from April 2011

2011.04.29

就活生に「洗えるスーツ」は微笑むのか?コナカの戦略を読む!

 各社から「洗えるスーツ」が発売されはじめたのは2009年頃のこと。商品は毎年進化を繰り返し機能アップをしているが、マーケティング戦略も先鋭化をしてきている。その中で、コナカは過去最も厳しいといえる今年の就職戦線を戦う就活生のハートをガッチリつかむ戦略にでた。

 「一生モノ」といった風情の商品も少なくなかったスーツという商品の価格が急降下し、ついに1万円を切るようになったのもデフレの影響によるところが大きい。2007年、西友が親会社ウォルマートの調達力を活かして7980円のスーツを30~50代向けに投入し好評を得て、翌年に若年層にメーンターゲットを移してラインナップを拡充。ウォルマートの衣料品のPBである「GEORGE(ジョージ)」ブランドで展開し、シルエットや仕立てをブラッシュアップした。
 その後、流通大手各社や百貨店、紳士服専門店も参戦し、アンダー1万円スール市場は激戦となったが、昨年異変が起きた。<松屋銀座で9800円スーツがセール初日に完売した2009年から一転、10年はセールから1週間経っても売れ残っているという。代わりに売れているのが高級生地を使った3、4万円台のスーツだ>(2010年5月17日J-CASTニュース)という。背景にあるのは「景気の上向き感」だと同記事は分析。代わって格安なパターンオーダースーツが人気を集めたという。

 格安といってもパターンオーダーは最低3~4万円する。「節約疲れ」と呼ばれる風潮もあったものの、すべての人がそちらに向かうわけではない。
 新たに登場した勢力は、機能性を高めた低価格スーツだ。
 モノの「コスト」は、新規購入する「イニシャル」と、維持するための「ランニング」に分解できる。「背広」の語源はスーツの発祥地でもあるロンドンの仕立屋街「サヴィル・ロウ」にあるという説もあるが、英国紳士の装いを高温多湿な極東の島国でするには無理があるのだ。故に春夏物スーツはランニング費用としてのクリーニング代が馬鹿にならない。そこで登場したのが「洗えるスーツ」。紳士服専門店各社が2010年にこぞって市場に投入した。青山の「アクアウォッシュスーツ」1万9900円~。AOKI「プレミアムウォッシュスーツ」1万8900円~。コナカ「シャワークリーンスーツ」2万9500円~。はるやま「ウォッシャブルスーツ」8900円~。

 昨年開かれた戦端において、価格的に割高な展開となったコナカだが、今年は思い切ったセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングを明確にした戦略にでた。具体的な商品を先に挙げればわかりやすいだろう。その名も「就活Vスーツ」である。
 広告には就活生と同世代の星、石川遼をキャラクターとして起用。価格は1万8900円。商品の特徴は、洗濯機や洗剤を使わず温水シャワーをかけるだけで汚れを洗い流せ、一晩(6時間)で乾くと明記する速乾性。さらに、アイロン仕上げ不要というメンテナンスフリーさだ。
 機能的には昨年売り出した「シャワークリーンスーツ」とほぼ同等だが、セグメントは「就活生」と「一般ビジネスマン」に分けて、前者を思いきりターゲットとしている。価格で勝負すれば、「はるやま」が最安だ。しかし、ターゲットを明確にすることでポジショニングも明確になる。就職戦線は年々長期化している。しかし、学生の身で複数のスーツを購入するのは厳しい。かといって、面接では好印象を残したい。そこで、「6時間」と明言する速乾性が効いてくる。1着しかないスーツをきれいに洗って、翌日の面接に臨むという就活生の行動を実現できるからだ。

 ターゲットを明確にするということは、それ以外のターゲットを切り捨てることでもある。便利な洗えるスーツはオジサンも欲しがるかもしれない。しかし、あまりにも「就活」を前面に打ち出しているため、ちょっと手を出しにくくなるからだ。
 その反面、就活生のココロにはズバッと響く。スーツのラペル(下襟)のフラワーホールには、就活の「Victory(勝利)」を祈って、Vの字をかたどったバッジを付けているという。ポジショニングとして、「就職活動に勝利するスーツ」を表している。つまり、「就活Vスーツ」は最安値ではないながら、就活生に「洗って一晩で渇く速乾性で2着目がいらない」という「機能的価値」と、「就活がうまくいきそう!」と思える「情緒的価値」を提供しているのである。

 「ターゲットを狭めると売れなくなる」などという言葉をよく聞くが、「就活Vスーツ」は<3月末までに年間販売目標の8億円をすでに達成した>(4月27日日経MJ)という。ターゲットを絞って高い購入率を実現するという好例である。
 「就活Vスーツ」の戦略はコナカに勝利をもたらした。あとは、それを着用した就活生に、本当に勝利の女神が微笑むことを願ってやまない。

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2011.04.25

ユニクロの新型店舗は何を狙う?

 ユニクロが「駅前・平屋型」という新型店舗の展開をはじめた。その狙いはどこにあるのだろうか。

 4月25日付日経MJの記事に「出店形態を多様化 ユニクロ、駅前に平屋店舗」という記事が掲載された。写真には開店準備中と思われる店舗が映っており、「ユニクロは鉄道会社と組み好立地への出店を進める(五反田駅前の店舗)」とある。
 今日、エキナカはユニクロの「牙城」の重要な一角である。ユニクロがエキナカ進出をはじめたのは2000年のこと。JR東日本・東日本キヨスク(現JR東日本リテールネット)と業務提携し、「ユニクロキヨスク新宿南口店」をオープンした。以来10年を超え、あちこちのJR各駅の改札内外で見かけるようになり、昨年12月9日に飯田橋駅にもオープンし、東京メトロ、地下鉄にもその版図を広げたのである。

 ユニクロの春夏の戦略商品は、機能性インナー:男性用「シルキードライ」と女性用「サラファイン」及び補整機能付の「スタイルアップ」だ。合計販売目標は3600万枚。それに対して、イオン、イトーヨーカドー、ユニーなども追撃するが、合計しても目標は2,230万枚だという。(DFオンライン http://www.dfonline.jp/dist/flash/#57
 3社を合計しても目標枚数はユニクロになお1,270万枚届かない。ユニクロ、余裕しゃくしゃくの状態を生み出している理由の1つが「販売チャネルの優位性」だ。
 日経MJの記事によれば、「21日には機能性肌着の“サラファイン”と“シルキードライ”のみを取り扱う専用店を初めてJR池袋駅構内にオープンした。6月26日までの期間限定。5万着の販売を目指す」と伝えられている。冬にJR品川駅に特設された「ヒートテック専用ショップ」と同様の展開を行っているのである。3600万枚の販売という途方もない目標は、イオン、イトーヨーカドー、ユニーなどと同等の枚数を大型店やSC店舗で販売し、残りを消費者の生活動線と購買時点に即した販売でたたき出そうとしているのだろう。
 エキナカのターゲットは、通勤・通学客だ。暑くなってきて、涼しい下着が欲しくなるのは通勤・通学途中、職場や学校だ。そのニーズが最も高まった時点にエキナカ・駅前店舗を配置する。まだ買ったことがない消費者の試し買いも、既購入者の買い増しも機会損失をする恐れが最も少ない販売チャネルであるといえよう。大型店やSC店舗とのターゲットの棲み分けを図ることもできる。常態化した「週末限定セール」で各店はごった返し、レジに行列ができる。その中に身を置くことを嫌う層も少なくない。しかし、高機能インナーは欲しい。そこで、エキナカ・駅前店舗が効力を発揮する。
 機能性インナーに注目すれば、ユニクロは強大なリーダー企業である。シェアの高いリーダーは、できるだけ価格で戦いたくない。事実、ユニクロの機能性インナーは、イオン、イトーヨーカドー、ユニーの商品に比べると若干値段が高い。しかし、上記ターゲットは利便性を求めるため、「週末限定」を待って購買するような行動はとらない。インナーだけでなく、商品を必要な時に「都度買い」する。そうした点もユニクロにとってはオイシイのだ。

 日経MJの記事にある「駅前平屋店舗」は、ユニクロの牙城における、いわば「出城」だ。日経MJの記事では「(運営主体をJR東日本リテールネットとして、駅前の空きスペースに)同社が建屋を含めた設備を用意、従業員も雇用する。ユニクロは商品や販売ノウハウを提供する」と、外人部隊を配置するような格好だ。この外人部隊による出城の展開はかなり機動的だといえるだろう。エキナカや改札外の駅構内では、店舗スペースの確保に制約条件がかかる。しかし、JR所有敷地内の駅前なら、その可能性がさらに広がる。また、雇用の手間もかからない。
 ユニクロの旗艦店・都心大型店は高価格帯商品と付随コーディネート商品の購入を狙っている。SC(ショッピングセンター)・駅ビル店では日常衣料、インナーのまとめ買いを狙い。ネットは幅広い品目の購入、いわば「つまみ買い」を誘う。エキナカでは主にインナーやシャツなどの「ついで買い」を促すのだ。つまり、チャネルとして消費者の生活圏に隙間なく「網」をかけているのだ。
 今回の「駅前・平屋型新型店舗」という「出城」は、網の目をさらに細かくし、あたかも「面」として塗りつぶす。まさに、水も漏らさぬ、リーダーの全方位出店戦略が展開されはじめたのである。

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2011.04.21

サントリー「ハイボールサーバー」の深謀遠慮

 サントリーが復活させて市場に定着させた「ハイボール」。次なる戦略はどこに向かうのか?まずは、ハイボールが今日のように人気となった原点を振り返ってみよう。
2009年8月21日付・日経MJに「サントリーのハイボール復活戦略」と題された記事が掲載された。サントリー酒類の社内で「プロジェクトH」と名付けられた取り組みに関してだ。プロジェクトの目的は、ハイボールという飲み方が「1950年ごろに誕生、一世を風靡(ふうび)した時期もあったが、ウイスキー市場の縮小とともに姿を消しつつあった。それを復活させることでウイスキー需要を喚起する」(記事より)ということにあった。また、「ウイスキーそのものの古いイメージを払拭(ふっしょく)、同時に若者が“飲む”環境を整え、新たなブーム」(同)を作り出すことにあったという。
 プロジェクトは様々な取り組みによって早期に結実した。2009年のヒット商品番付にもランクインし、今日ではすっかりサントリーの狙いどおり市場に定着。多くの料飲店でメニューに並び、缶入りの商品もコンビニをはじめとした流通チャネルで確実に棚を押さえている。重点ターゲットである若者の取り込みも、様々な商品・サービスでよくいわれる「若者離れ」どころかウイスキーに寄りつきもしていなかった状態から、「最初の1杯」にしている人も多いという人気っぷりとなった。

 サントリーが仕掛けた「プロジェクトH」で用いられたのは「角瓶」ブランドを用いたハイボールであるが、その後、消費市場全般の低価格志向にも対応し、より手軽な価格で楽しめる「トリス」のハイボールも展開した、さらにハイボールの裾野を広げることに貢献した。
 しかし、前掲の日経MJの記事にあるように、サントリーの真の狙いは「ハイボールの普及」ではなく、「ウイスキー需要の喚起」である。もちろん、炭酸ソーダで薄めてハイボールにするより、そのままで飲んでもらった方がありがたい。そのため、その次の一手として「WHISKEY on MUSIC」というコンセプトで、様々なアーティストとコラボレーションした広告展開を行い、さりげなくアーティストがカッコよくストレートやロックで飲む姿を訴求した。だが、世は低アルコール全盛である。そのハードルは少々高いといえる。故に、さらに次の一手を打ったのである。

 4月20日付・日経MJのコラム「食を支える」に「サントリー ハイボールサーバー 5銘柄、最適な割方で」という記事が掲載された。5銘柄とは、角瓶、山崎、ザ・マッカラン・ファインオーク12年、ジャック・ダニエル、白州。それらをウイスキーとソーダ1:4、1:3、1:3.5などの最適比率で自動的に作り出すサーバーを開発したという。ソーダもただ者ではない。サーバーの冷却機能を高めることで、「おいしさのカギをにぎる、ウイスキーと割る炭酸の量を増し、液体に含まれる炭酸密度を従来の5.3から6.0まで高めた」(記事より)という。そして、サントリーは「6.0は現時点で最高レベル」であるとコメントしているとある。

 よーく冷やして、喉ごしのよさを味あわせるという手法は、考えてみればビールとよく似ている。酒好き、ウイスキー好きにとっては、熱い塊となって喉から食道を通って胃の腑に滑り落ちるウイスキーの感触が何ともよいのだが(←書きながら禁酒中の筆者は思わず感触を思い出し悶絶している)、やっとハイボールでウイスキーに慣れた初心者にはまずは喉ごしだ。
 アサヒビールの「スーパードライ エクストラコールド・バー」をおぼえているだろうか。2010年5月21日に東京・銀座にオープンし、連日行列を作った店だ。人気のヒミツは、「氷点下の温度帯(-2℃から0℃)のアサヒスーパードライを飲める」ということ。ビール愛好家にとっては味がわからないくらいにキンキンに冷やしすぎはNGだ。喉ごしと共に鼻腔に広がる香り(←再び悶絶)が楽しめなくなるからだ。しかし、アサヒの狙いは「若者のビール離れ対策」であった。故に、「エクストラコールド」を開発し、少々狭すぎる店に行列を作らせ人気を醸成し、アンテナショップとしての役割を終えた同店を閉めてから、専用サーバーを各料飲店に広めていったのだ。現在では「エクストラコールド」を楽しめる店は順次増えている。

 サントリーの場合、超高性能サーバーの展開は、「サントリーがハイボールにあうフードメニューや店舗デザインの企画、従業員の教育まで」(同)請け負った店だという。そして、サントリーは店舗から「フランチャイズチェーン(FC)と違い加盟店料やロイヤルティーなどは一切とらない」という太っ腹具合である。そのワケはとりもなおさず、目的を収益ではなく、角瓶だけでなく他の銘柄のウイスキーを消費者に体験させ、拡販することに置いているからだ。
 専用超高性能サーバーの展開は、消費者に体験を広げるためだけであれば、多数あるサントリー系列の料飲店から始めればいい。しかし、そうしない点から消費者に向けた狙いだけでない側面が伺える。系列での展開はいわば「閉じた世界」だ。他企業資本の店舗で成功すれば、「ぜひ我が社の店舗にも」ということになり、大きな広がりが期待できる。
 専用超高性能サーバー設置1号店は1月に東京・新橋にオープンしていて、「売り上げは計画比で50%増のペースで推移している」というから、恐らく各社からのオファーも数多く舞い込んでいるに違いない。しかし、現在のところサーバーは手作組み立てで大量生産はできないと記事にある。より、料飲店にとって希少性が高い存在になっていることだろう。

 ウイスキー、酒類に限らず、企業やマーケターは様々な仕掛けによってブームを起こすことを狙っている。しかし、問題はその後なのだ。いかにブームを一過性のものにせず、定着させるか。そして、その仕掛けたブームの裏側にある真の目的を達成するかである。サントリーの、まさに深謀遠慮ともいえるハイボールと、今回の超高性能ハイボールサーバーによる息の長い取り組みからは学ぶべきところが大きい。

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2011.04.20

パウダー300%でハッピーターンフリークを狙う亀田製菓

 表面にまぶされた粉(パウダー)の旨味で絶大な人気を誇る、亀田製菓のせんべい「ハッピーターン」。近年パウダーを増量し続けているが、ついに標準・100%の3倍増し、300%に達した!

Happyturn_2


 ハッピーターンが発売されたのは1977年のこと。そのネーミングはWikipediaの記述によれば、<商品開発当時、第一次オイルショックの影響で不景気であったことから、「幸福(ハッピー)」が客に「戻ってくる(ターン)」よう願いを込めて名付けられたものである>とある。
 商品の最大の特徴は、人を酔わせる「魔法の粉」とも呼ばれる「ハッピーパウダー」と呼ばれる粉がまぶしてあること。その原料は<「砂糖・塩・アミノ酸・タンパク加水分解物でできている」>と同社工場長がテレビ番組で語ったと同じくWikipediaに記述されている。さらに、せんべいの表面がざらついているのは粉の生だけではない。ハッピーパウダーが付着しやすいように、「パウダーポケット」と名付けられた凹凸の加工が施されているのである。つまり、ハッピーターンはパウダーなくしては語れない商品なのである。

 パウダーの増量が始まったのは2009年のこと。通常の倍に増量された「ハッピーパウダー200%ハッピーターン」をコンビニ限定で発売。2010年4月からセブンイレブン限定で「ハッピーパウダー250%ハッピーターン」も発売されている。

 今回の「300%」は、正確にはパッケージに表記されているように「200%+100%相当のハッピーパウダー」だ。カップ型の容器上部にアルミパウチされた100%分のハッピーパウダーが添付されていて、購入者が容器内の200%ハッピーターンにふりかけ、容器をシャカシャカ振って仕上げるという仕掛けだ。商品名「ふりふりハッピーターン」のゆえんである。
 この商品の原型は増量200%が発売される以前、2005年にも「シャカシャカハッピー」として発売された。当時を思い起こせば、「魔法の粉」に魅入られてきたハッピーターンフリークたちは「夢が叶った!」と狂喜した。「もっと濃い味、パウダーたっぷりのハッピーターンが食べたい!」とかねてから思っていた者が多かったからだ。

 しかし、人の欲望とはとめどないもの。「濃い味」に満足した後、「他のせんべいに振りかけたらどうなるだろう?」と考え、実行するチャレンジャー、または実験くんも少なくなかった。それでは亀田製菓はうれしくない。せめて自社商品の「ソフトせんべい」に振りかけてくれるならいいが、他社商品に振りかけられて、ハッピーターンの売上を喰ってしまったのでは、もともこうもない。そこで、その後、パウダーの別添ではなく本体への増量という展開がとられたのではないかと考えられる。

 では、一度は禁じ手となった別添型商品を再び発売したのか。それは、「機が熟した」という判断ではないかと考えられる。前述の通り、2009年から始まったパウダー増量商品で「濃い味のハッピーターン」の虜にファンが大量に誕生した。その欲求はもはや「他の商品にちょっとかけてみようかな・・・」という悪戯ゴコロを起こすよりも、「もっと濃い味!」を求めている。だとすれば、別添にしても他に用いられる心配はない。一方、パッケージ内の「200%」も通常販売していて、普通に食べても美味しい商品だ。だとすると、さらに「濃い味」を求めるフリークは、1つを200%で食べて、もう1つ購入し別添パック2つを振りかけて「400%」を作り出すという食べ方をするかもしれない。増販効果も期待できるのだ。

 パウダー300%の「シャカシャカハッピー」が亀田製菓にとってオイシイのは、増販効果への期待だけではない。通常の200%の製造工程を容器とパッケージングだけを変更することで別商品を作り出せることだ。製造ライン、バリューチェーン(Value Chain=VC)を組み替えるのは時間とコストがかかる。それを最小限に留めることができるのである。また、フリークが「勝手に400%」を作るのではなく、別添パウダーパックを200%分に増量するだけで、「200%+200%相当のハッピーパウダー」という新商品も作れるのだ。

 流通チャネルの棚取り合戦や、消費者の関心を喚起するために、ついつい新商品を次々と繰り出しがちな菓子業界のなかで亀田製菓のハッピーターンの戦略は異色だ。ハッピーパウダーで熱狂的ファンを作ったら、それを他社で実現できない自社ならではのセールスポイント、USP(Unique Selling Proposition)として前面に押し出し、最小限の製品仕様変更でファンの期待を高め、囲い込む。その軸がブレていない展開から学べるところを考えてみるのもいいだろう。

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2011.04.18

男だってギュギュッとして欲しい?:着圧ソックスは流行るのか?

 「男は家を出れば七人の敵がいる」といわれるが、その敵の1つに「足のむくみ」を挙げたい人は少なくないだろう。靴をすり減らして歩き回る営業、同じ姿勢で長時間座っている出張。ちなみに筆者は講師を務める時の長時間立ちっぱなしが堪える

 オトコの隠れた悩みを打ち明ければ、昨今は「オンナだって働く条件も悩みも同じ」と突っ込まれそうだが、女性には力強い味方があるようだ。
4月16日付・東京ウォーカーの記事によれば、<美脚ストッキングの「メディカルステイフィット」>という<テレビショッピングで1日1億8000万円と記録的な売上を作った>という商品があるという。
 http://news.walkerplus.com/2011/0416/6/

 むくみを防ぐ仕組みをもったストッキングは同商品だけでなく他にも数多くあるが、基本的な仕組みは同じだ。<“第2の心臓”とも言われる足首に一番強い圧力をかけ、上に行くにつれ圧力を弱めることで、下にたまりがちな血液をポンプのように心臓に押し戻し、脚を気持ち良く引き締めよう、と開発されたもの>だという。
 「そんなスグレモノの技術を「丸腰」で戦うオトコの足に提供して欲しい!」というニーズがあるに違いないと、メーカーは<“着圧ソックス”「メディカルステイフィット UOMO」(2100円)>を開発し、<4月11日から人気セレクトショップBEAMSで発売>だれることになったという。

 すばらしい商品だと思うのだが、メーカーは以外に弱気だ。記事では広報担当者が<「男性の間で“着圧ソックス”の存在はあまり知られていませんし、男性用着圧ソックスで成功している商品はほとんどないんですよ」>と、<男性向けの着圧ソックス市場は未知数の状態だ>とコメントしている。

 冒頭挙げたように、女性だけでなく男性も足のむくみと闘って働いている。しかも丸腰で。それに対して、男性・女性という性別ではなく、足のむくみの悩みがある・ないというニーズに注目したメーカーの視点は間違っていない。だが、そのニーズは「潜在」しており、「顕在化」していないところが厄介だ。
  モノの選別眼が高い顧客をターゲット(Targeting)として、BEAMSを販売チャネル(Place)として、その店頭で陳列・販促(Promotion)を行うことは有効だろうしかし、それだけではまだ「大ヒット」への道のりは確かに厳しいかもしれない。

 同様の商品を流通大手のイオンも手がけているようだ。
 <今年の2月には、業界初の試みとして、全国のイオンの婦人雑貨売り場(一部店舗を除く)に、男性向けの着圧ソックス「女性が選んだ 男がよろこぶ靴下」(924円/ソックス 987円/ハイソックス)が登場>したと記事にある。
 イオンの狙いは的確だ。潜在している男性の「足のむくみ解消ニーズ」を顕在化させるため、女性から働きかけるという戦略をとっているのである。そのために、「婦人雑貨売り場」という販売チャネルを選択しているのだ。商品(Product)コンセプトも<着圧の良さを知っている女性が、身近な男性のために購入してほしい」>であり、ターゲット(Targeting)を女性としてその購入を<意識した商品のネーミングやパッケージとなっている>という。女性が用いるわけではないが、ニーズが潜在化している真のターゲットに対して、需要を喚起するDMU(Decision Making Unit=購買関与者)として設定しているのだ。そして<売り場を訪れた女性たちは「バレンタインや父の日など、身近な男性へのちょっとしたプレゼント>という打ち出し方(Positioning)を設定しているという。

 靴下は1足買えば終わりではなく、洗い替えのために複数の購入が必要で、さらに傷めば買い換えも必要になる。さらに、「男性用着圧機能付き靴下」においては、一度「試用」することがキモである。実は筆者は既に着圧機能付きを愛用しており、この原稿は出張中の新幹線の中で書いている。脚はすこぶる快調だ。そのように、一度使えば手放せなくなるのだが、ニーズが潜在化していると「試す」という行動になかなかつながらない。
 上記を態度変容モデル「AMTUL」を用い、イオンのように女性がDMUとして介在した場合で考えてみよう。

 A(Awareness=認識):女性からのオススメで認知する。
 M(Memory=記憶):そんなにいいのならと一応記憶しておく。
 T(Trial=試用):プレゼントされて試す。もしくは、靴下の買い換え・補充や、脚がしんどい仕事があった日などに「買ってきてくれ」と頼んで試す。
 U(Usage=日常使用):脚が疲れそうな仕事の日には欠かさず使用するようになり、買い増しをする。
 L(Loyal=忠誠):手放せなくなる。

 女性向けのストッキングは「テレビショッピングで1日1億8000万円」だというが、ターゲットを男性にした場合、大ヒットまでの道のりはまだ確立されていない。そのためには、直接ターゲットに働きかけるだけでなく、DMUを活用し、4Pを最適化し、態度変容をしっかりと設計することが必要だ。
 世の中にはまだまだ潜在したニーズはたくさんあるはずだ。それを顕在化させ、大ヒットにつなげる工夫として、このソックスの普及過程は要チェックである。

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2011.04.14

美容室Shampooに学ぶ、低価格・最適プロセスの設計法

 美容室・田谷の低価格店「Shampoo(シャンプー)」は顧客が自分で髪を整えるセルフブローならカット料金が1900円。美容師によるブロー仕上げでも2400円という低価格が売り物だ。そのShampooが「自動受付機」を導入するという。その狙いはどこにあるのだろうか。

 4月13日付・日経MJに「美容室の田谷 低価格店に自動受付機」という記事が掲載された。「来店客が画面上でカットなど希望するメニュー内容を打ち込むと、案内時間をメールで知らせるなどのサービスが受けられる」という仕様だ。5月から本格導入・夏までに全国32店舗に広げるという。

 美容業界(美容サロン)ではなく理容業界(床屋)で低価格の代名詞といえば「QBハウス」をまず思い出すだろう。つり銭なし、きっちりと代金の千円札を客に用意させ、来店順に手の空いた理容師の待つ席に座ってチケットを購入して髪を切る。洗髪・顔剃りなしが基本の極限まで簡素化されたサービスが特徴だ。
 2010年4月11日付・日経MJコラム「底流を読む」にQBハウスに関する以下のような記述がある。
 「理美容の業界には「“10分1000円の法則”がある。10分あたりの料金設定の目安であり、このラインを下回ればそれだけ価格競争が激しいことになる。(QBハウスは)割安感を前面に出してはいるが、料金設定はこの法則に則っている」。

 美容業界も基本的には「10分1000円」が基本だ。その証拠に、各店とも「前髪カット」は10分間・1000円の相場で提供されている。だとすれば、「Shampoo(シャンプー)」はカットのみを約20分、ブロー仕上げ付カットを約25分で提供していることになる。しかし、それだけでは「相場」の範疇を出ずに差別化ができず、業界の中に埋没していくことになる。かといって、「過剰サービス」を行えば、「利益=売上-コスト」のコストが膨らんで利益が出なくなる。自動受付機の効果の1つは人件費削減だ。一般の中〜大規模美容サロンには、「レセプショニスト」という受付担当者を配置しているが、そのコストが不要になる。

 次は売上をもう少し細かく分解してみよう。年間売り上げ=客数×客単価×平均来店数回数×失客率となる。
 「売上」に関してまず、てこ入れすべきは、「機会損失」の防止だ。「Shampoo」はQBハウス同様、「予約なし・並んだ順」である。しかし、その際に「担当者の指名」はできる。その分、シャンプーは待ち時間が長くなる。記事には「店内で並んでいるのを見ると、他の美容室に行ってしまう客もいた」という機会損失が問題であったことが書かれている。自動受付機は受付時にQRコードを発行し、顧客が空メールでメールアドレスを登録すれば指名した美容師の手が空く順番が近づくと、お知らせメールが送られてくるという。「Shampooは商業施設内にあることも多く、客は(受付機で登録した後にメールでの呼び出しまでの間)買い物に充てるなど待ち時間を有効に使える」という。

 自動受付機の最大の眼目は、「来店回数」の向上と、「失客率」の低下となるはずだ。記事には「これまでは実施していなかった顧客へのダイレクトメール発送なども検討する」とあるが、それはQRコードで取得した空メールのアドレスに対する携帯メールだろう。
 美容室の販促といえば駅前でのチラシの立ち撒きが想起されるが、それは新規来店客獲得目的だ。実際にチラシで来店する数は多くないが、他にやる事がないから続ける。やらされる若い美容師のモチベーションも下がる。それよりも注力すべきは再来店促進だ。穴の空いたバケツで水を汲むのではなく、まず、穴をふさぐ。そのためにはアフターフォローが肝要なのだ。
 ついつい、忙しさにかまけて髪を切ることを先延ばしにしてしまう。そんな顧客に来店を促すことができれば、年間の来店回数向上することができる。また、低価格故に美容師との接触時間も、短くロイヤリティー形成ができていないがために「なんとなく他の店に」流れていくという顧客。その失客率も、DMによるフォローメールプログラムを設計・実施することによって低下させることができるだろう。

 消費者の財布のひもは、震災の影響もあり、ますます硬く閉ざされていくことは想像に難くない。それに対応するために、コストを削るだけ削った。サービスプロセスをシンプルにできるだけした。そうした企業も多くなるかもしれない。そのとき、果たしてそこに自社の利益をしっかりと残せる仕組み、競争優位を保って顧客を逃がさない仕組みが構築できているのかを振り返ってみたい。「Shampoo」の「自動受付機」は、その1つの解となるのだろう。

 

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2011.04.13

ココロの壁を壊せ!キリンのR&D改革

 1987年のアサヒ「スーパードライ」発売以来、ビールのシェアを侵食され、ビール系飲料全体でも2001年についに41年ぶりに首位陥落の憂き目を見たキリン。その後、第3のビールの拡充などで09年に9年ぶりの首位奪還を果たし、営業強化をはじめ様々な改革を断行している。

 4月13日付・日経MJ1面に「キリン復活へ 営業力支えろ」という記事が掲載された。メインは「営業力底上げ策」に関する記述だ。第1に挙げられているのが、「非ビール品揃え圧倒」。従来のビール一辺倒を改め、ロードサイドチェーンにはノーアルコールの「フリー」を中心にドリンクメニューを全体提案し、料飲店を取り込みアサヒの版図を塗り替えているという。それは、スーパードライの成功体験から抜けきれない、例えば第3のビールやノンアルコールがスーパードライとカニバリ(共食い)を避けたいという意向が働くアサヒの弱点を突く戦略だ。

 営業以外にも注目すべき記述がある。「調査・開発研究者が融合」「市場の流れ、迅速に反映」という部分だ。キリンでは従来、「商品開発研究所はマーケットで何が売れるのかを調査したうえで商品全体の骨子を設計、その情報に基づいて酒類技術開発センターが新技術を作り上げるという分担があった」とある。
 調査・開発、即ちResearch&Developmentともいわれるが、RとDの壁は実際には厚い。記事に一例がある。08年に発売した第3のビール「ストロングセブン」。「節約志向が高まる中、アルコールを通常よりも高い比率にすることで手早く酔えるという価値を提案。という着想は抜群によかったが、商品開発研究所と酒類技術開発センターとの連携は“アルコール度を高める”ところで終了してしまい、香味におけるもう一歩踏み込んだ開発という肝心な点にまで至らなかった」(記事要約)という。

 組織の壁は厚い。組織・部門に振り分けられた社員のココロの中にも、見えない壁がある。その「壁を壊す」象徴として、キリンは「物理的な壁」を取り払ったのである。
 キリンのアプローチはユニークだ。「今年1月。横浜工場(横浜市)にあるキリンビールのテクニカルセンターで、6階の壁が取り払われた」という。「組織の壁」を物理的に取り払ったのである。「全員が顧客の顔を思い浮かべながら新商品を開発する体制を作る」という狙いどおり「商品開発研究所と酒類技術開発センターの研究者たちが壁の撤去を境に、融合に向けて動き始めた」という。

 組織を超えた情報共有と業務の融合は、本田技研工業が伝統的に「ワイガヤ」という社内文化を保っている。
<「ワイガヤ」とは、時と場所を選ばずに気軽に集まってワイワイガヤガヤ言いながら、徹底的に議論するということです。職位や資格にとらわれずに自由に話し合うことによって、新たな知恵やアイデア、目標などを生み出すというものです。>(本田技研工業Webサイトより)とある。それは、ホンダの「自由闊達な組織風土」を代表するものであり、原動力であるとしている。

 ホンダの「ワイガヤ」に代表されるような、組織を越えた情報・知識共有は重要である。しかし、一朝一夕に壁は見えないココロの壁は壊れない。故に、キリンは物理的な壁をまず壊したのである。

 上記の戦略意図をバリューチェーン(Value Chain=VC)で考えてみよう。
 従来のVCは<商品企画→製造技術設計→製造→営業→出荷物流>というような形になっていた。それを<商品企画・製造技術設計→製造→営業→出荷物流>という形に改めたのだ。間違い探しのようだが、その違いがわかるだろうか。商品開発研究所=商品企画(R)、酒類技術開発センター=製造技術設計(D)が→でつながれた、「受け渡し」の関係から、「一体化」へと変化したのである。
 同業他社と比べてVCの形を変えることは、差別化要素となり得る。それは同じVCの形で、その内容の細部で差別化を図るよりダイナミックな違いを打ち出すことができるようになる。
 物理的な壁を壊したキリン流の「ワイガヤ」が、いわゆる「タバコ部屋のコミュニケーション」や「飲みュ二ケーション」のような、インフォーマルなレベルまでの融合が図れればさらにユニークな動きが出てくるだろう。その時の話題は、「全員が顧客の顔を思い浮かべながら」であることになるだろう。

 組織は放っておけばどんどん硬直化する。キリンのアプローチを参考にできる企業は多いだろう。


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2011.04.12

「震災後の消費」にどう対応するのか?:レナウンの事例に学ぶ

 東北関東大震災からちょうど1ヶ月が経った。テレビCMから花見までに広がる「自粛」。その後顕在化した福島第1原子力発電所事故の影響と、経済はマイナスのスパイラルに突入しているように見える。どこかに突破口を見つけなければならない。そのヒントを探ってみたい。

 4月11日付・日経MJに掲載されたコラム「ブランド深化論」には、レナウンの百貨店向け婦人服ブランド「チャージ」の事例が掲載されていた。同ブランドには「“リーマン・ショック”の影響で財布のひもがまだ固かった時期にもかかわらず、2009年秋冬頃から目立って売れるようになった」という商品がある。「シャツなどの上に羽織るベスト」だ。「翌10年の春夏には売上が前年同期の2.3倍、同年の秋冬も同1.5倍と拡大が続く」状態だというから驚きだ。ベストは顧客の買い上げ点数に貢献し、1人あたり「平均1.7~1.8点と、その前と比べ0.5点も上昇」。客単価も連動して向上し、「低価格専門店などとの競争激化で続く百貨店の来店・購入客数の低迷をカバー」しているという。

 震災前の事例であるが、2009年といえば「失われた10年(1993年~2003年)」という言葉が、リーマン・ショックに端を発する経済危機を受けて「失われた20年」と言い換えられるようになった時期である。消費が低迷している中で「ベスト」という商品に注目してブランドの売上げを伸ばしたのだ。
 ポイントは「不況下ならではの提案」であるとコラムは分析する。「服を買う予算が限られるなか、店を訪れた客が買っていくのは価格が手ごろなTシャツやシャツ、ブラウス類が中心。それにベストを組み合わせるだけで“着こなしにアクセントを付け、印象を変えられる”」と、商品政策担当者もコメントしている。

  「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を空けたいのだ」。
ハーバード大学ビジネススクールの教授セオドア・レビットの有名な言葉である。これは「ニーズ」と「ウォンツ」の関係をもっとも端的に説明した言葉だといえよう。顧客は現状に対し、何か実現したい理想の状態を求めている。そしてそこにギャップが存在する。それが「ニーズ」だ。そのギャップを解決する「対象物」として求められるのが「ウォンツ」である。

 レビット教授の言葉に習えば、「顧客は服が欲しいのではない。装いを新しくしたいのだ。」となるだろう。
 ファッションという「果実」を味わった者は、昨日も今日も同じ服の「着た切り雀」でいることはできない。だからといって、多くの消費者は無制限にニーズを充足すべく、ウォンツを求め続けることは経済的な制約条件でできない。故に、手持ちの服の着方を変え、コーディネートに工夫を凝らす。それでもニーズが充足できない時、新しい服を買う検討をする。しかし、「不況」は制約条件を厳しくし、ウォンツに手を伸ばしにくくする。それを「チャージ」は、「ベスト」というウォンツを提案してハードルを下げたのである。それは、「ジャケット」や「ブルゾン」などの値の張る、いわゆる重衣料でなくとも「装いを新しくしたい」というニーズに応えられると消費者の心理を読み切ったからである。

 同日の同紙にはもう1つ興味深い記事が掲載されている。クリーニング最大手の白洋舎の新サービスだ。記事タイトルには「衣料品、新品に近く 仕上げに専用加工材」とある。「“シャキッと加工”というワイシャツののり付けに近い加工だが、ごわごわせず、新品に近いしなやかな風合いを保てるのが特徴で、立体感のある仕上がりになる」と記事にある。通常のクリーニング代の5割増しで利用できるという。
 「新品の服」というウォンツには、「人にパリッとした印象を与えたい」というニーズが多分に含まれる。不景気で衣料品に対する支出が低迷しているのを、クリーニング業界の白洋舎は商機と見て消費者のニーズに応えられる新サービスを繰り出したのだと考えられる。

 震災の影響は経済と消費者の生活に対して大きな影響を与えている。そして、それは今後も拡大するかもしれない。
同日・同紙のコラム「底流を読む」には、次のような一節が掲載された。
「震災後に待ち受ける日本経済の新しい現実はどのような姿か。輸出減→円安→原料高に拍車→企業収益圧迫→株安→景気悪化など、マイナス材料に満ちた“現実”を想定すると何もできなくなる」。
 マクロな視点で考えれば、確かに目を覆い、縮こまりたくなる現実が目の前にある。しかし、身をすくめたその足下を見れば、「生き残りのヒント」を見つけることもできる。ミクロな視点で「できること」を考えることが重要なのだ。そして、その起点は、やはり「顧客」とその「ニーズ」にあるのではないだろうか。

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2011.04.11

フォーエバー21はファストファッションを変えるのか?

 日本経済新聞の記事によると、ファストファッションの「フォーエバー21」は無料スタイリングのサービスを、新規オープンする「ららぽーと横浜店」で実施するという。同社の戦略意図はどこにあるのだろうか。

 4月8日付・日本経済新聞にわずか1段154文字枠の記事が掲載された。タイトルは「無料でスタイリング フォーエバー21(米カジュアル衣装大手)」。短いので全文を転載する。
 <30日に開業する「ららぽーと横浜店(横浜市)で従業員がスタイリストとして1対1で来店客の服選びを手伝うサービス「スタイリングステーション」を実施する。サービスの利用は無料とし、インターネットや電話で予約を受け付ける。国内店舗での実績は初めて。>

 東北北関東大震災から1ヶ月が経過した。未曾有の災害で犠牲になった人々に対し哀悼の念を表すと共に、原発停止による電力需要逼迫も手伝って、「自粛」が東日本だけでなく日本中に広がった。4月9日付の同・日本経済新聞はそれにともなう景況感の急速な悪化を伝えている。3月の街角景気指数も最大の落ち込みを示し、企業業績では三越伊勢丹ホールディングスの首都圏旗艦店で3月の衣料品売上高が5~6割減ったという。自粛と共に、震災後の景気に対する不透明感から消費者は不要不急の消費を抑制している。それは百貨店だけでなく、ファストファッションも例外ではない。

 震災後の伸びない客足にいかにテコ入れをするか。そのためには、まずはターゲットを見極めねばならない。
 フォーエバー21の日本での展開は2009年4月29日に原宿に第1号店をオープン。次いで1年後の2010年4月29日に松坂屋銀座店のグッチの後継テナントとして、大型店舗「XXI Forever at GINZA by FOREVER 21」をオープンさせ話題となった。3号店は同年12月23日に「HMV渋谷」跡に渋谷店として出店。そして、今回のららぽーと横浜店が4号店となる。
 これまでの出店を見ると、原宿・渋谷という若者の街の店舗と、銀座松坂屋とららぽーとという幅広い年代を集客する店舗に分類できることがわかる。事実、銀座松坂屋の「XXI Forever at GINZA by FOREVER 21」の店内を見ると、母・娘での来店や、主婦グループ、ファミリーの来店も多く目に付く。ららぽーとはショッピングセンター(SC)という形態からして、ファミリー層の来店も多いと推測される。

 話は「自粛」に戻る。日本経済新聞が日経電子版の登録会員を対象に実施したアンケートによれば、<回答した4823人のうち77.9%が「行き過ぎと思う」と答え、「そう思わない」は12.2%。若い年代ほど「自粛ムードは行き過ぎ」ととらえる人が多く、年齢層が上がるほど「行き過ぎとは思わない」人が増える傾向が鮮明>(電子版4月7日記事より)だったという。

 調査結果はフォーエバー21にとってはゆゆしき自体ではないだろうか。新店の重要顧客は原宿・渋谷よりもターゲット年齢が高いと思われるからだ。本来ならば購買余力が大きいその層が、手控えてしまうのだ。何らか、「買いたくなる魅力的な仕掛け」が必要である。
 もう1つ、同店には年齢が高い層には購入を躊躇する理由が存在する。それは、展示と接客の方法だ。同社はH&Mなどと同じ「ファストファッション」と呼ばれる流行のデザインの服を安い価格、それなりの品質で提供するという存在だ。単価が安いため、店内の商品展示スペースは圧縮されている。百貨店やブランドショップ、セレクトショップでおなじみの服をたたんで平面に展示するのではなく、ハンガーに吊り下げての展示である。さらに変動費として最も高い人件費も抑制する。店員は基本的には接客はしない。安価な故、高回転で売れていく商品を在庫補充する「品出し」が業務の多くを占める。
 狙いたいターゲットの購買意欲を高め、購買を躊躇する阻害要因を払拭する「仕掛け」が、「無料スタイリング」なのだ。

 もちろん、ターゲティングを年齢だけでするのは正しいことではない。なぜならば、年齢に関係なく同質な「ニーズ」を持ったセグメントがあれば、そこがターゲットとなるからだ。例えば、若者層にも「(ファッションで)失敗したくない」というニーズから、いわゆる「コーデ買い(コーディネート買い=一式丸ごと)」する層もいる。だとすればそこも十分「無料スタイリング」のターゲットとなり得る。しかし、「インターネットや電話で事前に予約」という行動をする層はあまり多くはなく、そうした能動性はいままで百貨店などで「接客慣れ」をしてきた年代に多いのではないかと推測できる。

 事前予約はフォーエバー21にとっても自社のリソースの有効活用という意味でも有効に作用する。前述の通り、同社の店員は日常の業務からすれば、接客に慣れているわけではない。すべての店員がアドバイスを行うという高度標準化されたスキルを持っていないのだとすれば、限られたリソースに優良な見込み客をいかにマッチングさせるかが売上を高めるカギとなる。「自ら事前に予約する」というハードルを設けることで、販売効率を高めることが可能となるのである。

 価格に対するデザイン性の高さという価値で、大量に作って店頭に並べれば高回転率で売れていった「ファストファッション」という業態。しかし、震災にともなう景気の一層の悪化と業態自体のプロダクトライフサイクル(PLC)の成熟化によって、「黙っていても売れていく」という環境ではなくなった。優良な見込み客にターゲットを絞り、戦力を集中するという今回の取り組みは、ファストファッション業態のあり方に一石を投じることになるだろう。

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2011.04.09

“縮む”ことなく、“自分らしさ”を活かした消費を!

※不定期に弊社・金森マーケティング事務所の提携コンサルタントのコラムを掲載していきます。


 桜が満開となり新年度や新入学の晴れやかなスタートの時期であるが、今年は例年と全く異なる。ちょうど4週間前の3月11日に起きた、東北関東大震災の影響である。
世の中は被災地への配慮から様々な物事を自粛する風潮にある。3月から4月は会社では歓送迎会の時期、飲食店は忙しい稼ぎ時であるが、今年は例年に比べ予約が少ないと言う。お花見シーズン真っ盛りでもあるが、これは「自粛」だけでなく各公園には自治体からの「お花見宴会ご遠慮願い」の貼り紙もあるとメディアが伝えている。
 先週末も街中を夜に歩いたが、とにかくネオンや照明が消えて人も少ないので、当然街に活気がない。そうすると早く帰宅しようと言う気になってしまう。今回の地震による自粛、いったい何時まで続くのだろうか。

 どうも今回の自粛を見ていると、日本人にありがちな「長いものには巻かれろ」と言う考えが根底にあるような気がする。とにかく何か事を意思決定する際には「周囲がそうだから、とりあえず自粛しておこう」と言う感じである。これでは自分自身・各自の主張があまりに無さ過ぎる。
ちなみに筆者はファッション、身につけるものを見たり買ったりすることが好きなのだが、ファッションも日本人は 
 「長いものには巻かれろ」式で、メーカーやマスコミがムーブメントとして仕掛けたファッションに、皆が乗っかる傾向があるように思える。もちろん、筆者もファッション誌を読んだりするが、昔からこだわっている自分なりの考えがある。「人と同じ」だったり、「流行を追う」だったりではなく、自分の主張を持ったファッションを心がけることだ。そこは「長いものには巻かれない」自分らしさとしてのこだわりである。

 話が少しそれたが、今回の震災での「自粛」という行動が、多くの日本の人々にとっての「流行」であり「ムーブメント」になっているのではという危惧を感じている。これは「自粛」ではなく日本人の心や行動の「萎縮」であると思う。気持ちが萎縮すると言う事は、世の中の動き、消費や経済までもが萎縮して動かなくなるわけで、景気の回復は更に遅れ、被災地の復興も滞る結果となるだろう。
 もちろん被災者の方への本当の配慮を前提とした自粛は必要であるが、被災地の復興を加速するために、こういう時にこそ「長いものには巻かれろ」式で自粛するのでは無く、被災地を復興させ日本を蘇らせるため、消費を活性化し経済を回し、景気を良くする必要がある。それも生活必需品だけではなく、日本人一人一人が自分なりのライフスタイルで、どんな消費が出来るかと言った「自分らしさ」を主張するような行動と消費を、今一度考えてみる必要があるのではないだろうか。これも日本人各自が出来る復興支援である。


-----------------筆者プロフィール------------------------

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鈴木 準 (すずき じゅん)
マーケティングコミュニケーション・コンサルタント
株式会社ジェイ・ビーム 代表取締役

1960年10月30日生まれ。岐阜県岐阜市出身。
放送文化事業株式会社、株式会社エーシーシー、株式会社新東通信、株式会社、電通ワンダーマンケイトージョンソンと、特色の異なる広告会社の経験を経て、1998年独立。プランニングオフィス「ジュンプランニング」を立ち上げ独立開業。その後2003年に法人化し、現在「株式会社ジェイ・ビーム」代表取締役。
広告会社時代は、「媒体(ラジオ・テレビ)・営業・セールスプロモーションプランニング・ストラテジックプランニング・ダイレクトマーケティングプランニング」と、様々な部署でマーケティングコミュニケーションの企画や実務を行う。
こうした経験を活かして、『モノやサービスを売り、顧客満足を与え、ブランド価値を高める』には、何をするべきかと言う視点で、課題発見と課題解決を図る戦略・戦術立案の、様々な業種のマーケティングコミュニケーションコンサルティング&プランニングを手掛ける。
特に、「通信販売・自動車・各種サービス業」などを中心とした、「ダイレクトマーケティング」企画の実績は多数。
「財団法人生涯学習開発財団認定コーチ」


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2011.04.08

【連載リンク】金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第5回:サンスター「G・U・M」

 朝日新聞社広告局が運営する「ウェブ“広告月報”」。企業トップや広告クリエーターのインタビュー、朝日新聞に掲載された広告キャンペーン事例、紙面調査の結果や海外論文紹介などのマーケティング情報が提供されています。

 同サイトで金森がインタビュアーとして、数々の「ロングセラー商品」を生み出したメーカーを直撃取材。そのヒミツを解き明かす連載です。

 今回は1989年に誕生し、歯磨剤(歯ミガキ)に新しいジャンルを開拓したサンスター「G・U・M」。歯周病予防の啓発を徹底することを基軸としたマーケティング戦略を、同社マーケティング部長に伺いました。
 ・・・知られざる、意外と地味~な部分もあるところに注目!華やかなだけがマーケティングではないのです。


<金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!『第5回:サンスター「G・U・M」』 >

 ○記事はこちらから!→ http://tinyurl.com/3mvmwjy

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2011.04.07

「職人仕事」の話をしよう。

 某駅前に陣取って15年。2人の弟子を従えた「靴磨き職人」から含蓄のある話を聞いた。

 彼は客の靴を見ると、自分が磨いた靴かどうかがすぐわかるという。
 職人の手仕事の跡は明確に残るものだ。靴磨きだけでなく、理美容師も自分がハサミを入れた髪かどうかはすぐわかると聞く。しかし、2人の弟子を従えた靴磨き職人の師匠の場合、ちょっと事情が違う。「靴クリーム」がオリジナルの特製なのである。「靴の自然派化粧品」とでも表現すればいいのだろうか。彼がオリジナルにたどりついたのは、既存の市販品では靴の革の表面を塗り固めて殺してしまからだという。
 磨き方のポイントは、革の深部にまでクリームを染みこませ、表面は呼吸ができるような状態にすることらしい。その結果、染みこんだクリームが後から染み出すため、日常の靴の手入れは固く絞った濡れタオルで表面を拭くのがベストだと。
 「いろいろなものを塗りたくるから、人間の顔も肌の状態が悪くなるんだ。本来、水で洗って拭くのが一番。それと同じ」と言う。

 聞けばシンプルな話だが、彼とその弟子が磨くと靴は本当にピカピカになる。比喩表現ではなく本当に空が映るのだ。
「何で他の人間の仕事と違うかわかる?」と彼は聞く。無論、クリームの違いだけではない。
 「磨き方の徹底度が違うの。ダイヤモンドと一緒。石炭もダイヤモンドも同じ炭素でしょ。圧力の違いで輝き方は全然違うものになる。技術がない人間が磨いた靴は、布で拭くと靴墨で汚れる。磨く時の圧力のかけ方、磨き込み方が違うの」。

 空が映るまでに磨き込まれた靴の仕上げも、それで終わりではない。
 「クリームが一度では奥まで入り込まないから、また1ヶ月もしたら来て」と客に再来を促す。「靴磨きの仕事は“一期一会”じゃダメなの。お客の靴を見たら、その靴の状態を見極めて、どれくらいの回数で、どこまで仕上げられるか考えて磨いていかなきゃいけないんだ」と。

 職人の話から、何か感ずるところがあるだろうか。

 「マーケティング職人」を自認する筆者は考えた。
 余分なものを排してオリジナルにたどりついた靴クリームで徹底して磨き上げる。シンプルにして徹底したその仕事は、職人の技そのものだ。だがそれは、筆者自身のポリシーや仕事とも共通する。
 日々記しているこのBlogの記事にあるように、筆者はあえて複雑なフレームワークを用いることを避けている。フレームワークは共通認識を形成するための道具でもある。複雑化しすぎると、読み手・聞き手を煙に巻く道具にもなりかねないからだ。そのため、ビジネススクールでは初期段階で教えられるマイケル・ポーターや、フィリップ・コトラーの基本的なフレームワークで極力説明ができるように心がけている。
 シンプルな道具を用いる代わりに「徹底」する。見落としがちな細部に目をこらし、アタリマエと思われることを疑う。そして、フレームワークで切りまくる。石炭がダイヤモンドの輝きを放つようになるまでの圧力を加えるが如く。同じく街ゆく人々を眺め、コンビニの店頭に並んだ商品を見て、新聞の記事を読んでも、それをどう磨き込むかで輝くか、路傍にうち捨てられる石塊になるかが変わるのだ。

 職人ならずとも、すべてのビジネスを営む人に学んで欲しいのは、靴磨き職人が「一期一会ではダメ」と言うポリシーだ。
 顧客を離れられなくするには、顧客のココロの中を洞察する「カスタマーインサイト」が欠かせない。
そのためには、まず、「顧客がどのような存在なのかを正しく認識すること」から始まる。靴磨き職人が、客の靴が今までどのような人が、どのような手入れをしてきていて、現在どのような状態にあるかを見極めるのと同じだ。
 次に、「顧客にとっての利便性を提供すること」だ。手間の軽減という、わかりやすく目に見える効果は顧客の満足度を向上するためには欠かせない。靴職人は「固く絞ったタオルで拭くだけで日々の手入れはOK」という利便性を提供している。
 最後に重要なのは、「顧客に“やっぱりこれでよかったんだ!”と思わせること」である。そのために、靴職人は長期間にわたって客の靴をどう仕上げるかを考え、最適な状態を保てるようにしている。

 「顧客は靴を磨いて欲しいのではない。ピカピカの靴をはいていたいのである」。
 マーケティングの基本の基である「ニーズとウォンツ」の関係を表す言葉、「顧客はドリルが欲しいのではない。穴を開けたいのだ」と同じ。本質的なニーズに応えているのである。

 あなたのビジネスは、顧客を「空が映る」までに磨き込み、輝きを放ち続けるようにできているだろうか?

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2011.04.06

水筒とコーヒー豆が手を組んだ!キーコーヒー+サーモスの場合

 4月6日付・日経MJ記事に「水筒とコーヒー豆」という珍しい組み合わせの共同販促が取り上げられていた。その意図と効果はどのようなものなのだろうか。

 記事のタイトルは「キーコーヒー 水筒のサーモスと販促 水出しコーヒー1500店舗に専用陳列棚」だ。1500店舗とは結構な規模であるが、総合スーパーや食品スーパー、コンビニエンスストアなど流通15社の全国店舗に展開するというから業態も幅広い。キーコーヒーの商品はキーコーヒーの「マイボトルで作ろう!水出しコーヒー」というコーヒー豆というか、ひいた豆をフィルターに入れた「ティーバッグのコーヒー版」。それをサーモスの「真空断熱ケータイマグ」と組み合わせて売るのだ。組み合わせの妙は、水筒に冷水とコーヒーバッグを入れると約2時間でアイスコーヒーが出来上がること。両商品とコーヒーの作り方・飲み方の冊子を組み合わせて展示できる専用什器を作って店頭に陳列するという。

 この「水出しコーヒー」の市場はかなりの成長市場のようだ。記事にあるキーコーヒーのコメントによれば、「市場規模は5年前から毎年2桁の伸びで2010年は30%増」だという。今どき30%増とはうらやましい限りだが、確かにその流れはある。エコロジーの高まりを受けて、環境に優しいマイボトルを持ち歩く「水筒男子」が登場。世界的な不況の影響で、お財布にもやさしく水道水を家庭で浄水して持ち歩く「水道男子」も登場した。しかし、やはり水道水では味気ない。「水出しコーヒー」を自分で作って持ち歩けば、カフェに入るよりずっと安く済むというニーズを持った消費者が増えているのだろう。飲料市場で考えれば、缶コーヒーは固定ファンがいるものの、緑茶飲料は「自分で淹れる派」の増加に伴って縮小が続いている。

 今回の、コーヒーバッグ+水筒=持ち歩ける水出しコーヒーのような展開を「クロスマーチャンダイジング(Cross Merchandising)」という。商品カテゴリを超えて関連商品を1つの売り場・コーナーに展示することで販売相乗効果を上げる手法だ。食器用洗剤の側にスポンジ。パスタの横にはスパゲッティーソース。買い手の立場に立てば、一度に商品揃って手間もかからず買い忘れも防げる。また、新たな使い方を知ることもできる。
 両社はクロスマーチャンダイジングによって「流通業が(消費者からの)値下げ圧力に苦しむなか、コーヒーバックと水筒の組み合わせ販売により販売点数を増やせることや、商品の魅力向上で価格競争になりづらい売り場づくりができる」という提案をするという。
 それには各社もウエルカムを示すだろう。売上=客数×客単価である。景気の回復がよちよち歩きのさなかに起きた震災で、消費は再び冷え込むことも予想される。客数を増やすことは容易ではない。しかし、「財布にやさしい」提案ができる組み合わせ商品で客単価を上げることができれば流通各社は乗ってくるに違いない。

 提案が実現すれば、両社にとって今までと異なる新たな販売ポイント、様々な企業がしのぎを削り喉から手が出るほど欲しがる「棚」が獲得できる。また、コンビニは水筒のサーモスにとっては従来全く接点のなかったチャネルだ。コーヒーバックはスターバックスがインスタントの棚を確保しているが、キーコーヒーも新たな棚を確保できる。

 かつて、ハウス食品が「六甲のおいしい水」を発売した時のことだ。同社は飲料メーカーではなく食品メーカーだ。それ故、小売店の棚を確保することも困難なスタートを切った。そのため、主力商品のカレー売り場の横で「カレーと一緒に」とアピールしたり、ご飯を炊くための水として米売り場の横に置いたりと、徹底したクロスマーチャンダイジング策で普及を図って定番商品の座を獲得したのである。
 勝ち残りたければ手を組んで1+1を2以上にする。そのために必要なのは、消費者にとってどのような価値を提供できるかと、流通チャネルがいかにいい商売をできるかという視点なのである。

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2011.04.05

ハンバーガー界の「ラーメン二郎」を目指すバーガーキング!

 4月4日付・日経MJに「バーガーキング」の新たな販促施策が掲載されていた。いや、それは単なる販促ではない。バーガーキングがバーガーキングたる、その存在価値を世に知らしめようという戦略なのだ。

Meat_monster


 記事には「食材増量 大型バーガー」「トッピング自由 定着狙う」と見出しにあり、「定番ハンバーガーに様々な食材を増量した“MEAT MONSTER”」という説明が添えられた写真には、「あ~ん」と口を開けて正面からかぶりつこうとすると、確実にアゴが外れそうな新商品が映っている。(単品・税込820円)。何と、通常の大型ビーフパティに1枚をさらに追加し、チキン1枚、チーズやベーコン3枚もトッピングしたものだという。

 記事にある「トッピング自由」は、バーガーキングのニュースリリースを見ると、同社のブランドプロミスであるらしい。
 「米国バーガーキング社(以下:BKC)は、かねてよりブランドプロミスとして「HAVE IT YOUR WAY®」を掲げ、ビーフパティやチーズ、野菜、ソースなど、お好みに応じて増減が可能なメニューを提供してまいりました」とある。

 そもそも、「WHOPPER(ワッパー)」と呼ばれるバーガーキングのハンバーガーは「大盛り」だ。ビーフパティの直径は5インチ(約13センチ)・4オンス(約113グラム)。大型バーガーとして有名になったマクドナルドの「クォーターパウンダー」のパテの重量は1/4ポンド=約113グラム。つまり、バーガーキングではそれがフツーのバーガーなのだ。基本、「大盛り」のバーガーに具材をトッピングしていく。まるで、大盛りで有名な「ラーメン二郎」の「ニンニク入れますか?」のようだ。
 
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 バーガーキングの狙いは「トッピングをおぼえさせること」。記事には「バーガーキングは「HAVE IT YOUR WAY(すべてあなたのお好みどおりに)」の名称で食材を自由にトッピングできる独自サービスを展開している。例えばトマトは50円、タマゴは100円など」と説明がある。今回、もう1つ発売された新メニュー「ALL HEAVY」(単品・税込420円)は定番の「WHOPPER」のレタス、オニオン、ピクルス、ケチャップを1.5倍に増量したものだ。お値段は据え置き。
 しかし、「お得!」と思ったら、ちょっと待ったである。実は、従来から「WHOPPER」にはそれらの本来料金設定がなされている具材を、無料でトッピングしてくれるサービスがあるのだ。種明かしをするなら、実は「ALL HEAVY」ははじめから「WHOPPER」に無料トッピングできる具材をセットして、新たな名前を付けたに過ぎないのだ。

 なぜ、そんな複雑なことをするのか。前記の「ラーメン二郎」の話。詳しくない人には上記の「ニンニク入れますか?」は「はぁ?」と思ったかもしれないが、同店では店員のその言葉を合図に、追加具材の注文を客が注文する。初めての人にはそれに戸惑ってしまうのだ。それと同様にバーガーキングもトッピングの注文はなれていないとなかなか切り出しにくい。そこで、最初から「全部入り」をメニュー化しているのだ。

 ハンバーガー業界第1位は約3300の店舗を持つ日本マクドナルド。次いでモスバーガーは約1400店舗。3位のロッテリアでも約500店舗を展開している。それに対し、一度は日本市場から撤退をしたバーガーキングの店舗はまだ30に満たない。
 バーガーキングの狙いは、まず「ラーメン二郎」のように「信者」を増やすことにあるはずだ。それを体現したのが今回の2つの新メニューなのである。小食な者や子どもを寄せ付けない圧倒的なボリューム。さらにトッピング。それを征した時の達成感が中毒になり、また足を運ぶ。すべての消費者を惹きつける必要はない。まずは「ガッツリ食べたい!」というニーズを持った顧客をコアなファンとして形成し、囲い込むことが狙いなのだ。

 規模で勝負すれば圧倒される。それに対抗するために、徹底して特徴を出してニッチャーとしてファンを獲得・維持し続ける。バーガーキングが「ブランドプロミス」としている「HAVE IT YOUR WAY(すべてあなたのお好みどおりに)」。その意図から学ぶべき企業は多いだろう。

※商品写真は同社ニュースリリースより

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