パウダー300%でハッピーターンフリークを狙う亀田製菓
表面にまぶされた粉(パウダー)の旨味で絶大な人気を誇る、亀田製菓のせんべい「ハッピーターン」。近年パウダーを増量し続けているが、ついに標準・100%の3倍増し、300%に達した!
ハッピーターンが発売されたのは1977年のこと。そのネーミングはWikipediaの記述によれば、<商品開発当時、第一次オイルショックの影響で不景気であったことから、「幸福(ハッピー)」が客に「戻ってくる(ターン)」よう願いを込めて名付けられたものである>とある。
商品の最大の特徴は、人を酔わせる「魔法の粉」とも呼ばれる「ハッピーパウダー」と呼ばれる粉がまぶしてあること。その原料は<「砂糖・塩・アミノ酸・タンパク加水分解物でできている」>と同社工場長がテレビ番組で語ったと同じくWikipediaに記述されている。さらに、せんべいの表面がざらついているのは粉の生だけではない。ハッピーパウダーが付着しやすいように、「パウダーポケット」と名付けられた凹凸の加工が施されているのである。つまり、ハッピーターンはパウダーなくしては語れない商品なのである。
パウダーの増量が始まったのは2009年のこと。通常の倍に増量された「ハッピーパウダー200%ハッピーターン」をコンビニ限定で発売。2010年4月からセブンイレブン限定で「ハッピーパウダー250%ハッピーターン」も発売されている。
今回の「300%」は、正確にはパッケージに表記されているように「200%+100%相当のハッピーパウダー」だ。カップ型の容器上部にアルミパウチされた100%分のハッピーパウダーが添付されていて、購入者が容器内の200%ハッピーターンにふりかけ、容器をシャカシャカ振って仕上げるという仕掛けだ。商品名「ふりふりハッピーターン」のゆえんである。
この商品の原型は増量200%が発売される以前、2005年にも「シャカシャカハッピー」として発売された。当時を思い起こせば、「魔法の粉」に魅入られてきたハッピーターンフリークたちは「夢が叶った!」と狂喜した。「もっと濃い味、パウダーたっぷりのハッピーターンが食べたい!」とかねてから思っていた者が多かったからだ。
しかし、人の欲望とはとめどないもの。「濃い味」に満足した後、「他のせんべいに振りかけたらどうなるだろう?」と考え、実行するチャレンジャー、または実験くんも少なくなかった。それでは亀田製菓はうれしくない。せめて自社商品の「ソフトせんべい」に振りかけてくれるならいいが、他社商品に振りかけられて、ハッピーターンの売上を喰ってしまったのでは、もともこうもない。そこで、その後、パウダーの別添ではなく本体への増量という展開がとられたのではないかと考えられる。
では、一度は禁じ手となった別添型商品を再び発売したのか。それは、「機が熟した」という判断ではないかと考えられる。前述の通り、2009年から始まったパウダー増量商品で「濃い味のハッピーターン」の虜にファンが大量に誕生した。その欲求はもはや「他の商品にちょっとかけてみようかな・・・」という悪戯ゴコロを起こすよりも、「もっと濃い味!」を求めている。だとすれば、別添にしても他に用いられる心配はない。一方、パッケージ内の「200%」も通常販売していて、普通に食べても美味しい商品だ。だとすると、さらに「濃い味」を求めるフリークは、1つを200%で食べて、もう1つ購入し別添パック2つを振りかけて「400%」を作り出すという食べ方をするかもしれない。増販効果も期待できるのだ。
パウダー300%の「シャカシャカハッピー」が亀田製菓にとってオイシイのは、増販効果への期待だけではない。通常の200%の製造工程を容器とパッケージングだけを変更することで別商品を作り出せることだ。製造ライン、バリューチェーン(Value Chain=VC)を組み替えるのは時間とコストがかかる。それを最小限に留めることができるのである。また、フリークが「勝手に400%」を作るのではなく、別添パウダーパックを200%分に増量するだけで、「200%+200%相当のハッピーパウダー」という新商品も作れるのだ。
流通チャネルの棚取り合戦や、消費者の関心を喚起するために、ついつい新商品を次々と繰り出しがちな菓子業界のなかで亀田製菓のハッピーターンの戦略は異色だ。ハッピーパウダーで熱狂的ファンを作ったら、それを他社で実現できない自社ならではのセールスポイント、USP(Unique Selling Proposition)として前面に押し出し、最小限の製品仕様変更でファンの期待を高め、囲い込む。その軸がブレていない展開から学べるところを考えてみるのもいいだろう。
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