「リーガル」のアンチエイジング戦略から学ぶべきもの
靴の「リーガル」ブランドを運営するリーガルコーポレーションが若年層ターゲットの新店舗をオープンした。そこに隠された狙いから学んでみよう。
3月16日付・日経MJのコラム「戦略拠点 あすを拓く」は、「リーガル(REGAL)」の新展開が掲載されている。「リーガル・シュー・アンドカンパニー 若者向け特化、流行も探る」と見出しにある。ショップの所在地は東京都渋谷区神南。渋谷と原宿の中間ぐらいの場所、ファッションの中心地だ。そこに約50平方メートルの少し小さなショップを開くまでには、紆余曲折があったようだ。
記事によれば、リーガルの現在の主要顧客層は40~50代。今年50周年を迎えるというリーガルブランドも、業容を拡大すると共にファンも増やしていったが、顧客層の年齢が上がっていることが課題だったという。
「顧客も歳を取る」。これは忘れがちな事実である。
自社(Company)として強いブランドは「排他性」がある。それは競合(Competitor)に対する差別化だけではなく、顧客(Customer)の支持を得て取り込み、囲い込むうちに、ファン層が固定化して属性の異なる客層が近寄りがたくなってしまうのだ。
もちろん、誰も彼も相手にしていたのでは強いブランドにはなれない。しかし、偏って固定化した顧客のニーズにだけ応えていると、ファン層と共にブランドも加齢する。「アンチエイジング」が必要なのである。
記事の店内風景の写真には「カジュアル靴の品揃えを充実させて、課題である若年層の取り込みにつなげる」と説明文が添えられている。また、文中には「従来方式にとらわれない新たな商品戦略を探る重要な“試験場”でもある」と記されている。
ロングセラー商品の生き残りの方策の一つは、基本となる「定番」をしっかり残しつつ、市場・顧客から飽きられないように様々なバリエーションを投入していくことだ。つまり、「成長戦略」を考えるフレームワークである「アンゾフのマトリックス」でいうところの、「既存の顧客に新規の商品を提供する=新商品開発」である。これは、食品、飲料の世界などでは様々なフレーバーを開発し上市するという、アタリマエに行われている手法であるが、メーカーの「アイディア」や「思い」だけで開発するのではなく、「顧客の声を聞く」ということも重要だ。
例えば、発売40周年を迎えた堂々たるロングセラー商品である「カップヌードル」も、基本のフレーバーを残しつつ、様々なバリエーションを展開している。その中で、「ミルクシーフードヌードル」は、「シーフードヌードル」を「熱い牛乳で作るとクラムチャウダー的になって美味しい」という口コミをもとに開発された商品である。
「ミルクシーフードヌードル」はネット上での口コミを拾い上げて開発されたが、「顧客の声」はどこで聴けるのかということも問題となる。
その点、「リーガル・シュー・アンドカンパニー」の展開は英断であった。記事によれば、「当初は商品開発のみで既存店への供給を想定した。だが“若者の最先端トレンドを探るためにも独自店舗が不可欠”」と担当役員が判断し、新業態店の出店にこぎ着けたとある。
2009年に発売されて大ヒットした、ロッテのガム「Fit’s(フィッツ)」の事例でも同じことがいえる。
チューイングガム市場で60%のシェアを持つロッテにとっての悩みは、2002年を境にガムの消費量が右肩下がりしていることである。原因は「若者のガム離れ」。咀嚼能力の低下と共に、「ガムを噛む」という習慣がなくなり、「固い噛み心地」が敬遠されるようになったのだ。そこで開発されたのが「噛むとフニャン」という「柔らかな噛み心地のFit’s」である。しかし、ガムから離れ、自分たちが用いるものという認識が希薄になっている層に「柔らかなガムができました!」と訴求しても、ガム売り場の前で足を止めることはない。そこで、ロッテはまず、パパイヤ鈴木が振り付け、佐藤健と佐々木希が踊る「Fit’sダンス」を大々的に広め、注目を集めることにしたのだ。
このことは、ガムの例だけではなく、それが書籍でも、靴でも同じことだ。
例えばあなたにとって、とても有用な医学書があったとしよう。しかし、そもそも医学に興味がなければ、そのコーナーに足を向け、本を手に取ることはないはずだ。
リーガルの従来店は「40~50代のための店」というパーセプション(認識)が市場に出できあがっているとすれば、そこに若者にとって魅力的な商品が陳列されていたとしても、そもそも店に入ってこない。若年層の取り込みも、その声を収集することもできないのだ。
同店では、「2人の常駐スタッフはローテーションで数日ごとに入れ替え。販売の担当者だけでなく、企画や営業、デザイナーなども接客に当たっている」と、全社横断で顧客の声を拾う取り組み流されていることが記事で伝えられている。
マーケティングとは「売れ続けるしくみ作り」である。
「売れ続ける」ためには、「顧客は誰か」を常に見て、「理想的なターゲット顧客像」を明確にすること。その顧客の「ニーズ」は何か、「買う理由(Key Buying Factor=KBF)」は何かを拾い続ける必要がある。そして、そのためには「自ら顧客に近づいていくこと」が欠かせないのである。
「ロングセラー商品」や「定番ブランド」とは、不動の存在ではない。自ら代謝を高め、古くならないように「アンチエイジング」の努力を欠かさなかったものに与えられる、結果としての称号なのだ。
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Comments
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初めてコメントしてくれて、以後世話になります、
よろしくお願いします^_^
Posted by: アバクロ セール | 2011.04.20 11:44 AM