ガチンコ勝負!コカ・コーラ・いろはす VS.サントリー・天然水
サントリーの「天然水」がリニューアルされ、交通広告などでも印象的なペットボトルのビジュアルが告知されている。そして、多くの人は思ったはずだ。「アレと一緒じゃん?」と・・・。
サントリー天然水「P-ecot(ペコッと)ボトル」: http://tinyurl.com/4j9gteh (サントリーホームページ)
「ペットボトルの“Pet”と環境配慮の“eco”を組み合わせて“P-ecot(ペコッと)ボトル”と名付けました。」
・・・というサントリー「天然水」の新ボトルは、その名の通りペコッと「つぶせる」のが特徴。で、これが「ペコッ」ではなく、「クシャッ」と「しぼれる」だったら、そう、誰もがコカ・コーラのミネラルウォーター「いろはす」を思い浮かべるだろう。コカ・コーラによれば、「いろはす」のボトルは「ecoるボトル しぼる」と命名されているが、その名称よりも「クシャ」っと絞られたビジュアルが消費者のアタマには刻みつけられているはずだ。
戦略の定石の一つに「同質化戦略」というものがある。
業界シェア№1の「リーダー」は、製品(Product)の開発力も高く、販売チャネル(Place)の支配力も強く、広告コミュニケーション投資(Promotion)の余力も大きい。それらの力を使って、リーダーの地位を狙う「チャレンジャー」が差別化を図ろうと市場に送り出した商品とそっくりなものを市場に出してシェアを奪うのである。過去の例でいえば、大塚製薬が1980年に発売した「ポカリスェット」に対し、コカ・コーラが1983年に「アクエリアス」をぶつけてきたことが有名だ。
では、サントリーとコカ・コーラ(コカ・コーラシステム)はどちらが「リーダー」なのか。「ミネラルウォーター市場」で考えれば、サントリー「天然水」がシェア№1だ。
サントリーは1991年に「南アルプスの天然水」を全国発売開始。2003年に「サントリー天然水 南アルプス」と名を変え、兵庫県以東と四国地区向けには「サントリー天然水 阿蘇」を発売。さらに2008年には中部地区以北向けに「サントリー天然水 奥大山」を発売。現在は取水地別に地区別3枚看板体制で販売している。
一方、コカ・コーラの「いろはす」は、自社自販機以外ではほとんど販売が振るわなかった「MINAQUA(ミナクア)」の代替として、2009年5月18日に発売開始。20ml増量の520mlという内容量、国内最軽量ペットボトルで「環境負荷が低い」という打ち出し方で人気を呼び、発売後わずか97日間で1億本の販売を記録。2011年1月末時点までの累計販売数も8億本を突破したと報じられている。
強烈に追い上げてくるチャレンジャー、コカ・コーラの「いろはす」に対して、サントリー「天然水」が「同質化戦略」をとったように思われる。ただ、そっくり同じにするだけではない。「ecoるボトル しぼる」に対して、もっと覚えやすい「P-ecot(ペコッと)ボトル」というネーミング。絞ったボトルと同等以上にコンパクトに見えるきれいにたたまれたボトルのイメージ。そして、「いろはす」の520mlを上回る、550mlという増量サイズである。
コカ・コーラはどうするのか。果たして、「いろはす」も「天然水」と同等以上の製品改良を行った。「天然水」のPET容器の重量は13.5g。新しい「いろはす」は、さらに軽量の12g。容量は5ml多い555mlである。
ところが、この戦いは時系列に整理すると、全く攻守が逆転した様相となるのである。
サントリーが「天然水」のリニューアルを発表したのが、2010年12月20日。
「サントリー天然水」550ml新発売― 新開発の“P-ecot(ペコッと)ボトル”を採用 ―
http://www.suntory.co.jp/news/2010/10963.html
対して、コカ・コーラが「いろはす」のリニューアルを発表したのは2011年3月3日のことだ。
『い・ろ・は・す(I LOHAS)』 555ml PET発売― 2011年3月14日(月)から全国で発売開始 ―
http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20110303.html
「ミネラルウォーター市場」では、リーダーのサントリーも、「飲料業界」全体で見れば、販売シェアも自販機の保有台数もコカ・コーラに劣後している。リーダーはコカ・コーラの方なのだ。
「チャレンジャー」は「リーダー」に対して、とにかく違いを明確にする「差別化戦略」を行う。それに対して、リーダーは「同質化戦略」を仕掛ける。サントリーが「天然水」のリニューアルを発表してから、コカ・コーラが「いろはす」のリニューアルを発表するまでわずか2ヶ月半。PET容器の界初などの準備はしていたものと思われるが、恐ろしいまでの勢いで「同質化」を仕掛けたのはコカ・コーラの方だったのだ。
「市場」や「業界」は、その切り取り方によって見えてくる様相が異なってくる。また、時間軸で考えれば、戦略の有効性も全く異なってくる。仕掛け、仕掛けられ、差別化し、同質化するという戦いに永遠に終わりはない。だが、その時々の戦局で有効な手立てを撃たなければ、致命傷を負うこともありえる。常に危機感を持って戦いの望むことが求められるのである。
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