「ドライブスルー活況」にほくそ笑むのは誰か?
日本経済新聞の記事によると、ドライブスルーが活況であるという。ドライブスルーといえば誰もが思い浮かぶマクドナルドだけでなく、カレーのCoCo壱番屋や、長崎ちゃんぽんリンガーハットなどの意外な存在も名を連ねている。
記事は2月1日付消費面のコラム「消費のなぜ?」に掲載された。タイトルは「ドライブスルー快走 自宅で味わう外食気分」とある。高速道路の割引料金やガソリン安が追い風となって、マクドナルドではドライブスルー併設店がここ数年、売上げが2桁近い伸びだという。他にも景気のいい数字が誌面に踊る。リンガーハットは2010年6月から既存店にドライブスルーの併設を進めて、改装した約40店で売上高が5%増加。CoCo壱番屋は対応店23店では月商が50万円上昇だとある。
マクロミルの調査で利用実態の裏付けをしている。日頃からドライブスルーを利用しているのは41.1%で、うち29.2%が3年前より利用頻度が増加。利用するためにクルマで外出する消費者も2割近くいるという。
年齢層は20代50%、30代36.3%。食べる場所は自宅47.2%、車中45.5%。「ドライブスルー利用のメリット」の回答は「天候を気にしなくていい」が38.7%、「身なりを気にしなくていい」「1人でも入りやすい」が20%超、「子ども連れでも利用しやすい」「他の客を気にしなくていい」が20%弱という結果だ。(以上、記事より要約)
記事を見ればドライブスルーの活況は誰の目にも明らかであり、外食チェーンはさらにドライブスルー対応店を増加させて行くであろうことも明白だ。では、それと通底する他の動きはないかを考えてみる。
記事の価値は大きく2つある。具体的にドライブスルーがどの程度活況かということを数字で伝えてくれていることと、マクロミルのリサーチパネルによる消費者行動の「理由」が明示されていることだ。
Wikipediaによれば、1977年に日本マクドナルド・環八高井戸店でドライブスルーが設置・導入されたとある。利用者のボリュームゾーンは20代~30代であるが、真ん中の35歳を例にすれば1976年生まれなので、生まれた年からドライブスルーがあり、その成長過程において慣れ親しんできたといえるわけだ。
実は告白すると、筆者は出不精だ。故に、意を決して出かけたなら「せっかくだから店で食べればいいじゃん」と思ってしまう。しかし、利用者はドライブスルーを「家庭の延長」として見て、店内で食べるより人に迷惑をかけないし、自分たちだけでくつろげるというメリットを感じている。そのためにわざわざクルマで買いにいく層も少なくないという結果が出ている。さらに筆者の感覚をいうなら、わざわざ車で出かけて、買って帰ってくるということは苦痛なのだが、面倒さというデメリットを上回るメリットがあると利用者は考えているのだ。
と、考えると、実は昨今活況を呈しているもう1つのサービス思い浮かぶ。「デリバリー」だ。
「機会費用」という考え方をすると、デリバリーにはドライブスルー同等かそれ以上のメリットがデリバリーにあることがわかる。
機会費用とは「ある行為を選択しなかったら、得られたであろう利益」のことをいう。よく「大学に進学した場合、就学せずに就職したら得られる4年間の給与が“機会費用”である」と説明される。4年間分の入学金と授業料なのどの「目に見える費用(会計的費用)」
とは別に「目に見えない費用(経済学上の費用)」が発生しているということだ。
ドライブスルーで食事を購入して家に帰ってくる。目に見える費用は「ガソリン代」ということになるだろう。では、目に見えない費用は何か。それは「余暇時間」だ。余暇時間をいくらと見るかだが、景気が上向いてきたとされる昨今、労働時間が長くなれば余暇時間の対価は向上していく。
家で普通に食べるには食事を作る手間がかかる。外食すると周囲に気を遣う。故に、ドライブスルーを利用して家で食べる利用者の「ニーズ」は何かといえば、マクロミルの調査結果にあるように「外食メニューを家でくつろいで食べること」である。その実現のための具体的なサービス=「ウォンツ」が「ドライブスルー」なのである。
「ニーズ」を充足するための「ウォンツ」として代替的な存在が「デリバリー」だ。デリバリーの利用は、ドライブスルー利用のための目に見える費用を支出して、目に見えない費用の削減(時間の消費を削減)を実現してくれる。
従来の「出前」ではなく、ワンウェイで食事を宅配するデリバリーは、従来のピザだけではなく、弁当、寿司、中華など様々な業種が参入し、若干メニュー価格が割高なのにも関わらず活況を呈している。
その中でも3,700もの店舗のうち、どこからデリバリーサービスを展開しようかと狙い研ぎ澄ましている企業がある。日本マクドナルドだ。
現在、東京・世田谷の用賀インター店1店舗で合計1,500円以上注文すればデリバリー費用を無料とする消費者の受容性テストしている。テスト終了後はメニューに転嫁するか、宅配料を別途徴収するかの検討中である旨を既に表明している。また、実験当初は職域からの注文が多かったというが、家庭からの注文を増やすべく告知強化をしているともいう。
1つの商品、サービスが流行っているという現象を前にした時、消費者の真のニーズは何かを考え、代替できるウォンツとしてビジネスチャンスを見つけることはできないかを考えることが肝要だ。その事例としても、ドライブスルーとデリバリーの利用状況や各社の展開を今後ウォッチしてみたい。
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ドライブスルーを使う人が増えた理由が腹落ちしなかったのですが、目に見える費用は投資可能、かつ、「目に見えない費用」の削減を求める人が増えたため、ドライブスルーを使う人が増えたのでしょうか?
Posted by: hh | 2011.02.03 01:20 AM
コメントありがとうございます。
そこは記事にあるように「利便性」だと思います。そして、現状は利便性の裏側にある「目に見えない費用」に気付いていない(気にしない・気にしていない)消費者が多いのですが、徐々に増えていくのだと思います。
Posted by: 金森 | 2011.02.03 12:48 PM
返信ありがとうございます。
そうすると、眼に見えない費用に気づき始めるとドライブスルーの利用者はやはり減っていく可能性があるということでしょうか?
Posted by: hh | 2011.02.03 09:07 PM