脱・百貨百客:大丸東京店と京王新宿店の戦略に学ぶ
昨日の「中野マルイ」の続編のような記事が3月9日付・日経MJに掲載された。そこから再び百貨店の明日の姿を考えてみよう。
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筆者にとって意外なことに、大丸東京店の売上げが2007年11月の移転開業以来、5%ダウンと苦戦しているという。他百貨店のカード会員だったのだが、紳士服売り場の品揃えが個性的でよくなったので、すっかり乗り換えていたのだが、全店ではそうではないらしい。やはり、東京駅八重洲中央口直結から北口側に移転したことと、高層化して売り場が分断されてしまったことの影響だろうか。記事にはその詳細は書かれていない。
記事は全店売上げと同様に5%の売上げ減に苦しむ、婦人靴売り場のテコ入れ策についてである。「婦人靴売り場刷新 機能性重視の品揃え 30~50代 会社員に的」とタイトルにある。
記事によれば、売り場中央の自主編集売り場(いわゆる「平場」)で、品揃えを1割増やし、さらにデザイン性重視と機能性の高い靴の比率を5:5から4:6に変更。さらに外反母趾対応などの知識を持った店員の増員・配置や中敷きを顧客の足に合わせ裁断するサービスも提供。将来的には有料化も検討するという。
施策の狙いはターゲットニーズへの最適化だ。「大丸東京店は八重洲や日本橋、京橋地区などに近く、近隣の企業に勤める30~50代の女性会社員の利用が多い。仕事中は長い時間、靴を履くため機能性を求める傾向が強い」(記事より引用)という。「同じ商圏にある高島屋東京店(東京・中央)や三越銀座店(同)とは異なる品揃えで対抗する」(同引用)とあるが、明らかに「対抗」ではなく「棲み分け」である。
隣には「京王百 新宿店を全面改装 3年で50~70億円 日常の需要狙う」という記事が掲載されている。記事にあるように、同店の特徴は「60歳代前半が中心顧客層となっている」とにあり、そのために店舗内の施設にはベンチが多く配置されていたり、品揃えも主要顧客層向けが多かったりという配慮がこれまでもなされていた。それを一層加速するための改装である。
「改装のテーマは“新・日常生活”へ。」だといい、「ハレの日」に対応する百貨店ではなく、日常、「ケの日」をより快適にするというポジショニングを表しているのだろう。「食品、家の中で使う雑貨、健康志向に対応するスポーツ用品、仕事用の服などを重点的に揃える。一方で、高級な衣料品や宝飾品など百貨店が従来強みとしていた商品は構成比を落とす」という。
昨日記した「中野マルイ」は「地元密着」というポジショニングで、地元客というターゲットを選択した。Twitterで記事を読んだフォロアーの方から「実際には高齢者の姿がかなり目に付く。その意味でも地元密着という戦略が奏功しているのだろう」と意見をいただいた。同様に、大丸東京店の婦人靴売り場は、商圏内の「働く女性」というターゲットに対応した品揃えと、靴の加工と足のケアというサービスを商品に加え、ニーズを充足することに務めている。また、京王新宿店は中心顧客層である「60歳代前半」というターゲットに一層、資源を集中する意思決定をしている。
「何でも取りそろえて」、「どんなお客様にも満足してもらえる」という「百貨店」という名称通りの展開に、逆張りの施策を打ったのがかつての有楽町西武だった。ターゲットを絞り、「百貨」ではなく、「七十貨」や「三十貨」でも十分やれるという戦略だった。その背景には、バブル経済独特の高い商品単価、高額な商品を欲しがる顧客という構図があった。
記事の事例である2つの百貨店もターゲットを絞り、品揃えも集中している。その意味では、旧来の「百貨店」ではない。しかし、「中野マルイ」と共通している思想は、「売る側が売りたい品物と顧客を選んでいるのではない」ということだ。
紙面の隣には「三越銀座店 増床オープン半年」という記事が掲載されている。同店店長に対するインタビューである。記者は「くつろぎの空間顧客から高評価」とコメントし、インタビューでも来店客数も売上げも上々である旨が記されている。しかし、その結果に安心しているわけではなく、「婦人衣料、手頃価格充実 要望多く春夏物から」とタイトルにあるように、ボリュームゾーンの商品を増やすなど改善の手を緩めることない姿勢が伝えられている。
消費が上向いてきたとはいえ、人口減少など市場縮小は否めない。限られたパイのなかで生き残るためには、「百貨店の勝ち組」的なポジションを手に入れつつある三越銀座店でも、「売りたいモノを売る」のではなく、顧客の声に応えていくことが必要なのである。
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