新メニュー&「曜日別販促」に見る「ロッテリアらしさ」とは?
3月28日付・日経MJ記事に「新商品、曜日別販促 ロッテリア 火曜日は値引き 金曜日はチキン無料」という小さな記事が掲載された。企業提供の商品写真こそ添えられているが、わずか36行のベタ記事だ。しかし、この商品と販促は非常に「ロッテリアらしさ」を体現しているといえるだろう。
ハンバーガー業界の「リーダー」といえば、いわずと知れた日本マクドナルドだ。調達~販売までのバリューチェーンを強固に組み上げ、約3300という店舗数による圧倒的な規模の経済と経験効果を効かせ、ハンバーガーの みならずファストフード業界を席巻している。
そんな相手に正面から戦いを仕掛けるのは馬鹿のやること。リーダーに挑む「チャレンジャー」の戦略は、リーダーが規模を保つために「全方位戦略」をとるなら、「差別化戦略」に徹することである。ハンバーガー業界第2位、店舗数約1400のモスバーガーの戦い方を見ていれば、テレビ番組とコラボレーションしたりと、流行りの食材を用いたりと番組や味に対する嗜好が「全方位」に向かないためリーダーがやらない、できないことを徹底して行っている。
リーダーにもチャレンジャーにもなれないとすれば、どうなるのか。
「フォロアー」「ニッチャー」というポジションがある。フォロアーは、リーダーに市場を作らせて、ちゃっかりそこで生き抜く。目立つことはせず、積極的なコミュニケーション投資を抑える。そして、価格をリーダーより一段安くする。ニッチャーはリーダーが入り込まない独自の生存領域を確保し、そこで生き抜く。その領域をむやみに拡大し、リーダーに狙われて奪われるようなことを避け、局地戦に徹する。
フォロアーとニッチャーの特徴を併せ持つのが、ハンバーガー業界第3位、店舗数約500のロッテリアだといえるだろう。ロッテリアもかつてはマクドナルドのチャレンジャーだった。1987年、マクドナルドがハンバーガーとポテト、ドリンクをセットにすると390円という「サンキューセット」を展開。それに380円の「サンパチトリオ」で挑んだが、翌年、さらにそれを下回る360円という価格の「サブロクセット」でマクドナルドに反撃されあえなく敗退した苦い経験を持つ。その後、商品戦略上の失敗や経営上の問題があり、ロッテリアは企業再生会社リヴァンプと資本提携~終結を経て今日に至っている。
ロッテリアの看板メニューの1つは「エビバーガー」だ。小エビのプリプリ感が売り物の揚げたパティは、今でこそ類似メニューを他企業も展開するが1977年にロッテリアが開発したとされている(Wikipediaより)。そのオリジナルの「エビバーガー」は単品で290円。セットで620円であるが、4月1日から発売される「チーズタルタルエビバーガー」はその豪華版といえるだろう。エビバーガーをカマンベールやチェダーチーズで作ったチーズタルタルソースで味付けしているという。お値段は単品350円、セットで680円だ。
記事によれば、「チーズタルタルエビバーガー」の曜日別販促キャンペーンは4月27日までとあるが、メニュー自体は恐らく、「定番化」を図るものと考えられる。消費者の態度変容モデルの1つである「AMTUL」で検証してみよう。A=Awareness(認識)→M=Memory(記憶)→T=Trial(試用)→U=Usage(常用)→L=Loyal(忠誠)である。
商品と連動した業界としては珍しいという「曜日別」の販促を展開。火曜は「チーズデイ」、金曜は「フライデイ」と、Tuesday、Fridayと引っかけたロッテリアらしい「駄洒落」。新商品を認識(A)させる意図だ。「曜日別」という切り口で記憶(M)に残させる効果も期待できる。認識し、興味を引かれた層に、火曜はポテト&ドリンクMで680円という昨今のランチ事情の中では少々手を出しにくい価格を100円値引きしてお試し(試用=T)させる。さらに、金曜に「からあげっと4個入り」を無料プレゼントして再購入を図り、常用化(U)させる。限定期間にも意味がある。春の連休に入ると日常と異なる購買行動(外食利用)となるため、4月27日までのキャンペーン期間中にメニューに対するファン度を高める(L)狙いと思われる。
ファストフードの新メニューは1度試してそれきりという客も少なくなく、そのため、期間限定メニューを次々に繰り出すことになる。しかし、「チーズタルタルエビバーガー」はAMTULの態度変容モデルで試用から定着までを設計し、定番メニュー化する意図が見えるのである。
では、リーダーであるマクドナルドはどう出るか。マクドナルドにも「えびフィレオ」という「えびバーガー」と類似したメニューもあるが、同社は現在、「Big America 2」という、昨年大人気を博した期間限定のシリーズを押し出し、高単価メニューで客単価UPを図る戦略をとっている。「えびフィレオ」をアップグレードして「えび対決」としてロッテリアを狙い撃ちにするよりも、実績のあるシリーズを繰り出す方が市場へのインパクトが大きい。それを見越して、ロッテリアはマクドナルドが市場に仕掛けた単価UPのムーブメントに乗ろうという意図で戦略を構築したと考えられるのである。
業界の先頭を走る「リーダー」にはなれない。リーダーに挑む「チャレンジャー」となる力もない。そんな企業は世にごまんとある。問題は、その場合どのように生き残りを図ればいいのかをわかっている企業が多くないということだ。ロッテリアの「フォロアー」&「ニッチャー」的なある意味の「潔さ」からは学ぶところが大きい。
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