回転寿司戦争:スシロー、かっぱ寿司の天下は続くのか?
回転寿司チェーンのトップが入れ替わった。しかし、乱世の如くトップの座は今後もめまぐるしく交代する可能性が高いという。
首位陥落である。「 かっぱ寿司」はトップ死守を賭け、平日1皿90円のキャンペーンを展開。CMでは宇宙人まで食べに来たものの、2010年下半期(7~12月)の売上高は後発の「スシロー」が前年同期比20%増の462億円と、かっぱ寿司の同9%増455円に対し僅差で追い越した。メディアの伝えるところでは、<勝因は「素材の良さ」というから、回転ずしでは安さよりもネタのほうが重視される>かららだという。
<回転寿司で下克上!スシローかっぱ抜く「安さ」より「素材」>(2011.01.14産経zakzak)
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110114/dms1101141227002-n1.htm
記事では回転寿司のKSF(Key Success Factor:成功のカギ)は「素材のよさ」にあるとしている。確かにネットにはスシローのネタのよさに対する賞賛が散見される。しかし、それは消費者のKBF(Key Buying Factor:購入理由)にはなり得ても、絶対的で継続的なKSFたり得ない。<業界内の競争は激化しており、3位の「くら寿司」を展開するくらコーポレーション(大阪)は10年10月期決算で最高益を記録。「銚子丸」なども業績が好調だ>と業界内の順位は今後もめまぐるしく変わる可能性が指摘されている。
独立起業するとすれば、最も参入障壁が低い業界の1つが飲食業だ。材料を仕入れ、調理し、客に提供するというバリューチェーン(VC)のシンプルさがその理由である。しかし、成功し、継続することが難しい。シンプル故に、差別化が難しいからだ。極めて良い仕入れルートを持っている。卓越した調理の腕がある。絶妙の接客サービスを提供できるなどの要素がなければ「成功」ではなく、よくて「そこそこ」。人に食べさせるどころか、自分が食えなくなって「廃業」という憂き目を見ることになる。街を歩いていて「あれ、ここの店、代わったんだ」と日常的に目にする光景の背後には、その数だけ起業と廃業のドラマが隠されているのである。
バリューチェーンは日本語に訳せば「価値連鎖」。ビジネスのしくみのどこでどれだけコストをかけ、付加価値を創出するかということを表している。では、回転寿司というビジネスのキモはどこにあるのか。
「安さ」より「素材」とはいえ、回転寿司の価格帯で寿司を提供しようとするなら、ある程度の安さは必須要素だ。そこでモノをいうのは「規模」である。原価に占める固定費率は販売数量が多くなればなるほど低減できる。「規模の経済」という。固定費とは、研究開発費・設備費・広告宣伝費。人件費や原材料費などの変動費に関しては、規模が大きくなれば、単位時間あたりの生産性を向上させることで人件費率は低減できる。原材料費は大量購買による価格交渉力の向上で低減を図ることになる。
回転寿司業界はなぜ、下克上が起こりやすいのか。それは、「仕入れ」→「調理」→「接客」という飲食業のバリューチェーン上で、差別化要素が少ないからだ。「接客」という俗人要素を極限まで削減したサービス。調理は「にぎり」といっても、シャリは「寿司ロボット」が握る場合が多い。調理という製品の加工度を高めるプロセスや、接客というサービスで付加価値を付けるプロセスが削減されているからだ。どうしても「仕入れ」の段階に依存する比率が高くなるのである。
競争戦略で戦う方法は大きく分けて3つある。1つはコストを武器に戦うこと。「コストリーダーシップ戦略」という。もう1つが差別化要素で戦うこと。「差別化戦略」という。もしくは、特定市場に集中して戦うこと。「集中戦略」という。
この戦いは、「回転寿司」という特定市場の中での戦いだ。そして、そこは差別化困難な市場だ。コストリーダーをめぐる戦いは「水の中で息を止め合う勝負」のようなものだ。勝負のポイントは、原価率を抑えること。そのためには前述の通り、「規模」がモノをいう。どこも規模化してトップを取り、価格交渉力を握ることを狙う。その一方で、利益率を抑えて原価率を高めるガマン比べをするのである。しかし、ガマンにはおのずと限界がある。ガマンは絶対的で継続的なKSFたり得ない。ガマン比べをすれば、牛丼業界の二の舞だ。
この業界がどこへ行くのか、目が離せない状況である。
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