「そうか、もう20年も経つのか・・・。」
ある調査のリリースを見て、つい遠い目をしてしまうのは、筆者自身が世代だからだ。「バブル世代の実態を調査」したという。
「バブル終焉から20年 バブル世代の実態を調査」
トヨタマーケティングジャパン・三菱総合研究所
・調査概要版→ http://tinyurl.com/4r98bru
・詳細版(PDF)→http://tinyurl.com/4fpwoks
バブル崩壊は91年だが、その後2年ぐらいは世の中もコトの重大さに気付かずに過ごした。しかし、93年から不景気が本格化し、いわゆる「失われた10年」に突入する。就職氷河期、リストラ、企業の不良資産の山・・・。
むべなるかな、確かにオレらはイケイケだったよ。仕事も遊びも。だが、世は移ろい、「バブリー」といわれ、「イケイケ」と呼ばれ、いわゆる「バブル世代」に吹く風は強く冷たかった。バブル戦犯。バブルパージ。リストラリストの筆頭候補。ところがあれから20年。どっこい、バブル世代はネガティブなキモチで生きているわけではなかったようだ。
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分析の結果、このバブル世代の多数を占めたのは、情報を主体的に選別し、知的で思慮深い生活をしたいと考える「主体的インテリジェンス生活志向型」と、経済的・人間関係的に安定して生活をしたいと考える「安定生活志向型」の2タイプであることが明らかになりました。なかでも「主体的インテリジェンス生活志向型」は、一般的に浸透している「バブル世代」のややネガティブなイメージと大きく異なる姿が浮かび上がったため、今回特にこのタイプに注目し、詳しい分析を行いました。
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PDFの詳細版を見ると、「主体的インテリジェンス生活志向型」は世代の25.6%を占めているが、さらに理想像、つまり「ありたい自分の姿」を含めると、約4割がポジティブシンキングで生き延びている。何というたくましさだ。同世代ながら、その厚かましいまでの根性に驚きと拍手である。
その根性の源泉はどこにあるのか、社会学の専門家が分析をしている。
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中央大学文学部 山田昌弘教授(社会学)は、「主体的インテリジェンス生活志向型は、若い頃にバブル期を過ごしたことで、ポジティブ思考の傾向があり、コミュニケーション力が高く、主体的に新しいことに挑戦するバイタリティ(=イケイケ)をもともと持っています。さらに、情報収集や時代の空気を読むことも得意だったため、時代が大きく変わった現在では、周囲や環境への社会的配慮ができる、きわめて現代的な “エコ意識”も持ち合わせているようです。つまり、20年前の“イケイケ”が、今では“エコイケ”に変化したといえるのではないでしょうか」と考察しました。
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「エコイケ」である。筆者もごみの分別には気を遣うし(?)、環境負荷軽減のためクルマに載らなくなって10年が経つ。立派な「エコイケオヤジ」なのかもしれない。
でもね・・・。気になるのが調査の詳細版にある、趣味の変化だ。
-------------------<詳細版より引用>--------------------
1980年代後半のバブル期の趣味・娯楽:1位「お酒」(38.3%) 2位「スキー・スキューバー」(27.3%) 3位「クルマ・ドライブ」(27.0%) 4位「ゲーム」(23.0%) 5位「買い物(DCブランド購入、着用)」(22.3%)
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DCブランドに身を固め、スキー・スキューバにクルマで彼女を連れてって、仲間とは一気飲みで大騒ぎ・・・。おお、輝かしき時代。
それが20年経ってどうなっているのか。
-------------------<詳細版より引用>--------------------
現在の趣味・娯楽:1位「パソコン・インターネット」(63.7%) 2位「国内旅行(温泉など)」(30.5%) 3位「お酒(28.5%)」 4位「ウォーキング」(20.7%) 5位「ペットの世話」(19.5%)
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ちょっと寂しくないか? パソコン、ネットで時間を潰し、「最近の若い者は海外旅行に行かなくていかん!」とか言いながら、自分は温泉に行き、たまにお酒を飲んで、あとは散歩と犬の世話?「エコイケ」の「エコ」は「economy(=節約すること・安価な)」なのだろうか・・・。
だが、我が身を振り返ってみれば、クルマに乗らなくなって手放してはや10年。ブランドものも好きだが、それにユニクロを合わせてしまうことにも抵抗はない。確かに仕事以外でもネットにつながっている時間は長いし、ランニングは無理しないスピードなのでウォーキングと大差ない。熱帯魚を可愛がってせっせと世話をしていたこともある。 あれ?オレはしっかりと「エコイケ」なのか?でも、「エコ」はわかるが、何が「イケ」なのだろうか?
恐らく論拠はかつての「生き様」に関してだろう。
-------------------<詳細版より引用>--------------------
バブル当時の「エコイケ」は、「やりがいのある自分のテーマや目標に向かって、背いっぱい努力をしていた(46.9%)」「休日出勤や残業が多く、仕事ばかりしていた(33.2%)」と回答し、“24時間戦うビジネスマン”として活躍し、仕事に情熱を注いだ彼らでした。
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確かに当時を振り返れば、残業・休日出勤の時間外が、今なら時効だろうから話せるが、月に150時間越えはアタリマエだった。しかし・・・
-------------------<詳細版より引用>--------------------
今では、「夕食はだいたい家族で食べている(51.2%)」「毎週、家族で外出している(26.2%)」「進んで掃除や洗濯などをする(25%)」といった“家族サービス”の回答が目立つ結果となり、今では円満な家庭を気付くために愛情を注いでいることがわかりました。
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何という幸せ家族。恐るべき満点パパ。「君子豹変す」とはこのことか。しかし、環境分析的に考えれば、無理もない。
Political(政治・規制の変化):ムチャクチャな勤務は法的に許されない。
Economical(経済環境の変化):ムチャクチャ働きたくとも、そんなに仕事はない。
Social(社会的変化):女性の社会進出も進み、そのための環境も整えられ、また、家計を助ける意味もあり女性就業率は上がる。時間があるなら夫も家事をしないわけにいかない。
Technological(技術的な変化):家電の進化はどんなに家事音痴な男でも扱える製品ばかりになった。・
・・もはや逃げ場はないのである。
そんな「豹変」という割にはすっかり牙が抜けた豹になったイケイケも、20年前を振り返り、当時のイケイケぶりを誇る悪いクセは抜けないようだ。
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「エコイケ」が20代だった頃は、「自分の専門外のことでも、関連があるならばどんどん実行していた(17.8%)」「仕事が好き(22.5%)」「仕事や金銭面での成功を重視し、当時の仕事で成功を考えていた(18.6%)」「新たなことに挑戦していた(34.1%)」「職場の仲間(上司、同僚、部下など)と、よく飲みに行っていた(40.3%)」といった回答が、現在の20代男性よりもはるかに上回り、社交性も高く、上昇志向で前向きな姿勢が強かった傾向が伺えます。
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一方、イマドキの若者は「積極性」ではなく「保守傾向」が強いと調査結果を示している。
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「日常の中に不満が多くある状態(27.1%)」「多くのことがマンネリ化している状態(17.6%)」「練ること、家で一人で休んでいる時に幸せを感じる(51.8%)」といった回答が目立ち、内向きで保守的な傾向が伺えます。
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分析を監修した山田昌弘・中央大学教授(社会学)がコメントしている。
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「20代の草食男子は、やりたくないことをやらずに済むことを最優先に考える、新たに知識や経験を吸収する姿勢や新しいことに挑戦する行動も欠けている。最近では、費用対効果を考えてから消費行動をする“コスパ世代”(=コストパフォーマンス世代)と呼ばれるだけあり、実現性が低いものは敬遠するという判断傾向から、自己成長を促すチャンスを失ってしまっている。草食男子が「エコイケ」世代から学ぶべき要素は多いにある」
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「エコ(economy)でイケ(ていた頃を忘れられない)」オヤジたち。そんな豹変して牙が抜けた肉食獣が、草食を嗤うのはあまりイタダケナイ気がするのは筆者だけだろうか。抜けた牙では肉も食えず、economyに草を食うのみ。ダイエットで脱メタボを果たした筆者も、リバウンドを気にしてランチはサラダだった(←事実)。
20年前のイケイケはもはや夢。「エコイケ」になったからには、オヤジたちも静かに黙すが華ではないだろうか。