« 「コマセ」を撒く、マクドナルドのしたたかな勝算 | Main | 顧客視点のマーケティング (第3回) »

2011.02.17

「サングラス専門店」が示すビジネスの可能性

 眼鏡店JINS(ジンズ)を展開するジェイアイエヌが、3月からサングラス専門店「スペクトル・ジンズ」を展開するという。

 2月11日付・日経MJの記事には「サングラス専門店 丈夫さ・機能前面に ジェイアイエヌ、600種類用意」とある。同社は「機能的でおしゃれなオリジナルめがねが常時1200種類以上、眼鏡は全てレンズセットで4990円〜」というウリの眼鏡店JINS(ジンズ)を展開する。テレビではメガネ萌えにはたまらない、メガネをかけるとピカイチであるベッキーを起用したり、やたらと身軽な外国人男性が宙返りやでんぐり返しをしたりというCMを展開する競合の「眼鏡市場」が目に付くが、JINZも目元も涼しく、爽やかな顔をして栗山千明、オダギリジョーが「私は軽い女です」「私は軽い男です」とわずか10グラムの軽量眼鏡訴求し、全面対決している。その同社が仕掛けた次の一手が「サングラス専門店」だ。

 記事によれば、店舗(Place)は「5年後に数十店舗規模」というからかなり力を入れてくることがわかる。「価格は3,990~9,990円と、メガネと同様に手の届きやすい水準に設定」とある。特徴は価格(Price)はだけではない。商品(Product)も「サングラスのレンズには、ヘリコプターの防弾生を持つ窓などに使われる高性能素材」を使ったという。一体、どこにかけて出かけるのだろう・・・。と一瞬思ったが、「UVカットの液体を塗り込み、“目を守る”という機能を前面に打ち出す」という。つまり、極端な素材はポジショニング(Positioning)を明確にするためであるようだ。広告(Promotion)としてはCMでもその丈夫さ、「目の保護」を訴えかける派手な演出が予想される。まさか、サングラスを撃つとか・・・?

 そんなポジショニングとマーケティングミックス(4P)で狙う(Targeting)のは、もちろん、「視力の悪い人向けに度付きのサングラスも用意する」とあるが、「眼鏡をかけない20~30代の若者の需要を掘り起こす」とあるように、そちらがメインだ。

この「サングラス専門店」という展開の眼目は、そのターゲティングにある。

 あなたが靴の営業マンだったとしよう。海外勤務を命じられ、任地に到着した。目の前には密林。商売の相手は未開の原住民。靴など履いていない。さて、本社へどんな第一報を送るだろうか。「ダメです。誰一人として靴など必要としていません!」か、「ビッグチャンスです!靴を売る相手があふれています!」か。

 靴を履いている人=顕在需要を持っている人に商品を売るのは誰にでもできる。ジェイアイエヌがやろうとしていることは、靴を履いていない人=顕在需要がない人に、需要喚起をして売ろうということだ。
 密林に裸足で住む人々に、何と言って靴を売ればいいだろう。彼らは靴などなくても不自由しない丈夫な足の裏を持っている。しかし、万が一、足を怪我すれば生死に関わることもある。そのための「足の保護」を訴えかけるだろう。サングラスも同じだ。黒い瞳を持つ日本人は、瞳の色が薄い白色人種と比べ、紫外線に無頓着である。その弊害と瞳を守る必要性を、極端な製品の素材や(恐らく)派手な広告、手軽な価格で訴求し、需要を喚起するのである。

 日経MJの記事は「さすがジェイアイエヌ」と、同社の企画力と商品供給能力に恐れ入るだけで終わりにしていいかといえばそうではない。記事には「普通の眼鏡店では、サングラス売り場はあっても取り扱いは1割に満たないケースが大半だ」とある。

 筆者は近視なのだが、眼鏡マニアでもある。所有している眼鏡は15本ほどにのぼる。そのうち、5本がサングラスだ。(もちろん度付き)。しかし、いわゆる「度付きサングラス」として、サングラスのレンズに度を入れたものは1本しかなく、他は全て普通の眼鏡のレンズに色を入れたものだ。
 サングラスはレンズの曲面の角度によって、度を入れると焦点がゆがんで使用に耐えなくなるデザインのものが少なくない。それに対して、普通の眼鏡であれば間違いがない。普通の眼鏡とはいっても昨今は多様なデザインが存在するため、サングラスにしてもカッコイイものが多いのだ。なぜ、眼鏡店はそうした訴求をしないのか。

 いわゆる「普通の眼鏡店」はJINZをはじめとした新興の眼鏡店の勢いに追われて青息吐息である。そしてまた、ジェイアイエヌは、「眼鏡をかけない20~30代の若者の需要を掘り起こす」として、新たな市場を開拓しようとしている。しかし、そのターゲットに「目をUVから保護」したり、サングラスのファッショナブルさを訴求したりすることは、既存の眼鏡でもできるのだ。

 眼鏡店だけの話ではない。自らはビジネスの中で、「ダメです。誰一人として靴など必要としていません!」と言っていないか、誰もが改めて可能性を探り直すことをしてみたいものだ。


※今回の使用フレームワーク:4P→ポジショニング→ターゲティング

|

« 「コマセ」を撒く、マクドナルドのしたたかな勝算 | Main | 顧客視点のマーケティング (第3回) »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「サングラス専門店」が示すビジネスの可能性:

« 「コマセ」を撒く、マクドナルドのしたたかな勝算 | Main | 顧客視点のマーケティング (第3回) »