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2011.03.14

ユニクロの妹分・ジーユーの「高回転戦略」は成功するか?

 「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが、傘下の「ジーユー」で新展開を始めた。その戦略意図と課題はどこにあるのだろうか?

 3月11日付・日経MJ掲載された記事には、「ジーユー 女性衣料 “ビーアガール”投入 流行入れ短期売り切り」とある。全130店で「流行の衣料を毎週少量ずつ投入し、約2週間で売り切る方針」とある。同紙にもある通り、ベーシックな商品ラインナップを展開する「ユニクロ」と棲み分けである。

 ジーユー(g.u.)は2006年に10月に第1号店が東京江東区のダイエー南行徳店内に開店し、現在130店舗を展開。200店体制に向けて開店のピッチを上げている。しかし、立ち上がり時点では売れ行きがままならず、出店スピードも思ったようにあがらなかった。その原因は、記事中でファーストリテイリング傘下の運営会社・GOVリテイリングの柚木社長がコメントしている。「当時の価格はユニクロの約7割と中途半端だったうえ、外部企画商品の多用でブランドの統一を欠いていた」とある。商品の高回転率を基軸とした戦略は、それを実現するバリューチェーンが整合していなかったのだ。

 アパレルのバリューチェーンはざっくり以下のようになる。
 [デザイン]→[調達・製造]→[物流]→[店舗販売・オペレーション]
 柚木社長のコメントにあるように、2006年当時のジーユーはユニクロと同様な、SPA(speciality store retailer of private label apparel:企画製造小売業)ではなく、上流工程を外部企業に依存していた。
 転機は2009年の「990円ジーンズ」の発売である。「中途半端」だった価格を「ユニクロの半分程度」として低価格化を強化したのだ。それを可能としたのは、外部企業依存を改め、SPA化したことによる。

 日経MJヒット商品番付にも載ったように、990円ジーンズは大ヒット。ジーユーも勢いに乗った。しかし、代償も小さくなかった。
 記事には「安い定番商品は強力な武器だが、これだけでは単なる“ユニクロ廉価版”になる懸念があった」とあるが、市場の声は「ユニクロとの区別が付かない」ともっと厳しい。

 「区別が付かない」というのは非常に危険な状態だ。
 ファーストリテイリングの柳井会長は2009年6月2日の990円ジーンズ・製品発表会で述べている。「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と。
 柳井会長が示したユニクロとジーユーの違いは明らかに「品質」である。今後、出店攻勢を強め、ジーユーの商品・店舗が市場に広まって「ユニクロもこんなもの」思われるのは避けたいところだろう。そこで、グループ内での「棲み分け」が必要となる。
 その切り札が、「ファッション性を高めること」、つまり、SPAのバリューチェーンをもって、「まあまあの品質でオシャレな服を安く」実現することなのだ。

 折しもユニクロは「ベーシック回帰」の戦略を強めている。
 ユニクロの2010年9月は前年同月比24.7%の大幅減となった。10月8日に記者会見を行った柳井正会長は、「(ユニクロの販売不振の原因は)表面的なファッションを追いすぎた」ことを第1に挙げた。他にも「色やサイズの欠品」という生産面の失敗を指摘し、「天候不順による影響は、それよりも軽微」とした。
つまり、ユニクロはバリューチェーンの最上流である[デザイン]の段階でファッション性を高めるという変更を行った。そして、それに従って[調達・製造]以降のプロセスが組まれた。しかし、[店舗販売・オペレーション]の現場では、例えばユニクロのジーンズ「UJ」は、アイテム数が増えすぎて顧客にはわかりにくく、売れ行きの不振を招く結果となった。
 記者会見で柳井会長は「今後は商品構成を見直し、ユニクロに本来期待されているベーシック(基本的)な商品を強化する」と発表した。

 ファッション性を高めるジーユーには大きな課題もある。
 「商品高回転・売り切り」に最もバリューチェーンを最適化しているのは、外資ファストファッション勢の一画、スペインのインディテックスが展開する「ザラ(ZARA)」だ。200名以上ともいわれるデザイナーを内部に抱え、世界のファッションの潮流をあっという間にキャッチアップして、「現在流行っているものを、作って売る」のである。バリューチェーンの[デザイン]の段階がキモである。そのZARAとも同じ土俵で戦っていくことになったら、ユニクロとは棲み分けができても、強力な競合が存在しているのである。

 もちろん、活かすべき強みもある。記事では「外資ファストファッション勢と同様に、一定期間を経た後には大胆な値引き処分をするか、しまむらのようにきめ細かい店舗間異動をするか、いずれかの対策を求められることになりそうだ」と結んでいる。
 「店舗間移動」は「しまむら」だけでなく、外資ファストファッション勢「ZARA」も同様に行っている。[店舗販売・オペレーション]の段階において、その店舗内の商品単位での売れ行きを管理し、回転の悪い商品は他店舗の店頭に持っていく。つまり、店頭の品揃えの「鮮度」を保つことで、なるべく値引きをしない、もしくは最小限に留めて売る仕組みを作っているのである。その仕組み構築を前提とすれば、店舗数に勝る「ジーユー」は移動がしやすく有利だといえるだろう。

 ジーユーは4月1日に都内初となる旗艦店「ジーユー池袋東口店」を「ユニクロ」との隣接地でオープンさせる。ファーストリテイリングのグループ内で、ユニクロ一枚看板への依存度を軽減し、ポートフォリオを組んで「スター」ブランドに育成する狙いである。そのため、一般の消費者の目には見えないバリューチェーンに磨きをかけて、外資ファストファッションへの挑戦という新たなステージに立ったのである。

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