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21 posts from February 2011

2011.02.28

コンビニ×高級チョコ・ゴディバ&セブンイレブンの戦略

 コンビニエンスストアの棚の一角が、また華やぐ季節になってきた。ホワイトデーコーナーである。そこに鎮座ましましているのは、ベルギー生まれの高級チョコレート「ゴディバ」だ。バレンタイン商戦に引き続き参戦している。その狙いを考察してみよう。

 コンビニの棚は、日々各メーカーが壮絶な場所取り合戦を繰り広げている。どんなによい商品を作っても、最終的に消費者に手に取られなければ売れないからだ。そんな店内の棚の中でもホワイトデー商品が置かれているのは特別な場所だ。商品棚の両端で来店客の目を惹きやすい、「エンド」と呼ばれる商品陳列コーナーである。販売重点目標となったキャンペーン商品や、クリスマスや年賀用贈答品、シーズン商品などが並べられる。

 エンドの棚にバレンタイン商戦から並べられている「ゴディバ」。日本での販売の歴史は意外に古く、1972年に日本橋三越に第1号店がオープンしている。以来店舗を徐々に増やし、 現在では200店舗以上を展開している(Wikipediaより)。

 コンビニエンスストア、セブンイレブンとの組み合わせは異色に見えるが、実は両者の思惑はうまくかみ合っている。

Godiva


 チョコレート以前にセブンイレブンが取り扱いをはじめたゴディバ商品がある。アイスクリームである。カップアイス420円、アイスクリームトリュフ399円(各税込み)。コンビニ限定商品ではない。ゴディバの店舗やオンラインショップでも販売している商品だ。
 コンビニで400円前後のアイスが売れるのか?・・・売れているのだ。もちろん取り扱いや売れ行きは添付によって差はあるが、いくつかの店を見て回ったが売れているようだ。
 セブンイレブンが高級アイスを展開するのはゴディバが初めてではない。「銀座千疋屋・銀座プレミアムアイス」とちおとめ&マスカット(各420円・税込み)。創業1834年・日本橋室町の千疋屋総本店から1894年にのれん分けをして以来の歴史を持つ、老舗高級果実店のアイスクリームだ。
 コンビニエンスストアの店舗は狭い。便利な・Convenientな店であるため、多品目を並べるためどうしても1品目あたりのスペースは限られる。また、好立地を確保しようとするため地代家賃は高くなる。故に、売上げ坪単価を高めようと「売れる範囲での高額品」は是非とも並べたいと考える。

 一方、「買う側」の理論では、「コンビニスイーツ」に「払ってもいい」と考える金額(カスタマーバリュー)は7割強が300円を上限と考えている。(ORIMOモバイルリサーチ調べ
 上限300円の壁を突破し、プラス100円以上の価格を払ってもらおうと思った時、必要となるのは「ブランド」だ。それが「銀座千疋屋」であり、「ゴディバ」なのだ。

 では、ゴディバにはどのようなメリットがあるのか。それは、「間口拡大」だ。
ゴディバは「価格が高いため百貨店などでゴディバの製品を購入する客層は40~50歳代が中心」(ワールドビジネスサテライト2010年4月7日放送より)だという。
 ターゲットの何が問題なのか。中高年は健康の問題などで、食生活を変えることもある。また、販売拠点としての百貨店は店舗数と来店客数の右肩下がりが続いている。従来の顧客層と販売チャネルだけで勝負していれば、やがて限界が訪れることは目に見えている。
 
 ゴディバがコンビニエンスストア以前に展開をはじめた販売チャネルの間口拡大策は、「駅ナカ」への展開だ。ターミナル駅なら、JR新宿駅西口の小田急百貨店側改札近く。郊外駅なら東武線柏駅の駅ナカ。その他の駅にも全国6店舗を展開すると昨年発表。ゴディバジャパンの担当者は「新しい客に買ってもらう場所の選択肢に駅ナカがあっても良い」と語っている(同番組)。
 セブンイレブンの店舗数は全国1万2100店。200店規模の自社チャネルや徐々に展開していく駅ナカと比べれば、格段に市場のカバレッジを高め、既存顧客層以外の新たな顧客層へリーチ(到達)することができる。
既存顧客との「接触頻度」も高めることとなる。ギフトではなく「自分買い」。狭小スペースに品目を絞り込んで展開する駅ナカの品揃えは、少量個包装タイプを中心とした「自分買い用」をコンセプトとしている。(日経ビジネス 2006年12月25日・2007年1月1日合併号より)。
 セブンイレブンとの展開ではさらにそれを推し進めている。バレンタイン&ホワイトデー用ギフトではなく、アイスクリーム棚のカップアイスとアイストリュフ2粒入りは、そうした需要を取り込む武器なのだと解釈できる。今まで、百貨店店舗まで足を運んで購入し、保冷剤を加えて持ち運んだ不便なく、地元駅でいつもの会社帰りに「自分にご褒美」できるという利便性の提供である。

 販売チャネルの持つ重要な機能として、見込み客・顧客との「接触」をすることと、その機会で「販売促進」を行うことがある。セブンイレブンの棚のエンドのコーナーで陳列を展開することは、ゴディバ単独ではなし得ないことだ。
 一方、「間口拡大」はリスクもともなう。既存顧客の離反。ターゲット層の拡大や、「手軽に手に入る」という利便性を高めたポジショニングは、ゴディバの「スペシャルティー」に惹かれている従来のファンが感じている価値を損なう危険性と表裏一体である。

 では、どうするか。一つの解は、「期間限定」だ。もとより、「エンド」はシーズン商品やギフト商品のためのコーナーだ。3月14日のホワイトデーが終わればゴディバの商品は姿を消すだろう。もう1つのアイスクリーム棚の商品はどうか。恐らく、春本番前には姿を消すと思われる。いい商品を少量食べたいと思う冬季限定の展開である。間違っても「ガリガリ君」が棚を3つも4つも占有するような暑い季節まで居続けることはないはずだ。

 どんなにいい商品を作っても、消費者に手に取ってもらえなければ売れない。販売チャネルの構築と、そこで行われる販促は、商品とターゲットとの整合性を保ちつつ息の詰まるようなチャンスとリスクのバランスの両面を見据えながら展開されているのである。

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2011.02.24

【連載リンク】金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!・第4回:TOTO「ウォシュレット」

 朝日新聞社広告局が運営する「ウェブ“広告月報”」。企業トップや広告クリエーターのインタビュー、朝日新聞に掲載された広告キャンペーン事例、紙面調査の結果や海外論文紹介などのマーケティング情報が提供されています。

 同サイトで金森がインタビュアーとして、数々の「ロングセラー商品」を生み出したメーカーを直撃取材。そのヒミツを解き明かす連載です。

 今回は発売以来31年間で累計出荷台数3,000万台を突破したTOTO「ウォシュレット」。戸川純を起用し、仲畑貴志が作った名コピー「 おしりだって洗ってほしい」のCM(1982年)を覚えている人はいるだろうか?!
 今回はひじょ~にマニアックな内容まで飛び出したインタビューをご覧ください!


<金森努のロングセラー商品の戦略を聞く!第4回『TOTO・ウォシュレット』 >

 ○記事はこちらから!→ http://tinyurl.com/4usdo5s

■バックナンバー

 ・第1回 岩波書店「広辞苑』」[2010/09/03]  → http://tinyurl.com/4g45rpv

 ・第2回 キッコーマン食品「キッコーマン 特選 丸大豆しょうゆ」 [2010/11/18]  → http://tinyurl.com/4dj28s6

 ・第3回 バスクリン「バスクリン」 [2011/1/27]  → http://bit.ly/eCIB53

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2011.02.23

花盛り「コラボレーション店」の成功のカギはどこにある?

 小売業や外食などをはじめ、様々な異業種コラボレーション店舗の展開が盛んだ。その背景と成功のカギを考えてみよう。

■日本の現状というマクロ環境

 日本は2005年から人口減少という局面に突入した。そして2010年、性別でも女性人口も減少に転換した。一方、独居老人や非婚・晩婚化の影響などで単身世帯化が進み世帯数は増加している。しかし、それも2015年までのこと。世帯数減少という転換点がやってくる。日本市場はどんどんと「縮んでいく」のである。

■縮む日本と海外市場進出

 国内市場が縮小するとすれば、「新市場開拓」は欠かせない。小売業でいえば、ファミリーマートは既に全店売上高の2割を海外が占める。外食は吉野家の安部社長が、中国での店舗数を早期に現在の約4倍である1000店体制にすると発表している。
 では、多くの企業は日本市場から海外に軸足を移すのかといえば、それはそんなに簡単にはオサラバできない。特に小売りや外食はモノを作って売れるところに持っていく製造業とは異なり、地に根を張る業種であるといえる。とすれば、縮む日本市場での生き残りを考えなくてはならない。

■コラボレーションと商売の基本

 商売の基本は「利益を出すこと」と「売上げを上げること」だ。
 縮んでいく市場で店舗効率を上げようと思えば、自店だけで勝負するのでなく店舗をシェアし、コストを低減するという考えに自ずと思い至る。商売の基本である「利益」は『利益=売上げ-コスト』である。コラボレーションという発想の1つの原点だ。
 しかし、異業種コラボレーションによる店舗シェアはそんなに単純ではない。業種が異なるだけに、一方には都合がよくとも、もう一方にとっては最適立地ではなくなるかもしれない。また、シェアすることによって店舗面積縮小で両店ともに魅力が低下する懸念もありえる。故に、コラボレーションによる「シナジー」が発生し、より売上げがアップすること。1+1が2以上になることが欠かせないのである。

■コラボレーションで売上げをアップするには・・・

 1+1を2以上にするにはどうするか。「売上げ」を要素分解して考える必要がある。『売上げ=客数×客単価×利用率』である。
 客数がコラボレーションによって増す条件としては、以下のパターンが考えられる。
 ・一方に集客力がある=一方にとってメリットがある
 ・両店の併設によって集客力が増す=両方にメリットがある
 ということになる。後者であればどちらにも文句はない。前者であれば、集客以外のメリットが顕在化することが求められる。
 客単価がコラボレーションによって増す条件としては、以下のパターンが考えられる。
 ・「ついで買い」の発生=両店にとって機会
 ・「利用提案」による購買促進=両店の努力で機会創出
ということになる。つまり、1+1を2以上にするキモとしては、この部分が大きいともいえる。
 利用率をコラボレーションによって増す条件としては、以下のパターンが考えられる。
 ・両店併設の魅力で両方の利用が増す=両店にとってメリット
 ・一方が高頻度利用形態であり、もう一方の利用が底上げされる=一方にとってメリットがある
 ということになる。この場合もメリットを提供する側は、他要素でメリットを享受する必要がある。

■成功するコラボレーションのパターン

 上記の通り、コラボレーションによるコスト低減効果だけでなく、売上げを増し利益も創出するためには、両店が以下のようなパターンであることが望ましいといえる。
 A店=身近で利用頻度の高い商品を扱っている店(反面、「身近さ」が低ければそこで買わなくてもいい)
 B店=希少性のある商品を扱っている店(反面、「希少性」が低ければわざわざ買いに行かない)
 つまり、AB両店は単独で本来の強みである「身近さ」「希少性」で勝負できるのであれば、コラボレーションする必要はないのだが、「縮む市場」においては、「身近さ」や「希少性」を感じてくれる消費者自体が減少し、競合他社との取り合いが激しくなっている。そのために、「1+1を2以上にする」こと、つまり併設、コラボレーションをするのである。

■「カラオケ店+ケーキ店」という事例

 2月21日付日経MJに「郊外カラオケ店 ケーキ店を併設」という記事が掲載された。カラオケ「ビッグエコー」を運営する第一興商が、「シャトレーゼ」とFC契約を結び、まず、三鷹の店舗1階部分の有休スペースを活用するということだ。
 「利益=売上-コスト」という原則で考えれば、受付・待合スペースなど以外の機能を有しないカラオケボックスにおける1階部分を有効活用できるということは、店舗効率を上げることができる。コスト低減と売上げアップである。
 「1+1を2以上にする」という考え方では、A店=身近で利用頻度の高い商品を扱っている店(反面、「身近さ」が低ければそこで買わなくてもいい)=カラオケ・ビッグエコーとなるだろう。身近ではあるが、カラオケの利用客は減少しており、カラオケボックス業界全体の客室総数も減少している。B店=希少性のある商品を扱っている店(反面、「希少性」が低ければわざわざ買いに行かない)=ケーキ・シャトレーゼとなる。シャトレーゼはFCで全国500店を展開し、ポイントカード会員500万人を有する。スイーツブームの昨今、利用機会のポテンシャルは高いと思われるが、「希少性」は高くないといえるだろう。
 記事からは、ケーキ店部分に飲食スペースは設けないという。そして、ケーキ購入客の「カラオケついで利用」と、カラオケ客の利用後のお土産「ついで買い」利用を狙っていると読み取れる。つまり、両店併設によって、来店客数・利用率を高め、ケーキとカラオケの「クロスセリング(購買機会増)」、カラオケにケーキを「アップセリング(購買金額・店数増)」という客単価を高める戦略である。

 市場縮小という決定づけられた未来。しかし、座して死を待つわけにはいかない。生き残りをかけたコラボボレーションは様々な業種で今後、模索、展開されることになるだろう。その際は、人間関係とも同じように、お互いの特性を十分見極めることが欠かせない。


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【おしらせ】出版記念セミナー開催!【東京(満員御礼)・名古屋(残席あり)】

 2月16日に金森のマーケティング関連4冊目の本が発売されます!

  「“いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)
Imatsuka

 「30分で分かるマーケティングのフレームワーク」で読者と基本を共有し、2010年1月~12月までの最新事例を「勝手分析」したコラムを約20本。資生堂・ワコール・アサヒビール・リンガーハットなど企業のマーケティング現場に突撃取材した事例編を7本掲載しました。2月16日に大手書店・Amazonなどに順次配本されます。

  ○詳細と目次はこちら → http://www.animo-pub.co.jp/book.html#03

 新刊出版を記念して、セミナーを開きます!

 【出版記念勉強会】 「“いま”をつかむマーケティング」~あの商品がヒットしたワケ・顧客が集まるヒミ ツをフレームワーク で読み解く~

 書籍のコンテンツを題材に、「フレームワークの使いこなし」をインタラクティブに2時間で学ぶセミナーです。
 参加者には前日に発売されたばかりの新刊書籍とともに、アタマいっぱいに詰め込んだ「最新の事例」と「フレームワーク」をお持ち帰りいただきます。

 ※東京会場は終了しました。ご好評、ありがとうございました!!

 ■開催日時:3月5日 18:30~20:30 ※終了後、ご希望の方は懇親会があります!
 ■開催場所:名古屋会議室名駅西口店第7会議室
 ■参加費:9,800円(税別、テキスト代込み・書籍代、懇親会参加費別)

 ○詳細はこちら→  http://www.insightnow.jp/communities/id/94

 もっと「使えるマーケティング」を学びたい!・・・という熱心な方
 とにかく「新しいネタ」が欲しい!・・・という即物的な方
 なんか「オモシロイ話」が聞きたい!・・・という享楽的な方
 み~んなまとめて、「おもしろかった!」「ためになった!」と言わせてみせます。

 是非、ご参加ください。
 
 ●名古屋会場のお申し込みはこちら http://www.insightnow.jp/communities/id/95

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2011.02.22

顧客視点のマーケティング (第4回:最終回)

初出:「バリューコンピテンシー:第29号・2010 Winter(社団法人日本バリューエンジニアリング協会)」全4回

「顧客に受入れられる“整合性”を考える」

◎「ミックス」することがキモ

 最終回の今回は、具体的な施策である「マーケティングミックス」を考えよう。「マーケティングミックス」という言葉より、「4P」という言葉の方が一般にはなじみがあるかもしれない。Product(製品)・Price(価格)・Place(販路)・Promotion(コミュニケーション)の頭文字である4つのPである。あえてそれを「ミックス」というには理由がある。現実のビジネスシーンで考えてみよう。

 ある日あなたは、昨今の不景気、消費者の低価格志向に対応するため、ある製品の機能を絞り込んだ新製品の設計を担当することになった。連載第1回で取り上げた「製品特性分析3層モデル」などを用いてどのような価値を維持し、どのような価値をそぎ落とそうかと検討することになる。しかし、製品の検討だけでは済まない。価値を絞り込んだ分だけ、当然原価が低下するが、既存製品より顧客から評価は下がる可能性が高い。価格(Price)改定を検討し、妥当な販売価格を設定しなければならない。製品の仕様が簡素になったのであれば、既存の販売チャネル(Place・販路)が専門店を中心としていたなら、量販店に拡大して、より数多く売ることを考えなければならない。すると、広告(Promotion)もコアなターゲットへの接触から、より多くの人の目に触れる媒体や目を惹く表現に変更する必要がある。

 上記のように4Pの一つの要素だけではなく、他の要素と関連づけて考えることが「ミックス」の意味なのだ。実際の業務では「新製品」だけではなく、「価格改定」や「販路拡大・変更」、「広告・販促企画」など、4Pの一部が主要な検討課題となることが多いが、その際も「ミックス」を考慮することが欠かせない。当たり前なようだが、そのバランスを常に意識して考えることは意外と難しいのだ。

◎製品(Product)の留意点

 製品の市場への浸透状況は、導入期→成長期→成熟期→衰退期という普及過程(プロダクトライフサイクル)を辿る。導入期では、顧客が製品を手に入れて実現したい「中核価値」だけでも購入してもらえる。例えばデジタルカメラで考えれば、「デジタルで画像がきれいに残せること」だ。故に、当初は画素数が競争課題の中心だった。成長期においては、中核価値は当たり前な要素となり、中核をどのように実現するかという「実体価値」が競争課題となる。デジタルカメラの例なら「薄型コンパクトな携行性のよい本体」や「高倍率なレンズのズーム比率」などである。成熟期においては、さらに中核価値とは直接関係のない「付随機能」での競争となる。デジタルカメラは今日、成熟期にあるため、「印刷機能内蔵」や「動画・静止画合成機能」などを各社がアピールする戦いとなっている。重要なポイントは、前述のように製品の普及過程によって顧客から求められる価値、競合と勝負する要素が変化することだ。「顧客をよく見て、ニーズを把握し、深掘りすること」が大切なことがここでもわかるだろう。

◎顧客に受入れられる価格を考える

 自社製品の価格(Price)を設定するには、連載第2回の環境分析で述べた、3C(Company・Customer・Competitor)分析と同様の要素を考慮する。
 まず、Company=自社として、コスト積み上げて価格を考える。「原価志向」の価格設定という。自社で製品の生産にかかったコスト(固定費の償却分+変動費=原価)にいくら利益を上乗せしていこうかと考える方法だ。但し、その価格が顧客にとって妥当と受け取られるとは限らない。そのため、Customer=顧客の視点でも考える。顧客視点を「需要志向」の価格設定という。「顧客がその製品にどれだけの価値を感じてくれるか」という考え方が「カスタマーバリュー(Customer value)」だ。商品は常に競合と比べられるため、Competitor=競合の視点も必要だ。「競争志向」の価格設定という。同種の製品特性を持つ競合商品がどのような価格設定をしているのかを把握しておくことも欠かせない。
 生産財(B to B=Business to Business)マーケティングにおいては、「カスタマーバリュー」を上回る「テクニカルバリュー」を獲得することが求められる。あくまでカスタマーバリューは、顧客にとって顕在化したニーズに対する上限価格だ。顧客企業も気がついていないような課題を発見し、解決する提案を行うことがさらなる価値向上と対価獲得において欠かせないのである。


顧客ニーズと製品特性を考慮して販売チャネルを設計する

 販売チャネル(Place)はマーケティングミックスの4Pの中でも、利害関係が絡む「他社」が介在する要素が大きい。それだけに慎重な設計が求められる。しかし、そこでも基本は「顧客」を起点に考えたい。
 例えばパソコンはメーカー直販であれば、中間チャネルのマージンも不要で、流通在庫を気にせずBTO(Built To Order)で商品を提供できる。一方、量販店チャネルでは、自社で広告を展開することなく、チャネルに商品を流せば全国の各店舗で量販店が店頭に置いてくれて、販売員が説明して売ってくれる。両チャネルの最大の違いは、ターゲットとする顧客層とそのニーズの違いである。直販はパソコンに詳しいユーザーがターゲットであり「安価に自由にカスタマイズしたパソコンを手に入れたい」というニーズへの対応。量販店は初心者を中心としたターゲットが店頭で実物を見て、触って、販売員から説明を聞きながら買いたいというニーズに対する対応である。
 生産財においては顧客のニーズ以外に製品特性を考慮したチャネル設計が重要だ。説明や提案が欠かせない製品であれば、直販やメーカー専売の販売会社などのチャネルとなり、説明不要な汎用的製品であれば、より数多くの代理店や業者向けのプロショップなどの店頭に並べて売られることになる。どのような顧客が、どのようにすれば製品理解ができるかという観点で検討すればいい。


◎顧客に買ってもらえる・買い続けてもらえるところまで設計する

 「広告」「広報」「販売促進」といった顧客とのコミュニケーション戦略(Place)には、通常、営業訪問や商品デモンストレーション、サンプル配布という人が動く活動も「人的販売」という要素としてとらえる。その四つの手段で顧客に製品を認知させてから、購買行動を完結させるまで、どのように顧客接点を確保して働きかけを行うかを設計することになる。Attention(認知獲得)→Interest(興味喚起)→Desire(欲求喚起)→Action(購買行動)という四段階で考える。いかに途中でストップしないように、上記の四つの手段を組み合わせて顧客の背中を押し続けるかが肝要だ。消費財は広告や販売促進。生産財は人的販売に偏った設計が散見されるが、どの顧客接点で、どのように顧客をもう一歩購入に進めさせることができるか、何度も検討することが求められる。

 以上のように、顧客を起点に4Pは検討することが重要であるが、「マーケティングミックス」という言葉の通り、4つの要素が整合していることが重要だ。同様に、4Pの手前で、前回までに述べたセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングや、現在の外部環境・競争環境との整合性を検証することも欠かせない。しかし、何より重要なことは自社のマーケティングを「顧客視点」でもう一度見直してみることである。

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2011.02.21

「勘と経験」から「データ」へ?変わる自販機販売戦略

 桃の節句も近づき、日差しや吹く風の中にも少しだけ春を感じる今日この頃。JR東日本管内の駅では超レアな「果汁飲料」が販売されているのをご存じだろうか。「桃の花」は春の季語であるが、「桃果汁」だ。そして、その商品の裏側には、販売データとバイヤーの勘と経験がせめぎ合った物語が隠されていた・・・そんな話を社長に聞いてきた!!

■こだわりの地産飲料

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 2月15日からJR東日本管内のエキナカ飲料自販機・acure〈アキュア〉、NEWDAYS、KIOSK 等で販売が始まった桃果汁飲料・「モモごこち」。「地産飲料」と銘打って、100%国産・福島県産のブランド品種「あかつき」のみを使用して作ったという、超こだわりの商品である。販売元はエキナカ自販機を運営するJR東日本ウォータービジネス。同社は2010年から東日本エリア地産の果物や天然水等を、地元企業との共同企画で商品化して主にJR東日本のエキナカで販売・消費する、「地産エキ消」ともいうべき取り組みを行っている。
(参考記事: 「地産エキ消」を仕掛けるJR駅ナカ自販機の狙い

■リニューアルと販売戦略

 『モモごこち』は昨年販売された桃の果汁飲料、『もぎたて「んまいもも」』のリニューアル商品だ。同社ニュースリリースで今回のリニューアルのポイントを調べてみる。
 「桃の産地を絞り、単一品種に」変更。「ペットボトルをリラックス&リフレッシュが伝わるデザインに刷新。キャップを桃色にし、ネーミングは飲用シーンをイメージした『モモごこち』に」改定した。中味と外見両面からの改定を行ったということだ。

 ・・・と聞くと、ごくフツーの製品改定に感じるのだが、筆者はこの商品からはただならぬ「気配」を感じたのだ。というのも、昨シーズンの商品「んまいもも」を購入している消費者の姿をエキナカでは随分と見かけた。にもかかわらず、これだけの改定をするということは、何らかの戦略的な意図が隠されているに違いないと思ったからだ。

■リニューアルのポイントは・・・

 リリース元である同社企画部に問い合わせをしてみた。
 まず、昨シーズンの商品、「もぎたて『んまいもも』」の売上げについてだ。すると、次のような回答があった。
「販売期間中での競合NB主力商品と比較して、週販実績120%。果汁カテゴリーでトップ。当初目標販売数に対して、実績140%」という堂々たる実績。さらに顧客の声も、「他の高果汁の桃飲料と違って、みずみずしくて飲みやすい。さらりと飲めて、本格的な桃の味が楽しめる」と好評であったという。

 そんなに実績があり、好評だとすれば、大幅な改定を行う意図が謎である。
産地限定・品種限定というこだわりを強める「中味」の改定は「地産飲料」という同社独自の取り組みからすればわかる。しかし、商品名とパッケージという外見の大きな変更はターゲットが変更されたように思われるのだ。

 企画部の回答によると、外見の変化はターゲット変更というよりは、ターゲット像をより明確化したというべき結果であることがわかった。即ち、「メインターゲット=20代~30代働く女性層、サブターゲット=20代~30代の働く男性層」だという。そして、そのメインとサブの設定こそ、販売データと同社バイヤーの勘と経験のせめぎ合いの結果を表すものであったのだ。

■販売データから見たターゲット像

 同社には他の飲料メーカーや自販機運営外会社にはない武器がある。飲料の販売データを精緻に取得できることだ。
 同社は「次世代自販機」と呼ばれる自動販売機を現在約40台稼働させている。商品画像を表示し、画像にタッチして商品を選択する47インチの大型液晶ディスプレイ。その上部に利用者の属性(年代・性別)を判別するセンサが搭載されている。利用商品×属性をPOS情報として取得できるのだ。また、suicaの個人情報に関わらない性別などの属性データも、カードリーダー・ライターを搭載した3,000台の自販機から収集している。
(参考記事:次世代自販機は液晶テレビの夢を見るか?  )

 「いままでの自販機では取得できず、販売社もメーカーもわからなかった販売時点(POS=Point Of Sales)のデータを活用して、商品作りや売り方を通してお客様の便益を高めたいのです」。
 同社の代表取締役社長・田村 修氏が取材に応じてくれた。そのための次世代自販機や地産のオリジナル商品だというのだ。

 今回も昨年から活用できるようになった、suicaや次世代自販機のデータを活用した商品リニューアルを計画したという。

 データから見えてきたのは意外な消費者の購買像だった。
 果汁飲料は「朝」に購入されると思われていたが、実際には販売データからは、「14時以降の構成比が高い」ということがわかった。つまり、「おやつなどの小腹満たしや、リフレッシュ時に飲まれる」と想定することができたという。また、「女性」の購入が多いと思われていたが、実際には「男性」の購入が多かった。
 街ナカの自販機利用者は男女、9:1であるといわれている。しかし、同社の統計によれば、エキナカの自販機は男女6:4。比率が均衡しているため果汁飲料は女性が買っているであろうという想定だったのだ。

■「あえて、女性!」というバイヤーの狙い

 「結局は、女性をメインに狙うことにしたんですよ」。田村社長は笑いながら話してくれた。そこには同社の製品戦略を考えるバイヤーの狙いがあるのだという。
 バイヤーにはトータルで見た販売データではなく、そのブレイクダウンと、それ以外の定性的な事実が気になっていたという。トータルで見れば男性購入者が上回る果汁飲料の販売数だが、初期段階ではまず、女性が購入している。インターネットを見てみれば、新発売した同社の果汁飲料に関してブログやSNS、掲示板などにいち早く書き込みをしているのも女性だ。
 「まず、女性が新規購入をして間口を広げ、その後、男性が購入してリピートを重ねるという動きが想定されたのです」と田村社長はいう。同社バイヤーもそこに注目して、女性を意識したネーミングやパッケージにこだわったのだという。
 E.M.ロジャースの「イノベーション普及論」では、まず、新しいものに飛びつく「イノベーター」が動き、その後イノベーションの価値を評価して導入する「アーリーアダプター」が動く。その「価値を評価できる人=目利き」の態度を見て、一般的の人々「アーリーマジョリティー」が動く。エキナカ自販機では、イノベーターとアーリーアダプターが女性であり、男性がアーリーマジョリティーであるということなのだろう。だとすれば、バイヤーの狙い通り、女性が購入し、男性が認知しなければ販売は「初速」を得ず、ヒットせずに「失速」することになるのだ。
 マーケティングにおける「ターゲット設定」においても、Realistic Scale(規模)、Rate of Growth(成長性)などと並んで、Rank(優先順位)とRipple Effect(波及効果)の評価が欠かせないのである。

■ロジックと勘の整合が今後の課題

 街ナカの多くの自販機は、どの自販機で何が売れたかというデータは残る。しかし、それが「いつ売れたか」という「時間」のデータが取れない。むろん、性別などの属性は全く取得できない。その意味では、コンビニに大きく後れを取っている。JR東日本ウォータービジネスが次世代自販機とsuicaで取得できるようになった販売データ。それは大きな販売と顧客利便性を高める武器になる。

 「まだまだこれからです」と田村社長はいう。まだ蓄積が少なく、活用手法も確立していないからだと。
それでも、今までの全くの勘に頼った商品政策よりはロジックに基づいた戦略立案ができるようになった。今回の『モモごこち』は、ロジックと勘のミックスによる戦略立案だ。その成果は果たしてどのような結果を生み出すのか。今後はさらにデータを活用した販売が確立していくだろう。その中で、勘と経験が整合されていくのか、その行方も非常に楽しみである。

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2011.02.18

顧客視点のマーケティング (第3回)

初出:「バリューコンピテンシー:第28号・2010 Autumn(社団法人日本バリューエンジニアリング協会)」全4回


顧客に魅力を伝えるポジショニングが最大のキモ


◎商品の魅力をイメージさせる

 「ニンテンドーのWiiってどんな商品?」と人に説明を求めたら何と答えるだろう。「家庭用据え置き型ゲーム機で、価格は二万円で・・・」などと詳細スペックを語り出す人がいるかもしれない。しかし、続けて「どんなふうに使うの?」「誰と使うの?」と聞けば、ほとんどの人が、まず間違いなく「こうやって・・・」と手にコントローラーを持ってそれを振る様を演じ、「家族とか友達とかと一緒にやる」と答えるはずだ。「家族や友人と一緒に、体感的に遊べるゲーム機」。それが、多くの消費者の頭に刻みつけられたWiiのポジショニングである。
 ポジショニングとは、「顧客の頭の中に明確に商品の魅力をイメージさせること」である。「Wiiってどんな商品?」と聞いてみれば、同商品が多くの人に正しく魅力を伝える「ポジショニング」に成功して、国民的ゲーム機として普及したかがよくわかる。同時に、マーケティングにおけるポジショニングの重要性が理解できるだろう。


◎唯一無二のポジションを取れ

 芸人は「キャラが被った」などという言葉をよく使う。同じような芸人がいては面白くも何ともない。つまり、ポジショニングがかぶっているということが致命傷なのだ。
ドイツ製のプレミアムカーであるBMWの例を見て見よう。同社は自社のクルマを「究極のドライビング・マシン」と言っている。日本においては全ての広告のロゴマークに添えられた「駆け抜ける喜び」という言葉の方が有名だが、同義だ。BMWは単なる移動や輸送のための手段としてのクルマを売っているのではない。ひとたびハンドルを握れば、運転する者に疾走感によって喜びを与えてくれるそんな商品を売っているのであると主張しているのだ。それはBMW意外では実現することができないと言い切っている明確なポジショニングである。

◎顧客の「買う理由」を考えよ

 BMWのようにひと言で唯一無二の存在を示せるなら良いが、なかなかそれは難しい。また、人は初めて見るものは、何か比較対象がなければ判断しづらい。故に、競合商品との差別化を意識してポジショニングは検討する。前出のWiiの場合もX-Box、PS3という商品の存在との対比で魅力がより明確になっているともいえる。競合と比較して優位性を明確にするには、二つの軸を設定して整理するとよい。それを「ポジショニングマップ」という。二軸で区切られた四象限のどこにポジションを取るかで、ターゲット顧客の頭の中に明確なイメージを抱かせるのかを整理するのがポジショニングマップであり、伝わりやすさが勝負だ。ポジショニングの「わかりやすさ」のキモとなるのは何といっても「軸の設定」である。二つの軸で、顧客にとって自社の魅力がいかに競合より明確になるかを抽出するのだ。
 マップの作成には、まずターゲットのKBF(Key Buying Factor)を洗い出す。KBFとは「顧客が購入に踏み切る理由」であり、顧客が認める「価値」である。つまり、マップの軸=KBFなのである。価格、品質、大きさ、商品バリエーション、CSランキングなど……。その商品を顧客が「買う理由」=KBFとなる要素を余すところなく洗い出すことが肝要だ。

◎マップは一度で描けると思うな

 ポジショニングマップを用いた整理は単純に見えて意外なほどに難しい。なぜなら、顧客の「買う理由」をたった二つにまで絞り込んで競合以上の魅力を打ち出さなければならないからだ。故に、一度で描けるなどとは思わずに、何度でも軸を変えて描き直してみることが必要となる。その際に、最も心がけたいのが「顧客視点」だ。売り手の気持ちだけで書いたマップなど、顧客にとっての魅力は何度描いていても出てこない。重要なのは、顧客の立場に立って魅力を表わしていくことなのだ。場合によっては一つのマップだけで整理が付かないことがある。その場合は二つ程度のマップをつなげて意味合いを出すことも可能だ。
 例えば、携帯型オーディオプレイヤーのポジショニングマップを書くことを想定してみよう。ターゲット顧客はKBFとして、「価格が安いこと」「軽いこと」「丈夫なこと」「多機能であること」「カラーバリエーションがあること」「操作がしやすいこと」「丈夫なこと」などを挙げたとしよう。その中で、最も重要視するものから順番を付ける。KBFの一番目が「価格の安さ」、二番目が「多機能であること」であれば、各々を軸としたマップが描ける。しかし、競合となる存在をプロットしてみると、優位性が出せないことがある。つまり、「被っている」のである。その場合、ターゲット顧客の三番目以降のKBFで軸を切り替えてマップを書き直してみる。「軽量であること」「操作がしやすいこと」という軸でマップを描くと、ようやく自社の優位性が見えてくることになる。

◎顧客視点で確認してみよう

 一通りポジショニングを構築したら、大きく二つのポイントで確認をしてみることが必要だ。まず、「ターゲットは明確か」ということ。前回、セグメンテーション→ターゲティングと考えてきたが、「誰にとって魅力を訴求するのか?」が曖昧では全く意味がない。さらに、前回「ダメなターゲティング」として例示した「若年層」などというようなざっくりした定義ではなく、具体的にどのようなニーズを持ったどんな人なのかという人物像が定義されているのかが重要だ。
 次に「魅力は明確か」がポイントだ。自社ならではの提供価値をValue Propositionという。それがターゲットにとって意味のあるものとして示されているかである。それを確認するためには、軸の意味合いを言葉にしてみることである。図二のオーディオプレイヤーの場合なら、二枚のマップを連続して「携帯オーディオプレイヤー○○は、価格が安いのに機能が豊富で操作がしやすく、その上軽量(だから使いやすくて持ち運びが楽ちん)」という具合だ。ポジショニングマップは描くことに苦労するほど、その過程で「売り手の言葉」に変容しがちである。最後にポジショニングの本来の意味である「顧客の頭の中に明確に商品の魅力をイメージさせること」になっているかチェックすることが欠かせない。

◎BtoB(生産財)における留意点

 当連載は一般消費者を対象としたBtoC(Business to consumer)マーケティングを基本としているが、ここで企業顧客を対象としたBtoB(Business to Business )・生産財におけるポジショニング上の留意点を述べておく。BtoBとCの差異は様々な点があるが、ポジショニングにおいて最も大きく作用するからだ。
BtoBにおけるポジショニングはマップで整理するより、「QCD」というキーワードで表現できる。QCDとは「Quality(品質)」「Cost(価格)」「Delivery(納期)」だ。ポジショニングはその組み合わせである。例えば日本電産の永守社長は、自社のコンセプトを「確かな技術、値段は高め、しかし納期は半分」と表現している。つまり、Q=高い技術、C=高め、D=早いというポジショニングである。一般消費者のモノやサービスの購買は、自身の満足を充足させる様々な要素が絡み合う。しかし、企業の購買は自社の利益を最大化するために、シンプルにしてシビアなポジショニングの提示を求めてくるのである。


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2011.02.17

「サングラス専門店」が示すビジネスの可能性

 眼鏡店JINS(ジンズ)を展開するジェイアイエヌが、3月からサングラス専門店「スペクトル・ジンズ」を展開するという。

 2月11日付・日経MJの記事には「サングラス専門店 丈夫さ・機能前面に ジェイアイエヌ、600種類用意」とある。同社は「機能的でおしゃれなオリジナルめがねが常時1200種類以上、眼鏡は全てレンズセットで4990円〜」というウリの眼鏡店JINS(ジンズ)を展開する。テレビではメガネ萌えにはたまらない、メガネをかけるとピカイチであるベッキーを起用したり、やたらと身軽な外国人男性が宙返りやでんぐり返しをしたりというCMを展開する競合の「眼鏡市場」が目に付くが、JINZも目元も涼しく、爽やかな顔をして栗山千明、オダギリジョーが「私は軽い女です」「私は軽い男です」とわずか10グラムの軽量眼鏡訴求し、全面対決している。その同社が仕掛けた次の一手が「サングラス専門店」だ。

 記事によれば、店舗(Place)は「5年後に数十店舗規模」というからかなり力を入れてくることがわかる。「価格は3,990~9,990円と、メガネと同様に手の届きやすい水準に設定」とある。特徴は価格(Price)はだけではない。商品(Product)も「サングラスのレンズには、ヘリコプターの防弾生を持つ窓などに使われる高性能素材」を使ったという。一体、どこにかけて出かけるのだろう・・・。と一瞬思ったが、「UVカットの液体を塗り込み、“目を守る”という機能を前面に打ち出す」という。つまり、極端な素材はポジショニング(Positioning)を明確にするためであるようだ。広告(Promotion)としてはCMでもその丈夫さ、「目の保護」を訴えかける派手な演出が予想される。まさか、サングラスを撃つとか・・・?

 そんなポジショニングとマーケティングミックス(4P)で狙う(Targeting)のは、もちろん、「視力の悪い人向けに度付きのサングラスも用意する」とあるが、「眼鏡をかけない20~30代の若者の需要を掘り起こす」とあるように、そちらがメインだ。

この「サングラス専門店」という展開の眼目は、そのターゲティングにある。

 あなたが靴の営業マンだったとしよう。海外勤務を命じられ、任地に到着した。目の前には密林。商売の相手は未開の原住民。靴など履いていない。さて、本社へどんな第一報を送るだろうか。「ダメです。誰一人として靴など必要としていません!」か、「ビッグチャンスです!靴を売る相手があふれています!」か。

 靴を履いている人=顕在需要を持っている人に商品を売るのは誰にでもできる。ジェイアイエヌがやろうとしていることは、靴を履いていない人=顕在需要がない人に、需要喚起をして売ろうということだ。
 密林に裸足で住む人々に、何と言って靴を売ればいいだろう。彼らは靴などなくても不自由しない丈夫な足の裏を持っている。しかし、万が一、足を怪我すれば生死に関わることもある。そのための「足の保護」を訴えかけるだろう。サングラスも同じだ。黒い瞳を持つ日本人は、瞳の色が薄い白色人種と比べ、紫外線に無頓着である。その弊害と瞳を守る必要性を、極端な製品の素材や(恐らく)派手な広告、手軽な価格で訴求し、需要を喚起するのである。

 日経MJの記事は「さすがジェイアイエヌ」と、同社の企画力と商品供給能力に恐れ入るだけで終わりにしていいかといえばそうではない。記事には「普通の眼鏡店では、サングラス売り場はあっても取り扱いは1割に満たないケースが大半だ」とある。

 筆者は近視なのだが、眼鏡マニアでもある。所有している眼鏡は15本ほどにのぼる。そのうち、5本がサングラスだ。(もちろん度付き)。しかし、いわゆる「度付きサングラス」として、サングラスのレンズに度を入れたものは1本しかなく、他は全て普通の眼鏡のレンズに色を入れたものだ。
 サングラスはレンズの曲面の角度によって、度を入れると焦点がゆがんで使用に耐えなくなるデザインのものが少なくない。それに対して、普通の眼鏡であれば間違いがない。普通の眼鏡とはいっても昨今は多様なデザインが存在するため、サングラスにしてもカッコイイものが多いのだ。なぜ、眼鏡店はそうした訴求をしないのか。

 いわゆる「普通の眼鏡店」はJINZをはじめとした新興の眼鏡店の勢いに追われて青息吐息である。そしてまた、ジェイアイエヌは、「眼鏡をかけない20~30代の若者の需要を掘り起こす」として、新たな市場を開拓しようとしている。しかし、そのターゲットに「目をUVから保護」したり、サングラスのファッショナブルさを訴求したりすることは、既存の眼鏡でもできるのだ。

 眼鏡店だけの話ではない。自らはビジネスの中で、「ダメです。誰一人として靴など必要としていません!」と言っていないか、誰もが改めて可能性を探り直すことをしてみたいものだ。


※今回の使用フレームワーク:4P→ポジショニング→ターゲティング

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2011.02.16

「コマセ」を撒く、マクドナルドのしたたかな勝算

 「獲物を釣り上げたい」と思ったら、あなたはどんな手を使うだろうか。普通の釣り方で辛抱強く待つか、獲物が食いつきそうなエサを使うか、それとも釣りではなく一網打尽を狙うか・・・。

 帝国データバンクによると、居酒屋の倒産件数が過去最高を記録しているという。(2月14日SankeiBiz:「居酒屋」の倒産、過去最多 消費者の低価格志向で競争激化
 背景としては、07年からの道交法改正によって、飲酒運転が厳罰化された影響もさることながら、デフレによる消費者の低価格志向で値下げの消耗戦が展開されたことが最も大きい。今日、外食産業では「規模の経済」を効かせ、調達コストの低減や人件費の効率化を図ることが欠かせない。参入障壁が低い業種ゆえ、個人経営や小規模チェーンも次々に新規参入するも、生き残りができずに倒産件数が益々上昇するという構造が出来上がっている。

 デフレ下の勝ち組といえば、すき家を運営するゼンショーが日本マクドナルドを抜いて連結で昨年、外食産業売上トップとなったことが記憶に新しい。グループの中核である牛丼のすき家は、店舗数でも吉野家を抜き第1位となっている。
何かに駆り立てられるような拡大路線のワケは、同社の財務諸表・バランスシート(BS)をから見えてくる。有利子負債の占める割合が多く、そのうち1年以内に返済期限の来る短期有利子負債も大きい。つまり、どんどん拡大し、店舗で日銭を稼いでキャッシュを回し続けることが欠かせないのである。しかし、それも顧客支持がなければ成立しない。

「終わらない“牛丼戦争”……ゼンショー、280円の狙い」 (2月9日Business Media誠)という記事に注目すべき記述がある。2009年に200円台の価格(290円)を打ち出して第3次牛丼戦争を仕掛けた同社であるが、「従来のまま値段を下げたら、これまでの値段は何だったのかと不信を与えるだけ」と、品質向上も同時に図ったという。ポイントは「おいしいが粘り気が強く牛丼に使用したことのないコシヒカリを採用した」ことだという。
 価格戦略において、価格は安いが品質もそれなりのポジションを「エコノミー戦略」という。普通に品質を上げれば価格も上がり、「中価値戦略」というポジションに収まるが、価格を据え置いて品質を上げれば「グッドバリュー戦略」という競合価格優位性が発揮できるポジションを獲得できる。つまり、「エビで鯛を釣る」のがゼンショーの狙いである。
 「コシヒカリ」というエビで釣れる鯛は何か。それも記事に記述がある。「原価が高くなった分は客数とすき家の強みであるトッピング系牛丼でカバーする」ということだ。すき家と吉野家がよく比較されるが、サイドメニューやトッピングがない吉野家が苦戦し、すき家が好調なワケがここにあるのである。
 
 FC化を進めた結果、売上ではゼンショーに抜かれたが、財務体質はさらに健全になり、「デフレの勝ち組」としての存在感も大きい日本マクドナルドはどうだろうか。
 同社の戦略の妙をひとことで言えば、「バランス」だ。アメリカナイズされた新商品を繰り出したかと思えば、次には懐かしの日本オリジナルメニューを期間限定復活させ、高単価メニューの展開時には、100円・120円マックの販促も同時に行う。チキンのような大型新カテゴリー商品は高からず安からずという中価格帯で市場に送り出した。モレ抜けがない、恐ろしいまでにバランスの取れた展開である。
 では、マクドナルドはどのような「釣り」のスタイルなのだろうか。

 昨今のマクドナルドの釣りエサは「コーヒー」だ。評判の悪かったコーヒーの味をプレミアム化して市場の評価を得た。120円としてはコストパフォーマンスがよいと、オリコンの調査による「買いたいコーヒー」ではホット、アイスとも1位を獲得している。つまり、「グッドバリュー戦略」のポジションにあるわけだ。
 さらに外部環境が変わった。新興国需要の高まりなどを背景とした、コーヒー豆の値上がりだ。コーヒーチェーンなどはついに吸収しきれずに、価格転嫁を開始する。スターバックスの価格改定は2月15日から。販売数の多いショートサイズを値上げし、優良固定ファン向けの大きなサイズを値下げする調整である。それに対し、マクドナルドは「値上げせず」の宣言を原田社長自らが行っている。(マクドナルド原田社長が制服姿で接客 コーヒー価格は「企業努力で吸収」: 2月14日オリコン)
 また、二の矢も忘れてはいない。「コーヒー9品目2800店に拡大 マクドナルド社長(2月15日日本経済新聞)」。「マックカフェ」の名称で「カフェラテ」などコーヒーメニュー全9品目を扱う店は全国1800店。コーヒー専業チェーンより2~3割安い価格が消費者の支持を得ているため、2011年中に2800店まで拡大するという。同時に、コーヒーの2杯目を無料とするキャンペーンを20日まで展開する。

 上記のオリコンの記事にある原田社長のコメントが注目に値する。「コーヒー豆の国際価格高騰について「他社と同様にインパクトを受けている」と実情を明かしつつ、「でもうちはハンバーガー屋。(現状の価格なら)企業努力で吸収できる。今後もコーヒーに力を入れてやっていきたい」と力強く語った」という。さらに、現状について「コーヒー単独で(のビジネス)は厳しいと思う」。しかしコーヒーを目的とした顧客の来店頻度の多さ、コーヒーをきっかけにしたバーガー類の購入等に触れ、「コーヒーのビジネスは大事。3月末から4月にもコーヒーのキャンペーンを打ち出していきたい」とした」という。
記事にさらっと書かれている「なお、同社の売上のうちコーヒーは3分の1を占めているという」という記述が極めて重要だ。原田社長のコメントにあるように、コーヒーでは利益は出ていないが、その売上げが3分の1までを占めている。さらに、無料コーヒーやお代わり無料のキャンペーンを展開して、客数を増やし、本業のハンバーガー類を販売するという戦略なのである。

 価格戦略(Pricing)には、「ロスリーダープライシング」というものがある。赤字覚悟の目玉商品(ロスリーダー)を設定して集客。利益率の高い商品も同時購入するように誘い、低収益と高収益を合わせて全体利益を創出する「マージンミックス」で稼ぐ手法だ。
 マクドナルドの展開は、もはやコーヒーメニューを「ロスリーダー」として大量に投下する。もはや「エビで鯛を釣る」というスタイルではなく、大量に魚を集めるための「コマセ」を投入しての釣りである。コマセは多くはエビとよく似ているが安価なオキアミが用いられる。確かに牛丼そのものをエサにトッピングを釣るより、コーヒーというオキアミを撒いてハンバーガーという鯛を釣る方が大規模・大胆に展開できるだろう。

 プライシングはマーケティング戦略の総仕上げである。いわゆる4Pのその他の要素、製品を作る、販路を構築・維持する、広告を展開するという行為は全て「コスト要因」である。それだけに、プライシングが重要なのだ。ゼンショーの、そしてマクドナルドの大胆にして緻密な戦略に学びたい。

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最新刊・本日発売:“いま”をつかむマーケティング

「勝手分析」&「現場取材」
“いま”をつかむマーケティング
――あれがヒットしたワケ・顧客が集まるヒミツ
(アニモ出版)Photo

 お待たせしました!図解 よくわかるこれからのマーケティング (同文舘出版)に続く、マーケティング本が本日から発売されます!

 「よくわかる・・・」は教科書的にまとめましたが、今回はネタ中心。2010年中の動きやヒット商品をフレームワークで切りまくり!「なぁるほど、世の中こうなっていたんだ・・・」「ヒットした理由はそれだったんだ!」と目からウロコがぽろっぽろ落ちること請け合い。そして、「フレームワークって、こうやって使うんだ!」と理解・納得できるはずです。

 「マーケティングって一体何なんだ?」という超・初心者は実際の事例ネタで楽しく読み進められ、
 「どんなフレームワークを使えばいいんだ?」という初心者は、フレームワークの活用法が理解でき、
 「フレームワークの使いこなしに自信がない!」という実務者は、「使える技」が身につき、
 上級者は人に教える時の事例集として活用できます!!

 切りまくるネタは当Blogでもおなじみの品々やサービス。
 例えば、カップ麺「ラ王」、格安航空会社「春秋航空」、ハッピーターンの「亀田製菓」、マック対ケンタの「チキン戦争」、ヤクルト「ミルミル」、「ちふれ化粧品」、ハデハデ靴「メレル」、「GOPAN」、「コンビニおでん」、「森永アイス」、「ユニクロ」、「バナナ自動販売機」、「桃ラー」、「ザクリッチ」、「オールフリー」、「モーニングレスキュー」などなど・・・

 さらに今回はいつもの「勝手分析」だけでなく、企業のマーケティング担当者に「現場取材」を敢行しました!
 取材先は、アサヒビール、花王、、エースコック、リンガーハッ、掃除ロボット・ルンバ(セールス・オンデマンド)、駅ナカ自動販売機(JR東日本ウォータービジネス)、ワコール。ドラマチックな話が満載です!


【本書の構成】

 第1章 30分でわかるマーケティングのフレームワーク

 第2章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その1)
     ――“いま”の環境を分析せよ!

 第3章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その2)
     ――“いま”をとらえた戦略を練れ!

 第4章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その3)
     ――自社の強みを活かせ!

 第5章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その4)
     ――競争優位を構築せよ!

 第6章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その5)
     ――ターゲットを徹底的に見ろ!

 第7章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その6)
     ――自社ならではの商品の価値を作れ!

 第8章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その7)
     ――買ってもらえる価格で届けろ!

 第9章 「勝手分析」で“いま”を読み解く(その8)
     ――刺さるプロモーションを展開せよ!

 第10章 「現場取材」で“いま”を切り取る


 お求めは・・・
 Amazon→ こちら  “いま”をつかむマーケティング

 「一度見てみたい!」という方、もしくは「Amazonで在庫切れ!」という場合は、以下の全国の書店で平積みで展開されていますので、お手にとってご覧ください。
Blog_book_list

 尚、3月5日に出版記念セミナーを開催致します。東京会場は満員御礼となりましたが、名古屋会場は多少、残席があります。
 詳しくはこちら→ 【名古屋開催!!出版記念勉強会】 「“いま”をつかむマーケティング」~あの商品がヒットしたワケ・顧客が集まるヒミ ツをフレームワーク で読み解く~

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2011.02.15

「ファミレス復活」のキーワードは何だ?

 「衰退が止まらない」といわれたファミリーレストランが復活しはじめているようだ。そのワケは何だろうか?

 「牛丼戦争」というキーワードが人々の口の端にのぼるようになり、餃子の王将と日高屋が勢力を競い合っていた09年頃。「ファミレスの衰退が止まらない」とメディアがこぞって書き立てた。すかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズという「ファミレス御三家」の一角である「すかいらーく」が川口新郷店(埼玉県)閉店と同時に、39年間の歴史に幕を降ろしたのも同年10月29日のことである。

 ファミレス衰退のワケは各紙誌や評論家・専門家が様々な分析を行っている。各分析が共通宇して指摘しているのが、「セントラルキッチン方式」という一括大量生産と「FC店舗展開」による大量供給体制だ。本来は規模の経済を効かせるバリューチェーン上の強みが、消費者の嗜好の多様化によって「メニューが凡庸で没個性的」という弱みに転じてしまった。また、本来、ファミリーに向けた「手ごろな価格」での料理の提供を行うはずが、デフレの進行によって相対的に割高になってしまった。対照的に、各店舗に独自メニューの自由度を持たせ、さらにメニューを低価格化した餃子の王将が「デフレの勝ち組」として脚光を浴びたのである。

 では、ファミレスが復活しはじめたワケはナゼだろう。
 2月11日付・日経新聞が「ファミレス 手軽さ再評価」という記事を掲載している。インタビューに応えたある主婦の言葉が象徴的である。曰く「ここ2~3年、外食は焼き肉か回転ずしに絞っていた。比べてみると、ファミレスの方が安上がり」とある。

 記事では人気メニューが紹介されている。すかいらーく亡き後、同グループがローコスト低価格オペレーションで運営する「ガスト」。そこでは、単品830円と同店の客単価より100円高いビーフシチューが好評だという。「家庭で調理しにくいメニューであれば、多少高めの商品でも注文が集まるようになった」とコメントがある。
 旧御三家の1つ、「デニーズ」では、「自宅で作るよりファミレスのほうがカロリーが低く、栄養バランスも取れると考える健康志向の消費者も増えている」とみているという。人気メニューはホワイトチェダーチーズのフォンデュ風ハンバーグ、565キロカロリー・880円、蟹と十八穀のふんわりあんかけドリア、406キロカロリー・850円。

 上記の人気メニューの価格を見ると、単品価格とはいえ800円台と、以前のファミレスの価格からは割安になっている。低価格化が実現できるようにサプライチェーン、自社のバリューチェーン、オペレーションを見直したのだろう。さらに、本来手間のかかる料理を押し出すことによって、セントラルキッチンという本来の強みを復活させた点も大きい。また、凡庸といわれたメニュー企画も、低カロリーメニュー開発に注力した。
 「手ごろな価格で食べられる」という価格面。「自分で作るには手間がかかる料理が食べられる」という時間と手間の節約。「自分では計算して作れないローカロリーメニューが食べられる」というノウハウ。それらはターゲットのKBF(Key Buying Factor=購買理由)であり、それらの組み合わせで、復活のためのポジショニングを消費者に示しているのである。

 ポジショニングが活きるのは、それを評価するターゲットとその背景があるということだ。記事には「支出抑制のために家庭で食事をする“内食”志向は根強いものの、家族連れを中心に“たまには外食を”という意識も広がっている」とある。見出しにも「節約疲れ?客足回復の兆し」とある。
 先に挙げた主婦のコメントでは、家族の外食は「焼き肉と回転ずし」だったという。その両メニューはどのように変化しているのか。
 焼き肉は内食で代替できる。秘伝のたれやホルモン系に期待しなければ、家庭のホットプレートでも十分だ。内食志向が強まれば、代替される。
 内食と外食以外には「中食」がある。従来の「出前」に代わるものとして「デリバリー」が伸びてきている。家では作れない。買いにいく手間も、外食に行く身支度の必要もないと人気を博しているのだ。そのメニューの一つが「宅配ずし」だ。子どもに無制限に食べられてしまうというリスクも低減できる。
 すると、内食、中食、その他の外食というファミレスの競合となる存在が、まだすくい取れていないターゲットのニーズは何だろうか。それが、「家庭で作るのが面倒なメニューや、ローカロリーなメニューを手軽な価格で食べられる」というものだ。

 業界の中で「負け組」の烙印を押され、客離れも激しかったファミレスが復活を始めている。それは、明けない夜はなく、止まない雨はないという事例となるだろう。しかし、そのためには自社の内部要因を見直し、外部環境と競合の動きに目を光らせ、顧客とそのニーズを充足するポジショニングを実現することが欠かせないことがわかるだろう。

※今回の使用フレームワーク:バリューチェーン→ポジショニング→KBF→ターゲティング→3C

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2011.02.14

青山の自転車通勤スーツに学ぶターゲティングとキャラ立ち

 紳士服チェーンの青山商事が「自転車通勤向けスーツ」を発売した。その狙いは何だろうか?

 ブームからすっかり定着した観のある「自転車通勤」。「ジテツウ」という呼び名も生まれているが、省略されるのはそれだけ口の端に上っているということを意味している。国土交通省も「都市交通における自転車利用のあり方に関する研究(2005年)」以来、交通分担率の向上を目指す方針を打ち出している。政府の動きだけでなく、不況を背景とした節約志向や、健康志向の高まりや、朝活、残業縮小という趣味時間の拡大などの社会的背景も後押ししている。さらに寡占化した部品メーカーが規模の経済を活かして低価格化が進むなどの要素も加わって、スポーツタイプの自転車価格は一昔前より驚くほど低価格化している。

 青山商事の「自転車通勤向けスーツ」は上記のようなマクロ環境を背景とした狙いであることは間違いない。では、2月11日付・日経MJに掲載された記事から商品の詳細を見てみよう。商品名は「アクティブモバイル」という。「ジテツウ」にピッタリのネーミングだといえるだろう。仕様は「背広とパンツの全体の表地に伸縮性」はアタリマエとして、その上で「背中、袖、ヒザの部分の裏地には特に伸縮性が高い裏地を採用した」という点が出色である。
 注目すべくは価格だ。49,800円(スペアパンツ付き59,800円)。2プライス、19,800円か29,800円で若年層向けデザインのスーツが色々と選べるイマドキの価格としては強気なプライシングであるといえるだろう。そのあたりから青山の戦略が見て取れる。

 記事によれば、「近年、大手紳士服店各社が打ち出すスーツの基本性能は“高伸縮性”や“自宅で洗濯可能”などを中心に一巡し、目新しさは薄れつつある」とある。その中で、「若年層向け高伸縮性スーツは競合他社も展開しているが、青山はあえて特定用途を打ち出し、差異化につなげる構え」という狙いだという。

 競合との差別化して獲得したいのは「若年層」であるが、その中で特に狙っているのはどんなターゲットだろうか。ターゲットには大きく2つの種類がある。ピラミッドを思い浮かべるとわかりやすいが、上部にあるのが「イメージターゲット(または、コミュニケーションターゲット)」。その下に広がるのが「ベースターゲット(または、ビジネスターゲット)」である。
 青山の自転車通勤ーツで考えれば、まずはジテツウ実践者を狙っているのは自明だ。張り切って高価な自転車も買った。ヘルメットやグローブ、バックパックも揃えた。しかし、意外と困るのがウェアなのだ。スーツのまま乗ると、何とも窮屈。かといって、現在の自転車通勤・オフィス環境では着替えもままならない。だとすれば、多少高くとも、自転車に乗るのにピッタリなスーツなら多少高くとも惜しくはない。
 ジテツウ実践者(自転車ツーキニストともいう)がターゲットとなるのは間違いないが、それだけではまだボリュームが少ない。規模の経済を効かせて原価を低減化するクリティカルマスに達しない恐れがある。そこで狙いたいのが、ベースターゲットとして、「オレもいつかはジテツウ!」と思っている層。または、「自転車に乗れるくらいなら、さぞやからだが動かしやすくて楽に違いない」と機能的なメリットを感じる、スーツを着て軽作業を行う事がある層だ。記事にも「スーツを着て行う運動として一般にイメージしやすい自転車を全面に打ち出し、機能性をわかりやすく伝える」とある。

 青山の自転車通勤スーツの眼目は、そのターゲット設定とKBF(Key Buying Factor=購入決定要因)のとらえ方、そしてそこから抽出されたポジショニングにある。
 フルオーダーのスーツなら、テーラーに「自転車にも乗れるくらいカラダを動かしやすいスーツに仕上げて欲しい」と注文すれば、それを叶えてくれる。しかし、値段はバカ高い。吊し(既製服)のスーツも着心地と価格は比較的相対的だが、カラダを動かすという目的には特化していない。ましてや自転車には。つまり、「多少高めの価格だが、カラダを動かすことにかけては抜群」というポジションを示し、その価値を感じるターゲットのココロをバッチリとつかむ戦略なのである。

 ジテツウの広がりという外部環境を活かし、自転車ツーキニストとその周辺ターゲットのニーズを見定めて、「キャラ立ち」した商品を示し買う気にさせるという見本になる展開。は、万人受けする商品を安価に大量販売すると思われがちな紳士服チェーンから学ぶところは大きいだろう。


※今回の使用フレームワーク:PEST→4P(Product・Price)→3C(Competitor)→Targeting→KBF→Positioning

※自転車通勤に興味を持った方はこちらの記事をどうぞ→「明日から始める!初めての自転車通勤」(Kanamori Marketing Office・Business Media誠)

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2011.02.10

見えてきた?牛丼各社の戦略?

 メディアが伝えるように、大手牛丼3社の1月の各社既存店売上高が発表された。各社とも期間限定の値下げキャンペーンを実施したこともあり、客数を伸ばして2ヶ月連続の増収となったのだ。さらに注目すべきは、値下げ戦争をしながらも、各社が戦略の違いを打ち出しており「出口」を探る動きが見えてきたことである。

■牛丼戦争と消費者の受け止め方

 牛丼値下げ合戦がテレビなどのメディアで伝えられる時には、必ずと言っていいほど「不景気なので10円でも安い方が助かります」とかインタビューに応えるオジサンとか、「みんなの分まで頼まれて大変です!」と牛丼弁当の入ったレジ袋を両手にさげた若い会社員の映像を流す。そして、「消費者の懐にはありがたいが、牛丼各社は大変だ」的な落としどころとなる。しかし、ネット上の掲示板やSNS、Twitterなどの書き込みを見ると異なる意見が散見される。「もうそこまで値下げしなくいていい」「さすがに品質が心配」などなど・・・。もはや牛丼の価格は、消費者の需要価格の最下限を下回り始めているのである。
では、各社はどう動き始めたのか。

■松屋:定食屋化をひた走る

 松屋は9日、先月に引き続き牛丼(牛めし)を14日から値下げするキャンペーンの発表を行なった。「松屋はどこまでもやる気か!」と思わせる展開であるが、よく見ればキャンペーンには続きがある。牛めしの値引きが終了するやいなや、キャンペーンは牛焼肉定食、カルビ焼肉定食と続く。焼肉系定食は松屋の中でも高単価だ。ガッツリ食べたい派向けの肉量を2倍にするメニューは1,000円近い。定食メニューが豊富であることが好評の理由である松屋にとっては、牛めしはもともと集客のツールでしかなく利益を出せるとは考えていないと思われる。それを、定食にも手を出しやすい連続値下げキャンペーンによって、来店客を「出世魚」のように徐々に高単価メニューに誘う作戦なのである。それは、松屋が「定食屋化」を強める動きであると考えてもいいだろう。

■すき家:高効率ペレーションと単価アップのバランス

 牛丼戦争においてキャンペーンでない時に最低価格を提示している、すき家を運営するゼンショー。そのバランスシートを見ると売上げも大きいが負債の大きさも目に付く。さらに、その中でも1年以内に返済期限が来る短期有利子負債の比率が大きい。手持ちのキャッシュが比較的大きく、財務的には安定している吉野家と比べると対照的だ。それ故、低価格にして客数を増し、「日銭」をどんどん稼ぐことが必要だといえる。
 1月の値下げ合戦の後、ゼンショーが展開するすき家には1つの珍しいメニューが登場した。「牛まぶし」。名古屋名物ウナギの「ひつまぶし」の牛丼版で、途中まで食べ進めてから薬味とだし汁をかけるというものだ。価格はミニ(230円)~メガ(810円)と量が6段階あるが、実は牛丼は通常の牛丼と何ら変わらない。だし汁と薬味でプラス200円というオイシイ商売である。もともとすき家はキムチやチーズなど様々な牛丼のトッピングが人気であり、それによって約100円のメニュー価格アップを実現している。それをさらに強力にしたメニューというわけだ。つまり、最低価格で集客し、トッピングやそのバリエーションでさらなる客単価向上を図る施策を今後も強化すると考えられる。
 しかし、単純に単価アップが図れればよいというわけではない。すき家は競合の中でも最も店舗オペレーションが効率化されており、店舗クルーの一挙手一投足までマニュアル化され、それを徹底する教育がなされているという。そんな中で、メニューを複雑化させることは効率悪化をもたらす。効率を下げずに単価アップをするためのメニューがトッピングであり、「牛まぶし」なのだ。今後もそのフォーマットでのバリエーションが登場すると考えられる。

■吉野家:国内プレミアム化・中国進出強化

 筆者はかねてより「吉野家は牛丼を500円程度の価格にし、各社と一線を画すプレミアム化をせよ」と主張してきた。穀物飼料の米国産牛、その中でも「ショートプレート」という脂肪の入り方が最も牛丼に適した部位を用いることにこだわりを持ち続けてきた吉野家だからこそできることだからだ。昨年11月に発売された「牛鍋丼」は、肉質を変え、しらたき・焼き豆腐などを用いて肉量を加減し、280円という競合価格の設定をしつつ、牛丼の価値を保つ戦略であった。にもかかわらず、1月11日に牛鍋丼ではなく、牛丼を250円という価格にキャンペーン値下げしたのは衝撃的であった。しかし、そこには明確な戦略がある。牛鍋丼で競合に流れた客足は戻ったが、客単価の低下が止らない。そこで、今一度、「吉野家の牛丼」に消費者の目を向けさせようという意図である。通常価格で牛丼は牛鍋丼より100円高であるが、食べ比べれば明確にその価値の違いはわかる。牛丼に顧客を呼び戻す作戦を決行し、時と場合によって「食べ分け」をさせて以後の客単価UPを狙ったのである。
 吉野家はダイナミックな動きもしている。「自社株買い」だ。筆頭株主である伊藤忠商事が保有する全株を買い取ったのである。伊藤忠も中国市場での外食展開には注力している。一方、吉野家は同市場において海外牛丼店舗を約200店展開。2010年代半ばまでに1千店の計画を掲げているのだ。その規模になれば、株主の展開ともバッティングすることも多くなる。それを避け、経営の自由度を上げる目的であると考えられる。そして、競合が中国市場進出を本格化する前に店舗規模で突き放す意図であろう。

■マクロ環境の変化

  牛丼戦争はいつまで続くのか。
マクロ環境を見ると、「コーヒー豆値上げ」というニュースがクローズアップされているが、それ以外にも新興国での需要増大によって大豆価格なども上昇し、製品・メニューへの価格転嫁の検討や予定が進んでいる。さながら価格転嫁・値上げのタイミングとさじ加減で食品・外食各社が明暗を分けた2008年頃の様相の再来である。
牛丼各社もいつまでもチキンレースならぬビーフレースを繰り広げているわけにはいかないのである。それ故、各社各様の戦争終結のシナリオを描き始めているのである。消費者としては価格だけで選ぶのではなく、各社の意図に思いを馳せながら、各々のメニューを楽しんでみたい。

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【好評終了】健康的なイベントのおしらせ:ピラティス教室【次回開催をお楽しみに!】

 終了致しました。次回開催を企画中です。またの機会をお待ちください! 

 仕事や勉強ばかりしていないで、たまには健康的なコト、しませんか?

 ということで、元・グロービス経営大学院単科生、金森クラス受講生と提携して「ピラティス入門・体験教室」を開催することにしました。

 ピラティスは呼吸法+骨盤運動を基本としたゆるやかな動きから始まり、筋肉を解きほぐしていくエクササイズです。体幹のインナーマッスル(深層筋)を鍛える骨盤運動と筋力アップにより、基礎代謝を高めるためダイエット効果はもちろん、ゴルフやランニング、テニスの基礎体力を向上させることもできます。

 今回は、入門・体験編として1時間のセッションを金曜の夜に行ないます。
 仕事帰りに一杯飲んで帰るのと、ピラティスでカラダをゆるやかに、しなやかに鍛えるのでは大違いですよ!


 <こんな方にオススメ!>

  ※グロービス受講者・関係者割引あり!
  ※INSIGHT NOWセミナー受講者も割引

  ○デスクワークによる肩・首・腰の凝りにお悩みの企画・事務系職種の方
  ○立ち姿勢が多く、腰の痛みや疲れにお悩みの講師・トレーナーの方
  ○仕事・勉強のしすぎで活動量が不足がちで、ダイエットをしようとしている方
  ○体幹トレーニングによって、ゴルフ、ランニング、テニスなどのスポーツの成績を向上させたい方
  ※男女問わずご参加ください


■講師:井野 美瑞希(いの・みずき)  T01200150_0120015010642382399

 ネバダ州立大学認定ピラティス指導者
 ノイアートプロモーション 代表

 ※当然のことながら、講師は金森ではありません!!念のため。
   (毎週水曜日の教室で金森も習ってます!)

■日時:2月18日(金) 20:00~21:00

■場所:千代田区半蔵門12-12 HOMAT hanzomon4階
     PE&HR社 hanzomon office(INSIGHT NOW!セミナールーム)
     http://www.insightnow.jp/blogs/id/52
     ※東京メトロ・半蔵門駅 徒歩5分(麹町からも歩けます)

■定員:8名

■参加費:3,000円(税込み)
 ※必要な用具は全て準備してあります。身体を動かしやすい服装のみ、ご用意ください。(シューズは不要です)
 ※グロービス大学院・マネジメントスクール受講生、講師・社員、及び過去にINSIGHT NOWセミナーを受講した方は500円引き!

 詳細・お申し込みは → https://www.insightnow.jp/applications/id/177

 通常クラスの会場・開催日時などのご案内はこちら → 「0208.pdf」をダウンロード

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2011.02.09

顧客視点のマーケティング (第2回)

初出:「バリューコンピテンシー:第27号・2010 Summer(社団法人日本バリューエンジニアリング協会)」全4回

「マーケティングの全体像で考える」


◎市場と顧客の変化をつかめ

 低経済成長下、「売れない時代」に必要なことは、まずは「顧客をよく見ること」だと前回述べた。顧客の抱えた「不便・不満・不自由」などの「不」の字から「ニーズ」をすくい取ることだと。そのために必要なことは、市場と顧客の変化を確実につかむことだ。ヒット商品の事例を見てみよう。

 09年2月に発売され、好調な売上げを上げている花王「メリットさらさらヘアミルク」。「親子で使えるトリートメント」というコンセプトが女児を持つ母親の人気を博している商品である。同社がつかんだ市場と顧客の変化は、女児の定番ヘアスタイルであるおかっぱアタマが激減し、現在はセミロングが増え、10年には五割を超す可能性があるというトレンドだった。さらに、ターゲットの設定とニーズの拾い方が出色である。子どものロングヘアはヘアセットの際に、「くし通りや指通りの悪さ」「絡まる」といった問題が発生していることをつかんだ。子どもの髪は大人と比べて細く、柔らかい。調べてみれば成人女性の半分ほどの太さと男性しかなかったという。ヘアケア製品メーカーである花王の技術で問題を解決するなら、髪をさらさらにするためには、トリートメントを用いることを推奨することだ。しかし、トリートメントは大人の女性用というイメージが強く女児の使用率は二割に留まっていたという。そこで、「親子で使う」というコンセプトを考案したのである。

◎「マーケティングマネジメント」の流れで考える

 顧客のニーズをつかんだと思って商品を開発・上市したとしても、それだけでは本当に成功するという確証は得られない。果たして市場に受け入れられるのか、競合環境の中で勝ち抜けるのか。それを明らかにするにはマーケティングマネジメントの流れ、全体像を見て検証する必要がある。

・マクロ環境(PEST分析)=政治・経済・社会・技術といった、世の中の大きながなれ、影響要因を明らかにする。この場合は、「さらさらヘアミルク」で考えれば、経済環境は不景気の影響が顕著だ。社会環境は少子高齢化が進んでいる。
・ミクロ(競合)環境(3C分析)=市場の環境・顧客のニーズ(Customer)、競合の動き(Competitor)、自社の状況(Company)の中から、顧客は誰で、そのニーズは何か。自社の活かすべき強み、克服すべき弱みを明らかにする。市場環境は不景気と少子高齢化・人口縮小という市場縮小傾向が顕著だが、子ども関連では、一人当たりにかける費用が増加する傾向もある。「子ども向けトリートメント市場」を開拓しようと考えれば、使用者は女児だが、顧客は母親だ。前述の通り、「子どもの髪が絡まることを解消したい」というニーズはつかんだ。競合には現状では該当商品はない。では、子ども向けトリートメント」を花王が開発・発売したら競合はどう動くか。同様の商品を上市してくる可能性は否めない。では、花王はというと、「メリット」というブランド資産を持っている。メリットブランドは、発売開始以来39年の歴史を持つ。当初は「フケ・かゆみを抑える若い女性向けシャンプー」というターゲットとポジショニングであったが、2000年頃から「家族の髪と地肌の健康を守るシャンプー」とターゲットとポジショニングを変更し、その浸透に注力してきた。それが奏功し、消費者調査でも「定番シャンプー」として常にトップブランドをキープしている。つまり、購入者である母親が「子ども向け」を考えたときには最も想起率が高く、競合には優位な状況にあることが判る。「家族のための」というブランドを活かして、「親子で使う」ことを訴求すれば、使用量は二倍になり、しかもブランドスイッチしにくい指名買いのポジションを確保することができるのだ。
 以上のように、市場環境を適切に把握・検証することが成功のカギとなるのである。

◎マーケティングのキモはSTP

 「さらさらヘアミルク」の成功は、市場環境に適合していたことと、ターゲット顧客とそれに対する魅力の打ち出し方であるポジショニングが明確であったことだ。その意味からも、マーケティングにおける最重要ポイントはSTPであるといえる。
 STPとは、”Segmentation””Targeting””Positioning”の略。市場を魅力のある切り口に切り分けるのがセグメンテーション。魅力あるターゲットに自社製品の独自性や差別化ポイントが明確に伝わるような打ち出し方を考えるのがポジショニングである。

◎セグメンテーションはニーズで括る

 セグメンテーションは性・年齢を「共通項」として括る例がよくある。テレビ業界や広告業界などで用いられるM1、F1といったセグメントはその際たるものである。M1とは男性20~34歳。以降、M2・M3。女性はがF1。以降F2・F3。しかし、少し考えれば、F1層でも20歳と34歳の女性は趣味、嗜好、行動、ニーズにかなりの差異があることがわかるはずだ。第一の問題点として、セグメント=カタマリが大きすぎることが上げられる。それ以上に「性・年齢」という切り口が、いつも「共通項として働くとも限らないのが問題である。では、もっとカタマリを細分化すればいいのか。例えば、以下のような切り口が考えられる。性別・年齢・未既婚・家族構成・職業・収入・学歴など人口動態(デモグラフィック)。都市部か郊外か地方か・温暖か寒冷かという、地理的な切り口など。しかし、どれを用いればいいのかに悩むだろう。
セグメントに切り口は、ここでも「ニーズ」に注目することがポイントだ。のようなニーズを持った人々がいるのか、ニーズに注目してある程度大きなニーズのカタマリを見つけたら、そのニーズを持っているのはどのような属性(性・年齢等)に落として考えるのだ。属性から考えてしまうと、共通のニーズを持っているとは限らない。ニーズから考えて、属性に落とすのがポイントなのである。この場合は「逆もまた真なり」ではないのだ。

 では、「共通項」を何にするのか。性別・年齢・未既婚・家族構成・職業・収入・学歴など人口動態(デモグラフィック)。都市部か郊外か地方か・温暖か寒冷かという、地理的な切り口などがある。しかし、今日の生活者の価値観や行動そうした切り口で共通項を見つけられるほど単純ではなくなっている。
 注目すべき切り口は、「ニーズ」だ。
どのようなニーズを持った人々がいるのか、ニーズに注目してある程度大きなニーズのカタマリを見つけたら、そのニーズを持っているのはどのような属性(性・年齢等)に落として考える。従来のように属性から考えないことがポイントである。

◎ターゲットの魅力度は3Cで評価する

 ニーズに注目して、共通事項を元に属性に落として、いくつかのセグメントに括ることができたら、どのセグメントをターゲットとするのか評価を行う。それには前出の「3C分析」と同じ3つのCの視点で検証する。Customer(市場と顧客)、Competitor(競合環)、Company(自社)だ。Customerにはどの程度の市場規模があるのか、どの程度の成長性があるのか、収益性はどうなのか。Competitorとして、どんな力を持った競合相手が、どれくらいいるのか。Companyとして、そのターゲットを取りに行くことは今までの自社の戦略と整合性はあるのか。以上の要素を勘案し、魅力度の高いセグメントをターゲットとして設定するのだ。


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2011.02.08

Special Warning of Threats?:「SWOT分析」使用上の最大の脅威、それは・・・

 「さて、まず環境分析から考えてみようか」と、会議やブレストの際に最もよく使われるフレームワークの一つに「SWOT分析」がある。しかし、それを使用すること自体に大きな問題点が隠されているのである。その脅威をここで警告し、「使えるSWOT」にするための対応策を記していこう。

 SWTO分析最大の脅威とは、分析を誤り、その誤った分析結果自体が一人歩きすることだ。ミスリードした分析結果に後から振り回される悲喜劇。是非とも避けたいところである。

Swot_basic


 「SWOT分析」は自社を取りまく「外部環境」と自社内の「内部要因」を、S = Strong(強み)、S = Weakness(弱み)、O = Opportunity(機会)、T = Threat(脅威)に分類し、自社にとっての「市場機会」と「事業課題」を明らかにして戦略の方向性を導き出すフレームワークだ。

 では、あるモノゴトを目の前にして、あなたはそれを「ネガティブ」にとらえるだろうか、「ポジティブ」にとらえるだろうか。
 「グラスに入っているワインを見て“ああ、もう半分しか残っていない”と嘆くのが悲観主義者。“おお、まだ半分も残っている”と喜ぶのが楽観主義者である」。
イギリスの劇作家、ジョージ・バーナード・ショー(George Bernard Shaw:1856~1950)の言葉である。

 あなたが悲観主義者か楽観主義者かはわからない。しかし、モノゴトは概してどちらの解釈も成立する。同じものごとでも、一面からだけ見ると大きく解釈は異なる。それ故、両面を見ることによって正しい解釈を行なわなければならないのである。

「SWOT分析」の問題点は、実はそのフレームワークの構造にある。
 目の前のモノゴトに対して、「これはS(強み)」「これはW(弱み)」などと二分していく。「この子はいい子」「この子は悪い子」などとレッテルを貼っていくようなものだ。たまったものではない。一人の子ども、一つの行いも多面的にとらえれば良い面も悪い面もある。その両面をとらえ、明らかにしていくことが大切なのだ。

 もう一つは、会議やブレストで出てきた意見を「解釈」せずにフレームに落とし込んでしまう構造的な問題点が存在することだ。
 例えば、「当社には店舗がたくさんある」という意見が出たら、それはSWOTのどこに分類すればいいのだろうか。多くの場合、「強み」に分類するだろう。では、それはなぜ、「強み」なのか。
 「店がたくさんある」から、「顧客接点がたくさん存在する」ことになり、「販売機会を逃さない」という“解釈”をすれば初めて「強み」という意味合いが出てくる。
 会議の論点がコストに関わることであれば、おそらくそれは「弱み」に分類されるだろう。それも“解釈”することによって、「店がたくさんある」から、「店舗の地代家賃と人件費という維持コストがかかる」ことになり、「高コスト体質につながる」という「弱み」の意味合いが明確化できるのだ。
内部要因の「強み・弱み」について言及してきたが、外部環境の「機会・脅威」に関しても同様であると理解されたい。

Swot


 フレームワークの誤用によるミスリードが社内を一人歩きするという脅威を退けるために、筆者のオリジナルのフレームを紹介しよう。
基本構造はベーシックな「SWOT分析」のフレームと同じだ。違いはその真ん中に“ファクト(事実関係)”を列挙する欄を設け、そこに出てきた意見を仮置きするのだ。しかる後に、“解釈”をして、それが外部か内部か、プラスかマイナスかに分類していくのである。最後に全体を俯瞰し、全体としての意味合いを導出する。その際にも、「市場機会」とそれを実現するための「事業課題」の両方を明らかにすることが重要だ。

 フレームワークは「使いこなしてナンボ」である。正しい解釈で精度の高い戦略を立案できるよう健闘を祈る。

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2011.02.07

ソフトバンクの「-÷×+」のマーケティング

 ソフトバンクが「ボタン1個の携帯」を3月中旬から発売するという。(2月6日付・日本経済新聞)。記事の見出しには「子ども・高齢者の安全対策用 基本料、月490円」ともある。

 「ボタン1個」の形状と機能は携帯電話専門サイト「ケータイwatch」の記事に詳しい。
 <防犯ブザー付きのシンプル操作、「みまもりケータイ 005Z」>
 http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20101104_404260.html
 日経記事では高齢者向けともなっているが、同商品は社団法人全国子ども会連合会の推奨商品や日本PTA全国協議会の推薦商品にもなっているように、メインは子ども向けだ。となると、「キッズケータイ」で子ども向け携帯電話というカテゴリーを切り開いたdocomoや、防犯ベル機能起動時にセコムの警備員が急行するサービスを売りにしたauの「mamorino(マモリーノ)」とガチンコ勝負ということになる。だが、「ガチンコ」というよりは「肩すかし」ともいうべき「引き算」の勝負であることが機能面からわかる。

 まず、「ボタン1個」とは、押下によって保護者に電話がかかり、同時にGPSの位置情報をメールで通知するためのものだ。そして、発信先は特定の1番号に限定される。つまり、「ママとのホットライン」である。防犯ベル機能のストラップを引いた場合も、大音量の警報と共に位置情報が通知される。また、保護者から電話をかけた場合は子どもがボタンを押さなくとも自動受信し、周囲の音を拾って確認することができるという。機能は以上。極めてシンプルで、他キャリアにある電話やメールの機能や警備員の急行サービスなどは何もない。大胆なまでの「引き算」を行なった商品であるといえる。

 その「引き算」の「解」はどこから導き出されたのか。子どもの安全のために携帯を持たせたいと考える親は多い。しかし、躊躇して持たせていない親も多い。ソフトバンクはその「購買棄却理由」を分解、つまり「割り算」したのだ。

 購買棄却理由の1つは、「まだ小さくて操作できないだろう」という考え方だ。親の送り迎え完備の幼稚園時代と異なり、自分で通学するようになる小学1年生にとっては複数あるボタンや機能は使いこなせない。では、間違えのないまでのシンプルさにすれ解消できる。もう一方、「携帯はまだ早い!」という考えも少し大きくなった子どもを持つ親にはあるだろう。自由に通話やメール、あまつさえブラウジングまでさせたくないということだ。それに対して他キャリアは各種の機能制限をしているが、そもそもその機能をつけなければいいのだ。費用面も大きなネックだ。子どものための新規出費を抑制したいという意向は不景気の中、どうしても働く。では、機能を限定し基本料を抑えれば解消できる。
 
 「割り算」して「引き算」して導き出された「超・シンプルな機能」は万能ではない。「いくら何でも機能なさすぎるだろう」とか、「うちの子はもう大きいからもう少し複雑でも使える」とか、「親子で連絡を取り合うにももっと便利に使いたい」などの意向を持った親は取り込めなくなる。そこで、果たしてその「解」はそれでいいのかを「かけ算」で検算したはずだ。

 分解した結果の細かいターゲット層は、各々どの程度の顧客化できる可能性があるのか、「確率」という「かけ算」をする。例えば、まだ携帯を持たせていない小学生の親を対象に調査を行なって、その購買棄却理由を明らかにする。そして、その理由毎のカタマリ(セグメント)に絞り込んだシンプルな機能を提示して、購入意向度を聞く。そうすると、最も効率的に取り込めるターゲット層が浮かび上がってくるのである。
 「割り算」して取り込めるターゲット層を絞り込むと、その総和は少なくなる。「ターゲットを絞り込んだら数が少なくなる!」と幅広にする例が散見される通りだ。しかし、それは大きな間違い。「ターゲット層を設定すること」と、実際に「ターゲットを顧客化できること」は違うのである。異性に勝手に惚れ込んでも、実際につきあえるようになれるわけではないことを考えれば自明の理である。悲しいことだがそれが冷徹な現実だ。そこで、「かけ算」なのだ。

 シンプルな機能で効率的なアプローチを狙う「みまもりケータイ」には、もう1つオイシイ「足し算」が残っている。

 ニュースリリースの1つに記述がある。
 <「みまもりケータイ005Z」、社団法人日本PTA全国協議会の推薦商品に認定>(2月7日付)
 http://www.softbankmobile.co.jp/ja/news/press/2011/20110207_01/index.html <※3検索側の保護者の携帯電話は、位置ナビ(210円/月)およびS!ベーシックパック(315円/月)にご加入いただく必要があります。>
 つまり、子どもがどこにいるのか、位置情報を使った検索を行なうにはソフトバンクの携帯が必要なのだ。これは機能的に仕方ないし、当たり前なことかもしれないが意外な落とし穴ではないだろうか。「おっと、うちはdocomo(au)だ!」というケースだ。
 しかし、「この際、スマートフォンを契約して、2個持ちにしちゃおうか!」と思う親も出てくるだろう(注:Android機種に限る。iPhoneからは検索機能が正常に働かないとのこと:カスタマーセンターに確認)。スマートフォンを新規ユーザーの多くが既存の携帯を残して購入するという実態からも考えられる話だ。子どもに持たせようと思って、親も付いてくる。何ともオイシイ「足し算」ではないか。

 ソフトバンクの昨年の契約純増数は前年比63%増、の約273万件。docomoの約177万件、auの113万件と比べブッチギリ状態。3年連続のトップだ。しかし、昨年12月末のシェアは20.8%と第3位のチャレンジャーであることは変わりなく、「クープマンの目標値」で考えても影響力を持ってトップも狙える「市場的影響シェア(26.1%)」にはまだ一歩届いていない。スマートフォンもAndroid機種を他キャリアも充実させてきた。iPhoneでガバガバと純増を取るのではなく、緻密な戦略も展開しているのだ。
一見地味な「-÷×+」という「四則計算戦略」には学ぶところが大きいといえるだろう。

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2011.02.04

オトコの「ニーズとウォンツ」、オンナの「ニーズとウォンツ」

 大阪の折りたたみベッド・健康器具等の中堅メーカー、株式会社アテックスには大ヒット商品がある。「ルルドマッサージクッション」。見た目はスクエアなただのクッションだが、中味は本格派マッサージ機であるという。しかしそのカタチには「オトコとオンナの違い」が詰まっているのである。

 「顧客はドリルが欲しいのではない、穴が空けたいのだ」。
 消費者が真に必要としている「ニーズ」と、それを実現するためのモノである「ウォンツ」の関係を最も端的に表した言葉である。「○○をください!」と言われたら、「ハイどうぞ!」とモノを売るのではなく、真のニーズを探り当てて最適なモノを提供しなければならないということを説明する時に用いられる。

 2月4日付・日経MJコラム「着眼着想」にも取り上げられた、大ヒット商品の「ルルドマッサージクッション」とはこれだ→<アテックス社・商品ページ

 日経MJの記事によれば、「使用場所を選ばないクッション型」には「本格的なもみ心地」が秘められている。「通常のクッションとしても使える」だけでなく、「寝そべっても座っても身体に合う形」を求めて「試行錯誤を繰り返して現在のピラミッド型にたどり着いた」という。また、「ちょうどマッサージしてくれる人の手の温度」のヒーター内蔵のもみ玉を装備しているという。

 う~ん、36センチ四方のその小さな商品には、何ともうれしい機能が満載だ。
 もう少しその魅力を細かく分解して価値構造を明らかにしていこう。

 消費者がマッサージ機という「ウォンツ」に求める「ニーズ」は「カラダが楽になりたい」ということだろう。つまり、「やさしいマッサージ」が商品の「中核価値」だ。それを実現する「実体」は、場所を取らずにカラダにフィットする形状と、温かなもみ玉。さらに商品の魅力を高める「付随機能」が、通常のクッションとしても使えることだ。

 さて、とかくカラダにムリをしがちな現代人にとっては、誰にも魅力的な商品であるように思われるのであるが、記事では「発売に至るまで男性社員の反応はいまひとつだった」という。その理由は「パッと見た時に用途が不明」「電源の位置がわからない」などだったという。

 さても、男と女の間には黒くて深い川がある如く、わかり合えないものなのか。ところが、アテックス社の女性開発担当者は、エンヤコラと川を渡る船を出してRow and Rowと漕いだりはしなかった。「周囲でも買い物の決定権の7割は女性にある」と「女性視点を貫いた」(記事より)という。
 (ちなみに黒くて深い川の話がピンとこないお若い方は、直木賞作・「火垂るの墓」、童謡「おもちゃのチャチャチャ」作詞の野坂昭如をググってほしい。「黒の舟歌」という曲だ!)

 「カラダが楽になりたい」というニーズには男女差はない。また、フィリップ・コトラーの「製品特性3層モデル」で分解して考えた「価値構造」で考えても、受入れがたい価値の差異はないはずだ。しかし、決定的に違っているのは、オトコは「パッと見て効果・効能がわかりやすい」という「機能美」を求め、オンナは「マッサージ機にすがっているんじゃないわよ」的な「らしくなさ」を求めていたのだ。

 デザイン開発コンセプトが「かわいいけれど甘すぎない」であったというが、社内の男性陣の意見を振り切った結果、商品は大ヒット。1日1万個、2009年9月から累計160万個を売り、発売から1年以上が経過した今でも売れ行きに衰えがないというから担当者の慧眼には脱帽である。

 ニーズを深く掘り下げるのは当たり前。しかし、さらにその先に、ターゲットのココロの中を深く洞察して、どのようなウォンツのあり方が求められているのかまで、掘り下げていくことが欠かせない。特に男性がオンナゴコロをつかもうと思ったなら、両性の間に広がる川を渡るのではなく、深く深く潜ってそのココロのより所を探り当てなければならないのだ。

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2011.02.03

「中古品保証」に見る真のリレーションシップ形成

 節約志向が高まる中、安さを求めて中古品の購入が活況だが、一方で中古でも購入後保証サービスを重視する消費者が増えているという。そのワケを考察すると、思わぬビジネスチャンスが見えてくる。

 2月2日付・日本経済新聞消費面に「中古品でも保証重視 腕時計点検・ゲーム機修理・・・ 安さに安心感プラス」という記事が掲載された。
表題の時計点検は中古ブランドショップ「銀蔵」が始めたサービスとのことであるが、入会金1,000円で3年間は点検・洗浄サービスが無料だという。さらに本格的な分解洗浄・注油も業界平均の1/3の価格で提供するため、新規客だけでなく常連客も付いているという。その他、中古ゲーム機販売の「ゲオ」はゲーム機に安価に独自の延長保証を設定。総合リサイクルの「トレジャー・ファクトリー」も各種家電に独自の延長保証を設定し、「価格面以外でのサービス強化」を図るっているという。それらの展開に対し、電通総研の研究員は「気に入った商品を長く使い続けることが結果的に節約につながると考える消費者が多い」とコメントしている。(以上、記事要約)

 中古品の保証・延長保証で期待できる効果は何か。それは、顧客との「リレーションシップの構築」である。中古品の購入は安さとのトレードオフとして故障の不安がつきまとう。その不安を払拭し、使い続け、時に整備や修理という顧客接触によって一層のリレーションシップを強化していくことになるのだ。

 顧客とのリレーションシップの構築。それは、「言うは易く行うは難し」の典型だ。
 タイム誌が選んだ「20世紀の3代広告人」の1人、レスター・ワンダーマンは、企業と消費者がrelationshipを構築できると安易に考えることを戒めている。2000年頃に企業が先を競って導入したCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)の源流ともいうべきダイレクトマーケティングの創始者が言うのだ。しかし、彼は実にわかりやすくその真意を説いている。曰く、自分はコルゲートの歯磨き粉を毎日使っているが、その商品にもメーカーにも何のリレーションシップを感じてはいない。しかし、それを用いるのは、それが自分にピッタリ(relevant)だと感じるからだ。(筆者意訳:“Being Direct・日本語版「ワンダーマンの売る広告・翔泳社」”)

 中古品を購入するのはどのような心理からだろう。新品が手に入るならそれに越したことはない。しかし、それは価格的な制約がつきまとう。そこで、「中古でも十分だ」と判断する。まさに自分にとってのレレバントを感じるわけだ。しかし、一方で不安もある。そこに、販売店が独自の保証を設定してくれる。そして、整備や点検・修理を通じて企業との接触を重ねるうちに、リレーションシップを顧客は感じるようになる。レスター・ワンダーマンの説く真意もそこにある。まずは、レレバントから始め、徐々にリレーションシップを構築し、深めよということだ。

5point_2


 企業が顧客との関係性によって収益を得られるポイントは5つある。
 まずは、何かのきっかけで商品を購入しようと思った時点だ。何らかの「ライフステージ」の変化の時点である。そこでレレバントを感じさせ、顧客化する。そして、整備や点検・修理といったサービスで顧客を囲い込みつつ、サービスの提供料で収益を得る。「アフターマーケティング」である。さらに、囲い込むことで、顧客に同種の商品を買い増しさせたり、買い換えさせたりといった働きかけをする。「アップセリング」である。また、購入した商品と関連した商品を追加購入させる「クロスセリング」を展開して、さらなる収益化を目指すのである。最終的には、レレバントを感じるレベルの関係から、顧客が企業のファンになってくれるまで関係性(リレーションシップ)を深めさせ、本来多額のコストがかかる新規顧客の獲得を、顧客による友人・知人という「顧客紹介」を実現させる。

 「失われた20年」の間に市場の伸びの鈍化は恒常化し、人口縮小などによって今後、縮小に向かう。また、消費者に定着した節約志向とエコ意識は、安易な新品購入と使い捨てという文化を書き換えている。中古品販売における顧客との関係構築は、新品販売においても学ぶところが大きいだろう。


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2011.02.02

顧客視点のマーケティング (第1回)

初出:「バリューコンピテンシー:第26号・2010 Spring(社団法人日本バリューエンジニアリング協会)」全4回

<strong>◎生き残りのキーワードは「顧客視点」

“100年に1度”という言葉を1日1回は耳にするほどに、世の中は不景気である。世界最大手債券ファンド・米ピムコのCEOであるモハメド・エラリアンがサブプライム危機を予言した著書の中で、景気が回復しても元通りの経済水準にはならない状態を「ニューノーマル」と表現した。
 では、どの程度が「ノーマル」な状態であるのかというと、「ハーフエコノミー」という言葉が昨今、用いられるようになってきたように、「市場における需要が半分程度の規模になった経済のこと」だという。
 しかし、“ 1 0 0 年に1 度”や、サブプライム問題などを抜きにしても、日本市場は少子高齢化で確実に縮む市場だということはとうの昔にわかっていたことである。2009 年の東京モーターショーで海外勢が3社しか出展せず、今や世界有数の市場となった中国の展示会に行ってしまった事態が象徴するように、問題が顕在化しただけのことなのである。
 だが、座して死を待つわけにはいかない。縮む国内市場、ハーフがノーマルな状態になってしまった経済環境において生き残りを賭けるキーワードは、顧客視点を取り戻すことである。

◎「売る」のでは「売れない」

 顧客視点とは、特別に新しいキーワードではない。むしろ古くから言われ続けてきたことだ。ピーター・F・ドラッカーが1973年に『マネジメント─課題・責任・実践』で、顧客視点について次のように記している。

「マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、おのずから売れるようにすることである。すぐにでも買えるようにすることである」

 要するに、売る側の都合でモノを作り、意味もなくチャネルに並べ、広告をひたすら流し、無理に値引きを行う─そのような「売込み」を否定しているのである。

◎マーケティングとは「価値の交換活動」

 米国の経営学者フィリップ・コトラーは、「製品と価値を生み出して他者と交換することによって、個人や団体が必要なものやほしいものを手に入れるために利用する社会上・経営上のプロセスである」とマーケティングを定義している。
表面的には売り手と買い手が、製品(モノ・サービス)と対価を交換している。しかし、マーケティングとは単なるモノやサービスと対価の交換ではない。たとえば、最近では水道水ではなく、ペットボトル入りのミネラルウォーターを飲む人が増えている。わざわざミネラルウォーターに対価を払うのは、水道水より「おいしい」「安心」と消費者が感じているからである。
 つまり、買い手はミネラルウォーターにおいしさや安心といった「価値」を見出し、そこに対価を払っているのだ。すなわち、“マーケティングとは「価値の交換活動」”なのである。

◎「価値」を分解して捉えよう

 では、フレームワークを使ってヒット商品を分析し、「顧客にとっての価値とは何なのか」を考えていこう。 
2006年の発売以来、新築・リフォーム市場において常に指名買いで大ヒットを続けているパナソニック電工の全自動おそうじトイレ「アラウーノ」に着目したい。
 まず、トイレの価値をフィリップ・コトラーの「製品特性分析3層モデル」で考えてみる。
その製品を手に入れることで実現したい中核価値は、「用を足す」ことであり、それを実現するために求められる実体価値は「楽に用が足せる」ことと、「用を足したあとの処理が速やかにできる」ということになる。これは便器の洋式化と水洗化で、旧来の和式トイレの問題点が一気に解決された要素である。
 中核価値には直接影響を与えないものの、あるとうれしい付随機能は、足下照明や音消し音楽が流れることなどであり、高級便器で実現されている。
 アラウーノの大ヒットの要因は、本体が汚れのつきにくい樹脂製であり、市販の台所用中性洗剤をセットして使用後に水洗すれば、「自動洗浄」する点にある。中核価値である「用を足す」ためには、その前提としてトイレの清潔さを保つことが必要となり、毎日ブラシでこすらねばならない。それを「自動化する」ことは、実体価値が加わったことを意味している。
 トイレだけでなく、いわゆるコモデティー商品は、とかく中核価値とは関係のない付随機能、すなわちカラーバリエーションやデザインなどの勝負となりがちであるが、実体という欠かせない価値を提案したところに、ヒットの秘密があるといえる。

◎「不」の字を探すことがニーズへの近道

 アラウーノのヒット要因からもわかるように、顧客の持っている「理想的な状態」と、それが実現できていない「現状」とのギャップの中に、「ニーズ」が存在している。こうしたニーズを実現する対象物を「ウォンツ」という。
 単純に「ヒット商品」というウォンツを考えているだけでは、答えは見えてこない。顧客は何を実現したいのかという「ニーズ」を探すのだ。ニーズの探求には、不便・不満・不自由・不可能・不利益─といった顧客の抱える「不」の字を探すことが欠かせない。なぜなら、そこには必ずニーズが隠されているからだ。

◎まずは顕在的な「不」を解消する

 ニーズに注目すれば、顧客が購入する理由( K B F / KeyBuying Factor)にたどり着ける可能性が高い。しかし、ニーズは顕在化しておらず、潜在的な状態であることがほとんどだ。ゆえに「不」の字を探すのである。
 ミツカンが納豆事業に本格進出したのは1997年のこと。2000年には独自の技術で、納豆特有の気になる臭気だけを抑えた「金のつぶ“におわなっとう”」を発売した。「納豆は血液をサラサラにする健康食品だというが、においがどうしてもダメで食べられない」という顧客のニーズに着目したことが功を奏した。納豆ににおいは当たり前と「においの不快」という不の字を見過ごしていたなら、ヒット商品も生まれなかったことだろう。

◎購買理由と購買棄却理由

 さらにミツカンは、においという顕在的なニーズだけでなく、潜在的なニーズも探り当てた。2008年発売の「金のつぶ“ あらっ便利”」である。同社は、開発にあたり独自の調査を行い、「納豆パックのフィルムやカラシなどの小袋が開けづらかったり、開ける際に手が汚れたり、開けたあとの始末に困るなどのストレスを感じている人は9割にのぼる」という事実をつかんだ。

 すなわち、
・開けにくい=不自由
・汚れる=不潔
・ゴミが出る=不要

 という「不」の字に着目した同社は、調味料メーカーとしての技術を応用し、タレにとろみをつけ、つまんで混ぜられるようにするという、画期的な解決策を見出
したのである。
 マーケティングにおいては、「これなら買いたい」という購入理由を見つけるだけでなく、購入棄却理由にも注目する必要がある。とくに不景気で消費者の生活防衛意欲が高まると、消費者自身が知らず知らずのうちに「買わない理由」を意識していることが多いからである。たとえば納豆なら「朝食に面倒なものは食べたくないから」といった理由である。
 まずは、そのような購入棄却理由を見つけ出し、それを払拭すること、その上でさらに「身体によさそう」とか「便利そう」といった購入理由に転換させていくことが重要なのである。そのためにも、まずは「顧客をよく見ること」から始めてみていただきたい。


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2011.02.01

「ドライブスルー活況」にほくそ笑むのは誰か?

 日本経済新聞の記事によると、ドライブスルーが活況であるという。ドライブスルーといえば誰もが思い浮かぶマクドナルドだけでなく、カレーのCoCo壱番屋や、長崎ちゃんぽんリンガーハットなどの意外な存在も名を連ねている。

 記事は2月1日付消費面のコラム「消費のなぜ?」に掲載された。タイトルは「ドライブスルー快走 自宅で味わう外食気分」とある。高速道路の割引料金やガソリン安が追い風となって、マクドナルドではドライブスルー併設店がここ数年、売上げが2桁近い伸びだという。他にも景気のいい数字が誌面に踊る。リンガーハットは2010年6月から既存店にドライブスルーの併設を進めて、改装した約40店で売上高が5%増加。CoCo壱番屋は対応店23店では月商が50万円上昇だとある。
 マクロミルの調査で利用実態の裏付けをしている。日頃からドライブスルーを利用しているのは41.1%で、うち29.2%が3年前より利用頻度が増加。利用するためにクルマで外出する消費者も2割近くいるという。
年齢層は20代50%、30代36.3%。食べる場所は自宅47.2%、車中45.5%。「ドライブスルー利用のメリット」の回答は「天候を気にしなくていい」が38.7%、「身なりを気にしなくていい」「1人でも入りやすい」が20%超、「子ども連れでも利用しやすい」「他の客を気にしなくていい」が20%弱という結果だ。(以上、記事より要約)

 記事を見ればドライブスルーの活況は誰の目にも明らかであり、外食チェーンはさらにドライブスルー対応店を増加させて行くであろうことも明白だ。では、それと通底する他の動きはないかを考えてみる。

 記事の価値は大きく2つある。具体的にドライブスルーがどの程度活況かということを数字で伝えてくれていることと、マクロミルのリサーチパネルによる消費者行動の「理由」が明示されていることだ。

 Wikipediaによれば、1977年に日本マクドナルド・環八高井戸店でドライブスルーが設置・導入されたとある。利用者のボリュームゾーンは20代~30代であるが、真ん中の35歳を例にすれば1976年生まれなので、生まれた年からドライブスルーがあり、その成長過程において慣れ親しんできたといえるわけだ。

 実は告白すると、筆者は出不精だ。故に、意を決して出かけたなら「せっかくだから店で食べればいいじゃん」と思ってしまう。しかし、利用者はドライブスルーを「家庭の延長」として見て、店内で食べるより人に迷惑をかけないし、自分たちだけでくつろげるというメリットを感じている。そのためにわざわざクルマで買いにいく層も少なくないという結果が出ている。さらに筆者の感覚をいうなら、わざわざ車で出かけて、買って帰ってくるということは苦痛なのだが、面倒さというデメリットを上回るメリットがあると利用者は考えているのだ。
 と、考えると、実は昨今活況を呈しているもう1つのサービス思い浮かぶ。「デリバリー」だ。

 「機会費用」という考え方をすると、デリバリーにはドライブスルー同等かそれ以上のメリットがデリバリーにあることがわかる。
 機会費用とは「ある行為を選択しなかったら、得られたであろう利益」のことをいう。よく「大学に進学した場合、就学せずに就職したら得られる4年間の給与が“機会費用”である」と説明される。4年間分の入学金と授業料なのどの「目に見える費用(会計的費用)」
とは別に「目に見えない費用(経済学上の費用)」が発生しているということだ。
 ドライブスルーで食事を購入して家に帰ってくる。目に見える費用は「ガソリン代」ということになるだろう。では、目に見えない費用は何か。それは「余暇時間」だ。余暇時間をいくらと見るかだが、景気が上向いてきたとされる昨今、労働時間が長くなれば余暇時間の対価は向上していく。

 家で普通に食べるには食事を作る手間がかかる。外食すると周囲に気を遣う。故に、ドライブスルーを利用して家で食べる利用者の「ニーズ」は何かといえば、マクロミルの調査結果にあるように「外食メニューを家でくつろいで食べること」である。その実現のための具体的なサービス=「ウォンツ」が「ドライブスルー」なのである。
 「ニーズ」を充足するための「ウォンツ」として代替的な存在が「デリバリー」だ。デリバリーの利用は、ドライブスルー利用のための目に見える費用を支出して、目に見えない費用の削減(時間の消費を削減)を実現してくれる。

 従来の「出前」ではなく、ワンウェイで食事を宅配するデリバリーは、従来のピザだけではなく、弁当、寿司、中華など様々な業種が参入し、若干メニュー価格が割高なのにも関わらず活況を呈している。
その中でも3,700もの店舗のうち、どこからデリバリーサービスを展開しようかと狙い研ぎ澄ましている企業がある。日本マクドナルドだ。
 現在、東京・世田谷の用賀インター店1店舗で合計1,500円以上注文すればデリバリー費用を無料とする消費者の受容性テストしている。テスト終了後はメニューに転嫁するか、宅配料を別途徴収するかの検討中である旨を既に表明している。また、実験当初は職域からの注文が多かったというが、家庭からの注文を増やすべく告知強化をしているともいう。

 1つの商品、サービスが流行っているという現象を前にした時、消費者の真のニーズは何かを考え、代替できるウォンツとしてビジネスチャンスを見つけることはできないかを考えることが肝要だ。その事例としても、ドライブスルーとデリバリーの利用状況や各社の展開を今後ウォッチしてみたい。


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