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21 posts from March 2011

2011.03.31

情報を取れ!活かせ!「ユニーク商品」の作り方

 JR東日本のエキナカ自販機に、この春ユニークな商品が登場する。それはどのように企画されたのだろうか。

 JR東日本のエキナカ自販機、約1万台を運営するJR東日本ウォータービジネスはちょっとユニークな会社だといえる。同社は保有する自動販売機にacure(アキュア)というブランド名を付けている。その最大の特徴は、各飲料メーカーの商品をごちゃ混ぜ、つまり混載して販売していることだ。
日本全国に約240万台設置されているといわれる自販機は、飲料メーカーにとっては貴重な販売チャネルである。自社ブランドで展開する自販機には、コンビニなどの流通で扱ってもらえないような自社商品も自由に置くことができる。あとは、好立地さえ確保すれば売れていく。いわば、「売り手視点」のビジネスであるといえる。
そんな自販機ビジネスの環境に対し、「自販機イノベーション」というコンセプトを掲げているのがJR東日本ウォータービジネスなのだ。消費者が手を伸ばして買いたくなるような商品を、自販機に並べて売るために、自販機をメーカー系列の持ち込みではなく自社保有する。各飲料メーカーから商品を選んで並べるだけでなく、伊藤園と共同開発した緑茶飲料「朝の茶事」やアサヒ飲料との共同開発による「ワンダ朝のカフェオレ」などのエキナカ限定商品も作ってもいるのである。

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 同社の最も強力な武器は「情報」である。現在約40台設置されている「次世代自販機」(写真)には、センサーが搭載され、「どんな人(性別・年代)が、いつ、何を買ったのか」が把握できる。また、suicaの個人情報に関わらない性別などの属性データも、カードリーダー・ライターを搭載した3,000台の自販機から収集している。それに対して、一般の多くの自販機は単なる「冷蔵庫」のようなものだといえる。「何が、いくつ売れたか」を知ることはできる。しかし、「誰」どころか「いつ」という時間データも取得できない機種がほとんどなのである。その情報取得能力の差は大きい。

 同社の「情報収集機能」を持った自販機からあるデータが抽出された。「果汁飲料カテゴリー」の商品の時系列販売データだ。(同社ニュースリリースを加工)
 次なる課題は、取得した情報をどのように活かすかだ。
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 データを見ると、果汁飲料カテゴリーの商品は夕方に販売のピークがあることがわかる。同社はその消費者の購買行動を「小腹満たし需要」ではないかと読んだ。面白いことに同じ「果汁飲料」であるにもかかわらず、「ポンジュース」は動きが異なる。ピークは「朝」なのだ。それは「ポンジュース」というブランドが作り上げたのか、「みかん」という果実の摂られかたなのかはわからないが、「お目覚め需要」ともいうべきものがあるのは確かなようだ。もう1つ、昨年秋に発売された「青森りんご贅沢ゼリー」というペット容器入りゼリー飲料の動きが特徴的だった。突出して夕方の需要が高いのだ。
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 以上のことから、同社は「ポンジュースのゼリー飲料」を作れば、朝のお目覚め&朝食代替と小腹満たしの需要という1粒で2度オイシイ製品ができるのではないかと考えたのである。そうして作られた商品が、「飲むゼリー『愛媛みかんまるごと1 個 ゼリーPOM』」である。
 データから読み取られた需要に応えるため、「1本でみかんまるごと1 個分が摂れる」をコンセプトにし、愛媛県産温州みかんのみを使用して、内皮ごと搾る製法で果汁を搾り、小腹満たしにもぴったりな寒天ゼリーを使用した食感が残るゼリー飲料に仕上げたという。

 ユニークな商品の作り方。それはまず、顧客のニーズ、購買行動を捕まえる情報を収集すること。そして、その情報をしっかりと読み込んで活かすことだ。基本といえば基本であるが、一般の自販機の例にあるように、そもそもその情報が取得できない環境にある場合もある。しかし、「とにかく顧客のことを知ろう」という意志のもとに仕組みを整え、商品企画に活かしたこの事例からは学ぶべきところがあるだろう。

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2011.03.30

ついに全面禁煙!モスバーガーの狙いは何だ?

 3月30日付・日本経済新聞に「モスバーガー 新店全て禁煙に 既存店も10年内に転換」との記事が掲載された。高まる嫌煙傾向は、ハンバーガーチェーンからも愛煙家を締め出しに動き出した。しかし、モスバーガーの狙いはどこにあるのだろうか?

 記事では「4月以降に開店する新店を全て完全禁煙とし、既存の店舗も移転などの際に禁煙対応を進める」とあり、現状4割ある禁煙店を10年以内に100%禁煙にするという。

 完全禁煙といえば、スターバックスが1996年に銀座松屋デパートの裏に第1号店を開店した時から「コーヒーの香りを損なわないために」というコンセプトで徹底してきたのが思い出される。スターバックスもその後、店外のテラス席では喫煙を認める店舗が多くなったが、やはり外は冬寒く、夏暑い。話をするにも通りのクルマの音が騒がしい。店の中で吸いたくなる。その受け皿となったのが、ドトールコーヒーショップだろう。
 1980年開店のセルフ式コーヒーショップの草分けである同店は、当然、当初には「禁煙」などという考え方はなかった。「スタバブーム」においては、「喫煙難民」と化したスモーカーたちの避難場所となり、特にスタバの近隣店は、紫煙たなびき入り口から店の奥が見通せないような状況もあった。さすがに昨今ではしっかりと分煙化が進められてそんなことはなくなっているが。

 上記のように禁煙・喫煙可はターゲット顧客をどう設定するかというセグメンテーションとターゲティング、そして、どのような店のコンセプトにするのかという重要な要素となる。
 そもそもスタバが禁煙を日本に持ち込んできたのは、本場・米国シアトルでのスタイルの輸入であったが、それは従来日本に定着していた「コーヒーとタバコ、喫茶と喫煙はセット」という考え方のアンチテーゼでもある。そして、「煙たくない空間で美味しいコーヒーを飲みたい」という未充足ニーズを持ったターゲット層が一定のボリューム存在していることを見抜いての進出であったことは間違いない。

 ハンバーガーショップにおける禁煙・喫煙の動きはどうなっているのだろう。
 マクドナルドは昨年「次世代店舗」といわれる「オシャレでゆったりした店内空間。メニュー価格はちょっと高め」な店舗の展開をはじめた。そこは全面禁煙だ。しかし、上記記事によれは「現状で全面的に近縁を採用すると売上げが落ち、株主価値を損なう」と、日本マクドナルドホールディングスの原田泳幸会長兼社長がコメントしている。
 リーダー企業たるマクドナルドは「全方位戦略」が基本だ。来るものは拒まず。むしろ誰も彼も幅広く集客し、大量販売して規模の経済を効かせる。喫煙者を切り捨てるわけにいかない。そこが、チャレンジャーたるモスバーガーの付け目である。チャレンジャーは「差別化戦略」を基本とし、巧みにリーダーが取りきれないセグメントを切り取っていく。記事にはJTの調べとして、10年5月時点で喫煙率は23.9%、前年比1%減で15年連続過去最低とある。そこでモスフードは「喫煙者の減少は加速する」(桜田厚社長)と判断し禁煙化に乗り出したのだという。

 記事には書いていないが、完全禁煙化はもう一つの差別化を実現する。対「フレッシュネスバーガー」だ。
 フレッシュネスバーガーは1972年創業のモスバーガーより20年も遅い1992年に1号店をオープンしている後発。その戦略はフォロアーの模倣戦略だ。店内装飾はアーリーアメリカン調。ファストフードであるが、注文を受けてから作るスタイルなど、モスのスタイルを巧みになぞっている。しかし、単に模倣しているのではない。さらにコンセプトを徹底しているのだ。例えば、果汁ジュースは店内で果実から手絞りし、ガラスの容器に入れて出されるなど、「手作り感」を高めている。
 模倣と徹底だけではなく、差別化要素も持ち込んでいる。例えば、メニューはビールなどのアルコール類を提供し、店内は当初「全面喫煙可」であった。つまり、「オトナの店」としてモスバーガーに差別化も図っていたのだ。しかし、「受動喫煙問題」などもあり、昨今は店内の分煙化が進んでいる。

 フレッシュネスバーガーは店舗数約200店。ハンバーガー業界第2位で1400店を持つモスバーガーの地位を脅かす存在だとはいい切れないが、模倣・徹底・差別化の合わせ技を展開するフォロアーとして、うるさい「目の上のたんこぶ」であることは確かだろう。

 モスバーガーの「全面禁煙に向けた取り組み」。それは、リーダー企業であるマクドナルドと、フォロアーであるフレッシュネスバーガーに対する差別化施策として1粒で2度オイシイ狙いがあるのである。
 但し、「狙いを絞る」ということは「捨てる」ことでもある。いくら店外喫煙スペースを設けても、離反する喫煙客はいる。その離反客より多くの非喫煙客を取り込めるだけの魅力ある店舗やメニューの開発が求められるのも事実である。

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2011.03.29

ミニストップに学ぶ「震災対応」と「商売」の両立とは?

 3月28日付・日本経済新聞にわずか40行の小さなベタ記事が掲載された。タイトルは「ミニストップが独自の品薄対策 牛乳やおにぎり」。東日本大震災に対応した対策ではあるが、実はそれは同社が以前から構築してきた体制があってのことであるのだ。

 記事中の「牛乳やおにぎり」は全く別々の施策だ。
「牛乳」の対応とは、被災地の品薄を緩和するため。「宮城、福島両県の約130店舗で26日に売り出したのは北海道地盤の中堅コンビニエンスストア、セイコーマートのPBの牛乳(1リットル)」と、記事にある。イオングループである同社が他社のPBを扱ったのである。確かにこれはニュースだ。しかし、これにはもっと深い話が読み取れる。
 セイコーマートは北海道を地盤とする業界7位のチェーンだ。生鮮品とPB商品の取り扱いに実績があることと、店舗が道内に約1,000店、関東地区に約100店(Wikipediaを参考)。つまり、ミニストップが今回牛乳を提供する地域では競合が発生しない供給元から仕入れるという仕組みを構築できたらからこそ、実現できた被災地支援なのである。

 もう一方の「おにぎり」の対応も出色である。
 記事には「首都圏では店内で製造できるおにぎりを強化している」と棚に商品を店員が並べる写真も添えられている。また「手作りおにぎりを導入している首都圏の約260店では「帰宅困難者が殺到した時も店内で作り続けられた」(阿部信行社長)ため、従来は20~30キログラムだった米の店内在庫を倍増する」とある。
 上記によると、震災後の対応のようにも読み取れるが、実はミニストップは昨年9月から「手作りおにぎり」に注力する動きを加速している。

 ミニストップ/店内調理のおにぎり・惣菜を200店舗に拡大
(ロジスティクス・パートナー社・流通ニュース/ 2010年09月15日)
 http://www.ryutsuu.biz/commodity/c091507.html

 記事によれば、「2009年9月から、東京都内の既存店舗(約40店)において店内で調理した手作り「おにぎり」・「惣菜」の実験販売を行ってきた。今回、実験店の結果を受け、店舗オペレーションの効率化を図るとともに、販売の堅調な「おにぎり」と一部「惣菜」の取り扱い店舗を拡大することを決めた」とある。

 ミニストップは1980年にイオンによって設立。現在業界第5位、全国約2,000店舗を有している。しかし、セブンイレブンは1973年設立。前出のセイコーマートはさらに早く1971年に第1号店をオープンさせているのに比べると、業界後発である。
 後発故に、何らかの差別化ポイントが必要で、そのためにオープン当初から準備されていたのが「店内調理の充実」である。ファストフードメニューを取りそろえ、店内で調理して、それを食べるためのイートインコーナーを備えているのが最大の特徴だ。
 店内調理は差別化できるだけでなく、収益貢献も高い。「商品仕入れ」→「在庫」→「販売」というコンビニエンスストアのバリューチェーンを、「半製品仕入れ」→「在庫」→「加工(調理)」→「販売」という、店内で加工度を上げる=付加価値を増す過程を持っているのだ。加工は店内スタッフが他業務と兼務する。人件費効率も高くなる。

 ミニストップの創業以来の差別化ポイントと、さらに昨年9月からの「手作りおにぎり」強化という下地があってこそ、今回の「震災品薄対応」が可能となっているのである。
 では、競合、例えば全国に約13,000店舗を持つ業界第1位のセブンイレブンが同様な施策を展開しようとすればできるのか。恐らく、それは「できない」だろう。そこが、ミニストップにとっては「震災対応」として社会・顧客に貢献しつつ、競合優位を築けているポイントなのだ。

 セブンイレブンの力の源泉の1つは、「サプライチェーンマネジメント(SCM)」の精緻さだ。自社のバリューチェーンに他社のバリューチェーンをつなげば、業界に拡大したサプライチェーンを描くことができる。サプライチェーンの中で、自社のバリューチェーンをできるだけ軽くして、高効率な「ジャストインタイム」を実現してきたのがセブンイレブンだ。ある意味、ミニストップとは正反対の姿である。確かにセブンイレブンでも店内調理は行っているが、ミニストップには一日の長、ノウハウの蓄積があるのである。

 ミニストップが被災地では他社から品薄の牛乳を仕入れたり、首都圏で食品工場が計画停電などで供給不足になっているおにぎりを手作りしたりと、素早い対応を行ったことは確かに社会的にもすばらしいことだ。しかし、そこには市場のニーズという外部環境を読み、競合と自社の強み・弱みを見極めて商機を見つけて展開しているという側面もあるのである。
 震災復興は恐らく長期戦になるだろう。便乗や過度な儲け主義は厳に戒められるべきであるが、長きにわたる期間を善意や社会的意義だけで乗り切ることはできないのも事実だ。その意味では、ミニストップの今回の対応は1つのケーススタディーとして学ぶべきであろう。

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2011.03.28

新メニュー&「曜日別販促」に見る「ロッテリアらしさ」とは?

 3月28日付・日経MJ記事に「新商品、曜日別販促 ロッテリア 火曜日は値引き 金曜日はチキン無料」という小さな記事が掲載された。企業提供の商品写真こそ添えられているが、わずか36行のベタ記事だ。しかし、この商品と販促は非常に「ロッテリアらしさ」を体現しているといえるだろう。

 ハンバーガー業界の「リーダー」といえば、いわずと知れた日本マクドナルドだ。調達~販売までのバリューチェーンを強固に組み上げ、約3300という店舗数による圧倒的な規模の経済と経験効果を効かせ、ハンバーガーの みならずファストフード業界を席巻している。
 そんな相手に正面から戦いを仕掛けるのは馬鹿のやること。リーダーに挑む「チャレンジャー」の戦略は、リーダーが規模を保つために「全方位戦略」をとるなら、「差別化戦略」に徹することである。ハンバーガー業界第2位、店舗数約1400のモスバーガーの戦い方を見ていれば、テレビ番組とコラボレーションしたりと、流行りの食材を用いたりと番組や味に対する嗜好が「全方位」に向かないためリーダーがやらない、できないことを徹底して行っている。

 リーダーにもチャレンジャーにもなれないとすれば、どうなるのか。
 「フォロアー」「ニッチャー」というポジションがある。フォロアーは、リーダーに市場を作らせて、ちゃっかりそこで生き抜く。目立つことはせず、積極的なコミュニケーション投資を抑える。そして、価格をリーダーより一段安くする。ニッチャーはリーダーが入り込まない独自の生存領域を確保し、そこで生き抜く。その領域をむやみに拡大し、リーダーに狙われて奪われるようなことを避け、局地戦に徹する。
 フォロアーとニッチャーの特徴を併せ持つのが、ハンバーガー業界第3位、店舗数約500のロッテリアだといえるだろう。ロッテリアもかつてはマクドナルドのチャレンジャーだった。1987年、マクドナルドがハンバーガーとポテト、ドリンクをセットにすると390円という「サンキューセット」を展開。それに380円の「サンパチトリオ」で挑んだが、翌年、さらにそれを下回る360円という価格の「サブロクセット」でマクドナルドに反撃されあえなく敗退した苦い経験を持つ。その後、商品戦略上の失敗や経営上の問題があり、ロッテリアは企業再生会社リヴァンプと資本提携~終結を経て今日に至っている。

 ロッテリアの看板メニューの1つは「エビバーガー」だ。小エビのプリプリ感が売り物の揚げたパティは、今でこそ類似メニューを他企業も展開するが1977年にロッテリアが開発したとされている(Wikipediaより)。そのオリジナルの「エビバーガー」は単品で290円。セットで620円であるが、4月1日から発売される「チーズタルタルエビバーガー」はその豪華版といえるだろう。エビバーガーをカマンベールやチェダーチーズで作ったチーズタルタルソースで味付けしているという。お値段は単品350円、セットで680円だ。

 記事によれば、「チーズタルタルエビバーガー」の曜日別販促キャンペーンは4月27日までとあるが、メニュー自体は恐らく、「定番化」を図るものと考えられる。消費者の態度変容モデルの1つである「AMTUL」で検証してみよう。A=Awareness(認識)→M=Memory(記憶)→T=Trial(試用)→U=Usage(常用)→L=Loyal(忠誠)である。
 商品と連動した業界としては珍しいという「曜日別」の販促を展開。火曜は「チーズデイ」、金曜は「フライデイ」と、Tuesday、Fridayと引っかけたロッテリアらしい「駄洒落」。新商品を認識(A)させる意図だ。「曜日別」という切り口で記憶(M)に残させる効果も期待できる。認識し、興味を引かれた層に、火曜はポテト&ドリンクMで680円という昨今のランチ事情の中では少々手を出しにくい価格を100円値引きしてお試し(試用=T)させる。さらに、金曜に「からあげっと4個入り」を無料プレゼントして再購入を図り、常用化(U)させる。限定期間にも意味がある。春の連休に入ると日常と異なる購買行動(外食利用)となるため、4月27日までのキャンペーン期間中にメニューに対するファン度を高める(L)狙いと思われる。

 ファストフードの新メニューは1度試してそれきりという客も少なくなく、そのため、期間限定メニューを次々に繰り出すことになる。しかし、「チーズタルタルエビバーガー」はAMTULの態度変容モデルで試用から定着までを設計し、定番メニュー化する意図が見えるのである。
 では、リーダーであるマクドナルドはどう出るか。マクドナルドにも「えびフィレオ」という「えびバーガー」と類似したメニューもあるが、同社は現在、「Big America 2」という、昨年大人気を博した期間限定のシリーズを押し出し、高単価メニューで客単価UPを図る戦略をとっている。「えびフィレオ」をアップグレードして「えび対決」としてロッテリアを狙い撃ちにするよりも、実績のあるシリーズを繰り出す方が市場へのインパクトが大きい。それを見越して、ロッテリアはマクドナルドが市場に仕掛けた単価UPのムーブメントに乗ろうという意図で戦略を構築したと考えられるのである。

 業界の先頭を走る「リーダー」にはなれない。リーダーに挑む「チャレンジャー」となる力もない。そんな企業は世にごまんとある。問題は、その場合どのように生き残りを図ればいいのかをわかっている企業が多くないということだ。ロッテリアの「フォロアー」&「ニッチャー」的なある意味の「潔さ」からは学ぶところが大きい。

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2011.03.25

最終デザイン完成:東北関東大震災・チャリティーTシャツ

一昨日(3月23日)の記事でご紹介した、チャリティーTシャツの最終デザインができあがりました。
ロゴに変更を加えていませんが、より引き立つように生地を生成りにしました。

また、「ロゴをもっとよく見せて!」とリクエストもいただいているので、アップの画像とサイズも表示します。

販売開始に向けて鋭意努力中ですので、いましばらくお待ちください!


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2011.03.24

チャレンジャーはニッチに攻めろ!サントリー「オールフリー」

 サントリー「オールフリー」が、先行するキリン「フリー」に敢然と牙をむいた。その緻密な戦術を分析してみよう。

 従来「ノンアルコールビール」といわれていたものは、法律では酒類に含まれなかったものの、0.1%程度のアルコールを含有していた。それをキリンが世界で初めて「発酵させない」というビールと全く異なる新製法で、ドライバーや妊産婦でも安心して飲める「全くアルコールが含まれていない」製品を実現した。2009年4月発売の「キリンフリー」だ。2010年は520万ケース(1ケース大瓶20本換算)を販売(日本経済新聞より)し、2009年日経MJヒット商品番付の西の横綱に輝いた。大ヒットのワケは、モノとしての特性だけでなくネーミングの功績も大きいだろう。通常、飲料において「ゼロ」というと基準量あたり一定までの含有は認められている。例えば、「ノンカロリー」「カロリーゼロ」は 食品100g(ml)あたりの含有量が、5kcal未満を意味する。そこを「Free=~が入っていない」、つまり、アルコール度数0.00%という製品特性のユニークさを明言したのである。
 猛追するのがサントリーの「オールフリー」だ。2010年8月を開始したところ注文が殺到し、わずか1週間で販売を休止したことでも話題となり、2010年中に200万ケースを販売(同)。製品の特性としてアルコールが0.00%なだけでなくカロリーゼロも実現し、それを端的に商品名で訴求している。

 3月16日付・日経MJには「サントリー、ビール風味飲料拡販、家庭用、ロング缶投入、業務用は取扱店2倍に」という記事が掲載された。「支持を集めている家庭用でロング缶(500ミリリットル)を用意するなど品ぞろえを増やして商品力を底上げし、業務用でも取扱店を現在の3万店から2倍の6万店に引き上げる計画だ」とある。目標は「前年の2・5倍の500万ケース(キリン「フリー」は520万ケースの販売を想定)」だという。

 飲料において、同一製品でも容量の違いはターゲットやその利用シーンの違いを意味する。サントリーは「たっぷり飲みたい男性やカップルで分け合って飲みたい消費者」(同紙)を狙っているという。そのためには、新たなラインを構築し製品(Product)を製造しなければならない。その労力と費用を覚悟の上での「ロング缶投入」なのである。

 製品を作っただけでは売れない。広告・販売促進(Promotion)を通じてターゲットに認知させることが必要だ。サントリーは「釣り船や釣り宿でサンプル商品を提供。レジャー気分を盛り上げるアイテムとして利用してもらうほか、高速道路のサービスエリアでも配布する」(同)という。この展開は、チャレンジャーならではのユニークなターゲティングだといえよう。同じ性別や年齢層でも、利用シーンによっては全く異なるターゲットとしてとらえ直すことができる。つまり、今までキリン「フリー」が取り込めていなかった飲用シーンで試用させ、ブランドの刷り込みを図っているのである。

 さらに、ターゲットが認知したとしても、まだ売れない。手に取らせることが必要だ。販売チャネル(Place)での棚確保だ。それも普通に酒類の棚に並べていたのでは、リーダーとの差別化はできない。そこでサントリーは新たなターゲットとの接点を作り出した。
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 写真は筆者がスーパー・西友のレジ横で見かけたものだ。通常、ガムやアメ、乾電池などレジ待ちの客に対し「ついで買い」を誘うコーナーに、専用什器を用意して展開しているのである。当然、冷えていない。コンビニエンスストアの来店客は「買ってすぐに飲みたい」というニーズがあるが、スーパーの客はもっぱら持ち帰りである。また、専用什器での販売に限った限定の価格(Price)での提供も行い、手を伸ばさせるモチベーションを高めている。

 リーダーに挑むチャレンジャーはターゲティングが巧みでなければ勝つことはできない。リーダーが既に支持を集め、多くのユーザーを取り込んだ環境のなかで「スキマ」を探し、切り崩し、新たに取り込んでいくことが求められるのである。
 リーダーとして君臨している企業やブランドに挑んでいるチャレンジャーは各業界・市場に数多くいるだろう。サントリー「オールフリー」の「ニッチ切り崩し戦略」からは学ぶところが大きい。


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2011.03.23

東北関東大震災・チャリティーTシャツ:デザインできました!

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東北関東を襲った大震災は、多くの方の命と平和を奪いました。
今もなお、人々の日常を奪い、困難を強いています。

多くの方が何かしらの応援を行動に移された事でしょう。
けれど、きっと、もっと足りないのです。
誰のせいでもない未曾有の災害を乗り越えるには、
更なるみんなの力が必要だと思います。
どんな事でも、モノでも、被災地を想って動き、考え続けること。
一過性のものではなく、ずっと共に気持ちをおく事が必要です。

わたしたちは今を、そしてこれからを一緒に生きていくために、
「LIVE IN JAPAN」Tシャツを作ります。
地域だとか、人種だとか、そんな線引きは日本のどこにもない。
SAVE でも、AIDでもない。いっしょに、歩む。
私たちは「日本で生きている」のです。
LIVE IN JAPANこの言葉で、みんながもっと繋がれますように。
このシャツを着て、みんなが嬉しいことができますように。
悲しみに暮れたあとのみんなが、一瞬でも早く顔をあげ、
前を向き直せますように。


Design by. Switch(株式会社スイッチ)
Written by. Harumi Nishihata(西幡 治美)
Promotion by. Kanamori Marketing Office(金森マーケティング事務所)

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1日も早い復興を共に祈って行動するための「チャリティーTシャツ」を作ります。 
まずはデザインが出来上がりましたので、当Blog、Twitter、Facebookで告知致します。

ご協力いただける方の義援金振込先、Tシャツの配送方法などは決まり次第、追加でおしらせします。
まずは、このTシャツを胸に明日を、希望をともに考えてみてください!
(金森 努)

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2011.03.22

‎渋谷にB級グルメ村!「ギン酒場」の戦略を読み解く

 たこ焼きチェーン「築地銀だこ」を展開するホットランドが4月下旬、渋谷に全国各地の料理や地酒を楽しめる「B級グルメ村!ギン酒場」の3号店を渋谷に出店するという。

 1号店は銀座に「立ち飲み酒場」として今年1月にオープンした。(ニュースリリース)→ http://tinyurl.com/4fg3z5f
 2号店は新橋に同じく立ち飲みながら、「トレーラーハウス」4台を利用した店舗を3月22日に開店予定している。(同)→ http://tinyurl.com/4zs6yul
 そして、4月下旬に渋谷に進出する3号店は、5階建てのビルを「1棟借り」しての展開となる。19坪の狭小立ち飲み店やトレーラーハウスと異なる3号店は、明らかに今までと異なる戦略を採っていると思われるが、その真意はどこにあるのか。

 3月18日付・日経MJの記事によると、撤退した居酒屋のあとを“居抜き”で活用したということだ。5フロアの総面積は約180平方メートル。大きなビルではないが、1・2号店とは規模もコンセプトも違う。
「1階はシークアーサーやマンゴーなど各地のジュースでウィスキーを割ったハイボールが楽しめる。2階はマッコリにご当地焼酎を入れて楽しめる。3階は地酒や次章中型の閉める店とし、4階は宴会ができるようコース料理なども揃える。5階は厨房だ。」(日経MJより)

 戦略意図の1つは、「B級グルメ」という1つのコンセプトでビル1棟をくくって、「館」としての魅力を打ち出すことに間違いないだろう。
 流通業の例でいえば、「館づくり」は駅ビル「ルミネ」の得意技だ。ルミネといえば、2011年秋に有楽町マリオン「西武」跡に新店をオープンさせることで話題になった。若年女性層をターゲットに多くのテナントに1万円以下の商品を数多く取りそろえて集客し、高い商品回転率で稼ぐモデルを確立させ、「主力の新宿ルミネの1平方メートル当り売上高は約237万円で、西武有楽町店の2.7倍も売れている」(2010年11月11日付・日本経済新聞)という。
 ホットランドの「ギン酒場3号店」も同様に、「B級グルメ」というコンセプトの魅力で「館」を作り、B級グルメならではのコストパフォーマンスのよいフードメニューで集客し、さらにフロア毎に異なる目玉となるドリンクメニューでリピートを促すという意図だろう。
 日経MJの記事について、Twitter(ツイッター)で紹介したところ、多くのフォロアーから「行ってみたい」という主旨のレスポンスがあった。「館」の魅力は十分だといえる。さらに同店ならではの客の回転率のよさが収益に貢献するはずだ。

 「ルミネ」の場合と異なり、「ギン酒場」は自社だけで1棟のビルを使用しているため、もう1つメリットがある。「シャワー効果」を狙えることと、「ポートフォリオマネジメント(PPM)」が組めることだ。

 「シャワー効果」とは百貨店などが上階の魅力を高め、来店客を下の階へ誘導し購買機会を高める手法だ。最上階に飲食店街を作ったり、催事会場を上階に設定したりするのはそのためだ。
 「ギン酒場」の場合は「宴会場」が4階、厨房を除いた実質的な最上階にあるのがポイントだ。宴会の参加者は主体的に来店するのではなく、幹事によって店舗に集められる。幹事も自ら足で店を探すのではなく、ネットの検索で見つけたり、クーポンに釣られて主客されたりする場合も多い。そんな客が4階にたどり着くまでに、1~3階の店舗の雰囲気を認知しながら宴会場におもむくわけだ。当日は宴会で腹一杯飲み食いしてしまうだろうが、後日の再来店が期待できる。「シャワー効果」の変形パターンといえるだろう。

 「ポートフォリオマネジメント(PPM)」とは、複数の事業を行ったり製品を生産・販売したりしている企業が、製品・事業相互の組み合わせや存続を検討するためのフレームワークである。市場占有率(シェア)を横軸に、成長性を縦軸に1つの象限を作る。右上は、導入期にあり市場占有率が低く、成長性が高い事業・商品である「問題児」。左上は、成長期にあり市場占有率が高く、成長性も高い「花形」。左下は市場占有率が高く、成熟期にある安定して成長性が低い、「金のなる木」。右下は衰退期にあり市場占有率も成長性も低い「負け犬」だ。PPMには大原則がある。それは、「花形」不在にならないようにすること。そのためには、積極的に「問題児」を見つけ、育てることだ。二つ目の大原則は「金のなる木」から得た収益を、「問題児」に積極的に投資することである。
 「ギン酒場」渋谷店で考えれば、4階の「宴会場」は固い収益が望める「金のなる木」。強い支持率基盤を持つ「焼酎」を中心とした3階も同じく「金のなる木」といえるだろう。共に上階に置き、階上まで客を吸引する力がある。1階は路面から入りやすいという利点も活かし、「金のなる木」として人気の「ハイボール」を中心とした店舗を配置。そして、4・3階からのシャワー効果での再来店でトライアルさせる「マッコリ」の店をこれから伸ばすべき「問題児」2階に配置したという構図だ。
 「ルミネ」などのテナントビルと異なり「ギン酒場」が優位な点は、ホットランド1棟借りによる自社店舗である点だ。PPMで管理して、成長性を見てフロア間で店舗を入れ替えてもよし。十分に「花形」として育ったら、ビル外に新橋のようなトレーラー店舗や銀座店のような立ち飲み店として切り出すことも可能だ。

 外食産業自体が低価格・低収益の波にさらされ、居酒屋業界は特に「280円均一価格」などの「利益なき繁忙」に陥る構図になっている。厳しい業界の生き残り手法として、流通業とも共通する「館づくり」と、成長性と存続性を考えて事業・商品を評価・管理する手法は他業界でも参考になるだろう。

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2011.03.18

「背水の陣」のジーンズメイトは生まれ変われるか?

 業績低迷にあえぐカジュアルウェア大手、ジーンズメイトが大きな曲がり角を迎えている。その背景と狙いを読み解いてみよう。

 ジーンズメイトは1988年に第1号店が開業し、平成10年98年に24時間営業を開始して話題を呼び、99年に、2001年に1部上場を果たした。しかし、ユニクロを運営するファーストリテイリングが98年に2部上場、99年に初の都市型店である原宿店を出店して以来勢いを増して追撃したこともあり、近年業績低迷にあえいでいる。前期の決算数字も売上高:168億円、純利益:-13億円、営業キャッシュフロー:-12億円とそれを反映している。

 ユニクロの業態としての特徴はSPA(speciality store retailer of private label apparel:企画製造小売業)にある。「価格以上の品質」を実現する力の源泉だ。昨今人気の外資系ファストファッション勢の多くもSPA方式であるが、力の源泉は「品質」以上に注力している「ファッション性」である。例えばZARAは自社に200名以上のデザイナーを抱えて最新の市場のファッショントレンドを超短期間でキャッチアップし、商品を製造して店頭に並べる。では、ジーンズメイトの魅力と力の源泉とは何か。

 ジーンズメイトはまさに「背水の陣」を張った。
 3月18日付・日経MJ記事に「ジーンズメイト 今期出店、新業態店のみ 格安衣料や雑貨 SCなど施設内に」とある。112店舗、東京世田谷区に始まり西は山口・福岡まで広げた版図、単独路面店の出店を凍結したのである。
 新業態店の1つが「ワケあり本舗」。記事には「89円の靴下など格安品を展開する」とあるが、いわゆる「アウトレット店」だ。もう1つの展開が「ハッピードア」。記事の写真には「格安衣料のワケあり本舗(手前)に化粧品や雑貨を扱うハッピードアを組み合わせた新店(東京都町田市)」という説明が添えられている。「ハッピードア」は昨年、映画配給やレジャー施設運営の東京テアトルから3店舗を事業譲渡された。同社西脇社長のコメントが記事に掲載されている。「ジーンズメイトでは出店できなかった施設内に新業態で進出を狙う」とある。行間を読めば、ジーンズメイト単体では収益が低いためSC(ショッピングセンター)などの施設に入居することができず、単独路面店の出店に終始していたとも考えられる。

 2010年5月21日付の日経MJに「ジーンズ専門店背水の陣―ジーンズメイト、「非衣料」で女性客開拓」という記事がある。「ハッピードアの協力を受け、ららぽーとの新店にはキャラクター雑貨などを導入。6月末までに他のジーンズメイト15店に同様に雑貨を取り入れるほか、女性用化粧品などに品ぞろえを広げる」とあるが、今後、その動きを加速するのである。

 そもそも、ジーンズメイトはなぜに業績が低迷しているのか。
 ジーンズメイトはSPA方式をとっていない。旧来の小売り事業である。しかし、それだけが弱点として低業績に直結するとは限らない。ファストファッション勢の一画であり、銀座松坂屋にグッチの後継テナントとして入店、大型店舗「XXI Forever at GINZA by FOREVER 21」を展開したことでも話題になった、「フォエバー21」もSPA方式ではない。「フォエバー21」はマーチャンダイジング(商品政策)、品揃えや店としての統一したイメージづくりによって消費者に魅力を演出し、KBFを提示しているのだ。
 業績低迷の原因は、ジーンズメイトが消費者に明確な「KBF(Key Buying Factor=買う理由)」を提示できていないことにある。
 例えば、予算が限られた中で服を買おうと思った消費者が「価格の割には品質がいい」という価値を求めるなら、ユニクロに行くだろう。「ファッション性」を求めるなら、ファストファッション店に行く。では、ジーンズメイトはどのような「KBF」で選択されるのか。そのコタエが今まで見えなかった。特に業績が急速に低迷しはじめた2007~08年以降はその傾向が顕著だ。2009年に東京・秋葉原にメイド服の店員が来店客にコーディネートをしてくれる「アキバあそび館」などもオープンさせたが、決定打にはなり得ていない。低迷した状況から大きく舵を切るのが今回の決断である。

 3月18日付・日経MJ記事は「ジーンズを主体とするカジュアルウェア衣料店の販売環境は総じて厳しい。大手の一角であるジーンズメイトの主力業態への依存見直しは、同業他社の戦略にも影響しそうだ」と結んでいる。また、2010年5月21日付の記事には、「 “男性の購買はもう伸びないと思った方がいい。ジーンズから脱却し女性客を取り込む”。西脇昌司社長は事業転換への決意を語る」とある。

 ユニクロやファストファッションにメインターゲットである若い男性や、サブターゲットのカジュアル志向の女性客を奪われ、価格的にも魅力を喪失して苦戦していたジーンズメイト。もはや、若い頃から習慣的に来店・購買する中年男性が主要購買層となっていたと思われるが、既存路線ではターゲット拡大も、それに対するKBFの提示もできないため、決断したと思われる。SCの集客力と雑貨やワケあり商品で来店ターゲットを拡大することはできるだろう。残された課題は、収益の取れる既存商品とのクロスセリングを図るための、KBF、店舗全体としての魅力を作り上げることができるかにかかっている。

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2011.03.17

「リーガル」のアンチエイジング戦略から学ぶべきもの

 靴の「リーガル」ブランドを運営するリーガルコーポレーションが若年層ターゲットの新店舗をオープンした。そこに隠された狙いから学んでみよう。

 3月16日付・日経MJのコラム「戦略拠点 あすを拓く」は、「リーガル(REGAL)」の新展開が掲載されている。「リーガル・シュー・アンドカンパニー 若者向け特化、流行も探る」と見出しにある。ショップの所在地は東京都渋谷区神南。渋谷と原宿の中間ぐらいの場所、ファッションの中心地だ。そこに約50平方メートルの少し小さなショップを開くまでには、紆余曲折があったようだ。

 記事によれば、リーガルの現在の主要顧客層は40~50代。今年50周年を迎えるというリーガルブランドも、業容を拡大すると共にファンも増やしていったが、顧客層の年齢が上がっていることが課題だったという。

 「顧客も歳を取る」。これは忘れがちな事実である。
 自社(Company)として強いブランドは「排他性」がある。それは競合(Competitor)に対する差別化だけではなく、顧客(Customer)の支持を得て取り込み、囲い込むうちに、ファン層が固定化して属性の異なる客層が近寄りがたくなってしまうのだ。
 もちろん、誰も彼も相手にしていたのでは強いブランドにはなれない。しかし、偏って固定化した顧客のニーズにだけ応えていると、ファン層と共にブランドも加齢する。「アンチエイジング」が必要なのである。
 記事の店内風景の写真には「カジュアル靴の品揃えを充実させて、課題である若年層の取り込みにつなげる」と説明文が添えられている。また、文中には「従来方式にとらわれない新たな商品戦略を探る重要な“試験場”でもある」と記されている。

 ロングセラー商品の生き残りの方策の一つは、基本となる「定番」をしっかり残しつつ、市場・顧客から飽きられないように様々なバリエーションを投入していくことだ。つまり、「成長戦略」を考えるフレームワークである「アンゾフのマトリックス」でいうところの、「既存の顧客に新規の商品を提供する=新商品開発」である。これは、食品、飲料の世界などでは様々なフレーバーを開発し上市するという、アタリマエに行われている手法であるが、メーカーの「アイディア」や「思い」だけで開発するのではなく、「顧客の声を聞く」ということも重要だ。
 例えば、発売40周年を迎えた堂々たるロングセラー商品である「カップヌードル」も、基本のフレーバーを残しつつ、様々なバリエーションを展開している。その中で、「ミルクシーフードヌードル」は、「シーフードヌードル」を「熱い牛乳で作るとクラムチャウダー的になって美味しい」という口コミをもとに開発された商品である。

 「ミルクシーフードヌードル」はネット上での口コミを拾い上げて開発されたが、「顧客の声」はどこで聴けるのかということも問題となる。
 その点、「リーガル・シュー・アンドカンパニー」の展開は英断であった。記事によれば、「当初は商品開発のみで既存店への供給を想定した。だが“若者の最先端トレンドを探るためにも独自店舗が不可欠”」と担当役員が判断し、新業態店の出店にこぎ着けたとある。

 2009年に発売されて大ヒットした、ロッテのガム「Fit’s(フィッツ)」の事例でも同じことがいえる。
 チューイングガム市場で60%のシェアを持つロッテにとっての悩みは、2002年を境にガムの消費量が右肩下がりしていることである。原因は「若者のガム離れ」。咀嚼能力の低下と共に、「ガムを噛む」という習慣がなくなり、「固い噛み心地」が敬遠されるようになったのだ。そこで開発されたのが「噛むとフニャン」という「柔らかな噛み心地のFit’s」である。しかし、ガムから離れ、自分たちが用いるものという認識が希薄になっている層に「柔らかなガムができました!」と訴求しても、ガム売り場の前で足を止めることはない。そこで、ロッテはまず、パパイヤ鈴木が振り付け、佐藤健と佐々木希が踊る「Fit’sダンス」を大々的に広め、注目を集めることにしたのだ。

 このことは、ガムの例だけではなく、それが書籍でも、靴でも同じことだ。
 例えばあなたにとって、とても有用な医学書があったとしよう。しかし、そもそも医学に興味がなければ、そのコーナーに足を向け、本を手に取ることはないはずだ。
 リーガルの従来店は「40~50代のための店」というパーセプション(認識)が市場に出できあがっているとすれば、そこに若者にとって魅力的な商品が陳列されていたとしても、そもそも店に入ってこない。若年層の取り込みも、その声を収集することもできないのだ。

 同店では、「2人の常駐スタッフはローテーションで数日ごとに入れ替え。販売の担当者だけでなく、企画や営業、デザイナーなども接客に当たっている」と、全社横断で顧客の声を拾う取り組み流されていることが記事で伝えられている。

 マーケティングとは「売れ続けるしくみ作り」である。
 「売れ続ける」ためには、「顧客は誰か」を常に見て、「理想的なターゲット顧客像」を明確にすること。その顧客の「ニーズ」は何か、「買う理由(Key Buying Factor=KBF)」は何かを拾い続ける必要がある。そして、そのためには「自ら顧客に近づいていくこと」が欠かせないのである。
 「ロングセラー商品」や「定番ブランド」とは、不動の存在ではない。自ら代謝を高め、古くならないように「アンチエイジング」の努力を欠かさなかったものに与えられる、結果としての称号なのだ。

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2011.03.16

ガチンコ勝負!コカ・コーラ・いろはす VS.サントリー・天然水

 サントリーの「天然水」がリニューアルされ、交通広告などでも印象的なペットボトルのビジュアルが告知されている。そして、多くの人は思ったはずだ。「アレと一緒じゃん?」と・・・。

サントリー天然水「P-ecot(ペコッと)ボトル」: http://tinyurl.com/4j9gteh (サントリーホームページ)

 「ペットボトルの“Pet”と環境配慮の“eco”を組み合わせて“P-ecot(ペコッと)ボトル”と名付けました。」
 ・・・というサントリー「天然水」の新ボトルは、その名の通りペコッと「つぶせる」のが特徴。で、これが「ペコッ」ではなく、「クシャッ」と「しぼれる」だったら、そう、誰もがコカ・コーラのミネラルウォーター「いろはす」を思い浮かべるだろう。コカ・コーラによれば、「いろはす」のボトルは「ecoるボトル しぼる」と命名されているが、その名称よりも「クシャ」っと絞られたビジュアルが消費者のアタマには刻みつけられているはずだ。

 戦略の定石の一つに「同質化戦略」というものがある。
 業界シェア№1の「リーダー」は、製品(Product)の開発力も高く、販売チャネル(Place)の支配力も強く、広告コミュニケーション投資(Promotion)の余力も大きい。それらの力を使って、リーダーの地位を狙う「チャレンジャー」が差別化を図ろうと市場に送り出した商品とそっくりなものを市場に出してシェアを奪うのである。過去の例でいえば、大塚製薬が1980年に発売した「ポカリスェット」に対し、コカ・コーラが1983年に「アクエリアス」をぶつけてきたことが有名だ。

 では、サントリーとコカ・コーラ(コカ・コーラシステム)はどちらが「リーダー」なのか。「ミネラルウォーター市場」で考えれば、サントリー「天然水」がシェア№1だ。
 サントリーは1991年に「南アルプスの天然水」を全国発売開始。2003年に「サントリー天然水 南アルプス」と名を変え、兵庫県以東と四国地区向けには「サントリー天然水 阿蘇」を発売。さらに2008年には中部地区以北向けに「サントリー天然水 奥大山」を発売。現在は取水地別に地区別3枚看板体制で販売している。
 一方、コカ・コーラの「いろはす」は、自社自販機以外ではほとんど販売が振るわなかった「MINAQUA(ミナクア)」の代替として、2009年5月18日に発売開始。20ml増量の520mlという内容量、国内最軽量ペットボトルで「環境負荷が低い」という打ち出し方で人気を呼び、発売後わずか97日間で1億本の販売を記録。2011年1月末時点までの累計販売数も8億本を突破したと報じられている。

 強烈に追い上げてくるチャレンジャー、コカ・コーラの「いろはす」に対して、サントリー「天然水」が「同質化戦略」をとったように思われる。ただ、そっくり同じにするだけではない。「ecoるボトル しぼる」に対して、もっと覚えやすい「P-ecot(ペコッと)ボトル」というネーミング。絞ったボトルと同等以上にコンパクトに見えるきれいにたたまれたボトルのイメージ。そして、「いろはす」の520mlを上回る、550mlという増量サイズである。
 コカ・コーラはどうするのか。果たして、「いろはす」も「天然水」と同等以上の製品改良を行った。「天然水」のPET容器の重量は13.5g。新しい「いろはす」は、さらに軽量の12g。容量は5ml多い555mlである。

 ところが、この戦いは時系列に整理すると、全く攻守が逆転した様相となるのである。

 サントリーが「天然水」のリニューアルを発表したのが、2010年12月20日。
 「サントリー天然水」550ml新発売― 新開発の“P-ecot(ペコッと)ボトル”を採用 ―
 http://www.suntory.co.jp/news/2010/10963.html

 対して、コカ・コーラが「いろはす」のリニューアルを発表したのは2011年3月3日のことだ。
 『い・ろ・は・す(I LOHAS)』 555ml PET発売― 2011年3月14日(月)から全国で発売開始 ―
 http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_20110303.html

 「ミネラルウォーター市場」では、リーダーのサントリーも、「飲料業界」全体で見れば、販売シェアも自販機の保有台数もコカ・コーラに劣後している。リーダーはコカ・コーラの方なのだ。
 「チャレンジャー」は「リーダー」に対して、とにかく違いを明確にする「差別化戦略」を行う。それに対して、リーダーは「同質化戦略」を仕掛ける。サントリーが「天然水」のリニューアルを発表してから、コカ・コーラが「いろはす」のリニューアルを発表するまでわずか2ヶ月半。PET容器の界初などの準備はしていたものと思われるが、恐ろしいまでの勢いで「同質化」を仕掛けたのはコカ・コーラの方だったのだ。

 「市場」や「業界」は、その切り取り方によって見えてくる様相が異なってくる。また、時間軸で考えれば、戦略の有効性も全く異なってくる。仕掛け、仕掛けられ、差別化し、同質化するという戦いに永遠に終わりはない。だが、その時々の戦局で有効な手立てを撃たなければ、致命傷を負うこともありえる。常に危機感を持って戦いの望むことが求められるのである。

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2011.03.15

「洗濯男子」を狙う、ライオン&丸井のコラボ販促に学ぶ

 「コラボレーション」流行りだ。そんななか、妙手を繰り出したのがライオンと丸井である。その事例から学んでみたい。

 3月14日付・日経MJに「襟袖の汚れ専用洗剤 拡販、丸井と連携 ライオン 1万本プレゼント」という記事が掲載された。
 ライオンの商品は「トッププレケア えりそで用」。同社ホームページによれば、「洗濯機で洗う前にエリやそで口に直接塗れば、あとは洗濯機まかせでしつこい汚れをすっきり落とす、便利で効果的な衣類の部分洗い剤です」とある。
 「20~30代の男性客が多い丸井の販売網を活用」という効果をライオンは期待していると記事にあるが、商品プレゼントの条件は丸井各店と通販サイトでプライベートブランド(PB)「ビサルノ」のワイシャツ1枚と、ワイシャツ専用洗濯ネットを同時に購入することだという。

 「ビサルノ」のワイシャツは形態安定素材のワイシャツなのに着心地がいいのが特徴だ。形態安定なので、クリーニングには出さない。自宅の洗濯機洗い。しかし、帰宅して風呂に入る前に、パンツや靴下などと一緒に洗濯機に放り込むという無法な振る舞いをする輩には「プレケア」はプレゼントしない。なぜなら、「プレケア」は、汚れに用いるのは洗濯の直前。放置してはいけないとホームページにある。あくまで洗濯機を回す直前に塗布して、ワイシャツ専用洗濯ネットに入れてケアするという繊細さを持った顧客がターゲットなのだ。
 ターゲットイメージとしては、ファッション感度が高く、さらに服を買うだけでなく、それをケアしてきれいに着続ける喜びを知っている男性。すなわち、「洗濯男子」である。

 「洗濯男子」との遭遇確率が最も高いのはどのような接点なのか。
 紳士服量販店とそれに対抗するGMS(general merchandise store=大規模スーパー)で「替えパンツ付きスーツ9,800円」を「使い捨て」的に購入する層はちょっと違うだろう。また、いわゆる「高級ブランド」で全身を固めるタイプも対象外だ。そうしたブランドのワイシャツは、ほとんどが形態安定ではなくクリーニング店でのケアが前提としたものだ。
 では、丸井はどうか。丸井はデザイナーブランドのショップが多いのが特徴だが、PBの「ビサルノ」も扱っている。来店客の購買行動を観察してみると、スーツやジャケットなどの重衣料はデザイナーズブランドを購入するが、シャツはPBを選ぶ人もいる。また、オフタイム用の服はブランドにこだわるが、オンタイムのスーツやワイシャツはPBを選択する人もいる。つまり、ファッション性とコストパフォーマンスのバランス感覚に優れた顧客層が多いと想定できる。
 来店客の主要な年齢も20~30代。その年代は独身者や既婚者でも共働きや子どもが小さな家庭が多い。「弁当男子」「水筒男子」という「自分のことは自分でやる」というセルフメンテナンスに始まり、「イクメン(育児を率先して行う男性)」など、家事の協働という意識が高い年齢層である。「ちょっと~、ワイシャツはせめて裏表に脱がないでキチンと入れておいてね!」などと妻に言われて、洗濯機に放り込んで終わりというタイプは少ないだろう。

 「プレケア」は、サンプルとはいえ、少量ボトルではなく、フルサイズ (250ml入り)の商品をそのままプレゼントする。メーカーにとってフルサイズの商品をそのままプレゼントするというのは勇気がいる。黙っていても購入するかもしれないターゲットの購買機会を自ら奪ってしまうからだ。特に「プレケア」の効果は一度使用すれば実感できるだろう。なのに、フルボトルだと、サンプルを使い切るまで買われることがなくなってしまうからだ。
 機会損失を覚悟してもフルボトルをプレゼントするのは、もちろんライオンにとって、ターゲットが「手放せなくなる」まで刷り込むという効果を期待する意味合いもあるだろう。しかし、それ以上に「コラボレーション」としての意味合いが強いはずだ。
 ライオンにとって、丸井とのコラボレーションはオイシイといえる。しかし、コラボレーションは双方にメリットがあるフェアな関係でなくてはならない。ありがちなのは、その名の下に、どちらか一方が果実を得てしまうことだ。
 その点、ライオンは「フルボトルの提供」によって丸井に対して十分なメリットを創出しているのである。丸井の顧客、特に「洗濯男子」でもあるPB「ビサルノ」のワイシャツ購入見込み客であれば、購入を「どうしようかな・・・」と思っているところを確実に最後の一押しできる。丸井にとっての販促効果が高まるのである。

 コラボレーション流行の今日、単独で行うより魅力を増すだろうという狙いや、どちらか一方でも響けばというリスク分散、はたまた販売促進費用を負担し合うコスト低減など様々な思惑が入り乱れて、枯れ木も山の賑わいといった観すら漂う。しかし、コラボレーションとは、「共同作業」であり「共同制作品」を意味する。そこで重要なのは、その原義の通り、双方がメリットを享受できる仕組みになっていることだ。

 広告の巨匠の一人であるレスター・ワンダーマンの名言を紹介したい。(ワンダーマンの「売る広告」:翔泳社より)

 「“なぜ私に?”に答えなさい。(Answer the Question “Why Should I?”)」

 ワンダーマン氏は言う。「とかく企業は自分が売り込みたいものを、売れそうに見える相手、もしくは儲けられそうな相手に売り込もうとする。しかし、顧客は必ず、「なぜ、自分に、その商品を勧めるのか?」を尋ねてくる。自社の利益や思いだけではなく、顧客にとって利益になる商品を、合理的な理由を明確に告げた上でお勧めするべきである。もしそれができないのであれば、それは売り込むべき顧客を間違っているのだ。」

 上記はコラボレーションについても同じことがいえる。どちらか一方に利益がある関係は、ターゲット顧客にとっても奇異に映る。効果的な販売促進として実施したいのであれば、共同作業を行う両者と顧客にとって益のある関係を構築することに最も留意すべきである。

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2011.03.14

ユニクロの妹分・ジーユーの「高回転戦略」は成功するか?

 「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングが、傘下の「ジーユー」で新展開を始めた。その戦略意図と課題はどこにあるのだろうか?

 3月11日付・日経MJ掲載された記事には、「ジーユー 女性衣料 “ビーアガール”投入 流行入れ短期売り切り」とある。全130店で「流行の衣料を毎週少量ずつ投入し、約2週間で売り切る方針」とある。同紙にもある通り、ベーシックな商品ラインナップを展開する「ユニクロ」と棲み分けである。

 ジーユー(g.u.)は2006年に10月に第1号店が東京江東区のダイエー南行徳店内に開店し、現在130店舗を展開。200店体制に向けて開店のピッチを上げている。しかし、立ち上がり時点では売れ行きがままならず、出店スピードも思ったようにあがらなかった。その原因は、記事中でファーストリテイリング傘下の運営会社・GOVリテイリングの柚木社長がコメントしている。「当時の価格はユニクロの約7割と中途半端だったうえ、外部企画商品の多用でブランドの統一を欠いていた」とある。商品の高回転率を基軸とした戦略は、それを実現するバリューチェーンが整合していなかったのだ。

 アパレルのバリューチェーンはざっくり以下のようになる。
 [デザイン]→[調達・製造]→[物流]→[店舗販売・オペレーション]
 柚木社長のコメントにあるように、2006年当時のジーユーはユニクロと同様な、SPA(speciality store retailer of private label apparel:企画製造小売業)ではなく、上流工程を外部企業に依存していた。
 転機は2009年の「990円ジーンズ」の発売である。「中途半端」だった価格を「ユニクロの半分程度」として低価格化を強化したのだ。それを可能としたのは、外部企業依存を改め、SPA化したことによる。

 日経MJヒット商品番付にも載ったように、990円ジーンズは大ヒット。ジーユーも勢いに乗った。しかし、代償も小さくなかった。
 記事には「安い定番商品は強力な武器だが、これだけでは単なる“ユニクロ廉価版”になる懸念があった」とあるが、市場の声は「ユニクロとの区別が付かない」ともっと厳しい。

 「区別が付かない」というのは非常に危険な状態だ。
 ファーストリテイリングの柳井会長は2009年6月2日の990円ジーンズ・製品発表会で述べている。「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と。
 柳井会長が示したユニクロとジーユーの違いは明らかに「品質」である。今後、出店攻勢を強め、ジーユーの商品・店舗が市場に広まって「ユニクロもこんなもの」思われるのは避けたいところだろう。そこで、グループ内での「棲み分け」が必要となる。
 その切り札が、「ファッション性を高めること」、つまり、SPAのバリューチェーンをもって、「まあまあの品質でオシャレな服を安く」実現することなのだ。

 折しもユニクロは「ベーシック回帰」の戦略を強めている。
 ユニクロの2010年9月は前年同月比24.7%の大幅減となった。10月8日に記者会見を行った柳井正会長は、「(ユニクロの販売不振の原因は)表面的なファッションを追いすぎた」ことを第1に挙げた。他にも「色やサイズの欠品」という生産面の失敗を指摘し、「天候不順による影響は、それよりも軽微」とした。
つまり、ユニクロはバリューチェーンの最上流である[デザイン]の段階でファッション性を高めるという変更を行った。そして、それに従って[調達・製造]以降のプロセスが組まれた。しかし、[店舗販売・オペレーション]の現場では、例えばユニクロのジーンズ「UJ」は、アイテム数が増えすぎて顧客にはわかりにくく、売れ行きの不振を招く結果となった。
 記者会見で柳井会長は「今後は商品構成を見直し、ユニクロに本来期待されているベーシック(基本的)な商品を強化する」と発表した。

 ファッション性を高めるジーユーには大きな課題もある。
 「商品高回転・売り切り」に最もバリューチェーンを最適化しているのは、外資ファストファッション勢の一画、スペインのインディテックスが展開する「ザラ(ZARA)」だ。200名以上ともいわれるデザイナーを内部に抱え、世界のファッションの潮流をあっという間にキャッチアップして、「現在流行っているものを、作って売る」のである。バリューチェーンの[デザイン]の段階がキモである。そのZARAとも同じ土俵で戦っていくことになったら、ユニクロとは棲み分けができても、強力な競合が存在しているのである。

 もちろん、活かすべき強みもある。記事では「外資ファストファッション勢と同様に、一定期間を経た後には大胆な値引き処分をするか、しまむらのようにきめ細かい店舗間異動をするか、いずれかの対策を求められることになりそうだ」と結んでいる。
 「店舗間移動」は「しまむら」だけでなく、外資ファストファッション勢「ZARA」も同様に行っている。[店舗販売・オペレーション]の段階において、その店舗内の商品単位での売れ行きを管理し、回転の悪い商品は他店舗の店頭に持っていく。つまり、店頭の品揃えの「鮮度」を保つことで、なるべく値引きをしない、もしくは最小限に留めて売る仕組みを作っているのである。その仕組み構築を前提とすれば、店舗数に勝る「ジーユー」は移動がしやすく有利だといえるだろう。

 ジーユーは4月1日に都内初となる旗艦店「ジーユー池袋東口店」を「ユニクロ」との隣接地でオープンさせる。ファーストリテイリングのグループ内で、ユニクロ一枚看板への依存度を軽減し、ポートフォリオを組んで「スター」ブランドに育成する狙いである。そのため、一般の消費者の目には見えないバリューチェーンに磨きをかけて、外資ファストファッションへの挑戦という新たなステージに立ったのである。

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2011.03.10

エコオヤジはイケイケの夢を見るか?:バブル20年調査から

 「そうか、もう20年も経つのか・・・。」
ある調査のリリースを見て、つい遠い目をしてしまうのは、筆者自身が世代だからだ。「バブル世代の実態を調査」したという。

「バブル終焉から20年 バブル世代の実態を調査」
トヨタマーケティングジャパン・三菱総合研究所
・調査概要版→ http://tinyurl.com/4r98bru
・詳細版(PDF)→http://tinyurl.com/4fpwoks

 バブル崩壊は91年だが、その後2年ぐらいは世の中もコトの重大さに気付かずに過ごした。しかし、93年から不景気が本格化し、いわゆる「失われた10年」に突入する。就職氷河期、リストラ、企業の不良資産の山・・・。
むべなるかな、確かにオレらはイケイケだったよ。仕事も遊びも。だが、世は移ろい、「バブリー」といわれ、「イケイケ」と呼ばれ、いわゆる「バブル世代」に吹く風は強く冷たかった。バブル戦犯。バブルパージ。リストラリストの筆頭候補。ところがあれから20年。どっこい、バブル世代はネガティブなキモチで生きているわけではなかったようだ。

-------------------<概要版より引用>--------------------
分析の結果、このバブル世代の多数を占めたのは、情報を主体的に選別し、知的で思慮深い生活をしたいと考える「主体的インテリジェンス生活志向型」と、経済的・人間関係的に安定して生活をしたいと考える「安定生活志向型」の2タイプであることが明らかになりました。なかでも「主体的インテリジェンス生活志向型」は、一般的に浸透している「バブル世代」のややネガティブなイメージと大きく異なる姿が浮かび上がったため、今回特にこのタイプに注目し、詳しい分析を行いました。
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PDFの詳細版を見ると、「主体的インテリジェンス生活志向型」は世代の25.6%を占めているが、さらに理想像、つまり「ありたい自分の姿」を含めると、約4割がポジティブシンキングで生き延びている。何というたくましさだ。同世代ながら、その厚かましいまでの根性に驚きと拍手である。
 その根性の源泉はどこにあるのか、社会学の専門家が分析をしている。

-------------------<概要版より引用>--------------------
中央大学文学部 山田昌弘教授(社会学)は、「主体的インテリジェンス生活志向型は、若い頃にバブル期を過ごしたことで、ポジティブ思考の傾向があり、コミュニケーション力が高く、主体的に新しいことに挑戦するバイタリティ(=イケイケ)をもともと持っています。さらに、情報収集や時代の空気を読むことも得意だったため、時代が大きく変わった現在では、周囲や環境への社会的配慮ができる、きわめて現代的な “エコ意識”も持ち合わせているようです。つまり、20年前の“イケイケ”が、今では“エコイケ”に変化したといえるのではないでしょうか」と考察しました。
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 「エコイケ」である。筆者もごみの分別には気を遣うし(?)、環境負荷軽減のためクルマに載らなくなって10年が経つ。立派な「エコイケオヤジ」なのかもしれない。

 でもね・・・。気になるのが調査の詳細版にある、趣味の変化だ。

-------------------<詳細版より引用>--------------------
1980年代後半のバブル期の趣味・娯楽:1位「お酒」(38.3%) 2位「スキー・スキューバー」(27.3%) 3位「クルマ・ドライブ」(27.0%) 4位「ゲーム」(23.0%) 5位「買い物(DCブランド購入、着用)」(22.3%)
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DCブランドに身を固め、スキー・スキューバにクルマで彼女を連れてって、仲間とは一気飲みで大騒ぎ・・・。おお、輝かしき時代。
 それが20年経ってどうなっているのか。

-------------------<詳細版より引用>--------------------
現在の趣味・娯楽:1位「パソコン・インターネット」(63.7%) 2位「国内旅行(温泉など)」(30.5%) 3位「お酒(28.5%)」 4位「ウォーキング」(20.7%) 5位「ペットの世話」(19.5%)
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 ちょっと寂しくないか? パソコン、ネットで時間を潰し、「最近の若い者は海外旅行に行かなくていかん!」とか言いながら、自分は温泉に行き、たまにお酒を飲んで、あとは散歩と犬の世話?「エコイケ」の「エコ」は「economy(=節約すること・安価な)」なのだろうか・・・。

 だが、我が身を振り返ってみれば、クルマに乗らなくなって手放してはや10年。ブランドものも好きだが、それにユニクロを合わせてしまうことにも抵抗はない。確かに仕事以外でもネットにつながっている時間は長いし、ランニングは無理しないスピードなのでウォーキングと大差ない。熱帯魚を可愛がってせっせと世話をしていたこともある。 あれ?オレはしっかりと「エコイケ」なのか?でも、「エコ」はわかるが、何が「イケ」なのだろうか?
 恐らく論拠はかつての「生き様」に関してだろう。

-------------------<詳細版より引用>--------------------
バブル当時の「エコイケ」は、「やりがいのある自分のテーマや目標に向かって、背いっぱい努力をしていた(46.9%)」「休日出勤や残業が多く、仕事ばかりしていた(33.2%)」と回答し、“24時間戦うビジネスマン”として活躍し、仕事に情熱を注いだ彼らでした。
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 確かに当時を振り返れば、残業・休日出勤の時間外が、今なら時効だろうから話せるが、月に150時間越えはアタリマエだった。しかし・・・

-------------------<詳細版より引用>--------------------
今では、「夕食はだいたい家族で食べている(51.2%)」「毎週、家族で外出している(26.2%)」「進んで掃除や洗濯などをする(25%)」といった“家族サービス”の回答が目立つ結果となり、今では円満な家庭を気付くために愛情を注いでいることがわかりました。
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何という幸せ家族。恐るべき満点パパ。「君子豹変す」とはこのことか。しかし、環境分析的に考えれば、無理もない。
Political(政治・規制の変化):ムチャクチャな勤務は法的に許されない。
Economical(経済環境の変化):ムチャクチャ働きたくとも、そんなに仕事はない。
Social(社会的変化):女性の社会進出も進み、そのための環境も整えられ、また、家計を助ける意味もあり女性就業率は上がる。時間があるなら夫も家事をしないわけにいかない。
Technological(技術的な変化):家電の進化はどんなに家事音痴な男でも扱える製品ばかりになった。・
・・もはや逃げ場はないのである。

 そんな「豹変」という割にはすっかり牙が抜けた豹になったイケイケも、20年前を振り返り、当時のイケイケぶりを誇る悪いクセは抜けないようだ。

-------------------<詳細版より引用>--------------------
「エコイケ」が20代だった頃は、「自分の専門外のことでも、関連があるならばどんどん実行していた(17.8%)」「仕事が好き(22.5%)」「仕事や金銭面での成功を重視し、当時の仕事で成功を考えていた(18.6%)」「新たなことに挑戦していた(34.1%)」「職場の仲間(上司、同僚、部下など)と、よく飲みに行っていた(40.3%)」といった回答が、現在の20代男性よりもはるかに上回り、社交性も高く、上昇志向で前向きな姿勢が強かった傾向が伺えます。
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 一方、イマドキの若者は「積極性」ではなく「保守傾向」が強いと調査結果を示している。

-------------------<詳細版より引用>--------------------
「日常の中に不満が多くある状態(27.1%)」「多くのことがマンネリ化している状態(17.6%)」「練ること、家で一人で休んでいる時に幸せを感じる(51.8%)」といった回答が目立ち、内向きで保守的な傾向が伺えます。
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 分析を監修した山田昌弘・中央大学教授(社会学)がコメントしている。

-------------------<詳細版より引用>--------------------
「20代の草食男子は、やりたくないことをやらずに済むことを最優先に考える、新たに知識や経験を吸収する姿勢や新しいことに挑戦する行動も欠けている。最近では、費用対効果を考えてから消費行動をする“コスパ世代”(=コストパフォーマンス世代)と呼ばれるだけあり、実現性が低いものは敬遠するという判断傾向から、自己成長を促すチャンスを失ってしまっている。草食男子が「エコイケ」世代から学ぶべき要素は多いにある」
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 「エコ(economy)でイケ(ていた頃を忘れられない)」オヤジたち。そんな豹変して牙が抜けた肉食獣が、草食を嗤うのはあまりイタダケナイ気がするのは筆者だけだろうか。抜けた牙では肉も食えず、economyに草を食うのみ。ダイエットで脱メタボを果たした筆者も、リバウンドを気にしてランチはサラダだった(←事実)。
 20年前のイケイケはもはや夢。「エコイケ」になったからには、オヤジたちも静かに黙すが華ではないだろうか。


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2011.03.09

脱・百貨百客:大丸東京店と京王新宿店の戦略に学ぶ

 昨日の「中野マルイ」の続編のような記事が3月9日付・日経MJに掲載された。そこから再び百貨店の明日の姿を考えてみよう。

■関連記事:百貨店生き残りのキーワード?「中野マルイ」は誰を狙う?

 筆者にとって意外なことに、大丸東京店の売上げが2007年11月の移転開業以来、5%ダウンと苦戦しているという。他百貨店のカード会員だったのだが、紳士服売り場の品揃えが個性的でよくなったので、すっかり乗り換えていたのだが、全店ではそうではないらしい。やはり、東京駅八重洲中央口直結から北口側に移転したことと、高層化して売り場が分断されてしまったことの影響だろうか。記事にはその詳細は書かれていない。
 記事は全店売上げと同様に5%の売上げ減に苦しむ、婦人靴売り場のテコ入れ策についてである。「婦人靴売り場刷新 機能性重視の品揃え 30~50代 会社員に的」とタイトルにある。

 記事によれば、売り場中央の自主編集売り場(いわゆる「平場」)で、品揃えを1割増やし、さらにデザイン性重視と機能性の高い靴の比率を5:5から4:6に変更。さらに外反母趾対応などの知識を持った店員の増員・配置や中敷きを顧客の足に合わせ裁断するサービスも提供。将来的には有料化も検討するという。
 施策の狙いはターゲットニーズへの最適化だ。「大丸東京店は八重洲や日本橋、京橋地区などに近く、近隣の企業に勤める30~50代の女性会社員の利用が多い。仕事中は長い時間、靴を履くため機能性を求める傾向が強い」(記事より引用)という。「同じ商圏にある高島屋東京店(東京・中央)や三越銀座店(同)とは異なる品揃えで対抗する」(同引用)とあるが、明らかに「対抗」ではなく「棲み分け」である。

 隣には「京王百 新宿店を全面改装 3年で50~70億円 日常の需要狙う」という記事が掲載されている。記事にあるように、同店の特徴は「60歳代前半が中心顧客層となっている」とにあり、そのために店舗内の施設にはベンチが多く配置されていたり、品揃えも主要顧客層向けが多かったりという配慮がこれまでもなされていた。それを一層加速するための改装である。
 「改装のテーマは“新・日常生活”へ。」だといい、「ハレの日」に対応する百貨店ではなく、日常、「ケの日」をより快適にするというポジショニングを表しているのだろう。「食品、家の中で使う雑貨、健康志向に対応するスポーツ用品、仕事用の服などを重点的に揃える。一方で、高級な衣料品や宝飾品など百貨店が従来強みとしていた商品は構成比を落とす」という。

 昨日記した「中野マルイ」は「地元密着」というポジショニングで、地元客というターゲットを選択した。Twitterで記事を読んだフォロアーの方から「実際には高齢者の姿がかなり目に付く。その意味でも地元密着という戦略が奏功しているのだろう」と意見をいただいた。同様に、大丸東京店の婦人靴売り場は、商圏内の「働く女性」というターゲットに対応した品揃えと、靴の加工と足のケアというサービスを商品に加え、ニーズを充足することに務めている。また、京王新宿店は中心顧客層である「60歳代前半」というターゲットに一層、資源を集中する意思決定をしている。

 「何でも取りそろえて」、「どんなお客様にも満足してもらえる」という「百貨店」という名称通りの展開に、逆張りの施策を打ったのがかつての有楽町西武だった。ターゲットを絞り、「百貨」ではなく、「七十貨」や「三十貨」でも十分やれるという戦略だった。その背景には、バブル経済独特の高い商品単価、高額な商品を欲しがる顧客という構図があった。
 記事の事例である2つの百貨店もターゲットを絞り、品揃えも集中している。その意味では、旧来の「百貨店」ではない。しかし、「中野マルイ」と共通している思想は、「売る側が売りたい品物と顧客を選んでいるのではない」ということだ。

 紙面の隣には「三越銀座店 増床オープン半年」という記事が掲載されている。同店店長に対するインタビューである。記者は「くつろぎの空間顧客から高評価」とコメントし、インタビューでも来店客数も売上げも上々である旨が記されている。しかし、その結果に安心しているわけではなく、「婦人衣料、手頃価格充実 要望多く春夏物から」とタイトルにあるように、ボリュームゾーンの商品を増やすなど改善の手を緩めることない姿勢が伝えられている。
消費が上向いてきたとはいえ、人口減少など市場縮小は否めない。限られたパイのなかで生き残るためには、「百貨店の勝ち組」的なポジションを手に入れつつある三越銀座店でも、「売りたいモノを売る」のではなく、顧客の声に応えていくことが必要なのである。

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2011.03.08

百貨店生き残りのキーワード?「中野マルイ」は誰を狙う?

 3月7日付・日経MJに「中野マルイ」の記事が掲載された。「丸井中野店」を老朽のため2007年8月26日に閉館させ、創業の地に今年1月28日にリニューアルオープンした店舗だ。都心の店舗にも集客力は負けていないという、そのヒミツは「地域密着」のようだ。そこにこれからの百貨店の生き残り策が隠されているといえる。

 百貨店業界の業績は、日本百貨店協会の統計数字が発表されるたびに暗澹たる未来を映し出しているかのように見える。きれいな売上げの右肩下がり。地区別、商品別などの切り口でも大勢は同じ。特に地方百貨店の困窮が伝わってくるが、その結果として昨今メディアが伝える閉店ニュースは枚挙にいとまがない。右肩下がりも店舗数が減っているのだからアタリマエの話である。

 そんな百貨店業界の環境の中で、東京23区第1位という高い人口密度のおかげで、3㎞という狭商圏にも関わらず商圏人口は30万人を抱えているという。そして、記事の見出しには「子供から高齢者“全方位”の客照準」とある。「何とうらやましい!」と地方の百貨店は思うだろう。
 店舗のコンセプト、つまり顧客に示しているポジショニングは、「ふらっと立ち寄れて楽しく過ごせるみんなのマルイ」(記事より・以下も)だという。
 その工夫として、「雑貨店と菓子店を近づけ、女性客などを中心にプレゼントやついで買いに適した商品を並べた」とか、「地域に少ない分野の店の誘致も重視した」とか、「全店で最も遅いエスカレーター」が設置してあるなど老人への配慮をしたり、屋上にはビオトープなどの憩いの施設を配したりと確かに「全方位」である。多くの人が集まる恵まれた商圏に、商圏内から来店客を吸引する各種の工夫が込められている。

 しかし、本当に「中野マルイ」のターゲットは「全方位」なのか?「みんなのマルイ」なのだろうか?

 「中野」という地域から考えると、一つの見方ができる。
 中野駅から新宿駅まで中央線快速で4分。渋谷まで山手線に乗り換えて約15分。いわゆるターミナル駅まで至便な駅である。そこには新宿エリアなら、「新宿マルイ本館」「新宿マルイカレン」「マルイカレン別館」「新宿マルイワン」「新宿マルイアネックス」「新宿マルイメン」の6店舗。渋谷エリアなら、マルイシティ渋谷」「マルイジャム渋谷」の2店舗がある。当然、競合の百貨店もひしめき合っている。・・・にも関わらず、来店客は「中野マルイ」を訪れ、買い物をしているのだ。

 「中野マルイ」の来店客は、近隣に大きな売り場、豊富な品揃えの店舗があるにも関わらず、「地元の店を選んでいる客」である。もしくは、新宿や渋谷の店舗、競合店でも買い物をするが、「地元で買い物をするオケージョン(場合・とき)の客」である。

 「丸井中野本店」から「中野マルイ」へ。立て替えによって変化した店舗の概要を考えると、生き残りのヒミツが見えてくる。

 店舗は「地下1階地上6階建てで、直営部分の1~5階の売り場面積は約4,950平方メートルと旧本店の約半分に縮小した」という。狭い売り場面積をどのように使うのか。重要なエピソードが掲載されている。顧客の声を集めたところ、「1階靴売り場の品揃えに不満が多いと判明。隣のギフト売り場を一部縮小して靴売り場を広げる案が固まった」という。

 「店が売りたいモノ」ではなく、「顧客が必要としているモノ」を売る。極めて当たり前な話だが、なかなかそこに意識を向けることは難しい。
 「丸井中野店」の閉店によって、その跡地は立て替えの際に「本社関連施設を建設予定であったが、地元の陳情を受け、店舗と本社機能オフィスの複合ビル建設に計画を変更」(Wikipediaより)したという経緯があるという。「中野マルイ」に生まれ変わる過程で、日経MJの記事にあるような「地元密着を徹底」になるような「住民との対話」がベースにあるのである。

 自社のポジショニングは誰が決めるのか。
 もちろん、最終的には自社であり、その意思決定は経営者の責任だ。しかし、ポジショニングの基軸は「顧客の買う理由=KBF(Key Buying Factor)」、つまり「なぜ、自社を利用してくれるのか、買ってくれるのか」を考え抜いて、または対話の中から汲み取って作り上げていくのである。

 タイム誌が選んだ「20世紀の3大広告人」の1人、レスター・ワンダーマンは、「主人公は商品ではなく、顧客である。(The Consumer , not the Product must be the hero.)」とその根本思想を語っている。
 「中野マルイ」は、「主人公は商品ではなく、顧客」にして、「ふらっと立ち寄れて楽しく過ごせるみんなのマルイ」になったのである。

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2011.03.07

「ターゲットニーズ」を見極めろ!異色のプロモーションに学ぶ

 バレエ公演会場でスポーツサプリメントドリンクの配布。異色のプロモーションが3月4日、東京・芝公園のメルパルクホールで行われた。その背景と効果のほどは・・・?

■ハードなスポーツとよく似たバレエ?

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 サンプリングが行われたのは、篠原聖一 バレエ・リサイタル DANCE for Life 2011。演目はロマンティック・バレエの代表作「ジゼル」。観客は時間前に押し寄せ、時間を前倒しで開場したロビーには人があふれた。バレエダンサーだと思われるすらりと手足の長い女性、子どもをバレエ教室に通わせているような家族連れ、昨今流行りの「大人のバレエ」を趣味として習っていそうな20代~30代を中心とした女性たち。古くからのバレエファンという雰囲気の老婦人。そんな客層を目の前にして、サンプル提供元である江崎グリコの担当者は、「いつもと違うターゲット層に興味がより高まった」という。

 協賛したのは江崎グリコが販売している「パワープロダクション」ブランド。サプリメントやドリンク、プロテインなどの商品をフルラインナップで取りそろえている。サポートしているアスリートは清水エスパルス、全日本プロレス武藤敬司、ビーチバレー浦田聖子など、そうそうたる面々が名を連ねる。担当者自らも100㎞を駆け競い合う「ウルトラマラソン」のアスリートである。
 「動きを見ていて出演者の方々の日頃の練習を想定すると、サプリメントが必要だと強く感じた」とサンプル配布を行う幕間までの第1幕を観た感想を担当者は語った。

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 「芸術」ではあるが、バレエは「体育会系」である。その世界のトップアスリートともいうべきプロのダンサーは日々のハードな稽古に耐え、何度もリハーサルを繰り返し、本番では2時間を超える時間を踊り抜く。江崎グリコはそんなダンサーたちをサポートしようと、今回の公演出演者に事前にサプリメントドリンク「CCD」をリハーサルから配布していた。高エネルギーであるにもかかわらずハイポトニック(高吸収)なので、動きながらの補給にも適している。アスリートだけでなくダンサーにも最適なのだ。
 趣味の世界でバレエを踊るファンにとっても、カラダのメンテナンスは重要である。しかし、スポーツ用であるパワープロダクションとの接点はもちろんのこと、多くのバレエファンは、スポーツ競技者の間では当たり前になっているサプリメントでのサポートという認識が乏しい。それを埋めるための狙いがサンプリングにあるのだ。

■バレエ界の悩み

 「このままではいけないと、誰もが思っているのだけれど、誰も解決策を知らない」。
 日本バレエ界を牽引する振付家・プリンシパルダンサー、篠原聖一はかつて悩みを打ち明けた。
 きらびやかに感じられるバレエの公演。しかし、その実態は多くが赤字だ。文化庁などの助成金などもあるが、それは赤字の半分を補填してくれるに過ぎない。かつてはメセナ、昨今ではCSRなどの名目で行われていた企業からの協賛も、長きにわたる不景気によって集めるのが難しくなっている。
 日本全国には数多くのバレエ教室があり、その裾野の広い。しかし、それはいわば「閉じた世界」だ。教室の先生や関係者が出演しているため公演を見に行くというモチベーションの観客も多い。閉じた世界でカネがまわる。大きく拡大することはない。故に、チケットも高額になり、1万円を超えるケースも少なくない。新たな観客・ファン拡大が難しい。公演での何らかの副収入があれば赤字を埋めたり、ファンに還元したりできる。だが、現状では公演のパンフレットを販売する程度に留まっている。

■Win-win-winを目指す

 閉塞感が漂うバレエ界に新たな動きを起こそうと挑戦したのが、ノイアートプロモーションの井野 美瑞希。自身もバレエダンサーの母に育てられ、バレエダンサーとなったものの怪我で断念。ビジネスの世界に入り、広告代理店勤務などを経て一昨年独立した。怪我を克服し、バレエを再び踊るようになりながら、「ダンサーと観客と企業の3者にメリットのある仕組みを作りたい」と考えたのが独立した目的だ。まさにその目論見は篠原 聖一の語った悩みを解決するのと同じ方向性を持っている。
 企業は単なる寄付ではなく、実利を得なければならない時代になっている。バレエの団体やダンサーの経済状態は厳しい。一方、ファンや観客は比較的経済的に余裕のある層が多い。その3者を結びつければ、課題が解決できると見込んだのである。

■ターゲットニーズの見極め

 井野の構想を実現する最初の取り組みとして目を付けたのが、江崎グリコの「パワープロダクション」とのコラボレーションだ。
 「サンプルを試した出演者からは「味があっさりしていて、吸収が速く感じていい」、来場者からも「スタジオでも使いたい。グリコがバレエを応援して頂けるのは嬉しい」と
いう声が寄せられた」と、江崎グリコの担当者はサンプリングの成果を語った。

 普通に考えれば、スポーツ競技とバレエの接点はないに等しい。しかし、最も重要なのは、「商品=ウォンツ」を用いる人の「ニーズ」が、「カラダを使ってより良い結果を出したい」ということに帰結するという点を見抜いたことだ。そのために、アスリートはライバルに勝つ。ダンサーは観客に魅せる。目標は違うが、より良い成績、より良い演技のためには、「まずは自らに勝つこと」である。その実現をサポートする「商品=ウォンツ」として「サプリメント」は共通していたのだ。

 「今回はダンサーや趣味で踊る観客のニーズと商品を結びつけることができました。今後もバレエを観に来るファンの何らかのニーズに応えられる企業とうまくコラボレーションすることを模索していきたい」と、井野は今後の抱負を語った。

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2011.03.04

新聞の外食業界ニュースから見えてくる風景

 3月4日付・日経MJフードビジネス面に掲載されている大小いくつの記事。そこから共通する業界としての現状、市場の環境、そして消費者のニーズを読み取ってみよう。

■「節約疲れ」対応?・牛丼戦争の出口はここか?

 うっかりすると見落としてしまいそうなたった12行のベタ記事。「角切りステーキ 松屋が定食発売」。牛めしの松屋(松屋フーズ)が7日15時から発売するのが「角切りステーキ定食」690円。肉の量が2倍の「角切りステーキW定食」990円。
 「牛丼戦争」といわれる、出口の見えない安値合戦が続く業界で、松屋はここのところ立て続けに肉系の高単価メニューを投入し、Wで990円という1000円弱のプライシングで勝負をかけている。それは、ロスリーダー(目玉商品)としての牛丼で集客し、高単価定食を販売。肉増量のアップセリングを行う「勝ちパターン」。それは、景気にほんの少しだけ明るさも見え「節約疲れ」といわれる消費者の行動をすくい取る、定食のバリエーションが強みの松屋ならではの展開である。競合のすき家(ゼンショー)も牛丼のトッピングでの100円程度のアップセリングだけでなく、定食メニューの充実に動き出している。吉野家(吉野家ホールディングス)の動きに注目である。

■脱・デフレは価値向上の提案から

 牛丼業界同様、低価格戦争を脱したいのが居酒屋業界だ。「280円均一」などの低価格均一競争に業界は疲弊し、個人営業店を皮切りに、体力のないチェーンも倒れはじめた。そんな中で、「節約疲れ」を狙いつつ「価値向上」を提案する動きが見える。
 「野菜メニュー拡大 モンテローザ 「笑笑」320店で6月まで」という記事。「味が濃い」「脂っこい」という居酒屋のイメージ払拭をし、女性客の取り込みを狙うという。さらに、国が推奨する1日摂取量350gの目安にするよう、料理毎に野菜量を表示する。「居酒屋で1日に必要な野菜が摂れる」というは明確な価値提案だ。同時にカロリーも表示した方がいいだろう。ネガティブ要因として出したくないかもしれないが、「脂っこい」という「購買棄却理由」の根源はカロリーだ。カロリーをあえて表示し、自己調整できるようにして支持を得た例としては、ネスレのチョコレート菓子「キットカット」がある。「購買棄却理由を払拭して、「購買理由(KBF=Key Buying Factor)」に転換していくことが、価値向上の原点である。

■ちょっと高めだけど・・・舞台はコストパフォーマンス競争に?

 「節約疲れ」をすくい取ろうという動きがもう1つある。「サラダバー付きステーキ・ハンバーグ店へ転換 ファミレス各社が加速 客単価は高め」という記事。すかいらーくは「ステーキガスト」、ロイヤルホールディングスは「カウボーイ家族」への転換を進め、客単価は1000円未満から1000円台にUPを狙っているという。撤退した店舗をそのまま活用するエムグランドフードサービスの「けん」がステーキ・ハンバーグ+サラダバーという店舗形態を開発し、ファミレス業界がこぞって追随している構図だ。景気の低迷で内・中食全盛の時代でも、家庭料理と思われているハンバーグは、実は焼きムラなどができてうまく焼くのが難しいといわれ、08年頃から「煮込みハンバーグソース」が人気となった。その後、ハンバーグ専門店も次々に登場し、サラダバーも「家庭で買えば野菜が高い!」と人気になった。セントラルキッチンでの集中調理と、大量購買による仕入れの力を活かして、コストパフォーマンスを高めた業態が人気を呼んでいる構図だ。記事にもあるように、類似店が多くなることで、今後は競争が激化する。競合との差別化が課題だ。「デザートブッフェ」の充実など、メインメニュー以外の「付随機能」が勝負のしどころになってくるかもしれない。

■ハンバーガー業界での差別化はニッチ狙いで?

 「ハンバーグ」ではなく、「ハンバーガー」に目を転じてみれば、そこにはマクドナルドという強大なコストリーダーが君臨している。業界2位・モスバーガー、3位・ロッテリアとの差は店舗数でも売上げでも歴然だ。そんな業界に一度撤退して再参入してくるのが「ウェンディーズ」だ。「米ウェンディーズ、日本再上陸 単品で500円超投入」という記事。高級素材を使用し、日本人の味覚に合わせて独自商品開発。今秋から5年で70店出店を目指すという。1000円超の高級バーガーは密かなブームとなっていて、個人経営の単独店も多い。15店舗の小規模チェーン展開ながら、根強い人気を誇っているハワイアンバーガーのクァアイナもメニューは1000円前後。700円~800円の価格レンジでは首都圏で37店舗を展開するバーガーキングもいる。70店舗は少ないようで、意外とハードルが高いかもしれない。旧ウェンディーズのブランドをどこまで継承しつつ、中~高価格帯のスペシャルティー・バーガーとしてのポジショニングを確立するのかがポイントだ。

■巨艦を精緻に操縦するコストリーダー

 昨年、不採算店を中心に400店を超える店舗を閉鎖したマクドナルド。しかし、依然として約3200店を展開する巨艦であることは変わりない。しかし、この強大な力を持つコストリーダーは、きめ細かさこそが特徴でもある。例えばメニューは低価格、中価格、高価格と各レンジに属するメニューを適度なバランスを持って販促をかけたり、チキンメニューの強化を図りつつ、その集客のために無料コーヒーを展開したりと、愚直に「売上げ=客数×客単価」の最大化を図っている。
 そんなマクドナルドのきめ細かさを示す記事。「デザートにマックフルーリー 190円に値下げ・小型化」。300円を35%減量し190円にしたという。マクドナルドはクーポン販促や100円マックなどで「安売り」のイメージを持つ人もいるが、現・原田社長が就任してから単純な値下げは1度として行っていない。今回の値下げも、サイドメニューとしてのクロスセリング(もう1品購入)率向上と、子どものおやつという新たなターゲット、ポジショニング拡大をねらっているのである。

■「もう1品」は並べただけでは売れない!

 「注文後に仕上げ ケーキの新商品 ドトール」。ドトールが注文を受けてからブルーベリーソースをかけて仕上げる「ニューヨークチーズケーキブルーベリーソース」をドトールの1120店で展開するという。昨年12月の期間限定販売好評を受けて本格展開という運びになったようだ。カフェにスイーツが当り前に置いてある昨今、従来の作り置きしただけの商品では顧客は魅力を感じず、「もう1品」と手を伸ばすKBF(購買理由)になり得ないということだ。

 日経MJの記事を眺めて見えてきたことは、薄明かりの見え始めた景気のなか、フードビジネスも必死で需要を増そうとしている姿だ。厳しい業界ほど、生き残りに知恵を絞る。特に、日本という縮小市場では、従来のように「消費者」という一律、大括りのターゲットでは売れない。支持を得られない。どこの、誰がどんなニーズを持っているのか。細分化し、そのKBFになる提案をし、ポジショニングを明確にすること。その実現に向けたしくみを組み上げることが生き残りの条件だということを示している。他業態も学ぶところは大きい。

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2011.03.03

GAPがユニクロに殴り込み?その戦略と背景を考察する

 GAPの新たな動きといえば、何といっても本日、3月3日に東京・銀座数寄屋橋近くの一等地に国内最大の売り場面積を持つ旗艦店を開店することだ。さらに3月2日付・日本経済新聞によると「米ギャップ 日本でも低価格店」と傘下の低価格ブランドを、日本市場で展開する可能性を日本法人・ギャップジャパンの社長がコメントした。その狙いと背景を考察してみよう。

 GAPは1995年に日本に進出し、現在約130の店舗を展開している。GAPブランドはアメリカンカジュアルの代名詞ともいえるポジションを獲得しているが、業容としての特徴は、今日、ユニクロをはじめ外資系ファストファッション勢も取り入れている「SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)」という製造から小売までの垂直統合した方式を1986年に提唱し展開したことである。

 華々しい銀座の新旗艦店の開店。しかし、筆者にとってその船出は「満を持して」というよりは、「反転攻勢」をかけて総力戦の火蓋を切ったというように映った。ファーストリテイリングが展開するユニクロの躍進や、スウェーデンの「H&M」、スペインの「ZARA」などと共にわき起こった「ファストファッションブーム」の陰に隠れるようになってしまっているからだ。SPAというSCM(Supply Chain Management)における優位性はなくなっているといえる。

 SPAという同じ土俵に立った時、生き残るカギは「顧客の支持をいかに得るか」である。

 「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、価格と価値が比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。消費者は市場価値と自らに提供される価値の相関で、価格を判断している。このバリューラインのどのポジションで消費者にアピールするかをまず考える。
 「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー戦略)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価値戦略)」「高くて価値の高いもの(プレミアム戦略)」という。当然、バリューラインを下回る、例えば「中間的な価格で価値が低い」ものは、市場から撤退を余儀なくされる。しかし、バリューラインを上回るものは、消費者の支持がさらに高まることになる。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値のもの(グッドバリュー戦略)」「中価格なのに価値の高いもの(高価値戦略)」「低価格なのに高価格のものと同等の価値のもの(スーパーバリュー戦略)」という存在になる。
 ユニクロやファストファッションが目指したものは、SPAによって価格低減を図った上で、品質やファッション性という価値を高めてバリューラインを超えることだ。言い換えれば、いわゆる「ファストファッション戦争」といわれる戦いは、バリューラインの上空で展開されている戦いなのである。

 その戦いの中で、GAPはどのような存在になっていたのか。アメリカンカジュアルの代表的なポジションを獲得してはいるものの、台頭してきた後発のユニクロやファストファッション勢によって、ある意味無難で失敗のない「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価価値)」のポジションに押し込められてしまったといえるだろう。

 GAP復活のカギは、まず、バリューラインを飛び出すことだ。製品そのものの価値を高めすぎると、採算の問題だけでなく、同じ傘下の高価格ブランドとして約30店を展開している「バナナリパブリック」とカニバリゼーション(共食い)を起こすことになる。そのため、店舗としての商品やコーディネートの提案などでファッション性という価値を高めることが考えられる。そうすることによって、ファストファッション勢と伍して戦うこともでき、また、ファッション性を高める方向がうまくいかずに「ベーシック回帰」に転進したユニクロとも差別化ができるようになる。「中価格なのに価値の高いもの(高価値戦略)」というポジションの再定義をする戦端を開くのが、銀座の新旗艦店なのだと考えられる。

 では、日本経済新聞にある「米ギャップ 日本でも低価格店」はどのような意味を持つのか。
 低価格店とは、「オールド・ネイビー」のことだ。記事には北米地域で1000店越えを展開し、GAPブランドに比べて約半額程度の商品も多いとある。このブランドを展開することで、バリューライン上の「低価格なのに中間価格と同等の価値のもの(グッドバリュー戦略)」というポジションを埋めにくるものと思われる。特にユニクロの姉妹ブランドであるg.u.とも戦えることになる。

 ここまでの「バリューライン」に関する論述で、「低価格なのに高価格のものと同等の価値のもの(スーパーバリュー戦略)」のポジションは誰が取っているのかと思われるかもしれない。しかし、そのポジションは現実的にはなかなか取りづらい。
 ファーストリテイリング傘下のジーユー(g.u.)が、名価格な価格戦略明確化した象徴的な商品は990円ジーンズだ。2009年の日経MJヒット商品番付にも掲載された。2009年6月2日の製品発表会で、柳井会長は次のように発言している。「ユニクロはナショナルブランドの商品と比べても品質は高いが、最低価格では提供できない。まあまあの品質で低価格のものを求める人はジーユーでお願いしたい」と。つまり、ユニクロは「高価値戦略」、g.u.は「グッドバリュー戦略」で棲み分けるという構図である。

 消費者に「価格を上回る価値」を感じてもらうための「バリューライン」を超える戦い。GAPが旗艦店展開で店舗力を高め、低価格ブランド進出の機会をうかがうことで、ファーストリテイリング、ユニクロとの戦いは本格化するだろう。その戦いがどのような様相を見せるのか目が離せない。

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2011.03.02

【最新版】 基礎から解説:マーケティング関連 連載・バックナンバー リンク集

連載バックナンバーのリンク集を最新版に更新しました。

バックナンバー(連載中もあり)として収録しているのは、以下の4つです。
「金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!」
「顧客視点のマーケティング」
「定番のヒミツ」
「“現場に効く”マーケティングの基本理論」

※下記の連載を読んでから、「書籍でバッチリ学びたい!」という方には下記をオススメします!

■初級~中級:「“いま”をつかむjマーケティング」・・・最新・2010年のマーケティングの事例を勝手分析+企業取材30連発で解説

■初級:「よくわかるこれからのマーケティング」・・・マーケティングの基本理論を102項目の用語別に図と事例で解説

■超初級:「実例でわかる!差別化マーケティング」・・・各種ヒット商品や世の中の動きを「勝手分析」した図解57連発


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(外部サイト)「金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!」(連載中)


 朝日新聞社広告局が運営する「ウェブ“広告月報”」。金森がインタビュアーとして、数々の「ロングセラー商品」を生み出したメーカーを直撃取材。そのヒミツをマーケティングの切り口で解き明かす連載。

 ・第1回 岩波書店「広辞苑』」[2010/09/03]

 ・第2回 キッコーマン食品「キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ」 [2010/11/18]

 ・第3回 バスクリン「バスクリン」 [2011/1/27]

 ・第4回 TOTO「ウォッシュレット」[2011/2/7]


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「顧客視点のマーケティング」(2010.03~2011.02)

古くて新しい、否、永遠のキーワード「顧客視点」でマーケティングのフレームワークを事例と共に見直す4連載。


第1回:生き残りのキーワードは「顧客視点」"

第2回:マーケティングの全体像で考える

第3回:顧客に魅力を伝えるポジショニングが最大のキモ

第4回:顧客に受入れられる“整合性”を考える


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「定番のヒミツ」(2006.07~2009.06)


世の中には常に売れ続ける「定番」と呼ばれるものがある。なぜ定番は売れ続けることができるのか。
当連載はその謎をマーケティングのセオリーから考察する。
【注:具体的なロングセラーの商品・サービス、ブランドをフレームワークを用いてその秘密を解明しています。】


第1回:「BMW・その ポジショニングの強さ」

第2回「銀座・伊東屋 顧客対応の極意」

第3回「1世紀近くAIDEESを実践してきたL.L.Bean」

第4回「最高峰の誇りをかけた新たなる挑戦 モンブラン」

第5回「“江戸和竿”に“使い手への心遣い”を学ぶ」

第6回「皇室御用達の傘に整合性の美を見る」

第7回「花王『メリット』 売れ続けるとは、変わり続けることでもある」

第8回「シャーボ 顧客最適化戦略の30年」

第9回「ファンと拓く新たな1ページ・カップヌードル」

第10回「ユニクロには定番はないという事実」

第11回「「六甲のおいしい水・その成長戦略とこだわり」

第12回「モノの本質を極め、オシャレを身にまとったル・クルーゼの鍋」

第13回「カルピス~変えてはいけないもの、変えるべきもの」


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「“現場に効く”マーケティングの基本理論」(2007.10~2008.09)


あまりに“基本”と思われ、忘れられているようなマーケティング理論。しかし、日々の業務が行われる“現場”で今一度振り返ってみれば、思わぬ“再発見”があるものだ。
【注:マーケティングの基本フレームワークを事例と共に解説しています】

第1回「マーケティングってそもそもなんだ?」

第2回「マーケティングって“4Pですよね”?」

第3回「ミクロ環境分析とKBF・KSF」

第4回「SWOT分析と分析結果の解釈」

第5回「市場ポジションに応じた戦略の定石」

第6回「個々の人々をカタマリに代え、狙いを定める”セグメンテーション”と”ターゲティング”」

第7回「”ポジショニング”こそが最大の山場!」

第8回「”マーケティング・ミックス”と製品戦略」

第9回「”価格戦略”を失敗しないために」

第10回「”チャネル戦略”は慎重に」

第11回「“コミュニケーション戦略”は組み合わせが命」

第12回・最終回 「マーケティングの要諦とは何なのか?」


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2011.03.01

新商品は誰がために?「生茶」と「エステー」の挑戦

 3月1日付・日本経済新聞消費面「New Face」欄に並んで掲載された2つの商品。そこから、企業のどんなメッセージが読み取れるだろうか。

 1つめの商品はキリンビバレッジの「生茶ザ・スパークリング」。同社のニュースリリースによれば、「新芽のみずみずしさを微発泡で楽しむ」というコンセプト。「みずみずしい味覚と微発泡の爽やかな刺激は、1日を有意義に使うために朝を充実させようという方にぴったりなおいしさ」というターゲティングとポジショニングの設定がなされているようだ。

 そもそも、飲料業界の昨今のトレンドはどうなっているのだろうか。
 業界の概観としては、09年頃から長引いた不景気の影響で、家庭で浄水を使用したり、茶葉を自分で淹れたりという消費者行動が顕著になってミネラルウォーターや茶系飲料が低迷する一方、炭酸飲料は「カロリー・糖質ゼロ」が開発され、健康志向を背景に需要上昇した。また、飲用目的は止渇や空腹、暑さ対応という身体的欲求が減少し、「リフレッシュ」「リラックス」が伸長。それに用いられるコーヒー、炭酸、紅茶という根強い人気の飲料が目立つ状況である。(楽天リサーチ調べ)

 では、「生茶ザ・スパークリング」はどのような狙いで上市されたのだろうか。

 茶系飲料で炭酸といえば、花王の「ヘルシア・スパークリング」が思い出されるが、同商品はどうにも苦い「ヘルシア」や、スポーツ飲料風でもどうしても残るカテキンの苦みを、炭酸とクエン酸の絶妙な配合によって飲みやすくしたトクホ飲料である。狙いは「苦くて飲みにくい味をガマンしてまでトクホを飲みたくない、ダイエットのライトユーザー」である。「お茶+炭酸」という今回の商品とはターゲティングとポジショニングが異なる。
 リリースでは「朝を充実させようという方にぴったりなおいしさ」とあるが、確かに緑茶は朝に飲まれることも多いが、コンビニでは昼食(弁当)との併買が多い。一方、炭酸は主に午後のブレイクにリフレッシュ目的で飲用される。(同・楽天リサーチ調べ)。少々、ターゲティングとポジショニングの整合性に疑問が残る。また、昨今のコンビニを見れば顕著なように、カロリー0の流行は既に盛りを過ぎており、棚で生き残っているのはコーラ系以外「CCレモン」など1~数商品程度。低カロリーももはや「当り前」になっており、差別化要因にはなりにくい。

 ところが、「生茶ザ・スパークリング」に関してTwitterでツイートしたところ、フォロアーの反応が非常に高かった。「緑茶+炭酸」は「どんな味なんだろう?」と、消費者の関心を惹きつける力があるのだ。
 消費者の反応がいい商品は、まず、誰にとってうれしいか。それは、流通チャネルだ。並べた商品をまず、手に取ってもらわなければ始まらない。店頭を活性化したいというコンビニエンスストアの本部、及び店舗オーナーは話題になる商品にはまず、棚を確保する。そして、それが派生商品なら、本体商品の棚を確実に確保しておく。棚の取り合い、生き残り合戦が激しい飲料業界においては戦いの定石ともいうべき「新商品展開」である。

 日本経済新聞に掲載されたもう1つの商品が、エステーの「天然ハーブの自動でシュパッと虫よけ」。商品の特徴としては、電池式で60日効果持続。「玄関などに置き、外からの虫の侵入を防ぐ」「殺虫剤成分の代わりに虫が嫌がる天然ハーブ」を使用したという。「エステーの虫除けって、“衣類に付く虫”じゃなかった?」と思った人は鋭い。エステーとフマキラーのコラボ商品である。エステーの芳香剤自動噴霧の技術+フマキラーの虫よけ剤の技術を用いた商品である。

 ポイントは消費者の「購買棄却理由の払拭」を徹底している点だ。
 従来のコンセント式でも60日以上の持続は可能であったが、常に電気を付けっ放しするのは抵抗感がある。しかし、付けたり消したりはめんどくさい。また、玄関にはちょうどいい所にコンセントがない場合も多い。フマキラーの虫除けにも電池式はあるが、常に通電状態で継続使用には向かない。そこでエステーの芳香剤に用いられている30分間隔自動噴霧だ。家の印象を左右する玄関に殺虫剤の匂いが漂う抵抗感も、ハーブの使用で払拭している。資本業務提携した両社初のコラボ商品としては、かなりの高得点だといえるだろう。

 新商品は消費者に向けてだけ上市されるのではない。市場のステークホルダーやDMU(Decision Making Unit:購買決定関与者)への働きかけも大きな目的となる。キリンビバレッジ「生茶ザ・スパークリング」は、とにかく目新しさをチャネルにアピールし、棚を確保する。フマキラー+エステーの「天然ハーブの自動でシュパッと虫よけ」は、資本提携効果を端的に株主に示すことが目的だ。
 商品(モノ)は単なる対価を得るための道具ではない。モノを通じてどのようなメッセージを、誰に届けて、どのように動かすべきなのかを精緻に設計することが欠かせないのである。

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