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2011.03.22

‎渋谷にB級グルメ村!「ギン酒場」の戦略を読み解く

 たこ焼きチェーン「築地銀だこ」を展開するホットランドが4月下旬、渋谷に全国各地の料理や地酒を楽しめる「B級グルメ村!ギン酒場」の3号店を渋谷に出店するという。

 1号店は銀座に「立ち飲み酒場」として今年1月にオープンした。(ニュースリリース)→ http://tinyurl.com/4fg3z5f
 2号店は新橋に同じく立ち飲みながら、「トレーラーハウス」4台を利用した店舗を3月22日に開店予定している。(同)→ http://tinyurl.com/4zs6yul
 そして、4月下旬に渋谷に進出する3号店は、5階建てのビルを「1棟借り」しての展開となる。19坪の狭小立ち飲み店やトレーラーハウスと異なる3号店は、明らかに今までと異なる戦略を採っていると思われるが、その真意はどこにあるのか。

 3月18日付・日経MJの記事によると、撤退した居酒屋のあとを“居抜き”で活用したということだ。5フロアの総面積は約180平方メートル。大きなビルではないが、1・2号店とは規模もコンセプトも違う。
「1階はシークアーサーやマンゴーなど各地のジュースでウィスキーを割ったハイボールが楽しめる。2階はマッコリにご当地焼酎を入れて楽しめる。3階は地酒や次章中型の閉める店とし、4階は宴会ができるようコース料理なども揃える。5階は厨房だ。」(日経MJより)

 戦略意図の1つは、「B級グルメ」という1つのコンセプトでビル1棟をくくって、「館」としての魅力を打ち出すことに間違いないだろう。
 流通業の例でいえば、「館づくり」は駅ビル「ルミネ」の得意技だ。ルミネといえば、2011年秋に有楽町マリオン「西武」跡に新店をオープンさせることで話題になった。若年女性層をターゲットに多くのテナントに1万円以下の商品を数多く取りそろえて集客し、高い商品回転率で稼ぐモデルを確立させ、「主力の新宿ルミネの1平方メートル当り売上高は約237万円で、西武有楽町店の2.7倍も売れている」(2010年11月11日付・日本経済新聞)という。
 ホットランドの「ギン酒場3号店」も同様に、「B級グルメ」というコンセプトの魅力で「館」を作り、B級グルメならではのコストパフォーマンスのよいフードメニューで集客し、さらにフロア毎に異なる目玉となるドリンクメニューでリピートを促すという意図だろう。
 日経MJの記事について、Twitter(ツイッター)で紹介したところ、多くのフォロアーから「行ってみたい」という主旨のレスポンスがあった。「館」の魅力は十分だといえる。さらに同店ならではの客の回転率のよさが収益に貢献するはずだ。

 「ルミネ」の場合と異なり、「ギン酒場」は自社だけで1棟のビルを使用しているため、もう1つメリットがある。「シャワー効果」を狙えることと、「ポートフォリオマネジメント(PPM)」が組めることだ。

 「シャワー効果」とは百貨店などが上階の魅力を高め、来店客を下の階へ誘導し購買機会を高める手法だ。最上階に飲食店街を作ったり、催事会場を上階に設定したりするのはそのためだ。
 「ギン酒場」の場合は「宴会場」が4階、厨房を除いた実質的な最上階にあるのがポイントだ。宴会の参加者は主体的に来店するのではなく、幹事によって店舗に集められる。幹事も自ら足で店を探すのではなく、ネットの検索で見つけたり、クーポンに釣られて主客されたりする場合も多い。そんな客が4階にたどり着くまでに、1~3階の店舗の雰囲気を認知しながら宴会場におもむくわけだ。当日は宴会で腹一杯飲み食いしてしまうだろうが、後日の再来店が期待できる。「シャワー効果」の変形パターンといえるだろう。

 「ポートフォリオマネジメント(PPM)」とは、複数の事業を行ったり製品を生産・販売したりしている企業が、製品・事業相互の組み合わせや存続を検討するためのフレームワークである。市場占有率(シェア)を横軸に、成長性を縦軸に1つの象限を作る。右上は、導入期にあり市場占有率が低く、成長性が高い事業・商品である「問題児」。左上は、成長期にあり市場占有率が高く、成長性も高い「花形」。左下は市場占有率が高く、成熟期にある安定して成長性が低い、「金のなる木」。右下は衰退期にあり市場占有率も成長性も低い「負け犬」だ。PPMには大原則がある。それは、「花形」不在にならないようにすること。そのためには、積極的に「問題児」を見つけ、育てることだ。二つ目の大原則は「金のなる木」から得た収益を、「問題児」に積極的に投資することである。
 「ギン酒場」渋谷店で考えれば、4階の「宴会場」は固い収益が望める「金のなる木」。強い支持率基盤を持つ「焼酎」を中心とした3階も同じく「金のなる木」といえるだろう。共に上階に置き、階上まで客を吸引する力がある。1階は路面から入りやすいという利点も活かし、「金のなる木」として人気の「ハイボール」を中心とした店舗を配置。そして、4・3階からのシャワー効果での再来店でトライアルさせる「マッコリ」の店をこれから伸ばすべき「問題児」2階に配置したという構図だ。
 「ルミネ」などのテナントビルと異なり「ギン酒場」が優位な点は、ホットランド1棟借りによる自社店舗である点だ。PPMで管理して、成長性を見てフロア間で店舗を入れ替えてもよし。十分に「花形」として育ったら、ビル外に新橋のようなトレーラー店舗や銀座店のような立ち飲み店として切り出すことも可能だ。

 外食産業自体が低価格・低収益の波にさらされ、居酒屋業界は特に「280円均一価格」などの「利益なき繁忙」に陥る構図になっている。厳しい業界の生き残り手法として、流通業とも共通する「館づくり」と、成長性と存続性を考えて事業・商品を評価・管理する手法は他業界でも参考になるだろう。

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